ナイトメア・オブ・ライ   作:兜割り

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蒼の軌跡

明るく冴えた空汚すような真っ黒の煙を吐き出す工房(アトリエ)にライは言葉を零しながら進んでいく。

 

「全く、自分が王女だという自覚があるのか彼女は?」

 

爆発の原因は解っている。

十中八九、機竜の動力である幻創機核(フォース・コア)の暴走だろう。武装関係も頭に浮かんだがすぐに消した。それならばあの程度の爆発ではすまないはず。そして、意図的ではないにせよ幻創機核(フォース・コア)の暴走を引き起こせる人物などこの学園では限られている。

 

技術者というのは危険性を感じることより好奇心が優るものなのかと、自分が関わってきた技術者の顔を思い浮かべている内にだいぶ工房(アトリエ)へと近づいていた。

黒煙を最も多く吐き出す入り口に、数人の女子生徒が声を上げていた。

 

「ライ先生―!無事ですか―!ついでにリーズシャルテ様もー!」

「ちょっとこれ……本当に返事がないわよ。もしかしたら――」

「それはいかんな……よし!私が入る!みんなは保健室から「行くな、行くな。突っ込んでも私はいないぞ」ひゃいっ!」

 

意を決して黒煙の中に突っ込もうとした少女に声をかけて止める。出鼻を挫かれたことで素っ頓狂な声を上げるが気にしない。背後からかけられた声の持ち主に振り向くと赤色のネクタイが見えたので、二年生が中心だと解る。

少女たちが驚きを込めて叫んだ。

 

「ライ先生!?」

「よかった、無事でしたのね!」

「てっきり爆発に巻き込まれたかと、私心配で!」

 

無事な姿を見て、キラキラと瞳を輝かせて喜びの声を上げる少女たち。もし犬だったら勢いよく振られる尻尾が見れただろう。

彼女たちの視線を遮るように自分の顔に手をあてる。

 

――やっぱり苦手だ。

 

彼女たちの視線はある意味天敵だ。疑いや害などの曇りがない視線は物理的痛みを持っていたら即死できるだろう。

善意、ただの善意。自分がどんな人間か知らないのに注がれるそれが苦しい。

軽く深呼吸して重々しく言葉を吐き出す。

 

「君たちは……何度もいっているが私は機竜整備士だ。ここの教員ではない。なのに何故、君たちは私を先生と呼ぶ」

 

不満を帯びたライの声に少女たちはえーと声を重ねる。

 

「けどライ先生~。先生のここ四年間の働きぶりを見て先生と言わないのは無理ですよ~」

 

その声にライ以外の全員がうんうんと首を縦に振る。

 

「だってライ先生のアドバイスは的確だし」

「頼り甲斐もあって面倒見もいいし」

「機竜以外にも色々なことを教えてくれるし」

「先輩たちに上級階級(ハイクラス)以上にならなかった人いないし」

「かっこよくて強いし」

「もう完璧過ぎて、これはもう先生と呼ぶしかないって感じなんです!」

 

ねーと笑顔を見合わせる少女たちにライは頭を抱えたくなった。

彼女たちの言葉に心当たりはある、ありすぎるといっていいほどに。

ライはこの学園――アティスマータ新王国が管理する機竜使い(ドラグナイト)士官候補生を育成する場――で機竜整備の仕事をしている。

 

異世界人であるライがどうしてそんな仕事につけているのか詳しく説明すると、旧帝国が敷いてきた男尊女卑の風潮と制度により、女性は装甲機竜(ドラグライド)の使用は、禁じられていた。しかし、クーデターの成功により新王国が設立したのを境に、その認識は一変。機竜制御の相性適性は、女性の方が遥かに上という事実が判明。以後、専門の育成機関を設立し、他国に負けない機竜使い(ドラグナイト)の士官を揃えるべく、その育成に力を注いでいるのだ……が、ここで問題が発生。

 

機竜に関する知識を持つ者が極端に減ってしまったのだ。

 

原因は長年、装甲機竜(ドラグライド)を独占していた旧帝国の軍人の大半がクーデターで死亡したことにより、機竜使い(ドラグナイト)と機竜整備士の数が全体的に減少してしまい人手不足が深刻化。その不足を革命に参加した使い手たちを正規軍に加えようと考えていたが、多くが『悪夢(ナイトメア)』に殺されている。

結果、革命に成功して生まれた時のアティスマータ新王国の軍事力は国家の平均的な軍事力のラインよりも下という状況に陥った。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を金に換えながら、四大貴族の力を借り、機竜使い(ドラグナイト)を募集、訓練したことで革命から一年が経ってようやく国家軍事力としてのラインに辿り着くことが出来た。

 

それでもやはり多くの機竜使い(ドラグナイト)は軍から離れることは出来ず、革命から一年経って生まれたこの王立仕官学園(アカデミー)も教師として機竜使い(ドラグナイト)不足に苦しんでいた。特に機竜を整備できる機竜整備士に関しては軍の方でも急募していたため派遣されなかった。

そんな中、学園長――レリィ・アイングラムは知り合いであるライにスカウトを行った。

ライの記憶には基礎とはいえ、機竜整備や修理の情報が刷り込まれていたため十分に活躍できる。ライはとある条件を結び、機竜整備士の仕事を受け持ったのだ。

 

 

閑話休題。

 

 

機竜整備士の職を与えられたとはいえ、王立仕官学園(アカデミー)に集まるのは貴族子女ばかり。男尊女卑の影響が強く残っている彼女たちにとって『男性』のライは毒にしかならないと思い、極力接触は避け、整備の終わりに機攻殻剣(ソードデバイス)を渡す際には帽子やマスクで顔を隠すなどの徹底した日々を半年ほど続けていると転機が訪れた。

 

機竜を整備しているとその機竜使い(ドラグナイト)がどのような操作法をするか自ずと解る。格闘戦を重視したもの、射撃戦を重視したもの、機動性を重視したものなど機竜の摩耗具合から知ることができる。そんな中には、自らを危険に晒しかねない操作をする生徒がいたのだ。まるで何かに焦っているように感じさせるほどに。

 

その生徒に機攻殻剣(ソード・デバイス)を渡す際、つい聞いてみてしまったのだ。何故、無茶な操作をすると。

そう言われた少女は突然、泣きだしたのだ。どうすればいいのかと。

何でも機竜の操作を同級生と比べてしまい劣っていると感じ、その差を埋めようとして無茶な操作を行うようになったとのことだった。

 

その時、自分が考えたことを今でも覚えている。

彼女にありふれた励ましの言葉を送って帰すのが、半年間のスタイルを崩さない最善の方法だろうと。だが、言葉だけを送れば彼女は危険な操作を続けることは分かっていた。操作をし続ければいずれ蓄積された負荷で、彼女が死ぬことも。

 

もし、彼女が死んだら?

人々は自業自得という形で彼女の死を終わらせるだろう。だが、自分は気付いてしまっている。誰も知らない中、彼女を救えるのは自分だけ。

 

何かしておけば死ぬことはなかったのではないか?

そうだ。自分はその何かをすることができる。

 

友人たちに追いつこうと努力する少女の死を無理解のまま自業自得の形で終わらせていいのか?

駄目だ。そんな悲しい結末は彼女が報われない。

 

彼女は死ぬことを自分が知っていればどう思うだろうか?

恨む。絶対に恨む。死後の世界で怨み殺すだろう。

 

彼女の死を忘れることができるか?

できない。ただでさえ人の死については忘れることはできないのだ。

 

ぐるぐると考えが巡る中、自分を動かす結論が浮かんだ。

 

彼女が死んだら自分は後悔するか?

する。するに決まっている。

 

ライは言葉を吐いた。慰めの言葉ではないものを。

彼女のことを想ってのではなく、自分のために。

 

 

彼女が伸びない原因を探るため機竜操作を見せてもらうとすぐにわかった。

機竜の基礎といえるものが伸ばされておらず、初めから高難易度の操作に手を出していたのだ。スタートラインは同じであったのにメキメキと実力をつけていく友人たちに取り残されないため、皆に追いつこうと必死になるあまり高等技術を覚えようとした感じか。そのことを注意して、基本操作についてレクチャーして彼女を帰らせた。

 

後日、彼女の機竜を整備すると、無茶な操作によって生まれる負荷は見つからなかった。

そのことに自分が深い安堵を覚えたことを記憶している。

 

これで万事解決と思いきや、そうならないのが世の中というもの。かつての女生徒が相談を持ち掛けてきたのだ。それも集団で。

 

この王立仕官学園(アカデミー)には、実技演習以外でも装甲機竜(ドラグライド)を扱える遊撃特殊部隊『騎士団(シヴァレス)』が存在する。

彼女はその『騎士団(シヴァレス)』に選ばれるほどに成長したのだ……ただし、予備メンバーとして。彼女が連れてきた生徒たちも予備メンバーの生徒たちだった。

 

相談の内容は『騎士団(シヴァレス)』に吹っ掛けられた試合に勝つため自分たちに稽古をつけてほしいという。

 

王立士官学園(アカデミー)は文字通り士官学校であるため、彼女たちを教える教官も当然のことながら存在する。特にここには旧帝国時代、女性の身でありながら、唯一の機竜使い(ドラグナイト)として活躍し、クーデターでは女性の味方として新王国側に参加したライグリィ・バルハートがいる。

ライも何度か顔を合わせ、性格や実力も把握している。『あちらの世界』なら騎士として名を馳せていただろうと思ったほどだ。そんな女性にとって憧れの的である教官ではなく、『男性』で表向きは機竜整備士でしかないライに稽古を頼んできたのだ。

 

ライグリィ・バルハートの性格から『騎士団(シヴァレス)』に贔屓するとは考えられなかったため、何故自分なのか聞いてみると、ライグリィは二週間の初演習に行った『騎士団(シヴァレス)』と共に王都へ行ってしまったらしい。

 

他の教官に頼もうにもさっき言った通り、男尊女卑の影響により女性の機竜使い(ドラグナイト)として活躍していたのはライグリィ一人だったため、実力的には他の教官も生徒たちと似たようなものだったのだ。

 

試合相手の『騎士団(シヴァレス)』は王都の演習でより実力をつけている。自分たちも自主訓練を行っているがそれでは差が開くばかり。教えて貰おうにも有力機竜使い(ドラグナイト)のライグリィはおらず、残った教官は頼りない。身近におり、実力のある機竜使い(ドラグナイト)と皆が考えて、かつて助言を受けた女生徒の提案で、僕にお鉢が回ってきたということだ。

 

機竜使い(ドラグナイト)ではないといって拒絶することは出来た。だが、彼女たちの助けてほしいという言葉と頭を下げる姿にその想いは揺れてしまった。

彼女たちは旧帝国が敷いた男尊女卑の被害を受け、『男性』という存在の恐ろしさを知っている。そんな彼女たちが『男性』であり、ほぼ初対面の自分に頭を下げている。それはとても勇気がいる行動だということが理解できた。

 

彼女たちの勇気を無下にすることなどできず、頼みを引き受け、『騎士団(シヴァレス)』が帰ってくるまでの二週間、彼女たちに協力。その結果、予備メンバーは見事『騎士団(シヴァレス)』との試合に勝利した。

それで一件落着……というわけにもいかなかった。

 

なんと今度は『騎士団(シヴァレス)』のメンバーが予備メンバーの成長の秘密を知って、自分の元に押しかけて来たのだ。『騎士団(シヴァレス)』に稽古をせがまれる途中、予備メンバーも現れ大騒動になった時はめまいを覚えたぐらいだ。

 

騒ぎを聞きつけた学園長のレリィとライグリィ教官のおかげで収まったが、それによって二人に僕が教官としての能力があると知られて『騎士団(シヴァレス)』の訓練相手として表に引っ張り出される結果に。

 

正直、断りたかったが真摯な瞳を向けて、教えを乞うてくる彼女たちを拒絶することが出来ないままここまでズルズルと来てしまった。これが先生と呼ばれる経緯だ。

 

「あーもう!わかった!わかった!先生と呼ぶのは今は不問にしてやるから、この場から離れろ!再び爆発するかもしれんのだぞ!」

 

その声に生徒たちは、はーいと明るく答え、去っていく。

 

「さて……」

 

女生徒たちが離れていくのを確認して、背負っていたリュックサックを下す。幾つものベルトと四桁番号並べの錠を外し、中の物を取り出す。

 

明るい外の色とは正反対の黒を中心とした配色の仮面。後頭部が開きっぱなし、下顎部分が取り外されたそれを頭に被る。外されていた下顎のパーツを取り付けると、展開していた後頭部のパーツがスライドし、内装パッドが膨張することによって頭部を万全に固定する。

 

右左上下と首を振って視界確認。次に取り出すのは、『装甲衣(アーマー)』のグローブ。仮面と同じ暗い配色に隠れているが、目を凝らせば長い間使いこんだことを教える傷と汚れ、最近染み込んだに赤い色の形跡が視認できる。ライの手より僅かに大きく、両手に楽にはまる。裾のストッパーを締めると仮面と同じく内装パッドが膨らんで手にフィットしてくれる。何度か手のひらを握って開いて状態を確認。

 

「よし……」

 

頷きを一つし、眼前に広がる黒煙に飛び込む。仮面に備えられた呼吸機能のおかげで黒煙に体を害されることもない。

探すのはこの煙の発生源。本来ならこの工房(アトリエ)に残っている少女を救うことが最優先と思えるが、ライは心配していなかった。こういうことが一月に三回ほどあるため、身を守れる装備を託しているのだ。

 

仮面のサーモグラフィー機能を使用して、発生源を特定。煙の出どころである機竜は幻創機核(フォース・コア)を内蔵する肩部を中心に火を噴き出して、炎の塊になっている。

 

直接操縦して停止させるのが無理なこともわかったので、右腕に力を籠める。手のひらを中心に力を集めるように集中。すると赤い光で構成された紋章――『ザ・ゼロ』が出来上がる。

 

『ザ・ゼロ』の力はあらゆる物を無に還す。幻創機核(フォース・コア)の停止など極めて容易だ。しかし、未熟なためか持続できる時間も少ないためすぐに幻創機核(フォース・コア)にぶつける。途中、炎にも触れたため蝋燭に息を吹きかけたように一瞬で消える。途端に輝き続けていた幻創機核(フォース・コア)はぷっつりと機能を停止した。

 

実際、便利な力だと思う。しかし、破格の能力の反面、時間は少ないし二回なら問題はないがそれ以上は自分の体力も削り、行動に支障ができてしまう。

 

『これで解決、次は……』

 

黒煙の元が消え、晴れつつある視界に再びサーモグラフィーを使用してこの騒動の犯人を捜す。発見。爆発によって気絶したのだろう床に転がってのびている。

 

その場合適切な対処があるだろうが、するつもりはない。何度注意しても、結局は今回みたいに爆発騒動を起こすのだ。

近づき、転がっている人物は仮面を被っていた。今、ライが被っている仮面よりやや小型で簡略化された仮面。ライは防御性を考慮してわりと乱暴な手つきでをつつく。

 

『起きろー』

『ん……』

 

反応ありだが、目覚めない。浅いようだ。

 

『起きろー。起きるんだー』

『う……んん……』

 

より強く叩くが、さっきと同じように反応するが、目覚めない。

 

『おーきーろー』

『う……ぐぅ……』

 

三度の呼びかけに目覚めない。

カチンときたため、グローブのストッパーを解除して外すし、現れた人差し指を寝ている仮面に立てる。

 

『連射――!!』

 

手首を細かく上下し、人差し指の上下運動で仮面を連射する。叩かれた数だけ仮面が揺れる。その光景は、仮面にバイブレーション機能があるのではないかと疑うほど。仮面と地面とがぶつかりあう音が鳴り響く。その速度は一秒間に十六連射を超過していた。

 

『あちらの世界』では友人に誘われたゲームセンターで使用し、店長に出禁を喰らわされ、ついにはトウキョウ租界中のゲームセンターにブラックリストとして乗ったほどの邪道技。『この世界』では使用する機会などないと思っていたが、まさかこんな形で活躍するとは。

 

体が温まっていき、より連打音を響かせていく連射。そしてその速度は伝説へ――

 

『ぬあぁぁぁぁ――――!?』

 

至らなかった。

勢いよく仮面が跳ね起きたため、ライの伝説は突如終わってしまった。

 

黒煙もだいぶ晴れた工房(アトリエ)の中、外された仮面の下から姿を現したのは鮮やかな金髪に、勝気な赤い瞳が印象的な少女。

彼女こそこの機竜研究開発所・工房(アトリエ)の所長にして神装機竜《ティアマト》の使い手であるアティスマータ新王国王女。

名は――

 

『リーズシャルテ・アティスマータ。ようやく起きたか』

「え……?」

 

荒い息を吐きながら、声をかけられた方向を向き、ライを認識すると――

 

「ラ、ライ!?違う!これは違うんだ!ただちょっとこの二週間、貴様がいなくなったことで、機竜に関する話ができる相手もいなくなった寂しさを埋めるついでと褒めてもらおうと思って《ロンゴミニアド》を参考にした推進機能付きドリルを装備した機竜開発を進めていたら、こんな事にー!」

『落ち着け、隠さなければならないものがダダ漏れだぞ』

 

――もう一度いうが王女である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱライ先生ってかっこいいよね~」

「うんうん。あの顔とミステリアスな雰囲気が絶妙にマッチしてたまんないよ~」

「そういえばライ先生。王立士官学園(アカデミー)を徘徊する美形の幽霊って噂になってたらしいよ」

「え?それ本当?聞いたことないけど」

「本当、本当。ここの一期卒業生のお姉ちゃんが言ってたもん」

「お前もか?私の姉も一期卒業生でな。ライ先生の教え子一号を自称するぐらいお熱なんだよ。自分から聞きに行けばいいのにわざわざ私に先生のことを聞いてくるんだ」

「へぇ~。じゃ先生がどういう訓練したか知ってる?」

「確か最初は一対一で模擬戦をするんだ。先生はワイアームの改造機を使っていたらしい」

「機竜の改造機って……ライ先生、なんで王立士官学園(アカデミー)にいるの?そんな技術を持っているなら軍から引く手数多なのに」

「確かにな。模擬戦が終わると、その一戦で全員の長所と短所を見極めて、各々の長所を伸ばす方法を教えていったらしい」

「ちょっと……それ冗談じゃないわよね?」

「本当だ。一週間、そんな訓練を行った後は、集団連携について教えて貰ったそうだ。その内容もとんでもないぞ」

「……どんな内容?」

「先生対全員だ」

「……え?」

「……は?」

「……何それ?」

「気持ちはわかる。私も最初聞いた時は同じ気持ちになった。言った通りに先生に全員が襲い掛かる。だが、ここでも先生のとんでもないっぷりが発揮されているんだ」

「……どんな感じ?」

「姉も詳しくは言わなかった。ただ、ただその時の状況をこう語っている。『私たちが行おうとしていた試合などおままごとでしかなかった』、『集団で襲い掛かられ、退路を断たれた獣は生き延びるために殺意の塊に変化する』、『殺意をうけた時、立ち止まってはいけない。飲み込むのだ。そうしなければより強い殺意に殺される』、『出せ、出してみせろ、毒の全てを』、『己より硬く、素早く、強力な存在を仕留めるには集団の連携が必須』、『互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う。一人が皆のために、皆が一人のために、だからこそ戦場で生きられる』、『這いずり回り、のた打ち回り、五臓六腑を撒き散らしても、生き抜いてみせろ』……と震えながらいってたよ」

「……」

「……」

「……」

「そんな感じな模擬戦を一週間やって、連携の大切さを知っていったらしい。けど、先生のワイアームを小破より先に追い込むことはできなかったみたい」

「……」

「ライ先生がそんな……」

「あの人のいい先生が……」

「ま、まぁ、姉はその時のお蔭で今は、同期の友人たちと王都親衛隊で活躍できているといっていたしな。……その、なんていうか結果オーライ?」

 

『ドSなライ先生……いい!!』

 

「へ……?」

 

 

これが王立士官学園(アカデミー)生徒の会話!

 

 




この作品のライは属性でいうと《秩序・悪》です。(怒らないで下さい!)
そのため、『無償の善意』でダメージを受けます。
特に、ほんの少し小首をかしげて放たれる優しい微笑と慈愛の眼差しを向ければ数秒で大破、撃沈します。
幼少のころから人に甘えることもできない環境で育ったため、年上にも弱いです。母性で包んであげれば母親のことを思い出してトラウマで自滅します。年下の女の子に頼まれれば断ることもできず、懐かれると妹のことを思い出して自滅します。

ある意味で作中最弱の人物なんです。
まぁ、悪ですから愛に敗けるのは当然ですよね。

けど敵が放つ悪意に関しては無敵になります。
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