ナイトメア・オブ・ライ   作:兜割り

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主「エイプリルフール。今年も、型●やア●ジュが面白い嘘企画をやるのかなぁ……」
友「そっちも試しに何かやってみれば?せっかく小説投稿してるんだし。ほら、あれ。作品投稿する前に見せてくれた今のとはだいぶ違うやつ。あれ投稿して見たらどう?」
主「あぁ、あれか。書いてみたんだけど途中、ライが主人公でなくてもよくない?って思えるぐらいギアス要素薄いし、パソコンのデータが吹っ飛んだのが止めになってね」
友「あっ、そうなの。ならこっちがコピーしたやつ渡そうか?」
主「えっ、ちょっとどういうこと。コピーってなんで?」
友「あ~ほら、前に遊びに行った時、そっち寝ちゃったじゃん?パソコン起ちっぱで。そん時、ため込んでたSS拝見させてもらったのよ。そんで、面白そうな奴をUSBでコピーさせてもらったってわけ」
主「言いたいことは沢山あるけど、今すぐ返せ。そして消せ」
友「返してもいいけど、エイプリルフールに投稿してくれない?」
主「無茶いうなっ!その時の執筆分、設定と台詞ぐらいしか書いてないのは解っているでしょ?」
友「うん。だから、それを今すぐ加筆、修正してもらいたいの」
主「だから、無茶をいうな、無茶を。エイプリルフールまでもう三日もないのに」
友「惑わされるな」
主「時間がないの、時間が。バイトとか色々」
友「惑わされるな」
主「何それ?某完璧超人始祖の真似?」
友「惑わされるなと言っておるーッ!」
主「ゲーッ!解った、やってやる、やってやるよ!」

なわけでエイプリルフール作品どうぞ!



if
IF 多頭の悪竜 上


薄闇の中、濃く覆いしげる樹木に、ろくに耕されていない様子の荒れ地。森を抜ける道はおそらくは獣道以外は存在していないだろう。人の手がまったく入っていない天然の自然がそこに拡がっている―――はずだった。

今、その自然には光がともっていた。自然が作り出すにはあり得ない人工的な光がぽつぽつと存在している。

 

 

「彼らも苦労するわね。こんな辺鄙な場所をこそこそと進まなければいけないのだから」

 

 

森を見下ろすことができる崖の上に一つの集団がいた。数は約百人ほど。眼下にあるその異物が紛れ込んでいる自然を見下ろしながら、タイツのような身体にフィットする服を身につけた少女が小さくつぶやいた。

 

年齢は十代前半。背はまだ低く、身体の凹凸(おうとつ)も少ない。腰につけられた一振りの剣が少女の雰囲気にアンバランスさをだしていた。だが、宝石のように輝く青い瞳と肩口でそろえた髪が夜中でもブロンドを輝かせて、整った顔を美しくしていた。

 

 

「こういうのもなんだけど……もっと良策があったんじゃないのかしら。そこら辺はどう思う?」

「この森を突破することが出来れば帝国陣営は目と鼻の先。愚鈍極まりない帝国軍の愚図どもが彼らの襲撃を受ければ、壊滅は必至。策としては理に適っている」

 

 

声の方向に向けば、異形の鉄の塊が目に入る。人を二回りほど大きくしたような姿は人の形をした竜だ。その竜を一人の男が各部を点検していた。

 

その竜は装甲機竜(ドラグライド)陸戦機竜(ワイアーム)……と言えばいいのか。いや、元になった機竜は陸戦機竜(ワイアーム)なのだが、男が点検している機竜は最早別物といってよかった。元々、持っていた優雅さは毒毒しさを感じさせる紫の分厚い装甲をまとったボディ、短く太くさせられた脚部、頭部の赤く輝く巨大な単眼、そして何より目を引くであろう本来左腕があるはずの部分に存在する砲によりかき消されていた。

 

その名は――《ワイアーム・カノーネ》。

ベースとなった《エクス・ワイアーム》を砲撃戦に極限まで魔改造した機竜だ。

 

―――こんなゲテモノよく作ったものね……。

 

少女の問いに重々しい声でそう述べたのは、すぐそばに立っていた機竜と同じ紫の短髪を持った大柄な男だった。声だけでなく、少女と同じ身体に張り付いているようなデザインの服装で包まれているがっしりとした体といかつい顔つきを見れば誰もが男を生粋の武人と感じるはずだ。しかし、この男に与えられている役職を知れば誰もが驚くだろう。

男の言葉に少女は少々眉をよせた。

 

 

「……貴方、味方に対して酷いこというわね」

「愚図を愚図といってなにが悪い」

「いえ……もうちょっとオブラートに……」

「事実だ」

 

 

男はその言葉で会話を打ち切り、機竜の調整に戻った。少女は内心でしまったと感じた。この男は物事に集中すると途端に話しかけにくくなる。身体中から話しかけるなとオーラがあふれ出すのだ。つまり、他にも聞きたいことがあったのだがその機を逃がしてしまった。

 

少女が悩む中、その時―――

 

 

「彼らが正面からの攻撃を避けたのは簡単だ。私たちがこの地にきたからだ」

 

 

現れたのは銀の髪を持った少年。

年齢は少女と同じほど。背は高く、顔の造形は端麗で、豪奢な外套の下にある肉体は贅肉など存在せず無駄がない。それだけなら、人は少年を鍛えた美少年と評価するだろう。

 

だが、少年をその評価から一線を凌駕している物がある。

存在感。

雰囲気には余裕があり、体躯からは気品を漂わせ、人ひとりが持つ存在感の密度の桁を外れさせている。彼は紛れもなく人を魅せる王者の素質を携えていた。

 

 

「ライ殿下!」

 

 

はつらつとした声をあげて少女――リフィル・バルザックは少年に走り寄っていった。

 

ライ・アーカディア。

長い歴史を持つ帝国の王の血を引く者。本来、帝都の王宮にいるべきだろう少年は光る森に指を指した。

 

 

「どうやら私たちがこの地に来ることを知り、正面からの衝突を避けるためにこんなルートを選んだみたいだ。相手方はずいぶんと過大評価をしてくれる。嬉しいことだ」

 

 

少年の口が酷悦に満ちた三日月に歪む。

自分たちの存在に気付き、正面から戦うことを避けて奇襲をかけようとした相手。その相手に自分たちが奇襲を仕掛けようとしているのだ。戦う者としては愉快なことである。

 

 

「小僧。策は練りあがったのか?」

「もちろんだ、グレド。といってもいつも通りなんだがな」

 

 

カノーネの調整をしていた男、グレド・バックスはフンと鼻を鳴らして調整に戻った。彼の言葉遣いは一国の皇子に向けるものではない。だが、ライは訂正を要求することはなかった。

 

 

「後はイカレ女を待つだけ「来ているぞ」……えっ!?」

 

 

リフィルが驚きの声をあげると背後に独特な形状を持つ一機の装甲機竜(ドラグライド)が立っていた。

刃の如く鋭い形状と、腰回りを覆う奇妙な機械の(リング)――そして、両足から後方へと伸びた、二つの補助脚。装甲の構成自体は、汎用機竜の《ドレイク》に似ているが、そこから放たれる竜の威容は、《ワイアーム・カノーネ》を凌駕していた。

 

その機竜――神装機竜《夜刀ノ神》を操っている艶やかな黒髪の少女はライに恭しく頭を下げた。

 

 

「ご報告申し上げます、ライ皇子殿下。敵陣営の偵察、無事終了いたしました」

「ご苦労だった、切姫夜架。すぐにその情報を《ワイアーム・カノーネ》隊に。送り次第、すぐに攻撃を始める」

「承知いたしました」

 

 

一部の隙もない、完璧な主従のやり取りを見せて、夜架は《ワイアーム・カノーネ》に近づいていく。その背中にリフィルが突っかかった。

 

 

「ちょっと、切姫!いきなり後ろに立たないで、驚くじゃない!」

「あら、申し訳ございません。なにせ、とても戦地にいるとは思えない隙だらけの背中だったもので。暗殺者としての癖でつい立ってしまいました」

 

 

くすくすと花のように笑う口からは、リフィルの油断を示す発言が紡がれる。その言葉にリフィルは唸った。彼女の言っていることが事実であったから。まだ敵と交戦していないとはいえ、気を引き締めていなかった自分に咎があると――

 

 

「とても騎士あるまじき姿でしたわ。そんなもので殿下の剣と盾と誇れましょうかね?」

 

 

その言葉にリフィルは腰に備えていた機攻殻剣(ソード・デバイス)に触れて、一撃を夜架目掛けて放っていた。ただの一撃ではない。触れた瞬間に現れた半身を覆う装甲と機械の片腕が繰り出す長剣の振り下ろし。

 

無詠唱の高速機竜召喚に、部分接続から為される速攻。

常識ならば、ほぼ不可能な難易度の機竜操作術をリフィルは行っていた。それを味方に繰り出す光景に、待機していた集団が唖然とし、グレドは眼中にないとばかりに機竜の調律を続け、ライはただじっと見ていた。

 

突然の攻撃に夜架は、焦りも声も出すことなく《夜刀ノ神》を操作して、軽やかに避ける。

リフィルの振り下ろしは地面すれすれまでに届き、かわした夜架を無表情、しかし目には鬼火めいた光を灯している。

 

 

「――切姫夜架。先ほどの台詞は私に対する宣戦布告と判断したが、相違ないか?」

「ご挨拶ですわね。先に手をかけてきて、その言い草はありませんわよ」

 

 

と夜架は、《夜刀ノ神》の機竜牙剣(ブレード)を召喚して構える。その剣は主の戦意を表現するように月光で妖しく輝いた。

 

そんな相手のプレッシャーなど知ったことかと、リフィルは機竜の残りを召喚しようとする。召喚すれば、今にも噴き出しそうな爆発力を持って夜架に飛び掛かることは、この場にいる誰もが理解した。

 

一触即発の空気の中、集団は戸惑いながらも眺め、グレドは相も変わらず雑事には興味なく、ライは――

 

 

「――やめろ」

 

 

重く、力が乗せられた言葉を吐いた。それだけ、たったそれだけで一触即発の空気は、重力が倍になったかのような重苦しい空気に飲み込まれた。集団はそれだけで今までの緊張も吹き飛び、姿勢を直立にした。変わらないのは、グレドただ一人。

 

言葉が吐き出された直後、一触即発の渦中だった二人は機竜から降り、膝をついて垂れた頭を差し出した。

 

夜架は粛々と一心の乱れのない動きによる姿勢。

リフィルは焦りからの動きで、まるで叱られるのを恐れる子犬の姿。

 

対照的な二人の少女に跪かれて、ライはただ冷たい目で見ていた。

 

 

「夜架。今から戦闘を行う最中に、隊の結束を乱す発言は慎め。戦闘とは神速を持って行う物。今、こうする時間すらも時間を削り、無駄を積み重ねていることを理解しろ」

「申し訳ございません。せめてものの謝意として、この首を――」

「――言ったはずだぞ。無駄なことをさせるな。貴様の首を刎ねる労力、その後の処理、貴様の死で失われる偵察情報と貴様自身の戦力。それがこれからの戦闘にどれだけ影響するか分からないはずないだろう」

 

 

一息。

 

 

「貴様は必要な存在だ。自分の行いを悔い改めたいのならば、その行いを清算する働きを見せろ」

「――承知いたしました」

 

 

先ほどの返事とは違う。微かな熱が込められた返事をした夜架は、《夜刀ノ神》を纏い、《ワイアーム・カノーネ》に寄せる。肩口の機械からコードを伸ばして接続していく。直後、《ワイアーム・カノーネ》の頭上に光の文字列が浮かび上がる。

 

 

「どうぞ」

「…………」

 

 

夜架の言葉にグレドは無言で、差し出される情報を自身の《ワイアーム・カノーネ》と調律する作業に没頭する。

情報を渡し終えると、夜架は頷きだけをし、コードを引き抜いて、他の《ワイアーム・カノーネ》に同じ作業を行っていく。

 

その姿にライは軽く頷いて、未だに頭を垂れるリフィルへと視線を移した。

 

 

「――リフィル」

「……ッ!」

 

 

名を呼ばれただけでリフィルの身体が大きく震えた。そんな姿を無視してライは続ける。

 

 

「君は言ったな、私の騎士を目指すと。君の目指す騎士とは、激情から仲間を討つ不忠者のことなのか?」

「いっ……いいえっ!決してそのような――」

「君が私に忠誠心を抱くのは大いに結構だ。だが、自らの意思を抑えることなく行動し、主の妨げになるのは忠誠ではない。ただ自分に酔っているだけだ」

「……ッ!?」

「どうなのだ。君は真に忠誠を捧げて私の騎士になりたいのか?それとも、自身が勝手に抱いた忠誠に酔って、その姿に浸りたいのか?――答えろ」

 

 

鉄拳の如き重みを帯びた言葉にリフィルは、もう一度身体を大きく震わせた。しかし、それは恐怖ではない。彼女の中にあるスイッチが切り替わったことを示していた。

顔を上げたリフィルは、

 

 

「――私は騎士です。今はまだ未熟な身ですが、いずれは殿下の御身を守護出来る心身に必ず辿り着きます。そのためにどうか、どうか先ほどの汚名を返上する機会をお与え下さい」

 

 

浮かんでいた鬼火も怯えも消え、ただ曇りも淀みもない目をライに向けた。

視線を正面から受け止めたライは、光がぽつぽつと灯っている森に指を指した。

 

 

「――先陣だ。その返上の機会として戦場の誉れをくれてやる。しかし、下がることも退くことも許さん。ただ、猛進して敵を打ち砕くことで私に捧げる忠義とやらを証明してみせろ」

 

 

戦場の誉れである先陣。しかし、少年の言葉に含まれていたものは、生還よりもただ敵の殲滅を望んでいた。ある者ならば、その言葉に悲嘆するだろう。また、ある者ならば、その言葉に自暴自棄になるだろう。

 

命令を突きつけられたリフィルは――

 

 

「御身の名において必ずや――っ!」

 

 

自信と喜びに満ちた言葉で返礼をした。

 

 

「そうか、期待しよう。リフィル、言った通りに先陣を任せる。目移りをするな。ただ進み敵陣へと喰らいつけ。もし、それを忘れ羽虫の駆除に没頭するようなら吹き飛ばしてやる」

 

 

とライは《ワイアーム・カノーネ》の砲腕を視線で示した。

その姿に周囲の者たちが息を呑んだ。ライと使い手であるグレドの性格、カノーネの破壊力を知っている者は、その『もしも』のことを想像して顔を青ざめた。

 

 

「俺たち……生きて帰れるかな……」

「敵にやられるならともかく……味方にやられたないよな」

「しかも、とばっちりよ。死に方としては最悪の部類に入るわね」

 

 

ぼそぼそと、しかし聞こえる音で団員たちの声が響く。

 

 

「大丈夫よ。前回みたいに囮に釣れられたりなんか、もうしないから」

『……わかりました』

 

 

真剣な表情のリフィルに答えた全員の心は一つだった。

『信用はしよう。しかしもしもの時は、放置しよう』―――と。

 

 

ライは自然の中に灯る光を見下ろす。

そこに敵がいる。自分たちが滅ぼす敵がいる。

これから奇襲をかけようというのにライは、感情を露わにしなかった。恐怖もない、情けもない、喜びもない。ただ、迫りくる敵を討ち滅ぼす覚悟に染まっていた。

少年の身体から溢れ出る覚悟に、集団も、リフィルも、夜架も感化されたようにただ静かになった。これから来る主の命をただ待った。

 

そんな中、変わらず《ワイアーム・カノーネ》の調律を行っていたグレドの手が止まり、ポツリと呟いた。

 

 

「――完了だ」

 

 

その言葉にライが吼えた。

 

 

「よし!全ての準備は整った!」

 

 

肩に引っかけた外套を脱ぎ捨て、腰にかけた機攻殻剣(ソードデバイス)を鞘から抜き放つ。無数の銀線が走る剣が天へと突きつけられる。それが開幕のベルとなり、部下たちも機攻殻剣(ソードデバイス)を抜くことで応える。

 

 

「これより我ら竜人甲兵(ドラグノイド)は、共和国軍に対して奇襲を敢行する。作戦通りにリフィル率いる《ワイアーム》部隊は敵陣に突撃。空については案ずるな、全て私に任せろ!誉れの先陣をくれてやるんだ。その剣と槍で敵を粉砕しろ!」

「了解!」

 

 

少女、リフィル・バルザックが応えるとその背後に異形の影が浮かび上がる。影に無数の淡い光が集まり、機竜を実体として召喚させた。本来、機竜を召喚するには、パスコードである詠唱符が必要。しかし、リフィルは唱えずに機竜を召喚した。それだけでこの少女が超一級のドラグナイトである証明だ。

 

 

接続(コネクト)開始(オン)

 

 

機竜が開く。展開された無数のパーツがリフィルを包み、高速で連結する。人と竜が一つになった。

 

リフィルの操る機竜は《エクス・ワイアーム》のカスタム機。分厚い装甲を持つ部分は《ワイアーム・カノーネ》と共通だが、決して外見を損ねていない。鋼を機動の邪魔にならないように組み合わせた姿は、装甲機竜(ドラグライド)の登場で廃れた騎士の甲冑のそれだ。

 

右手には基本装備の機竜牙剣(ブレード)よりも長く太い長剣。左手にはその体を超える大きさのタワーシールドが装備され、騎士らしさをより強めていた。

その『騎士らしさ』からリフィルは《ワイアーム・リヒター》と名付けた。

 

 

「小娘。望み通りに遠距離火器は全て取り外した。そのエネルギーは出力に回してある。結果として、制御力が神装機竜並みとなったが猪娘にそんな心配はないだろう」

「いってくれるわね……」

 

 

グレドの声に機竜の軽い操作をしながらリフィルは答えた。操作に応えたリヒターの挙動は軽い動作でありながら、その壊れんばかりのパワーが見え隠れしている。

 

―――素晴らしい。

リヒターの性能にリフィルは笑みを零した。

この男はいかにも武人の容姿をしているが役職は装甲機竜(ドラグライド)の技術者だ。性格に難がありすぎるが、仕事は必要な分を行ってくれるためその部分だけは信頼している。

 

 

「作戦目的は殲滅!一人たりとも逃すな!戦場を切り開くのは、《ワイアーム・カノーネ》だ!グレド、夜架から送られた座標に向けて撃ち込め!」

「了解」

 

 

淡々とした声が返ってきた。と同時に、《ワイアーム・カノーネ》も動いた。改造され、砲と生まれ変わった左腕が構えられる。機竜使い(ドラグナイト)の操作により、脚部と背中に付け加えられた杭打ち機(パイル)が地面に突き刺さり、巨体を固定させる。

 

砲口から唐突に光が生まれる。

一度だけ、ライの深呼吸が聞こえた。

そして―――

 

 

「放てっ!!!」

 

 

機攻殻剣(ソードデバイス)を振りおろし叫ぶと同時に砲撃が打ち出された。

甲高い砲声が轟き、超高出力のエネルギー弾が音速を超えて遥かな標的に向かっていく。

 

次にリフィルが雄叫びを挙げながら突撃する。団員たちもそれに呼応して腹の底から声を振り絞り突撃した。

戦いが……始まった。

 

 

 

◇――――――

 

 

 

共和国軍に所属するナックにとってそれは青天の霹靂だった。

明日に繰り広げるだろう帝国軍の奇襲のために英気を養おうとしたら、突如、自身の身体が吹き飛ばされた。何が起こったのかさっぱり理解できない頭で感じたのは、轟音と閃光だった。

 

僅かに失った意識を取り戻した際に、眼前で広がる光景を見て感じたもの。それは、

 

 

――ここは地獄か?

 

 

そう思えてしまうほどの視覚と聴覚、触覚を蹂躙する地獄が目の前で繰り広げられていた。惨劇の産声は、轟音と爆炎と叫喚がもたらす三重奏。自陣の中は今、余りにも明確な生と死の二色の世界に分かれていた。

 

 

――いや、もしくは天国か?

 

 

地獄ならば、今も天から降り注ぐ光の雨などないはずだ。まして、現実ならば猶更あり得ない。この二つでない以上、天国しか残されていない。

 

光の雨の爆発がナックの至近で起きて、再びその身体を吹き飛ばした。五体がバラバラになりそうな激痛に襲われてなお、意識を失うことはなかった。

 

 

「う……お……あぁ……」

 

 

なんとか立ち上がり、腰に備えていた機攻殻剣(ソードデバイス)を引き抜く。絶え絶えの口調からこぼれ出す詠唱符(パスコード)で愛機である《ドレイク》を召喚、装着した。

 

痛みで苦しむ身体を鞭打って機竜を操作しようとした時、炎から影が飛び出した。長く、鋭い剣であるとわかったのは、自分と同じように満身創痍の仲間を機竜ごと串刺しにした後だった。

 

仲間の死を理解した時、再び炎から影が飛び出した。

壁だ。壁が動いている。

 

 

「あれは……!?いったい……!」

 

 

呟いた時にはもう遅い。

壁がすでに目の前にあった。二十ml(メル)もあった距離が一瞬にして詰められた。機竜が持つ障壁を以ってしても、壁の衝突は防ぐことができない。はねられた衝撃が動力源である幻創機核(フォースコア)に届いたのか、《ドレイク》の機能がダウンする。

 

 

「く……そっ!」

 

 

ゴミ屑のように舞い、歯噛みする中、壁の正体に気付いた。人の形をした、しかし人であろうはずがないシルエット。

 

 

「機竜……!」

 

 

ようやく壁の正体に気付くことができた。そもそもあのような壁、いや、盾を装備できるのは機竜以外に存在しない。背部にはこれでもかと言わんばかりに飛翔機が取り付けられており、瞬間移動と勘違いせんばかりの加速に納得もいった。

 

騎士の如き風貌の機竜は加速したまま、先ほど投げつけた長剣を串刺しにしていた機竜から抜き取る。止まることなく抜いたため、既に絶命した機竜使い(ドラグナイト)の胸から上を割ったがそんなことも興味無しに突き進む。

 

敵陣のど真ん中を堂々と我が物顔で進む姿は己が勝者であると宣言しているように見えた。

その姿にナックは射殺さんばかりに眼光を飛ばした。この陣にいる味方全員がそう感じとったのか、機竜を纏った機竜使い(ドラグナイト)が殺到した。それは蟻が集団で獲物にたかろうとする様子にも見えた。獲物の結末は数の暴力に屈し、身体を無残にバラバラにされる―――それが現実だ。

だが、目の前の現実は裏切った。

 

 

「はぁっ――!!」

 

 

騎士の風貌の機竜が無造作に長剣を横に薙ぐ。それだけで、軌道にあった腕や機竜牙剣(ブレード)を断ち割り、機竜に届かせ破壊する。左腕が振るわれる。装備された巨大な盾は機竜の膂力が加わり、暴力となって装甲機竜(ドラグライド)を粉砕していく。

 

その様は、まさに暴力の嵐。剣の一振り、盾の一撃ごとに竜は屑鉄となり沈黙していく。接近するなど自殺行為。距離をとった《ワイアーム》が機竜息砲(キャノン)を発射しようとした時。

 

《ワイアーム》から何かが飛び出した。槍だ。馬上槍の形をした突撃力を追求した大型のランス。背後から別の機竜が装備した槍で貫いているのだ。その数は二十数機。装甲に帝国の紋章が書かれている。敵だ。嵐から後退しようとした味方たちを槍で襲い掛かっている。

 

《ワイアーム》部隊は、突如奇襲を掛けてきた敵に翻弄されていた。

彼らの技量は決して低いというわけではない。寧ろ、こうして前線に配属されているということ事態、彼らがその場を任せるに足る実力を備えている証明になっている。

 

彼らの纏う《ワイアーム》は溢れんばかりのパワーと厚い装甲と高い機動性を備えた機竜だ。戦場の華である近接戦闘に最も適した性質を持つこの《ワイアーム》を無二の相棒として愛していた。家族の前でこの装甲機竜と共に国を守っていくと誓いもした。

だというのに、だというのに。

 

今、《ワイアーム》を駆り、顔を汗と涙でぐしゃぐしゃにしている姿を見たら家族は何と思うだろう。連携攻撃など行うヒマもない。帝国軍の機竜が放つ烈火の攻撃にただ辛うじて防御し、死への時間を延ばすだけ。

 

 

「誰か……誰か、援軍を……!」

 

 

機竜が持つ通信能力―――竜声を使い、救援を求めようにも返ってくるのは耳をつんざくノイズのみ。

 

―――《ワイバーン》部隊は何をやっているんだ!!

飛翔能力を持つ機竜(ワイバーン)が上空から援護を行ってくれればここまで苦戦することもなかった。上空を見上げると《ワイバーン》部隊は出撃しているのが確認できた。しかし、彼らの意識はこちらに向けられていない。

 

 

「!?」

 

 

突如、《ワイバーン》の一機が背中から火を噴いた。飛行用の飛翔機を潰されたのだ。翼を失った機竜が重力に引き寄せられて落ちる。《ワイバーン》の一機が助けようとその体を支える。だが、荷物を背負った《ワイバーン》の背からも火が出た。

仲間の助けは間に合わない。二機は炎の広がる大地へと墜落した。

 

彼ら《ワイバーン》部隊が上空で相手にしている存在。それは――

 

 

幻神獣(アビス)……?」

 

 

そう思えるほどに背から鬼灯(ほおずき)の如く赤い目を持つ、八つの竜頭を生やした禍々しい黒い機竜だった。

 




色々ツッコミがありますが、設定もちゃんと用意してます。

エイプリルフール中には続きを投稿する予定。

追記(4.1 14時頃)

後編についてですが、エイプリルフール中に投稿することが難しくなりました。どうも本編の方の内容が頭に出てきて、集中出来ないんです。

そのため一旦、間を開けさせていただきます。楽しみにしていた方々申し訳ございません。
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