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辛口コメントはご勘弁を!
作者の心が大破するかもしれません!
明るく冴えた空汚すような真っ黒の煙を吐き出す
「全く、自分が王女だという自覚があるのか彼女は?」
爆発の原因は解っている。
十中八九、機竜の動力である
技術者というのは危険性を感じることより好奇心が優るものなのかと、自分が関わってきた技術者の顔を思い浮かべている内にだいぶ
黒煙を最も多く吐き出す入り口に、数人の女子生徒が声を上げていた。
「ライ先生―!無事ですか―!ついでにリーズシャルテ様もー!」
「ちょっとこれ……本当に返事がないわよ。もしかしたら――」
「それはいかんな……よし!私が入る!みんなは保健室から「行くな、行くな。突っ込んでも私はいないぞ」ひゃいっ!」
意を決して黒煙の中に突っ込もうとした少女に声をかけて止める。出鼻を挫かれたことで素っ頓狂な声を上げるが気にしない。背後からかけられた声の持ち主に振り向くと赤色のネクタイが見えたので、二年生が中心だと解る。
少女たちが驚きを込めて叫んだ。
「ライ先生!?」
「よかった、無事でしたのね!」
「てっきり爆発に巻き込まれたかと、私心配で!」
無事な姿を見て、キラキラと瞳を輝かせて喜びの声を上げる少女たち。もし犬だったら勢いよく振られる尻尾が見れただろう。
彼女たちの視線を遮るように自分の顔に手をあてる。
――やっぱり苦手だ。
彼女たちの視線はある意味天敵だ。疑いや害などの曇りがない視線は物理的痛みを持っていたら即死できるだろう。
善意、ただの善意。自分がどんな人間か知らないのに注がれるそれが苦しい。
軽く深呼吸して重々しく言葉を吐き出す。
「君たちは……何度もいっているが私は機竜整備士だ。ここの教員ではない。なのに何故、君たちは私を先生と呼ぶ」
不満を帯びたライの声に少女たちはえーと声を重ねる。
「けどライ先生~。先生のここ四年間の働きぶりを見て先生と言わないのは無理ですよ~」
その声にライ以外の全員がうんうんと首を縦に振る。
「だってライ先生のアドバイスは的確だし」
「頼り甲斐もあって面倒見もいいし」
「機竜以外にも色々なことを教えてくれるし」
「先輩たちに
「かっこよくて強いし」
「もう完璧過ぎて、これはもう先生と呼ぶしかないって感じなんです!」
ねーと笑顔を見合わせる少女たちにライは頭を抱えたくなった。
彼女たちの言葉に心当たりはある、ありすぎるといっていいほどに。
ライはこの学園――アティスマータ新王国が管理する
異世界人であるライがどうしてそんな仕事につけているのか詳しく説明すると、旧帝国が敷いてきた男尊女卑の風潮と制度により、女性は
機竜に関する知識を持つ者が極端に減ってしまったのだ。
原因は長年、
結果、革命に成功して生まれた時のアティスマータ新王国の軍事力は国家の平均的な軍事力のラインよりも下という状況に陥った。
それでもやはり多くの
そんな中、学園長――レリィ・アイングラムは知り合いであるライにスカウトを行った。
ライの記憶には基礎とはいえ、機竜整備や修理の情報が刷り込まれていたため十分に活躍できる。ライはとある条件を結び、機竜整備士の仕事を受け持ったのだ。
閑話休題。
機竜整備士の職を与えられたとはいえ、
機竜を整備しているとその
その生徒に
そう言われた少女は突然、泣きだしたのだ。どうすればいいのかと。
何でも機竜の操作を同級生と比べてしまい劣っていると感じ、その差を埋めようとして無茶な操作を行うようになったとのことだった。
その時、自分が考えたことを今でも覚えている。
彼女にありふれた励ましの言葉を送って帰すのが、半年間のスタイルを崩さない最善の方法だろうと。だが、言葉だけを送れば彼女は危険な操作を続けることは分かっていた。操作をし続ければいずれ蓄積された負荷で、彼女が死ぬことも。
もし、彼女が死んだら?
人々は自業自得という形で彼女の死を終わらせるだろう。だが、自分は気付いてしまっている。誰も知らない中、彼女を救えるのは自分だけ。
何かしておけば死ぬことはなかったのではないか?
そうだ。自分はその何かをすることができる。
友人たちに追いつこうと努力する少女の死を無理解のまま自業自得の形で終わらせていいのか?
駄目だ。そんな悲しい結末は彼女が報われない。
彼女は死ぬことを自分が知っていればどう思うだろうか?
恨む。絶対に恨む。死後の世界で怨み殺すだろう。
彼女の死を忘れることができるか?
できない。ただでさえ人の死については忘れることはできないのだ。
ぐるぐると考えが巡る中、自分を動かす結論が浮かんだ。
彼女が死んだら自分は後悔するか?
する。するに決まっている。
ライは言葉を吐いた。慰めの言葉ではないものを。
彼女のことを想ってのではなく、自分のために。
彼女が伸びない原因を探るため機竜操作を見せてもらうとすぐにわかった。
機竜の基礎といえるものが伸ばされておらず、初めから高難易度の操作に手を出していたのだ。スタートラインは同じであったのにメキメキと実力をつけていく友人たちに取り残されないため、皆に追いつこうと必死になるあまり高等技術を覚えようとした感じか。そのことを注意して、基本操作についてレクチャーして彼女を帰らせた。
後日、彼女の機竜を整備すると、無茶な操作によって生まれる負荷は見つからなかった。
そのことに自分が深い安堵を覚えたことを記憶している。
これで万事解決と思いきや、そうならないのが世の中というもの。かつての女生徒が相談を持ち掛けてきたのだ。それも集団で。
この
彼女はその『
相談の内容は『
ライも何度か顔を合わせ、性格や実力も把握している。『あちらの世界』なら騎士として名を馳せていただろうと思ったほどだ。そんな女性にとって憧れの的である教官ではなく、『男性』で表向きは機竜整備士でしかないライに稽古を頼んできたのだ。
ライグリィ・バルハートの性格から『
他の教官に頼もうにもさっき言った通り、男尊女卑の影響により女性の
試合相手の『
彼女たちは旧帝国が敷いた男尊女卑の被害を受け、『男性』という存在の恐ろしさを知っている。そんな彼女たちが『男性』であり、ほぼ初対面の自分に頭を下げている。それはとても勇気がいる行動だということが理解できた。
彼女たちの勇気を無下にすることなどできず、頼みを引き受け、『
それで一件落着……というわけにもいかなかった。
なんと今度は『
騒ぎを聞きつけた学園長のレリィとライグリィ教官のおかげで収まったが、それによって二人に僕が教官としての能力があると知られて『
正直、断りたかったが真摯な瞳を向けて、教えを乞うてくる彼女たちを拒絶することが出来ないままここまでズルズルと来てしまった。これが先生と呼ばれる経緯だ。
「あーもう!わかった!わかった!先生と呼ぶのは今は不問にしてやるから、この場から離れろ!再び爆発するかもしれんのだぞ!」
その声に生徒たちは、はーいと明るく答え、去っていく。
「さて……」
女生徒たちが離れていくのを確認して、背負っていたリュックサックを下す。幾つものベルトと四桁番号並べの錠を外し、中の物を取り出す。
明るい外の色とは正反対の黒を中心とした配色の仮面。後頭部が開きっぱなし、下顎部分が取り外されたそれを頭に被る。外されていた下顎のパーツを取り付けると、展開していた後頭部のパーツがスライドし、内装パッドが膨張することによって頭部を万全に固定する。
右左上下と首を振って視界確認。次に取り出すのは、『
「よし……」
頷きを一つし、眼前に広がる黒煙に飛び込む。仮面に備えられた呼吸機能のおかげで黒煙に体を害されることもない。
探すのはこの煙の発生源。本来ならこの
仮面のサーモグラフィー機能を使用して、発生源を特定。煙の出どころである機竜は
直接操縦して停止させるのが無理なこともわかったので、右腕に力を籠める。手のひらを中心に力を集めるように集中。すると赤い光で構成された紋章――『ザ・ゼロ』が出来上がる。
『ザ・ゼロ』の力はあらゆる物を無に還す。
実際、便利な力だと思う。しかし、破格の能力の反面、時間は少ないし二回なら問題はないがそれ以上は自分の体力も削り、行動に支障ができてしまう。
『これで解決、次は……』
黒煙の元が消え、晴れつつある視界に再びサーモグラフィーを使用してこの騒動の犯人を捜す。発見。爆発によって気絶したのだろう床に転がってのびている。
その場合適切な対処があるだろうが、するつもりはない。何度注意しても、結局は今回みたいに爆発騒動を起こすのだ。
近づき、転がっている人物は仮面を被っていた。今、ライが被っている仮面よりやや小型で簡略化された仮面。ライは防御性を考慮してわりと乱暴な手つきでをつつく。
『起きろー』
『ん……』
反応ありだが、目覚めない。浅いようだ。
『起きろー。起きるんだー』
『う……んん……』
より強く叩くが、さっきと同じように反応するが、目覚めない。
『おーきーろー』
『う……ぐぅ……』
三度の呼びかけに目覚めない。
カチンときたため、グローブのストッパーを解除して外すし、現れた人差し指を寝ている仮面に立てる。
『連射――!!』
手首を細かく上下し、人差し指の上下運動で仮面を連射する。叩かれた数だけ仮面が揺れる。その光景は、仮面にバイブレーション機能があるのではないかと疑うほど。仮面と地面とがぶつかりあう音が鳴り響く。その速度は一秒間に十六連射を超過していた。
『あちらの世界』では友人に誘われたゲームセンターで使用し、店長に出禁を喰らわされ、ついにはトウキョウ租界中のゲームセンターにブラックリストとして乗ったほどの邪道技。『この世界』では使用する機会などないと思っていたが、まさかこんな形で活躍するとは。
体が温まっていき、より連打音を響かせていく連射。そしてその速度は伝説へ――
『ぬあぁぁぁぁ――――!?』
至らなかった。
勢いよく仮面が跳ね起きたため、ライの伝説は突如終わってしまった。
黒煙もだいぶ晴れた
彼女こそこの機竜研究開発所・
名は――
『リーズシャルテ・アティスマータ。ようやく起きたか』
「え……?」
荒い息を吐きながら、声をかけられた方向を向き、ライを認識すると――
「ラ、ライ!?違う!これは違うんだ!ただちょっとこの二週間、貴様がいなくなったことで、機竜に関する話ができる相手もいなくなった寂しさを埋めるついでと褒めてもらおうと思って《ロンゴミニアド》を参考にした推進機能付きドリルを装備した機竜開発を進めていたら、こんな事にー!」
『落ち着け、隠さなければならないものがダダ漏れだぞ』
――もう一度いうが王女である。
「やっぱライ先生ってかっこいいよね~」
「うんうん。あの顔とミステリアスな雰囲気が絶妙にマッチしてたまんないよ~」
「そういえばライ先生。
「え?それ本当?聞いたことないけど」
「本当、本当。ここの一期卒業生のお姉ちゃんが言ってたもん」
「お前もか?私の姉も一期卒業生でな。ライ先生の教え子一号を自称するぐらいお熱なんだよ。自分から聞きに行けばいいのにわざわざ私に先生のことを聞いてくるんだ」
「へぇ~。じゃ先生がどういう訓練したか知ってる?」
「確か最初は一対一で模擬戦をするんだ。先生はワイアームの改造機を使っていたらしい」
「機竜の改造機って……ライ先生、なんで
「確かにな。模擬戦が終わると、その一戦で全員の長所と短所を見極めて、各々の長所を伸ばす方法を教えていったらしい」
「ちょっと……それ冗談じゃないわよね?」
「本当だ。一週間、そんな訓練を行った後は、集団連携について教えて貰ったそうだ。その内容もとんでもないぞ」
「……どんな内容?」
「先生対全員だ」
「……え?」
「……は?」
「……何それ?」
「気持ちはわかる。私も最初聞いた時は同じ気持ちになった。言った通りに先生に全員が襲い掛かる。だが、ここでも先生のとんでもないっぷりが発揮されているんだ」
「……どんな感じ?」
「姉も詳しくは言わなかった。ただ、ただその時の状況をこう語っている。『私たちが行おうとしていた試合などおままごとでしかなかった』、『集団で襲い掛かられ、退路を断たれた獣は生き延びるために殺意の塊に変化する』、『殺意をうけた時、立ち止まってはいけない。飲み込むのだ。そうしなければより強い殺意に殺される』、『出せ、出してみせろ、毒の全てを』、『己より硬く、素早く、強力な存在を仕留めるには集団の連携が必須』、『互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う。一人が皆のために、皆が一人のために、だからこそ戦場で生きられる』、『這いずり回り、のた打ち回り、五臓六腑を撒き散らしても、生き抜いてみせろ』……と震えながらいってたよ」
「……」
「……」
「……」
「そんな感じな模擬戦を一週間やって、連携の大切さを知っていったらしい。けど、先生のワイアームを小破より先に追い込むことはできなかったみたい」
「……」
「ライ先生がそんな……」
「あの人のいい先生が……」
「ま、まぁ、姉はその時のお蔭で今は、同期の友人たちと王都親衛隊で活躍できているといっていたしな。……その、なんていうか結果オーライ?」
『ドSなライ先生……いい!!』
「へ……?」
これが
この作品のライは属性でいうと《秩序・悪》です。(怒らないで下さい!)
そのため、『無償の善意』でダメージを受けます。
特に、ほんの少し小首をかしげて放たれる優しい微笑と慈愛の眼差しを向ければ数秒で大破、撃沈します。
幼少のころから人に甘えることもできない環境で育ったため、年上にも弱いです。母性で包んであげれば母親のことを思い出してトラウマで自滅します。年下の女の子に頼まれれば断ることもできず、懐かれると妹のことを思い出して自滅します。
ある意味で作中最弱の人物なんです。
まぁ、悪ですから愛に敗けるのは当然ですよね。
けど敵が放つ悪意に関しては無敵になります。