SONIC THE IMMORTAL FANTASIA 作:トラちゃん
「ソニック! 早く早く!」
「待てって… オマエも足が速くなったなぁ」
草が茂るグリーンヒルを、二人の少年が駆けていった。
彼らは兄弟だが、ほぼ見た目は変わらず、同じような体格をしていたし、「双子」と言われても仕方がなかった。
しかし、彼らには体色の違いがあった。
兄は青色で、弟はやや薄青の混じった黄緑色だった。
「急がないと…父さんに何かあったんだって、母さんから連絡が来たじゃないか!」
「分かってるよ… でもな、オマエは体が弱いから、あんまり飛ばしたら…」
「兄ちゃんは心配性だなぁ… この際、そんな事なんか気にしてられないよ! ほら、もうすぐだから、早くして!」
「…。 分かったって」
彼らは、弟の甲斐もあって、すぐに家に辿り着いた。
彼らを待っていたのは、母親だった。
「まあ、早いわね、二人とも…」
「…母さん。 何があったんだ?」
母親は、少しうつむいてから、静かに言った。
「あなた達の、お父さんがね… さっき、亡くなったんですって」
「え…?」
「な、何かの間違いだよ! だって、父さんは…そんな、物騒な所には行ってないんでしょ?」
父親の職は技術者で、今日は「古代ナックルズ族の技術の調査に行く」と言って、家を出ていた。
「確かに、あそこは物騒な所ではないわ。 ただ…」
「ただ?」
母親は、何かを覚ったように、呟いた。
「逆鱗に触れてしまったのかもしれないわね…」
「だ、だから、父さんは…!」
母親は、弱々しく首を振った。
「通りがかった人が、もう処理をしてくれたみたいなの」
「本当に、父さんは…死んだの?」
何度も問う子供達に、母親はぴしゃりと言った。
「事実は事実よ。 …お父さんも、あなた達には平穏でいてほしいと思っているはずよ」
「そんな…!」
その場の雰囲気に耐えられなくなったのか、ソニックが弟の腕を掴んだ。
「兄ちゃん…!」
「母さん、ちょっと… 外に出てくる」
「あら…別に、いいわよ」
「そうか。 行こう、レイヴン」
レイヴンと呼ばれた弟は、半ば呆然としながら、兄と共に家を出た。
「酷いよ。 父さんが急にいなくなるなんて」
「オレもそう思う。 なあ、レイヴン」
「何?」
ソニックは、夕暮れの色に染まるグリーンヒルを仰いだ。
「オレ達ってさあ、物心ついた時から……災難とか不運ばっかり周りに起こってないか?」
「兄ちゃん… 僕も同じ考えだよ。 だから、ここに住んでる人に避けられたりするんだよ。 僕たち、あの人達に何もしてないのに」
彼らは、レイヴンに物心がつく以前から、色々なものに避けられていた。
彼らの調子が良いときに災害が起こったり、身の回りで物騒な事件が相次いだり、怪奇な事も度々起こった。
彼らの両親が彼らを産む前は、そのような事も無かった。
そこで彼らは、こう噂されていた。
『彼らは、神に罪を背負わされた堕天使だから、近づいてはならない』と。
実際そうなのかは、誰にも分からなかった。
母親も、周りの人々のせいか、彼らを忌み嫌うようになりかけていた。
しかし、父親だけは、そのような事には耳を貸さず、ソニックには走りを、レイヴンには機械の知識を教えてくれていた。
そして……何よりも、父親は、彼らを可愛がって、愛してくれた。
だが、その父親は、もうこの世にはいない。
今や、彼らが心から頼りにできる存在といえば、彼ら自身か、お互いしかなかった。
「酷いよ… 誰がこんな事にさせたんだろう。 僕らは……何もしてないのに……」
「おいおい、泣くなって…… 泣いたら、父さんが心配するだろ?」
兄に励まされ、弟は泣くのを止めた。
「兄ちゃんって、すごいね… なんで、いつもタフなの?」
「さあな… オレは、風みたいなものだからな、色んな事は全部風に流すんだよ」
それを聞いて、弟は再び泣きそうになった。
「僕、兄ちゃんしか頼れないよ… 兄ちゃん、ごめん。 いつも兄ちゃんに頼ってばっかりで、体も弱いし……全然、役に立ててないや」
「そんなこと無いさ… オマエは、この前、父さんと二人で飛行機を作れてただろ? オレ、ああいうのが欲しかったんだよ……ほらな? 役に立ててるだろ?」
「兄ちゃん…!」
弟は、今度こそ大泣きして、兄に抱きついた。
兄は、そんなか弱くも愛おしい弟を、優しく撫でてやっていた。
それからしばらくして、彼らの母親も、どういうわけか、亡くなってしまった。
愛着はさほど無かったとはいえ、それでも母親なのだから、彼らはやはり悲しんでいた。
「兄ちゃん……僕たち、きっと見捨てられたんだよ」
「え?」
普段は内気な弟が、急に激しい事を言ったので、兄は驚いてしまった。
「だ…誰に……?」
弟は、兄の目をしっかりと見据えて言った。
「…この世界に、だよ。 だって……父さんも母さんも悪くない。 じゃあ、悪いのは……この世界だ」
「だから、どういう…」
「あの人々を動かしてるのは、世界だ。 それに、大地や空を動かしてるのも、世界しかいない」
「…オレ達は、本当に……罪を背負わされてたのか?」
「そうだよ… 僕たちは何も悪くない。 悪いのは、僕たちを見捨てた世界だよ」
「ど、どうすれば…」
「逆に、僕たちがこの世界を見捨てたらいいんだよ。 兄ちゃん、一緒にやってくれるよね……」
「勿論さ。 …オマエは、オレの……たった一人の、大事な弟だからな」
◆◆◆
「…そう。 これで彼らは、世界への報復に乗り出した訳だ。 分かっただろう?」
ひととおり、真実を知ったシャドウ達は、皆驚いていた。
「わ、分かった……けど、レイヴン君でいいのよね……は、今はどうしてるの?」
「良いところに気がついたな! …私が、彼を封印し、彼にまつわる記憶も、この世から全て取り去った。 だからな、ソニックに以前の記憶が無いのも、無理はなかったのだよ」
「…では、貴様が封印を解いたのか?」
「そうだ。 …レイヴンからの『闇が発する声』がな、最近どうも強くなってな… あちこちで禍が起き出していて、封印を解かざるを得なくなったのだよ」
「そんなに、レイヴンの力って凄いんだ…… …どんな力なの?」
コロナが咳払いして、杖を立てた。
「それはな… そうだな、様々な『記憶』を操る能力だ。 『記憶』を作り替える事は勿論、抹消する事も可能だ。 それとな……私達の中の『記憶』の力を強めたりもできる」
そこで、しばらく置いてけぼりだったエッグマンが、やっと声をあげた。
「つまり、ワシらの『記憶』が、ワシらに与える影響を強めたりできる訳じゃな」
「そうだ。 流石はIQ300だな」
エミーが、縮こまって呟いた。
「じゃあ……ソニックには、どんな力があるの?」
「…実はな、そなた達も、知らずのうちに彼にその力を試されているぞ」
「え!? そ、そんな…心当たりなんかまるで無いけど!?」
その時、彼らを包んでいた『記憶』が開けて、彼らは別の場所へと飛ばされていた。
「それは、その力が良い方向に使われていたから、気がつかなかったのであろうな…… …レイヴン。 いい加減にしろ」
コロナが声をかけた先に、二人の少年がいた。
「…ソニック!?」
ソニックは、彼らを見るなり、頭を押さえてうめき声をあげた。
「だ、大丈夫!?」
「オレに……近寄るな。 …オマエ達を……危険な目には……遭わせたくないんだ………」
それまで後ろを向いていたレイヴンは、振り替えって彼らに笑いかけた。
「なっ……レイヴン……?」
「困っちゃうよ。 兄ちゃんが、なかなか思い出してくれなくてね。 …でも大丈夫だよ、すぐに『消える』から」
レイヴンは、眼帯をしていた。