ナイトメア・オブ・ライ   作:兜割り

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過去編の続きです。

ポセイドンの描写が難しい……!だってこいつ原作でも神装機竜一機に吹き飛ばされて瀕死になるし、例の種子を植え付けられて凶暴化するだけだったからな……。特有の能力って高速回復だけだっけ?まだ二体しか登場してないけど、「あやつは『終焉神獣(ラグナレク)』の中で最弱」と言われかねないぞ。
あっでも火力を持たない《ファフニール》や徒手空拳で戦う《テュポーン》は不利だよな。やっぱり強いんだよなポセイドン。もうちょっとうまい具合に活躍できないかな……。

と考えながら書いた話です。どうぞ!




過去編 -復活2-

 

――『終焉神獣(ラグナレク)』ポセイドン。

 

古代遺跡『遺跡(ルイン)』一つに対し一匹のみ存在するという、通常の幻神獣(アビス)とは巨大さも強さも次元が違う伝説級の怪物であり、街や村、更には小国すらも容易く滅ぼすことが出来る、超常の力を秘めた七匹の幻神獣(アビス)

 

そんな情報が視認した瞬間、ライの頭に()()湧き出た。

 

ポセイドン。『終焉神獣(ラグナレク)』といった姿や言葉を見たことも聞いたこともないのに、復活した姿を見てそれがどのような存在か頭に浮かび上がってきたのだ。

 

その中央にある巨大な頭と、突き出た紫の眼球、海岸一帯を占拠してしまうほどの巨体を見て、

 

 

『馬鹿デカい烏賊(イカ)だな……』

 

 

と若干現実逃避気味に呟いた。

 

『あちらの世界』の友人が読ませてくれたコミックにとても良く似た深海に潜む邪神がいた。その姿を見た主人公や召喚した悪役は、正気を表す数値を減らして混乱、発狂などしてバッドエンドを迎えていた。

 

そういえば母が烏賊を食しているのを宮廷の者たちが見て恐れ戦いていたのを思い出した。母に勧められて、

 

 

『ライ、私の故郷では食用としていたものよ。貴方も食べてみなさい』

『あの母上……。これ魚なんですか?鱗がないんですけど』

『はぁ全く、貴方はいつから物を見た目で判断するような子になったの。ほら、食べてみなさいな。確かに見た目はアレだけど』

『自覚しているなら出さないで下さい。僕はこんな異形の……魚?は食べませんからね』

『ああそんなっ!愛しい息子のためにお抱えの商人を脅迫、頼み込んで届けてもらった母の愛が無下にされるなんてっ……!私の教育が悪かったのかしらっ!?』

『母上、母上、誤魔化せてません。部屋に来る途中に、商人の方々が僕の顔を見るなり、怯えた顔を真顔にして逃げるように帰っていきましたが母上が原因でしたか。それと母上の教育は、世間一般から言って子育てに分類されません。思い返せば、ソルジャー育成法です』

『口煩い子ね。貴方が食べないならあの子に食べさせますか。適当な嘘をつけばコロッと信じてくれそうだし』

『っ!?く、う……うおおおぉぉぉぉぉっっ!!』

『よしよし、いい子ね。あ、言い忘れていたけど口に入れてるの――烏賊(イカ)って言うのだけれど寄生虫がびっしりいるから気を付けてね』

『っっ!!??』

『大丈夫、大丈夫。――よく噛めば死ぬから、私はそうしたわ』

 

 

食べた時の程よい弾力は嫌いにはなれなかったが、次の日は腹痛と高熱で二、三日苦しむことになったのは、今ではいい思い出だ。といっても目の前のコレを食すつもりはないが……。

 

 

――ああもうっ、しっかりしろ!逃避しても、目の前の現実は変わらないっ……!

 

 

頭を軽く振って現実に引き戻させる。ポセイドンは眠りから覚めた際の倦怠を伺えさせないほど活発に暴れている。

 

身体を大きく震わせて張り付く岩を砕き、砂場の地面を太い緑色の触手が、数えるのも馬鹿らしいほどの数を生やして地面を突き破る。海岸に陣取るポセイドンは、己の力を誇示するが如く、触手で大地を掘り起こし、周囲の全てを手当たり次第に粉砕して、その勢いを増していく。

 

そんな凶暴性を見てもライは警戒することすれ、圧倒されることはなかった。

 

 

――かの『天空要塞』よりは小さいし、《ガウェイン》たちよりかは単純だろ。

 

 

ポセイドンは巨大だ。体格の大きさは、相対する者の心理を圧迫してくる。樹木しかり、海原しかり、建築物しかり巨大であるということは相手の小ささを認識させ、『臆』を心に植え付ける。

 

しかし、ポセイドンはライが相手した存在で最も巨大な相手ではない。最大の敵は、その名の通りの天空要塞。吐き出されるのは、一発で広範囲を原子に消滅させる最強の攻撃力()

 

更にここ数ヶ月、ライが追い続けてきたのは不死身の騎士たち。無限の力に支えられ猛威を振るう物どもに比べれば、単純に死んでくれるだけで十分に気が楽になった。

 

 

『貴様如きに立ち止まっている暇などない。――邪魔だ。煩わしいぞ』

 

 

自身へと向けられる声にポセイドンが反応した……ような気だした。

 

烏賊や蛸など頭足類特有のギョロッとした眼球が空中の《クラブ・クリーナー》とライを捉えた。

 

 

「グオオオオォォォォォ!!」

 

 

深海に潜む生物が空を自由に飛ぶ生物を羨み、引きずり込もうとするが如くポセイドンの数十の触手がライに迫ってくる。

 

襲い来る触手にライは下がることなく、正面からのを変形させた《ゼルベリオス・アイン》で打ち潰す。正確無比に連続発射されたハドロンショットは、触手の先から喰い進んで、焼き尽くした。

 

焼かれた怨みを込めたと思わせる程に残った触手が勢いを増して、更には動かさなかった触手を繰り出し迫り続けている。

 

迫り来る触手の第一陣。

これにライは、《クラブ・クリーナー》の背部に装着された《(メーザー)(バイブレーション)(ソード)》を引き抜く。鞘から抜かれた刀身は、手から注がれるエネルギーで高周波振動を発動して真っ赤に染まる。

 

《クラブ・クリーナー》の知覚と同期しているライには、触手の軌道がはっきりと読むことができ、確実な軌跡で切り裂いていく。

 

第一陣の迎撃が終わっても、休む暇を与えずに向かってくる触手の第二陣。

 

それら全てを《ゼルベリオス・アイン》の速連射で潰し、《(メーザー)(バイブレーション)(ソード)》を頭上に放る。

 

その空いた片手で、背中にあるもう一振りの《(メーザー)(バイブレーション)(ソード)》を抜剣。

 

それが高周波振動を行うと同時、放られた《(メーザー)(バイブレーション)(ソード)》との柄尻が繋り、《(ツイン)(メーザー)(バイブレーション)(ソード)》が完成する。

 

迎撃に怒ったのか、より一層勢いと数を増やして放たれる触手は、《ゼルベリオス・アイン》一丁ではさばききれないものとなっていた。それにとうとうライは回避行動を行うことになった。

 

フロートユニットを吹かして自分目掛けて飛び交う無数の触手を回避する。人の反射神経だけでは全てを回避するには困難だが、ライは《クラブ・クリーナー》の知覚に接続している。みすみす捕まるようなことにはない。

 

それでも避け切れないものは、

 

 

『《神虎(シェンフー)》の真似事じゃないが――ッ』

 

 

(ツイン)(メーザー)(バイブレーション)(ソード)》片手に、ガンスピンならぬソードスピンと呼べる曲芸で切り裂いていく。

更に――

 

 

『ふっ――!』

 

 

回転する剣の壁を避け回り込む触手には、両足の《ブレイズルミナス》を刃として脚撃を繰り出す。刈り取るの字が如く、風を切って唸り声を上げる脚撃は、《クラブ・クリーナー》の胴体よりも太い触手を撃退する。

 

しかし、先を失った触手は瞬時に生え、諦めるような姿勢は見せない。巻き取って、握り潰そうとしているのだろうが高周波振動の出力、《ブレイズルミナス》の出力を上昇させていく。触れられても、動かせばバターのように切り裂けた。

 

 

――しかしこの数は面倒だ。

 

 

傍から見れば、騎士と怪物の戦いには絶望的な趨勢は歴然だった。絶え間なく攻め立ててくるポセイドンの触手を迎撃しても、切り裂かれた触手は切断面を一瞬だけ見せて再生してしまう。

 

まるで泥沼に縦穴を穿とうとしているようなもの。《クラブ・クリーナー》のもたらす攻撃では、再生のペースに追いつかない。

 

 

――《蒼月》ならなんとかなったか――?

 

 

ライの愛機を再現した機動兵器。その機攻殻剣(ソード・デバイス)は、《クラブ・クリーナー》の予備スペースに差し込まれている。

 

《蒼月》には、対象の一部に接触してエネルギーを流し込む輻射波動機構の装備がある。破壊力は、改修前の《月下・先型》の輻射波動よりも強力。それでポセイドンの触手の一本にでも打ち込めば、神装の強化もあって、膨大な輻射波動がこの馬鹿デカい図体に駆け巡り弾き飛ばすことが可能だ。

 

一撃。たった一撃で倒せる。しかし、

 

 

――そんな乗り換える余裕は流石にない……。

 

 

一旦下がって《蒼月》を召喚しようにも、ポセイドンが標的とする相手はライ一人だけ。そのため目視できる範囲でも既に数百本を超えている触手が一斉に迫ってきていた。迎撃と回避を繰り返すが四方八方からの追い詰めてくる触手は、その二つ以外の動作を許してはくれないほどに、勢いを増してきた。

 

格上殺し(ジャイアントキリング)は、《蒼月》の専売特許。

 

《クラブ・クリーナー》の専売特許とは、所有する多彩な武装によってあらゆる状況で戦えることができること。

 

この触手の大群も武装と《クラブ・クリーナー》自身の性能のお蔭で対処できるのだ。しかし、防衛までが《クラブ・クリーナー》の限界。手数では《蒼月》に勝るが、攻撃による爆発力には劣る。

 

このままだらだらと持久戦に持ち込まれてしまえば、連戦の続いているライには限りなく不利。戦闘を行いながら、この状況を打破することにライは頭の回転速度を上げた。

 

ポセイドンは終焉神獣(ラグナレク)と呼ばれる強力な個体。しかし、幻神獣(アビス)という種からは外れていない。だとしたら心臓部ともいえる(コア)が必ず存在するはずだ。

 

今のところ、《ゼルベリオス・アイン》の射撃で核の位置は大体補足した。後は、どうやってその核を破壊するか――。

 

方法は二つ。

 

一つ、再生も間に合わないほどの連撃を重ねて高速の削り取り、(コア)を破壊する。

 

二つ、再生など知ったことかと(コア)すら巻き込んで跡形もなく大火力で消し飛ばす。

 

案としては、『ザ・ゼロ』をぶつけるという手もあった。

全てを無に還す力の『ザ・ゼロ』は、人間などの生物に軽く触れさせれば、意識というエネルギーを失って気を失う。

 

しかし、ポセイドンの巨体に『ザ・ゼロ』が通用するのか?

真っ当な生物とは思えない幻神獣(アビス)にどのような効果が生まれるのか?

そして何より、今現在、休みなく戦闘で疲弊しきった身体では『ザ・ゼロ』は一回しか発動できないほどに消耗している。

 

ポセイドンを『ザ・ゼロ』で停止させることが出来ても、体内に取り込まれている《ガウェイン》にも効果はあるのか?あれば御の字だが、もし効果がなければ破壊することが不可能となるなどの不安要素が多すぎた。

 

結局は先に挙げた二つに絞られる。

 

(コア)に辿り着くまで高速連撃を永久に放つなどたった数ヶ月で目覚めて操縦技術が未熟のライには不可能だ。

 

ならば残されたのは――

 

 

『さっさと《ガウェイン》を吐き出してもらうぞ。貴様には興味が無いんだ』

 

 

《ゼルベリオス・ツヴァイ》に変形させ、取り込まれている《ガウェイン》も破壊するつもりで撃つ。吐き出された一点集中のハドロン砲は、なるべく重ねるように射線上に捉えた触手も貫通、減速することなくポセイドンの頭部に三発、両目に一発ずつ、口に二発直撃した。

 

ポセイドンを貫通することはなかったが、命中した箇所はその熱量で焼き払い、眼球は破裂し、口は焼けただれる成果を上げた。

 

 

「グゴゴオオオオォォォォォ!!」

 

 

苦痛に塗れた絶叫を上げるポセイドン。しかし、ライの手は休まることはなかった。

 

顔を潰されながらもライと《クラブ・クリーナー》を握り潰そうと迫る触手。それらを《(ツイン)(メーザー)(バイブレーション)(ソード)》片手に《ブレイズルミナス》を展開する両脚を忙しなく動かして、舞踊のように空を翔ける。

 

 

『――《ゼルベリオス》。それはギリシア神話に登場する犬の怪物、ケルベロスのドイツ語のスペルを無理矢理アルファベット読みしたものだ』

 

 

ポセイドンに語り掛けるように静かに呟くライ。

《クラブ・クリーナー》が握る《ゼルベリオス・ツヴァイ》の節々にスパークが走って、銃口から砲撃の残滓を零しつつも、その姿を変えていく。

 

 

『ケルベロスは冥府の入り口を守護する番犬であり、冥府の神ハデスの忠実なる僕。冥界にやって来た亡者の場合にはそのまま冥界へ通すが、冥界から逃げ出そうとする亡者は捕らえられ貪り食らう。外見的特徴として竜の尾と蛇のたてがみを持つが、最たるものとして三つの首を持つ姿で描かれる』

 

 

それと同時、現在のライの疲労とは反対に、胸部装甲の紋章は、しかし真っ赤に輝き、フレアすらも起こし始める。

 

 

『この《ゼルベリオス》もそう。三つの銃砲()となっている。連射可能のハドロンショットを放つ《ゼルベリオス・アイン()》。貫通力と長距離射撃に長けた《ゼルベリオス・ツヴァイ()》。そして最後、《ゼルベリオス・ドライ()》は――』

 

 

《ゼルベリオス・ツヴァイ》は銃身を包む装甲を展開。そのフレームを伸ばして広げた姿を構築する。さながら、口を大きく開け、その牙を獲物に向けた狼の頭蓋骨にも見える全貌。

 

相手に畏怖を与える長巨砲の姿でありながら、とても砲撃が出来るとは思えない脆さ剥き出しの銃。それが――《ゼルベリオス・ドライ()》。

 

 

『《ゼルベリオス》そのものはただでさえ変形機能を取り込んで、フレームも装甲も阻害とならないようにギリギリまで考えて設計している。要は整備士泣かせの武器だ。この《ゼルベリオス・ドライ》は、装甲とフレームを限界にまで広げてそれら全てで一つのハドロン砲を発射する。――その破壊力はカールレオン級すらも撃沈させた』

 

 

しかし、それだけではポセイドンを倒す火力には不安がある。破壊力を上乗せするために、

 

 

『《無色の魔導器(ロスト・カラーズ)》』

 

 

神装の使用によって、胸部の紋章の光が強くなる。破壊に通ずるイメージを脳裏に描いていき、破壊の色に染まるエデンバイタルの力を《ゼルベリオス・ドライ》に注ぎ込むことに集中する。

 

溜めこまれる破壊力は、とても踏ん張りの利かない空中では撃てないほどに。

 

機竜咆哮(ハウリングロア)》で襲ってくる触手を弾き飛ばし、生まれた隙をくぐり抜けて大地に激突するかのように着地。急激に体重が増えたような力みで両脚を埋めていく。片手で握る《ゼルベリオス・ドライ》の長砲は赤と黒の光を溜め込んでいる。強く、強く、より強く――。

 

 

『――ポセイドン。貴様の名はケルベロスの主人、ハデスの兄と同じ名前だ。『ケルベロス(番犬)』が『ポセイドン(海神)』を喰らう――』

 

 

(ツイン)(メーザー)(バイブレーション)(ソード)》を地面に突き刺して、両の手で抱えるように《ゼルベリオス・ドライ》を構える。

 

その照準の先は無論、ポセイドン。

 

 

「グゴゴオオオオォォォォォ!!」

 

 

ポセイドンも黙って発射を許すような真似はしなかった。耳障りは叫び声を上げて、海から大地へ、数百の触手が飛び出していく。

 

迎えるようにライは仮面の下で微笑み――

 

 

『これは中々面白い巡り合わせと思わないか?』

 

 

神ですら死からは逃れることは出来ないと宣言するように語り掛けた。

 

 

――――――!!!

 

 

ポセイドンの絶叫に負けず劣らずの砲音とともに《ゼルベリオス・ドライ》が射撃された。それに伴い、轟音が大地を跳ね上げ、背後の地面を巻き上がらせ、膨れ上がったような印象を見せる。

 

《クラブ・クリーナー》の背後の大地が砲撃反動で砕け散ったのだ。

 

その威力を持って、たった一発限りのシュタルケハドロン砲は景色を包むように広がり、収束した。大地から海を食い破る熱線の砲撃として。

 

その威力の代償に、赤と黒の光を撃ちだした装甲とフレームは負荷に耐えることができず、打ち砕けていった。

 

膨大な破壊力を誇る砲撃に迫り来る触手は全て抗うすべなく飲み込まれる。巨体であるポセイドンに直進する砲撃から免れる機敏さなど存在せずに、

 

 

「ギアアア――――」

 

 

羽虫の断末魔のように短い悲鳴だけを残し、口半分から上を飲み込まれて跡形もなく消滅いく姿に――

 

 

上出来(ヘルリッヒ)――!』

 

 

確かな手ごたえで叫んだ。

 

 

 

 

 

――◆◆◆◆◆――

 

 

 

 

 

『ふぅ――』

 

 

巨体の半分を消し飛ばされたポセイドンは傷も再生することなく沈黙している。あれほど猛威を奮っていた触手も全て辺りに投げ出されて、ぴくりとも動いていない。

 

その姿にライは、一時の安堵を詰め込んだ吐息を仮面の下で漏らした。

 

連戦、《ゼルベリオス・ドライ》の反動、神装の使用で疲労はあるが動けないというほどではない。この分ならば、『ザ・ゼロ』の使用と破壊するための一撃を繰り出せそうだ。

 

構えられていた《ゼルベリオス・ドライ》を下げる。功労者である番犬は銃把と銃床を残し、それ以外は砕け散ったスクラップ同然に成り下がっている。

 

 

――相変わらず凄まじい……。

 

 

巨体の半分を消し飛ばされたポセイドンと背後の砕け散った大地を見て、ライは神装の強化があったとがいえ、《ゼルベリオス・ドライ》の破壊力――《モルドレッド》の四連ハドロン砲と威力だけなら同等という意味に改めて戦いていた。

 

『こちらの世界』での使用はこれが初、『あちらの世界』では片手で数える程度しか使用したことがない。

 

ライが(ナイト)(メア)(フレーム)――《クラブ・クリーナー》に搭乗していた際の任務は汚れ仕事が基本だった。表沙汰にしない、静かに敢行される作業に《ゼルベリオス・ドライ》の出番がなかったこと。

 

反動による機体の負荷、燃費の悪さ、一回使用すれば《ゼルベリオス》そのものが破壊されるなどデメリットが多すぎるために活躍に恵まれることがなかった。しかし――

 

 

『《無色の魔導器(ロスト・カラーズ)》』

 

 

神装を発動させると砕け散った《ゼルベリオス》が《ゼルベリオス・ドライ》の姿で瞬時に回復した。試しに、《ゼルベリオス・アイン》と《ゼルベリオス・ツヴァイ》に変形させ、一発ずつポセイドンの亡骸へと発射。

 

変形もスムーズに行われ、暴発や照準ミスもなくハドロンショットとハドロンブラスターは命中した。

 

 

――便利過ぎる神装だ……。

 

 

神装の活用で殆どの問題が解消されてしまった。

 

そもそも携帯でき、それも取り回しが効く装備で四連ハドロン砲が発射できるのだ。それだけで、周りからは贅沢と言われても文句は言えないだろう。

 

 

『さて、残りも吹き飛ばすか――』

 

 

悠長に時間をかけている場合ではない。

 

今はまだ問題ないが、ポセイドンの復活に気付いた者は少なからずいるだろう。もし、軍の人間がこの場に来て、自身の姿を見られるといった面倒は避けたい。ことによっては口封じも辞さなくなる。

 

余計な手間がかかったが、今回の目的は《ガウェイン》の破壊。

 

迅速で事を進めようと、《ガウェイン》諸共取り込んだポセイドンの死骸を吹き飛ばそうと《ゼルベリオス・ドライ》に変形させようとした。

 

その時――

 

グシャアアッ!

 

ポセイドンの死骸から何かが生え出た。いや、疑問に持つ余地すらない。黄金と漆黒の装甲、操縦者の体を余さず粘液で濡らしている――《ガウェイン》だった。

 

取り込まれている最中に回復したのか失った片腕は元の形に戻っていた。この分なら下半身も生えているだろうが、上半身のみを外界に出しただけで確認することができない。

 

《ガウェイン》は動かない。ようやく解放されたのだ。フロートユニットを動かすなりなんなりして脱出すればいいのに下半身を埋めたままだ。

 

意味、理由は分からない。だが、《ガウェイン》から滲み出る周囲の景色すらも歪ませる膨大なエネルギーの波動に、ライの背筋に怖気が走る。

一見静かな態勢は、ただ引き出している力を溜め込んでいるだけだと悟ったから。あれは予兆、想像もつかない最悪の具現を行おうとしている。

今この瞬間にも、何が起こるか分からない。そして、起こってからでは全てが遅い。ただその一点だけは理解できたからこそ……。

 

 

――仕留めるっ!!このままでは()()()っ!

 

 

頭が結論を出した時には、体が迷わず《ゼルベリオス・ツヴァイ》の引き金に指を欠けていた。姿を現した以上、大火力は必要ない。

 

攻防が発生する前の先制により、戦闘そのものの因果を摘み取る。先手必勝、これまで積んできた戦闘哲学に従っての決断でもあった。事実、今の《ガウェイン》はこれ以上なく隙だらけだ。好機として狙い撃たぬべき理由はない。

 

《ゼルベリオス・ツヴァイ》がハドロンブラスターをその銃口から発射して、《ガウェイン》を貫かんばかりに迫っていく。

 

ハドロンブラスターが《ガウェイン》を貫通……しなかった。

 

 

『なに……っ!?』

 

 

思い描いていた未来と現実が食い違ったことにライは驚きの声を上げた。

 

《ガウェイン》は防御や回避、肩部のハドロン砲で迎撃といった素振りすら見せていない。ただ突如、ハドロンブラスターが直撃する寸前の間に何かが現れたのだ。

 

赤く透き通った六角形の障壁。それが幾つも現れ、密集することで壁となり《ガウェイン》の身を護ったのだ。

 

現れた赤い障壁の正体をライは良く知っていた。

 

 

『絶対守護領域……っ!?それは《蜃気楼》しか出来ないはずっ!《ドルイド》を積んでいるとはいえどうやって――?』

 

 

絶対守護領域は、(ナイト)(メア)(フレーム)――《蜃気楼》が所有する武装。それを発生させる機能の要は、《ガウェイン》にも搭載されているシステム《ドルイド》。しかし、《ガウェイン》では機体スペックが足りなく、万全の性能を発揮するにしても『彼』の操作が……。

 

そこまで考えたライの頭に稲妻のような衝撃が頭に駆け巡った。

 

自分はどこかで奴らはただ暴れるだけの獣だと思い込んでいたのではないか?

 

奴らもまた人間と同じく危機的状況に陥れば、自身の能力をフルに活用して新しい技術を開拓するのではないか?

 

そんな十分にあり得る説をライは見逃していた。いや、目を背けていたのが正しいのだろう。

 

ただでさえ既存の装甲機竜(ドラグライド)を圧倒的に凌駕し、不死身の怪物である彼らが『成長』するなど想像したくもなかったのだ。

 

目の前で起きた現実は、ライに恐怖となって襲い掛かってきた。

 

心中に湧き出た恐怖を消し去ろうとする一心で《ゼルベリオス・ドライ》を展開した時には――すでに手遅れだった。

 

今まで沈黙を保っていた《ガウェイン》が動き出す。

 

下半身を埋めたまま両手をポセイドンの死骸へと突き刺し、

 

 

『――ッ!』

 

 

抉り抜いたのは人頭ほどの肉塊。《ガウェイン》の両手に包まれるソレは、外気に晒されて不気味な輝きを映している。

 

 

――あれは……ポセイドンの(コア)か!?

 

 

あれだけ小さいなものが、ポセイドンの巨体を動かしていたことにも驚いたが、それよりも驚愕したのが吹き飛ばしたはずの(コア)が何故あるのか。

 

位置を確認し、そこを中心にして《ゼルベリオス・ドライ》を撃った。まず間違いなく吹き飛ばしたはず。どうしてそんなところに移動しているのだ?

 

だが、考えてみれば簡単なことだ。

 

内部に取り込まれていた《ガウェイン》が動かしたのだ。破壊を防ぐために、元の位置からずらした。その意味からポセイドンに囚われていたのではない。寄生虫のように住み着いていたのだ。

 

 

ィイィィイイイイイイ!

 

 

突如、不協和音が鳴り響く。発生源たる《ガウェイン》はどうやって音を出しているかは分からないが間違いなくこの耳障りな音を出していた。

 

同時に、カッ!とポセイドンの(コア)と《ガウェイン》の紋章が輝き始める。白、いや無色の光が両手から零れ沿岸一帯を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

――◆◆◆◆◆――

 

 

 

 

 

この直後、リドネス海沿岸後方に広がる森林地帯に赤と黒の巨大な柱が突き刺さった。

 

威力は人間の想像できるスケールを遥かに超えており、《クラブ・クリーナー》は一瞬で砕かれた。

 

赤黒の一柱は森林地区の木々を根こそぎ灰も残さず消滅させ、断音と共に地殻を穿ち抜く。

 

初めは、何も起きなかった。ただ軽い震動と、静寂が存在しただけだった。

 

 

「■■■■■■■■■■――――――――――!!!!!!」

 

 

刹那の後、大地が悲鳴を叫び上げた。

 

柱の着弾地点から半径六百ml(メル)。そこに、天災の断末魔を思わせる激音が走ったのだ。大地が下から上へと膨れ上がり、地表にあった全てが震動で爆ぜた。大気は震えて叫び、空中に雷光現象を誕生させる。

 

そして、震動と雷光が最高潮(ピーク)に達した時――。

 

半径六百ml(メル)の大地が、消失した。撃ち込まれた柱が進むのを止めたため、そのエネルギーが地中深くで光の大爆発となった結果として。

 

何もかもが光に飲み込まれ、震動に散る音は、神鳴る響きに等しい。

 

神が起こしたと錯覚する現象を上空から見下ろすモノがいた。

 

そのモノの足は深海に潜む烏賊の如く触手を生やすが、その数は数百を軽く凌駕する。

 

巨大な触手の足に支えられるその形は、人の形をしていた。大数の触手に支えられる人型の上半身も触手と同じく粘液に濡れた緑の肉塊で形成されている。さらには、その巨体を中に浮かせる六つの翼。

 

――ポセイドンの下半身に肉で作られた(ナイト)(メア)(フレーム)《ガウェイン》の上半身が生えていた。

 

 




後編に続くといったな……あれは嘘だ。
次回こそ後編に続きます。

最後の奴はポセイドンを強力にしようと考えたら頭にパッと出て、次の瞬間『P○P○W○』のウミギシくんに変換された私は古いのだろうか。



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