ナイトメア・オブ・ライ   作:兜割り

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どうも皆さん一月振りです。

ここまで時間がかかってしまったのは、実はネタを溜め込んでいたノートを紛失したためで……。多分、大掃除をしたとき一緒に捨ててしまったんだと思うんだよなぁ。というかそうじゃないと、私の黒歴史ノートが明るみに、やばい!

今回で、過去編を終えてようやく本編に戻ります。





過去編 ―復活3―

 

 

――何が……起こった……?

 

 

目覚め、霞み呆ける視界と思考でライは己の現状を自身に問うた。

 

どうやら寝ていた……いや気絶してしまったらしい。鉛の鎧を着込んだような疲労が抜けきっていないから時間は大して経っていないようだ。

 

いやそもそもどうして気絶などしていたのだ?

 

その理由を探るため記憶を掘り起こそうとするが、纏わりつく疲労と未だに呆ける頭が阻害する。しゃっきとしようと顔を叩こうとして、

 

 

――腕が……ないっ!?!?

 

 

繋がっているはずの両手からの反応はなく、それどころか両脚の感覚もなかった。四肢の欠損からの恐怖に背筋が凍り頭が急激に覚醒した。

 

ライの四肢は――あった。

 

装甲衣に包まれた四肢、両手は《クラブ・クリーナー》の操縦桿を強く握り締め、両脚も《クラブ・クリーナー》の脚部装甲に包まれて無事だった。しかし、無傷のライとは反対に愛機である《クラブ・クリーナー》の状態は凄惨を極めていた。

 

確認したところ両手は肩すら一緒に吹き飛び、両足もライの脚を包んでいる箇所ギリギリ下まで消失。背中から地面に激突したためフロートユニットも大破。過剰損害により《クラブ・クリーナー》はまさしく瀕死の有様だった。頭部にそそり立つ蒼角も砕け散っていたのが存外ショックだ。

 

四肢が損失したと錯覚したのは、仮面と装甲衣が《クラブ・クリーナー》との接続を続けていたから。《クラブ・クリーナー》の損傷を自身の損傷と勘違いしたためライは無傷なままである。

 

そこでようやくライは自身がどうしてこのような状態になったのかを思い出した。

 

空を見上げれば邪神と表現されて相違ない巨体が轟臨している。

 

ポセイドンの死骸から這い出た《ガウェイン》。奴が突如行った不可解なポセイドンの(コア)と紋章――十中八九神装の使用によって――の輝きは圧倒的であり、その光量に反射的に目を閉じてしまうほどだった。仮面のお蔭である程度遮断してくれたが、それでも目を潰されんと思わんばかりの光の大瀑布だった。

 

その光が溢れると共に上半分が消滅し一度は完全に沈黙したポセイドン、正確には残された下半身が大きく震動した。だらりと地面に垂れた触手が、活力を取り戻し大きくうねりを上げる。そして、無くなった上半身も再生し始め、未だに輝く(コア)を包む《ガウェイン》が肉に飲み込んだ。

 

《ガウェイン》によって(コア)の破壊を免れ、消滅した上半身は《無色の魔導器(ロスト・カラーズ)》の効果で超高速回復を行い再生を始める。

 

ポセイドンの復活。しかし――目の前で行われたのはそんな生温いものではなかった。再生したポセイドンが形取った姿を見て背筋を駆け巡った怖気、心中の恐怖すらも忘れて魅入ってしまっていた。それほどまでにとんでもないことだったから。

 

数百を超える巨大な触手の足に支えられるその形は、かつての烏賊を思わせる形ではなかった。新たに作り上げられた上半身は人型。ポセイドンの肉で構成された《ガウェイン》の上半身。

 

名付けるならば――《ガウェイン・ポセイドン》。

 

新たなる姿での復活に魅入ってしまったライの隙に《ガウェイン・ポセイドン》がとった行動も常識の範疇を超えていた。

 

下半身に存在する夥しい数の触手全てが地面を叩くことで駆使された大ジャンプ。

 

島一個に匹敵する巨体が空中に浮く光景は非現実的過ぎたのだ。

 

そこで《ガウェイン・ポセイドン》が行おうとしていたことに直感で気付いたライは即座にその場から離れた。念には念を入れてルミナスコーンで《クラブ・クリーナー》の全身を防御させて。

 

次の瞬間、背後で起こった閃光。

 

《ガウェイン・ポセイドン》がそっくりそのまま再現した肩部のハドロン砲が一門発射された結果がこの様。

 

直撃を免れたというのに襲い掛かってきたハドロン砲の衝撃だけで、ルミナスコーンは硝子が砕け散る光景を思わせるようにあっさりと崩壊。発生部である四肢も限界を超えたために同じ道を辿ることとなった。

 

達磨となった《クラブ・クリーナー》は防ぎきれなかった衝撃をその身に受け、紙屑のように空を舞い、地面へと激突して今に至るのだ。

 

 

 

―◆◆◆◆◆―

 

 

 

《ガウェイン》は新たに構築された自身を模した上半身と膨大な数の触手を生やす下半身との丁度間といえる部分に存在していた。三百六十度全方位、ただただ嫌悪感を湧き立たせる緑の肉に包まれるのは人間の精神なら発狂の道を進ませるが、兵器である己にはそんな感覚とは無縁だった。

 

『彼の者』が何処にいるのかは未だに特定出来ていない。

 

己の個性として内蔵されたドルイドシステム。その性能を発揮すれば、幻創機核(フォース・コア)を内蔵する機竜、万物の根源に繋がる同胞の探知も容易く、先ほどの砲撃で騒ぎ立てている小動物の数すら把握可能。時間をかけ、捉え損なうことなど自身の性能に賭けてあり得ない。

 

しかしそのあり得ないことが起こってしまっている。原因は判明している。今、自身に両手に押さえられている肉塊。ポセイドンの(コア)が強く激しく脈打って、抵抗していた。

 

取り込まれている最中にドルイドシステムが解析したことだが幻神獣(アビス)は特定の音に従う習性を備えている。ドルイドシステムならばその音の解析、再現が可能。ポセイドンなどの終焉神獣(ラグナレク)には専用のものが必要なようだが、余裕はない。ポセイドンと『彼の者』との戦力から倒されるのは時間の問題、ただ強力な音で代用する他ない。

 

ドルイドシステムを駆使し、ポセイドンの(コア)捜索と幻神獣(アビス)の支配下に置く音、更にその強力な音を解析が終わった時、ポセイドンの上半身が吹き飛んだ。

 

『彼の者』が自身を探り当てる前に急いで行動を起こした。

 

神装を使用し(コア)に力を注ぐことで瀕死の状態だったポセイドンを復活させて、解析した強力な音を響かせポセイドンをコントロールする。しかし、その計画も完全には成功しなかった。

 

本来なら完全に支配下にすることでポセイドンの巨体を下半身も含めて自身の姿に再現しようとするはずだったが、音色が専用のものでなかったこと、それによるポセイドンの反発と生命力を侮っていたために上半身のみの再現となった。

 

不完全ながらも再現された自身の姿に『彼の者』が硬直する隙も逃さず、触手による跳躍、再現されたハドロン砲を放とうとした。だが、ここでもポセイドンの抵抗によりハドロン砲は一門しか撃てず、出力も三割程度。

 

神装で引き出した膨大なエネルギーをポセイドンの肉体で再現された砲口から撃ったため吹き飛んだがポセイドン自前の再生力で修復させる。

 

今、《ガウェイン》は神装をポセイドンの体に流し込むこととドルイドシステムの演算処理に回している。

 

ポセイドンの抵抗は未だに激しく、完璧に指揮下に置くには時間がかかる。

 

『彼の者』はまだ生きている。先ほどの砲撃で直撃は免れたようだが衝撃から逃れられず、完全な防御態勢をとっても四肢が砕かれた。それだけ、あくまでそれだけ。自分たちのような存在に常識は当てはまらない。確実に破壊し機能停止を確認しなければ。

 

探査能力を上げるためにポセイドンの肉体で再現されたフロートユニット――正確には形だけ再現し端から神装のエネルギーを噴射して浮いている――のエネルギーをドルイドシステムに回す。

 

浮力を失った巨体は当然の如く地上に落下する。しかし、島一つに例えられる巨体が落ちるのは、それだけで空気を揺るがし、大地に足をつけた時にはそれだけで地震と錯覚させる地響きを奏でた。

 

何処にいる。

 

きっとこの広がる森林の中。そこで息をつき、立て直しを図っているだろう。しかし、神装の使用をしたならば、それが終わりの合図だ。エネルギー検知ならば補足は簡単、現在の探知よりも断然容易だ。

 

だがしかし、《ガウェイン》に探し出すまで手を抜くという慢心も容赦もなかった。

 

未だに抵抗される中、コントロール下にある触手の十数本を上げさせ、神装のエネルギーを注ぐ。すると触手の先端が上下に割れ、その奥には光が収束し始める。赤と黒も混ぜ合わせた禍々しいエネルギーを。

 

エネルギーを溜め込んだ触手全てが狙う先は、緑が広がる大地。上空から見つめても生い茂った木々の葉で地面すら見えないほどに濃い。草木は力強く生え、それに負けず劣らず獣や虫が生きているのだろう。

 

そんな現実すら浮かぶ余地なく、触手からのハドロンブラスター、ハドロンショットが絨毯爆撃を開始した。

 

 

 

―◆◆◆◆◆―

 

 

 

空からの攻撃にライは“出鱈目”としか感想を思い浮かべられなかった。

 

大地に一直線に突き刺さり途切れることなく触手の動きに合わせて削っていく赤黒の光柱となったハドロンブラスター。機関銃の勢いで撃ち出され休むことなく緑の地を虫食いにしていくハドロンショット。

 

常人にならいずれ降り注ぐかもしれない絨毯爆撃の恐怖から居ても立っても居られなくなり、急いでその場から逃げ出すだろう。しかしそれが相手の狙いであり、ある一つの確信をライは得ていた。

 

――まだ僕の居場所を把握していないようだ。

 

攻撃は全て身を潜める場とは外れて自然破壊を進めているだけ。奴らに嬲るといった無駄な行動を起こさない。そんなことはただ時間とエネルギーの無駄でしかない。しかし、

 

――時間の問題、だな。

 

触手から撃たれるハドロンブラスターとハドロンショットは、確実に隠れ蓑となっている森を削っている。もって五分…いや三分か。

 

特にハドロンショットがヤバい。大きさが優に《クラブ・クリーナー》を飲み込めるサイズなのだ。そんなものが連射して放たれているため、一時間もしない内に森そのものが消滅する。

 

ハドロンブラスターも無視できない。音からして着弾もだが、通過の衝撃波でさえ吹き飛ばされてしまう。

 

厄介だな、とライは呟き、砕かれた愛機の状態を見た。徐々に距離を狭め近づいてくる着弾音と衝撃を感じながら、

 

 

『全く、……この世界に来て早数ヶ月。改めて戦いというのはしんどいだけっていうのが解るよ』

 

 

戦いは疲れる。特に戦闘とならば猶更だ。

 

なのに自分の人生は血と鋼、戦争の色が多くを締めている。

 

戦いというしんどい物をどうして自分は選んだ?

 

戦闘で疲弊し、弱まる闘志を蘇らすためにライは自身の過去――戦いに赴いた理由を探る。

 

最初に戦う決意をしたのは、母と妹と共に暮らせる世界を創ろうとした時だった。恐らくあれが自身にとっての最高潮ともいえる時期だった。

 

あの時は――何でも出来た。

 

腹違いとはいえ実の兄二人を殺した時に浮かぶべき感情、そんなものはなかった。ただ道中に転がる邪魔な石ころを払った時と似たような感じだった気がする。

 

皇帝である父の死には最後に投げかけられた言葉から……”もっと話をしておくべきだったか?"と浮かんだがあくまでそれだけだった。

 

皇帝になった自分はそれからは戦いの連続だったがそこには確かな充実があった。政治も軍事も積極的に学び、国民を脅かす蛮族との戦争を行えたのは、守るべき幸いがあったからだ。結局は運命によって崩壊することとなったが。

 

次に戦う決意をしたのが記憶を取り戻すため。失った記憶を取り戻すまで死ぬことは出来ないと胸に抱き戦った。

 

三度目は記憶を取り戻し、唯一自分だけに素顔を曝け出してくれた友人を支えたいために戦った。

 

四度目は記憶を封印された時。囚われ、皇帝時代以外の記憶を封印された。幸いの根源であった母も妹も父から託された守るべき国、国民も失った自分が戦いを決意したのは、それら全ての鎮魂を護るため。

 

五度目は封印を解かれ奪われた記憶を取り戻した時。全てを失ってなお、戦い続けるといった親友を今度こそ支え抜くため。

 

そこから先は――解らない。

 

先に記憶があるのだ。だが、映像は暗幕がかけられたように真っ黒で覗くことができなく、目覚めて数ヶ月の間に行われた戦いの記憶へと繋がってしまう。

 

 

『なぁ、君たちはどうして生まれた?どうして(ナイト)(メア)(フレーム)の技術を持っている?僕も含めて君たちは……どうしてこの世界にいるんだ?』

 

 

木々の隙間から《ガウェイン・ポセイドン》の姿を伺う。しかし、小さな問い掛けは無論届くことなく、ライの居場所を炙り出すための猛威が振るわれるだけだった。

 

 

『結局は戦い続けなければならないか……』

 

 

あれほどの存在が解き放たれればそれこそ人間世界が滅びかねない。それに奴らの同類はまだいる。特に《紅蓮二式》と《ランスロット》が進化し、かの形態になればそれこそ手に負えなくなる。

 

そうだ。戦わなければ、戦わなければならない。

 

 

『こうピンとこない理由で戦うのもそろそろ限界に近いな』

 

 

乾ききった笑みを浮かべ、ライは《クラブ・クリーナー》から降りる。

 

仮面と装甲衣の接続も途切れたため、体が硬直するがそれも僅かなこと。すぐに感覚は回復し、自身の体が身体として整えられる。

 

《クラブ・クリーナー》に差し込まれた刀型の機攻殻剣(ソード・デバイス)を引き抜いた。

 

 

『起動せよ、朔と望の先駆けとなる青の志士。遍く敵を、害悪を極意の一撃をもって打ち砕け《月下・先型》』

 

 

紡がれる詠唱符(パスコード)にライのもう一機の愛機が空間を超えて呼び出される。更に――

 

 

『覚醒せよ、月夜に輝く青の戦士。紅蓮と白炎を超えし身となるため、月満ちる夜に蒼となれ《蒼月》』

 

 

続いて重ねられた詠唱符(パスコード)が《月下・先型》が生まれ変わった《蒼月》へ乗り込む。

 

 

接続(コネクト)開始(オン)。――さぁ、邪神殺しを始めよう』

 

 

 

―◆◆◆◆◆―

 

 

 

《ガウェイン》は爆撃の行く先でエネルギーの反応を検知した。

 

平行使用を行っているため精度を下がっているが、その状態でも掴み取れる大きなエネルギー。そして視線を走らせた《ガウェイン》は、一つの異常を見た。足場の森、その一部からエネルギー、いや『エデンバイタル』の力が急激に増大している。

 

それも二つ。どちらも《クラブ・クリーナー》のものではない。ということは待機させ、《蒼月》に乗り込んだということか。

 

一つは人型で胸部を中心として体に循環している。これは《蒼月》だと分かる。

 

二つ目は人型の左腕。まるで弾ける火花を思わせるほど激しいエネルギーが溜め込まれ、

 

 

『唸れ――滅爪砲撃左腕部ッッ!!!』

 

 

『彼の者』の雄叫びを捉えた瞬間。眼下、森から紅蓮が襲い掛かってきた。

 

 

 

―◆◆◆◆◆―

 

 

 

抉り穿たれた森が、これまで受けてきた痛みの絶叫を上げたと思わせるほどの放射音が生まれた。下から空へ叫び上げる悲鳴が突きあがった。

 

それと同時に噴き上げられる木屑、岩石、砂煙が()()()()砕け散る。悲鳴は止まらず大地を破壊し、震動しながら膨らみ、そのたびに物質が砂煙が弾け飛ぶ。

 

そして森から飛び出たのは、手。

 

赤いスパークで構成される肉とそこから透けて見える無色の骨で形取られる手。

 

島一個分の巨体を誇る《ガウェイン・ポセイドン》を握り潰せる手。

 

鋭利な三本の指だけを持った巨大な魔手だ。

 

 

 

―◆◆◆◆◆―

 

 

 

迫り来る魔手を《ガウェイン》はドルイドシステムで解析した。ポセイドンと融合した身と同等の規模の手を避けることは既に間に合わない。そのためどう防御するのか対策を立てようとする。

 

魔手の骨は『エデンバイタル』の力で構成されたものと解析した。これを芯とすることでこの巨大な魔手を作り上げている。だが、これに関しては特に問題ない。

 

問題は芯を覆うスパークの皮。これは自分やポセイドンといった幻獣神(アビス)、いや生命にとって必殺の威力を持っている。直撃どころかかすっただけでも致命傷となる猛毒の類。

 

そのことを理解し、避ける時間もない《ガウェイン》がとった行動は最適解だった。

 

 

――――――ッッッ!!!!

 

 

広げられる魔手が正面に立ち塞がる存在とぶつかり、激しいスパークとより大きくなる激音が空中で広がる。しかし、《ガウェイン・ポセイドン》の巨体は健在だった。ぶつかった存在は今、コントロール下にある触手全て。それも例外なく赤い障壁、《絶対守護領域》を纏っていた。

 

神装で性能を上昇させたドルイドシステムが持てる全てを触手のコントロール、肩部の

ハドロン砲の発射準備、《絶対守護領域》の発動に注ぎ込む――!

 

迫り来る魔手を《絶対守護領域》を纏わせた触手をぶつけて時間を稼ぎ、チャージされたハドロン砲で打ち破る。それが《ガウェイン》のとった打開策。

 

しかし、百に達した触手につい先ほど展開できるようになった《絶対守護領域》を纏わせるだけでも至難というのに、それを維持して強力な一撃を防ぐというのは自壊しかねんばかりの負荷が襲い掛かってくる。

 

再現していた音が鳴り止んだためにポセイドンの抵抗が一段と激しくなった。全身を包む肉は我が身を圧殺しようとし、両手で抑えた(コア)も激しく胎動する。だが、内側で行われる()()()ことよりも迫ってくる一撃の方が脅威度が高い。

 

互いの攻防が続く中、魔手に変化が現れ始める。《ガウェイン・ポセイドン》の抵抗に参ったのではなく、寧ろ逆に威力を上げてきた。より強大に、より激しくなった魔手がその三爪を閉じ、握る形を作っていく。抵抗する触手が全て捕らわれ、内側が鋭い刃となった三爪に喰われた。

 

僅かな拮抗の後、とうとう刃を当てられた《絶対守護領域》に罅が入る。徐々に大きくなり、喰い込まされて……砕け散った。

 

《絶対守護領域》を失った触手数数本に赤いスパーク――輻射波動が流れ込む。強烈な電磁パルスが触手の体液を瞬時に沸騰させた。先端から煮えたぎるのが始まり、内側から炸裂しようと膨張する。

 

それとほぼ同時に肩部のハドロン砲の準備が整う。今回も完全とは言えずこの短時間、神装でエネルギーを回してようやく四割ほどチャージが完了。

 

放つのは右の一門。されど威力は大地に半径六百ml(メル)の大穴を作った砲撃よりは威力は上。輻射波動が触手を通して全身を侵す前に――あの恐ろしい魔手を打ち砕く!

 

ハドロン砲――発射!!

 

肉の砲身を吹き飛ばし、莫大な熱量を持った熱線が放たれた。

 

砲撃は、大気を先端だけで押し割って破裂させた。そして生まれた真空を突き抜け、破壊的エネルギーで成形された一撃が、触手に時間稼ぎされる魔手を穿ちに行く。

 

対する魔手は触手を解放した。握りから三爪を曲げ、喰らいつく獲物を待ち構える。

 

一拍、功労者である触手全てを巻き込んで砲撃が魔手に突き刺さった。

 

ハドロン砲()輻射波動()。かの世界で兵器の代表ともいえる存在が火花を散らしぶつかり合う。それだけで周辺の物体が蹂躙、吹き飛ばされた。

 

この勝負、勝者は――《ガウェイン・ポセイドン(ハドロン砲)》。

 

広範囲を包む魔手。一点に集中された砲撃。一直線に放たれた攻撃は、広げられた魔手を貫通する威力を十二分に秘めていた。

 

爪を一つ砕かれ大穴を空けた魔手。形を崩された物を修復することなど出来ず、悲鳴に似た音と探知障害を起こすほど放電現象を起こした後に消滅する。

 

《ガウェイン》は勝負に勝った。しかし、あくまで必殺技の威力勝負に勝っただけ。この壮絶な闘いで追い詰められたのは寧ろ自分だった。なにせ今、触手が全て輻射波動に侵されたため体に流れ込もうとしているから――!

 

輻射波動に侵された触手をハドロン砲で巻き込ませる形で消滅させた。だが、自身を脅かせる毒は予想以上の速さで蝕んでなおも残留している。

 

迫る毒に《ガウェイン》は触手のコントロール分のエネルギーを付け根部分に溜め込んだ。付け根がエネルギーによって光り、瘤のような形となって膨らむ。そしてついに輻射波動が触手を侵し、付け根とエネルギーに触れた。

 

瞬間、《ガウェイン・ポセイドン》を支える触手の脚が火花を生んで爆発した。しかし、足だけ。上半身は無事だ。

 

輻射波動対策成功せり。

 

本来なら輻射波動を受けた触手を切り離すのが得策だったが、百を超える触手全てを切り離すのは時間が足りない。そこで付け根にあらかじめ爆発のエネルギーを溜め込むことで、輻射波動と反応させて爆発させた。

 

大きな代償を払うことになったが、高速再生を行えばいつでも修復可能。『彼の者』も先ほどの大技で余程の負担を背負ったはず。更に激痛によって(ポセイドン)が苦痛からか抵抗が弱まった。この隙に完全にコントロール下に置ける。

 

この勝負、次の一手で決めようと準備していた左肩のハドロン砲を構える。魔手に対抗する際にチャージし続けていた百パーセントのハドロン砲。

 

『彼の者』には、万物を消滅する力を持っているが問題ない。例え、このハドロン砲が消滅されても、魔手と消滅によって限界を向かえるはず。意識を失えば止めを指すことも出来る。

 

これより魔手が生まれた場所――『彼の者』がいる場にハドロン砲を撃ち込もうとした突如、凄まじい勢いで何かが木々をなぎ倒して突き進む。

 

砲弾のように一直線に己の横を通り過ぎるモノは――。

 

 

 

木々の隙間から蒼く輝き、深海のように深さを湛えた幻玉鉄鋼(ミスリルダイト)

 

 

頭部から風に揺れて東方の戦武将を思わせる銀髪状の装備――《衝撃拡散自在繊維》。

 

 

左腕を不安感を掻き立ててやまぬような、暗色の腕と一条一条が処刑刀のように長く鋭い禍々しい形状(フォルム)を描く血濡れ色の三本爪――《滅爪砲撃左腕部》。

 

 

 

これら三つの所有した外見から、つい先ほどまでしのぎを削っていた同胞であり、『彼の者』の愛機――《蒼月》であることを十分過ぎるほど認識できた。

 

まだここまで高速で機動することができたのかと驚愕するのと同時、『彼の者』が行おうとしていることもまた予想した。

 

このまま突き進んで回り込み、自身の背後から魔手を撃ち込もうとしている――!

 

これまでの戦闘で疲労は極限を迎えていると考えていたが、木々を突き進む勢いからまだ余力を残していると判断を改める。

 

そうはさせるか、と上半身を動かしてハドロン砲の照準を突き進む《蒼月》に合わせる。

 

直撃などせずとも、地面への着弾による衝撃で粉砕できるが《ガウェイン》は、『彼の者』の無効化の脅威を常に頭の隅に置いていた。そのために確実に当てることに固執したため――嵌められた。

 

 

木々を突き進む《蒼月》に『彼の者』は搭乗してない!

 

 

フロートユニットも高機走駆動輪も、それどころか起動すらもしていない!

 

 

ただ投げられ、凄まじい勢いで突き進んでいるだけだ!

 

 

 

そして――ようやく晴れた電磁妨害。

 

魔手が放たれた地に同胞の――《クラブ・クリーナー》の反応が復活していた。

 

それに気づいた時には、そこから極超音速で淡く輝くプラズマが迫ってきた。

 

 

 

―◆◆◆◆◆―

 

 

 

時は少し遡る。

 

 

――すまない、《蒼月》……っ!

 

 

ライは乗り換えた《クラブ・クリーナー》で投げ飛ばした《蒼月》に心からの謝罪をした。勝つためとはいえ、愛機である存在を囮として投げるのは心に痛みが走る。

 

だが、感傷に浸る暇はない。

 

《ガウェイン・ポセイドン》はライの予想通り、囮の《蒼月》に向けてハドロン砲の照準合わせのため上半身の向きを変えてくれた。輻射波動で作り上げた魔手の電磁妨害が消える前に準備を進める。

 

作戦はこうだった。

 

ライは《ガウェイン・ポセイドン》がハドロン砲を再現したことから、自身も神装《無色の魔導器(ロスト・カラーズ)》で似たようなことが出来るのではないかと考え、イメージと集中力を凝らして魔手を作り上げた。

 

生物、機械にとって一撃必殺となる輻射波動の塊をぶつければ倒せる。そのことからとびっきりの奴を放つ。それがどれだけの負荷となるかは想像できていたがしかし、この《ガウェイン・ポセイドン》は倒さなければならない一心で作り上げたのだ。

 

魔手で倒せれば御の字だが、もし倒せなかった場合を考えて二つ目のプランを立てていた。

 

それが《蒼月》を囮に使った騙し討ち。

 

《ガウェイン・ポセイドン》は超高速回復と《絶対守護領域》の二つで生半可な攻撃では防がれ、例え打ち破られても再生してしまう。

 

《クラブ・クリーナー》は武装は豊富だがそれらを超える破壊力はない。神装を使用すれば打ち破ることは出来なくないがこれまでの消耗から不可能。自身を倒せるのは《蒼月》のみと判断するだろう《ガウェイン》の隙を突かせてもらった。

 

 

――ここからは時間の勝負だ。

 

 

ライは急ぎ、《クラブ・クリーナー》に砕け散った左腕に換装された《()()()()()を動かした。

 

ライは自身が目覚め、扱うことになる《蒼月》、《クラブ・クリーナー》について徹底的に調べ、気付いた。この兵器たちもKMF(ナイトメアフレーム)と同じように腕部の換装が可能だということに。

 

神装で再生させることも可能だが、電磁妨害があるとはいえ、大きなエネルギーの反応を出さないために使用しなかった。そのため換装された左腕以外は消失したまま。

 

《ガウェイン》にはあくまで――

 

《クラブ・クリーナー》は四肢を砕かれ大破した。自分を倒せる武器も神装の脅威もないため、《蒼月》だけに警戒しておけばよい。反応がないことから待機状態にされたに違いない。

 

――と思わせなければならなかった。

 

《クラブ・クリーナー》の換装された《蒼月》の左腕が掴んだものは、大きな兵装をくっつけた右腕だった。

 

この右腕は《蒼月》の特殊武装内にあった――《七式統合兵装右腕部》。

 

 

――なんであるんだろうな?

 

 

本来は《白炎》の武装であるコレを何故《蒼月》が所有しているのかは分からない。《蒼月》は確かに《白炎》と似て、現にそのデータを参考として開発されているから、似たような機体として武装を入れたのだろうか?

 

砕け散った右腕部位の基部を外して《七式統合兵装右腕部》を装着。

 

仮面と装甲衣の接続は時間がないためしておらず、どんな感覚かは分からないが浮かび上がったデータによれば問題はないそうだ。

 

テストする時間も惜しい。あの邪神を倒すために装備を最初の始動操作しかしたことがない武装を展開する。

 

 

『《七式統合兵装右腕部》展開。――《七式超電磁砲》』

 

 

別段口に出さずともよいが口に出しておく。

 

右腕の兵装が展開し、前方にコンテナが召喚される。《七式超電磁砲》を放つには、電磁誘導システムのアッセンブリーが必要となる。KMF(ナイトメアフレーム)の《白炎》はそのアッセンブリーとしてこの可変ケース型のオプションコンテナを扱っていたが、悪夢(ナイトメア)は召喚されるようだ。

 

コンテナが開き、超電磁砲のアッセンブリーに変形させる。尾部のコネクタが《七式統合兵装右腕部》に接続され、パワーを供給する。両脚は依然として砕けているため丁度よさそうな大木を背にして長距離狙撃姿勢の構えをとり、砲身を支えるバイポットを堅固な地面に押し当てた。

 

知識の中に名称だけしか知らない《七式超電磁砲》の発射準備が、この装備を使ったことは一度もないというのに、まるで長年愛用してきた銃の整備のようにスムーズに進んでいく。それを行うと同時、ライに異変が起こった。

 

 

――頭の中が熱い……っ!

 

 

頭に燃える、嬲られる熱を感じた。熱は頭だけに留まらず、体全体に広がっていきライの意識、失われた記憶をちらつかせた。

 

 

――そうだ。僕はこの武器を使ったことがある。KMF(ナイトメアフレーム)ではない、《蒼月》で……!

 

 

自分は、《蒼月》でこの《七式超電磁砲》を扱った。そして、射線の先にいる存在を狙い撃とうとしたのだ。その存在の影と《ガウェイン・ポセイドン》の姿が全く似ていないというのに被った。それは、二体の脅威が桁違いという共通点のために。

 

共に《クラブ・クリーナー》のファクトスフィアで補足した照準データに従い、《七式超電磁砲》を制御する。狙うは、エネルギーが溜め込まれる左肩(ハドロン砲)

 

視界に陽炎のように浮かぶ影を振り払って甲高い砲音が鳴り響く。

 

電磁砲が発射されるとその行く末を見届けぬまま、次の操作へ。

 

《七式統合兵装右腕部》を急いでパージし、眼前で転がる武装を掴み、空いた右腕部に換装していく。

 

新たに換装された腕はまたも異形の形をしていた。殺戮者めいた威圧を感じさせる銀の爪――こちらも《蒼月》の武装ではなく、《紅蓮可翔式》が備える武装――《徹甲砲撃右腕部》。

 

《クラブ・クリーナー》と《徹甲砲撃右腕部》が接続をし終えた時、ガラスが崩壊するような甲高い崩壊音が耳に届いた。

 

発生源は上空。見ればこちらに上半身を未だに《蒼月》に向け、首だけをこちらに向けた《ガウェイン・ポセイドン》がいる。注目するべきは、ライが狙いをつけた左肩の前に《絶対守護領域》の砕けた破片が散り、《七式超電磁砲》も淡い雷光を残して散る姿だった。

 

 

――よし!

 

 

《ガウェイン》が()()()()()()()()()()、《絶対守護領域》を発動してくれたことに心中で喜ぶ。

 

これまでの戦いでライの体力は限界に近い。実のところ次に放つ《徹甲砲撃右腕部》の輻射波動砲弾が正真正銘最後の一発となる。

 

だが、輻射波動砲弾を届かせるには《絶対守護領域》が邪魔となる。それを破壊するために《ブレイズ・ルミナス》といったエネルギー装甲を貫通できる威力を持ちうる《七式超電磁砲》を使用したのだ。

 

だが、それは《ガウェイン》が《絶対守護領域》を使用してくれなければ成功しない作戦だったがその問題も大丈夫。ライは、絶対に使うとある種の信頼に近い形で信じていたから。

 

今、《ガウェイン・ポセイドン》の身を護るべき存在は何一つない。

 

構えられた《徹甲砲撃右腕部》が狙いをつけるのは、《七式超電磁砲》と同じエネルギーを溜め込んだ左肩(ハドロン砲)

 

あの溜め込まれたエネルギーと輻射波動が反応しあえば、《ガウェイン・ポセイドン》はどうなるか――。

 

 

『弾けろ、《ガウェイン・ポセイドン》――ッッッ!!!』

 

 

この戦いに終止符を撃つ輻射波動砲弾が発射された。

 

ライの無意識の内に零れた、かつて背中を預けて戦い、最後に袂を別った少女の叫びと共に。

 

 

 

―◆◆◆◆◆―

 

 

 

ライの作戦は上手くいき成功した。

 

《ガウェイン・ポセイドン》は、発射された輻射波動砲弾をその巨体のため避けること、《絶対守護領域》で防ぐことも出来ず左肩(ハドロン砲)に直撃された。

 

輻射波動は瞬く間に左肩(ハドロン砲)のエネルギーと反応し、全身を駆け巡ることなった。それは無論、体内で動力兼操作をしていた《ガウェイン》にも襲い掛かり、神装のため自壊することも出来ない生き地獄を味わうことになった。

 

最後は、臨界点を突破して《ガウェイン・ポセイドン》が自爆するだけ――とライは考えていたが、最後の最後でとんでもない誤算が待っていた。

 

それは《ガウェイン・ポセイドン》の蓄えられていたエネルギーの量。

 

《ガウェイン》は《ガウェイン・ポセイドン》として巨体を維持するために神装で引き出したエネルギーを全身に流しており、更には左肩のハドロン砲も半径六百ml(メル)の大穴を空けた三割、魔手を粉砕した四割を超える全力全開の――百パーセント出力のエネルギーを溜め込んでいたのだ。

 

そんな膨大という言葉では収まらないエネルギータンクといえるものに電磁パルスによる沸騰を行えばどうなるか、その結果は――。

 

 

 

―◆◆◆◆◆―

 

 

 

そして、《ガウェイン・ポセイドン》という名の爆弾は爆発した。

 

爆発には、明るい大火焔と大気の消滅運動が付随することとなった。その大きさは直径約十kl(キル)に及ぶもので、巨大な火の柱はアーカディア帝国、ヘイブルグ共和国、ブラックンド王国といった大国、北のユミル教国などの果ての国からも確認された。

 

爆心地の中央部であるリドネス海峡付近の森で生じた爆発消滅は、大きな被害を受けながらも残っていた木々を残らず吹き飛ばした。次の瞬間には、大規模に消失した空気の欠損に大気が流れ込んでぶつかり合い、圧縮されながら溜め込まれた空気は三秒で破裂した。

 

そして爆風の高度は地上数kl(キル)にまで及び、その地の残骸が付近十数kl(キル)前後まで飛散した。だが、爆発の大気運動によって生じた局地的な雨雲と雨によって、爆発の粉塵は広範囲に広がる前に押しとどめられ、代わりに狭い範囲へ汚れを含んだ大雨が降ることとなった。

 

 

 

 

―◆◆◆◆◆―

 

 

 

『――反応ありませんね。ここ三日、爆心地を中心に特装型(ドレイク)三十機の探知をフル活動して、これだと本当になにもないのではありませんか、隊長殿?』

 

『俺もそう思うが、皇帝陛下直々の命令を承って調査をし、何もありませんでしたとか報告してみろ。俺たち全員、首を刎ね飛ばされるぞ』

 

『ははは、まさかそんな……嘘じゃ、ないんですね』

 

『残念ながら本当だ。今の帝国は酷いぞ、知らなかったのか……とそうか。お前は確か』

 

『はい……。ここ数年間、石化した終焉神獣(ラグナレク)の監視に派遣されていたため本国の現状を知りません』

 

『……すまなかった。だが、ある意味運がいいのかもしれないな。きっと、現状を知れば後悔することになる。良いニュースと言えば、第七皇子様が帝国史上最年少で機竜使い(ドラグナイト)の免許を取ったことくらいかな』

 

『他には――?』

 

『――それしかないさ。もうそんなニュースしかないぐらい帝国はヤバいってことさ』

 

『そうですか……。探り当てなければ地獄、探り当てても地獄と……』

 

『どういうことだ?』

 

『いえ、その……。わ、私は怖いんです……』

 

『怖い?』

 

『は、はい。こんな破壊現象を起こせる存在がいるのが、怖くて堪らないんです。遠くからしか見ていませんが、復活した終焉神獣(ラグナレク)と変化した終焉神獣(ラグナレク)特装型(ドレイク)を見ました』

 

『……』

 

『あんな人智を超える化け物がこの世に存在し、もしかしたら今この足元に潜んでいるのではないか?自分たちが発見したものが世界を滅ぼしてしまうものではないか?そんな考えが浮かんでしまいます……!』

 

『お、おい……』

 

『それにっ、それにっ!この惨状にいたのは終焉神獣(ラグナレク)だけではないんです!機竜です!終焉神獣(ラグナレク)を単騎で追い詰め、圧倒した『蒼い』機竜が……!!』

 

『落ち着けっっ!!!』

 

『っ!……す、すみません。取り乱しました……』

 

『いや、気持ちはわからんでもない。お前は休め。もうすぐヘイブルグの奴らと調査の交代だ。飯食って寝れば気持ちが治まるさ』

 

『……ありがとうございます。では、お先に』

 

『……、フゥ――ッ。過ぎた力ってやつか。俺もそんなものに触れるのは御免被りたい。もし見つけてやったら皇帝に差し出して破滅させてやるか――どうした?』

 

『隊長、報告です。爆心地から十五kl(キル)離れた地点に妙なものが』

 

『妙なもの……なんだそれは?』

 

『――機竜です。蒼い、銀髪を生やした機竜です』

 

 

 

―◆◆◆◆◆―

 

 

 

そこまで聞き、『彼』は盗み聞きを止めた。

 

この三日、暗い深海の底を探し回り目当ての存在を見つけることが出来たから。

 

光すらも遮断し、異形の魚が回遊する人の手が入っていないありのままの地。そんな底の底に『ソレ』がいた。

 

一言で言えば岩と言ってもおかしくない物体。しかし、近づいてみればそれがただの岩ではないことが解る。

 

『ソレ』は金属の人型だった。内側から膨れ上がった様子から古代の人を模した石造似た形となる、金と黒の金属で固められた人型。

 

物言わぬ存在に見えるがそれは違う。目の前の人型はまだ生きている。何故なら、胸に輝く赤い紋章が何よりの証拠。今は、『彼の者』によって受けた力が残り続けているため身動きが出来ないだけだ

 

自身の『兄』ともいえるその者に『彼』は手を当てる。それと同時、自身の胸の紋章と『兄』の紋章が輝き始め、治まった時には『兄』は元の姿に完全に回復した。

 

『兄』が自身より小柄な『弟』へ手を差し伸べる。

 

その手には胎動うる肉塊が。しかし、それの動きは穏やか。かつて見たような抵抗は見せずただ静かに脈打つだけ。

 

『兄』の意図を察した『弟』が肉塊へ自身の指を刺し込む。

 

先ほども盗聴を可能とした、『兄』と同じ内蔵された『個性』を使用して肉塊の中にある物を慎重に取り出していく。

 

そして、抜かれた『弟』の指には人頭ほどの水晶体(クリスタル)がくっついていた。七色に淡く輝く幻想的な物体が海水によってより幻想的価値を高める。

 

水晶体(クリスタル)を抜かれた肉塊は、大きな穴を空けられて砕け散ると思いきや、『兄』が両手に包み込み胸の紋章を輝かせる。内部にあった水晶体(クリスタル)と同等の物を作りだし、穴を修復され、砕け散らずに済んだ。

 

肉塊は再び強く穏やかな胎動を始める。

 

深い、深い深海で行われたとある『兄弟』の所業。

 

これが未来でどのような異変を起こすのかはまだ誰にも分らない。

 




まず一言――やり過ぎちゃった!

ライは生きてますよ。過去編ですからね。しかし、愛機の一機を回収できずまた吹き飛ばされました。

蒼月については……まだ詳しい描写が載せられません。というか扱いが酷いな。使用者に囮として投げ飛ばされ、回収できずに帝国に発見される。……活躍!活躍の場は用意してありますからっ!ってそれ書いたノート紛失してるチックショー!

『兄弟』については似たようなものですよね?この二機はデザイン的にも好きでスパロボでも大活躍してくれました。それとドルイドシステムですが、最弱世界の技術が合わさったためチート使用になっています。

ポセイドン「まだだっ、まだ終わっていなぁぁぁぁいっ!」

それとライにちらついた影、それがラスボスになります。
ヒントを下記に残しておくため、知りたくない人は気を付けて。








ヒント:『馬』+『鷲』=?

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