オーバーロードと魔族の王   作:ニャルザイ

7 / 7
今回は思っていた以上に文量が多くなり全部一括で投稿すると恐ろしい文字数になりそうだった為区切って投稿する事にしました。また、この日常会が終わったらカルネ村編に入りそこから暫く原作とは違うオリジナル回に入る予定です。(奴隷エルフ開放の時は近い)

また更新を楽しみにして下さっている読者の方には申し訳ありませんが来週のセンター試験が終わるまで投稿をお休みさせて頂きます。試験が終わり次第また投稿を再開しますのでお待ち下さい。


7話 魔族の晩餐会①

モモンガ達との模擬戦が終わった後デスピサロは第11層のデスパレスにある玉座に座って1人ワインを嗜んでいた。

 

「ふぅ、モモンガさんには悪いがこうして酒が飲めるのは最高だな。だが……」

 

なんとなく玉座に座ってグラスに注いだワインを飲んではいるが、如何せん物足りなさを感じる。

ざっと玉座から辺りを見渡すが第10層にある玉座の間と対して間取りは大差なく、唯一違う点としたら壁に等間隔で地獄の門番の形を模した石像が置いてある点だけだ。

だが、今は逆にその壮大さが私の心を酷く虚しく感じさせる。そう思ってくるとこのワインもすすまなくなる。

 

そんな感情を感じとったのかすぐ後ろに控えさせていた専属メイドのソリュシャンが話しかけてくる。

 

「デスピサロ様、どうかなさいましたか?もしや、ワインがお口に合いませんでしたか?」

 

「いや、ワイン自体はいいのだ…だがそれを1人で飲む気には今はなれんな。ソリュシャンよ、お前は酒は飲めた筈だな?」

 

「はい。しかし、今まであまり飲む機会がありませんでしたのでお酒についてあまり詳しくは……」

 

「ふむ…ではこれを機に少し酒を学べ。確かナザリックにはBARがあった筈だ。食事と入浴が済んだら行く事にする。準備はしておけ。」

 

「はっ!分かりました。」

 

「それと、私と2人でいる時はその堅苦しい喋り方も普段の話し方に戻せ」

 

「い、いえ!私のようなメイドが至高のお方にそのような無礼をする訳には」

うーん、私としてはせっかく専属になったんだしもっと仲良くなりたいだけなんだけどなあ

 

「構わない。それにいつもそうしろと言っている訳ではないだろう?それともソリュシャンは私が苦手か?」

 

「そんな事はありません!む、むしろ……」

ん?何か最後ボソボソと言ってたから聞き取りずらかったけどもう一押しでいけそうだな。

 

「なら、別に構わないだろう」

 

「で、ですが……」

 

「私に二度言わすつもりか?」

 

「わ、分かりまし…分かったわ」

うん、なんか最後の方殆ど強引だったけど嫌々というよりは照れてるって感じがするから結果オーライだな

 

「よし、ではそろそろ食事にするか。私はピサロナイトの所へ行ってからダイニグルームへ向かう。ソリュシャンは料理長に食事の準備をするよう伝えろ、それと1人分ではなく11人分作れと言っておけ」

 

「承りました。」

命令をすると直ぐにお仕事モードに入り深く礼をするソリュシャンに苦笑しつつ立ち上がり持っていたグラスをソリュシャンに渡す。

 

「それはお前にやる。いい酒の味を覚えておいて損はない。」

そう伝えると一気にソリュシャンの顔が真っ赤になり心配してどうしたかと聞いてもなんでもありませんの一点張りだった為、触れない方がいいのだろうと勝手に判断し玉座の間を後にする。扉を閉めた瞬間『キャーー/////』という叫び声が聞こえた気がするがきっと空耳だろう。

 

 

さて、ピサロナイトのところまで歩いてい移動しているとデスパレス内にいる配下のモンスター達にすれ違う度に名前を言いながらお辞儀をしてくるのだが、これが中々に微笑ましい。元々私はロシアで日本語のALTをやっていた為生徒達が日本人である私を珍しがってよく挨拶をしてきたのを思い出す。シモベ達の挨拶を返しながら目的の場所につき扉をノックする。

 

「ピサロナイト、私だ開けてもよいか?」

 

「デスピサロ様!?ど、どうぞお入り下さい!」

慌てた様子で扉を開き私を部屋に招くがそのままでいいと断り、本題に入る

 

「ピサロナイトよ、これより食事にする。故にお前を含めた残りの私が1から作り上げた9人のシモベをダイニングルームに全員集めろ。いいな?」

 

「分かりました。至急連絡しダイニングルームに向かわせます」

 

「頼んだぞ、私は先にダイニグルームへ向かう」

ピサロナイトに用件だけ伝えてそのままダイニングルームへ向かう。第11層は帝王の間以外リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンですら転移出来ない仕様になっている為少々移動が手間になるが食前の軽い運動と考えながらシモベ達を横目に改めてデスパレスを見て回るのも悪くなかった。

 

 

 

デスパレスのダイニングルームは中世の貴族のダイニングルームの間取りの様になっており、長テーブルには上品な純白のテーブルクロスが敷いてありシャンデリアと蝋燭の光がさらにその上品さを引き立たせていた。

 

その最上席にデスピサロは座り背後にはソリュシャン達メイドを控えさせている。また呼び寄せたシモベ達は上席の順にピサロナイト、エビルプリースト、ギガテーモン、ヘルバトラー、アンドレアル、キングレオ、暗黒の魔神、バルザック、ジャミラス、ドラゴンガイアが座っている。因みにギガデーモンを始めとする体格的に無理のあるシモベにはモシャスをかけ人型にしている。

 

「ソリュシャン、食事のメニューはなんだ?」

 

背後に控えていたソリュシャンがさっと、前に出てきてはいと返事をしメニューを読み上げる

 

「食前酒にナザリック特製のフォーティファイドワイン。

オードヴル1品目は海竜とシャークマジュのマリネ。

2品目に黒い仔山羊の肉とバジリスクの卵を使ったスフレ。

スープはホウレン草やブロッコリー等をふんだんに使用したグリーンポタージュ。

パンはナザリック自家製で小麦粉は金の小麦を使用しました。

ポワソンはツァトゥグアのモモ肉を使ったソテー。こちらはガーリックとパセリで風味を出しております。

口直しに黄金リンゴのソルベ。

ヴィヤンドには無花果のソースをかけたヨトゥンヘイムに生息するフロスト・エンシャント・ドラゴンのテールステーキ。

チーズはブルーチーズとビヤーキーの蜂蜜。

アヴァン・デセールはメロンのグラスゼリー。

デセールはオレンジを焼きこんだタルト生地にフレッシュなオレンジを合わせタルトにショコラアイスを組み合わせた料理長渾身の一品です。

食後酒にはアルヘイムで造られた甘口の妖精酒を用意しております。」

 

とりあえずフルコースってことは理解出来たけど使ってる食材が未知過ぎて味が全く想像出来ないぞ。視線をテーブルに落とし置いてある無数のナイフやフォーク、スプーンといった食器はピカピカに磨いてあり完璧の一言に尽くされる。

 

(そ、それにしても付き合いで高級ホテルのフランス料理やイタリア料理のフルコースに行っておいて良かった。あれに行ってなかったら多分今盛大に恥をかいてたな)

 

そんな事を思いつつ給仕のソリュシャン達全員のグラスに食前酒を注いだグラスを手に取り蝋燭の光に当てるようにグラスをかざす。

 

「それではこれからのナザリックに乾杯」

 

『乾杯』

 

その一言でデスパレスでデスピサロを交えた魔族の晩餐会が始まった。

 

まずはワインを口にし味を楽しむが、今までゲームではバフ効果しか求めていなかった為特に何も効果がない酒類のアイテムは放置していたが今思うとそれが幸を奏して美味い酒が飲めるんだから世の中何があるか分からない。まぁ、私が体験している現状以上の分からない事はそうそう無さそうだが

 

「それにしても、まさかデスピサロ様からこうして食事に誘われるとは思いませんでした」

 

「今までここを留守にしていたからな…それの詫びではないがお前達を労う必要もある。それに私としては1人で食事をするよりもお前達と親睦を深めながら食事をする方が遥かに有意義だと思っている」

これは本心だ。今までNPCだった者達が生きている以上これからは彼等とのコミュニケーションも必須事項となる。そうなると部下と上司以上の繋がりがあった方が後々にも役に立つだろう。

 

「そ、そこまで我らを思って頂いているとは!このピサロナイト全員の気持ちを代弁して深く感謝申し上げます!」

 

しかし、ここまで感謝されるとは思っていなかったな…

暗黒の魔神とかもう完全にあれ泣いてるし、確か帰還式の時も泣いてた気がするから案外涙もろいのかな?自分で作成したNPCだけど設定とかはちょくちょくタブラさんと話しながら作ってたから量が夥しいことになって正直全部憶えてないんだよな

 

「そこまで畏まるな、今宵は存分に楽しもうではないか。ソリュシャン、料理長に美味い料理を期待すると伝えておいてくれ。」

 

「かしこまりました」

 

デスピサロのその一言でデスパレスのキッチンにいるコック達は水を得た魚のように調理に勤しんでいたという。

 

ー✱ー✱ー✱ー

シモベ達との会話を楽しみつつ、辛口の白ワインを飲んでいるとソリュシャン達が料理を銀のワゴンで持ってきた。

ソリュシャンは私に他の給仕達はそれぞれのシモベ達にミス一つなく完璧に配膳をこなす。

 

「オードヴルの1皿目は《海竜とシャークマジュのマリネ》でございます。」

 

「ほおこれは美味そうだな」

海竜とシャークマジュ、どちらもユグドラシルが期間限定のドラクエコラボをしていた時に出てきていたサメのような見た目のモンスターだ。恐らく海竜であろう切り身の方は白身魚のようにも見えるが若干薄がかった青色なのが分かるそれに対してシャークマジュの方だが、こちらはこうして調理された状態で出されると一見サーモンのマリネのようにも見える。これはなかなかに味が楽しみだ。さて味の方は・・・・・・

 

「・・・・・・美味い」

“美味い”ただその一言に尽きる。味は見た目同様にサーモンに近い事もあって一緒に添えられている玉ねぎとの相性もよく程よい酸味もサッパリとした味付けをまとめ上げており、オードヴルの仕事を十全に果たしている。そして何よりもその鮮やかさに目を惹かれる。料理とは目、耳、鼻、口で味わうものと何かで見た気がするが本当にその通りだ。

 

ただ美味いものを食べる。生物の三代欲求のうちの一つ食欲を満たすだけでこうも生の充足感を感じさせてくれるという事を初めて知った。

こうなると今後の料理にも期待が高まる。

 

ー✱ー✱ー✱ー

「2品目は黒い仔山羊の肉とバジリスクの卵を使ったスフレでございます。 」

 

スフレ…確かメレンゲに様々な材料を混ぜオーブンで焼き上げた料理だったか?

なるほど、こうして見るとカップケーキのように見えるが中を割ってみるとフワフワとした卵に薄く切られた黒い仔山羊の肉が優しく包まれていて先程の鮮やかな色彩と打って変わって優しい色彩だ。黒い仔山羊は確かその肉を食べると子宝に恵まれるとかいう裏設定があった気もするがクトゥルフ神話系統の生物で数少ない食用可能な神話生物だった筈だ。

 

「確か黒い仔山羊の肉を食べると子宝に恵まれるという逸話があるようだが、これは料理長から私に対する世継ぎの心配かな?」

巫山戯た調子でそう言うと揃ってみんな「早くご子息の顔が見たいですな」とか「デスピサロ様の妾に選ばれる女性は余程の強運の持ち主ですね」等と酒が入った影響か初めよりはだいぶ砕けた感じで会話をできるようになっていた。

 

「ならばソリュシャンでも嫁にとるか?」

 

「お、お戯れを・・・」

私が軽い調子でソリュシャンに言うと瞬時に顔を真っ赤にして俯いてしまう。恥ずかしがるソリュシャン超可愛いです、はい。

 

「ククク、冗談だ。本気にするな」

ただやり過ぎはよくないのでこの程度にしておく。嫌われちゃったら元も子もないからね、仕方ないね。

 

「デスピサロ様も悪いお人だ。」

 

「花と女は愛でるものとよく言うだろう?」

 

「違いありません」

その言葉で食事の席に笑顔が灯る。やはり大人数で食事をするのは楽しいな、久しくこの感じを忘れていた。

 

リアルでは毎日1人で安い飯をただ淡々と食べ仕事に向かうというただ作業的に生きていたものだった。だが今はこうしていずれ家族とも呼べるであろうシモベ達がここにいる。それにモモンガさんだっている。それを考えただけで心が満たされた。

きっとこんな事を思うのも卵の純粋な優しい味とそれを邪魔しないよう絶妙なバランスで味を整えた黒い仔山羊の肉、そしてスフレ特有のふっくらとした柔らかさによって包まれたような感覚に陥ったからだろう。

 

ー✱ー✱ー✱ー

「スープはグリーンポタージュでございます。尚、食材は全てアースガルズのベジタブルスカイで採られた野菜を使用しております。」

 

「ほお、ベジタブルスカイの野菜か」

 

ベジタブルスカイ…ユグドラシル時代ではそこそこ需要の高かった領域。その理由はベジタブルスカイで採れる食材を使った料理には全て敏捷や索敵値を三段階向上させるという破格のバフ効果が付いてきていたからだ。しかしその代わりベジタブルスカイにいる敵MOBは総じて平均レベルが高く市場にも滅多に出回らなかった為そこの食事は希少性は入手難易度に比べて高かった。けれど、私のアバターはとある欠点があった為とにかくスピードを上げ相手に行動を起こさせる余裕を与えない必要があったためそこの食材はアホみたいにかき集めた記憶がある。確かデスパレスの何部屋かはそう言った食材だけを貯蓄する部屋だった筈だ。恐らく今回の材料もそこから持ってきたのだろう。

 

「ベジタブルスカイの食材は久々だな。どのような味に仕上がっているかな」

 

皿によそわれたグリーンポタージュを上品にスプーンで掬いとり口に含む。その瞬間口全体にポタージュの深い味わいと野菜1つ1つに含まれる旨みが広がる。今までの料理と違い少し濃いめの味付けだがそれがしつこい訳でもなく野菜本来の甘みを感じさせた。それがさらにスプーンをすすませた。

 

そうして、スープを食べきると今度は口直しの意味も兼ねたパンが配膳される。それを食べつつワインも飲みシモベ達が食事をしながら楽しそうに談笑する様子を見ていると自然と顔が綻ぶ。

 

「なぁ、ソリュシャンよ」

「なんでございましょう?」

「私は本当にここに帰ってこれて良かったよ。ここには私を慕ってくれるあいつらがいる。私を友と呼んでくれるモモンガさんがいる。そんなナザリックに帰ってこれて良かった。」

同じような事をさっきも思った筈だがやはりこの気持ちは誰かに伝えたかった。

「それは私も、いえ私達もデスピサロ様がお帰りになられて本当に嬉しく思っております!」

 

「その通りですよデスピサロ様」

「ピサロナイト・・・」

どうやらソリュシャンとの会話は他のシモベ達にも聞かれていたらしい。あー恥ずかしい

 

「私達はデスピサロ様のお力によって生を受けこうして生きていられるのです。つまるところ我々魔族はデスピサロ様あってのこの命、デスピサロ様が我々の存在理由なのですよ。故に次からはデスピサロ様には我々をもっと頼って頂きたいのです。」

 

「エビルプリースト・・・」

あー、駄目だ泣きそう。ここでまた何か言われたら絶対に私泣いちゃうよだから私は笑ってしまおう

 

「ふふふ、エビルプリーストも言うようになった。ではこれからは望み通り存分に頼ってやろう。」

 

私が不敵に笑うとこいつらも笑い返す。他者から見れば完全に悪巧みをしているように見えるが私達はこれでいい。何故なら私達は魔族で私は魔族の王なのだから。

 




デスピサロ様は天然の女誑し!天然だから仕方ないね

また、多くの評価、感想、お気に入り登録ありがとうございます。それと、評価の際☆5以下の場合改善点等ありましたら一言に書いて下さると書く側としても問題点を改める機会となり作品の更なる向上に繋がりますのでよろしければお願い致します。

それと、評価の一言や感想等、自分でも読み直し考えた結果6話の戦闘回は後日加筆修正を加えて投稿し直す事に決めましたのでそちらもよろしければお楽しみください。それでは今後ともこの作品をよろしくお願い致します。
では皆様次回までしばしお待ちを!
追記:活動報告のアンケートまだ募集しています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。