SONIC THE IMMORTAL FANTASIA 作:トラちゃん
いつもと何ら変わらない宵闇の中で、ソニックが見た『夢』とは……
第2話
「ソニック~! こっちこっち!」
太陽が照りつけるグリーンヒルで、ソニックと彼の仲間たちは、いつものように楽しく時を過ごしていた。
このグリーンヒルには、極端に言うと、広い道と自然しか無いに等しいので、彼らは今もまた、道を走ったり、自然を愛でたりしていた。
「元気だなぁ、テイルス。 オレは昨日、ちょっと夜更かししちまったから眠いんだよな…」
「まさか、また夜まで走りこんでたの? あんまり動きすぎると、体に良くないよ、ソニック」
「はは…… ありがとな、テイルス」
少し前に大きな冒険があって、その時から今まで、これといった事件も何も無かったので、彼は退屈してしまっていたのだ。
…もっとも、流石の彼にも、何も起こらないのが一番だという事は、分かってはいたが。
「ボク、また新しいメカを作ったんだよ。 今は丘の上に置いてあるんだ。 エミー達にも見てもらいたいから、今日はみんな呼んでるよ」
「げ…… エミー…?」
「またまた……。 エミーは単純にソニックの事が好きなだけなんだから、ちょっとは我慢してあげてよ」
「…。 アイツに悪気は無いんだから……まあ、良しとするか」
少しして、彼らは丘の上に着いた。
そこにはすでに仲間たちが集まっており、例の少女もいた。
「ソニック~!! もう、遅かったじゃない! アタシ、ずっと待ってたのよ?」
「わ、分かったから……抱きつくなって! て、テイルスのメカを見てからにしようぜ、なあ」
「みんな~、注目! 今回は、トルネードを更に改造した、次世代機だよ! じゃじゃーん!」
テイルスが、メカに掛けていたシートを取り去った。
現れたのは、トルネードの原型を留めてはいるが、かなり見た目が進化している小型飛行機だった。
ボディは、初代トルネードと同じ赤色に統一されていた。
今までにも、テイルスはトルネードの次世代機を沢山作ってきたが、ボディの色は青色だったり、違う色になったりしていた。
しかし、今回は、初代機と同じ色にしてくれていた。
それが、ソニックには少し嬉しく感じた。
「凄いじゃないか! どんな機能があるんだよ?」
「えっとね、高い性能のGPSを搭載してて、位置がより正確に分かる機能と、機銃の追尾性を上げたりできる機能だよ! 他にもたくさんあるけどね」
「そうか…… じゃあ、コイツで色んな場所に行ってみような、テイルス」
「うん! 勿論だよ!」
ソニックは、正直なところ…まだ初代機を乗り回したかった。
元々は自分が所有していたし、何よりも愛着があるからだ。
倉庫にしまって鍵をかけておこうにも、何故かそれができなくて、いつも彼の側に置いていた。
そして最近、初代機を眺めていたら、彼は、座席が一つ取り外されたような跡を見つけた。
彼の記憶では、トルネードは元々一人乗り専用で、二人乗り用には設計されていない筈だった。
しかし……うっすらと、座席がもう一つあったような跡が、確かに残っていた。
誰か、他に所有者はいたかと、彼は記憶を探ってみたが、思い当たるものは何もなかった。
「不思議だな……」
「え? どうしたの、ソニック?」
思わず独り言を呟いてしまい、彼は恥ずかしくなった。
「な…何でもないさ。 それより、オレはちょっとこの場を離れるよ」
「え? 何で? …あ、分かった。 エミーが追いかけてくるからでしょ?」
本当は違っていたが、テイルスがそのように考えてくれたので、彼は安心した。
「そう……そうだよ。 じゃあ、エミーを頼むぜ」
「オッケー! いつでも戻ってきてね!!」
テイルスが快く送り出してくれたので、彼は駆け足で、初代機を見に向かった。
「…ここだ。 絶対に、座席はもう一つあったはずなんだが……」
何回見ても、座席の跡は消えていなかった。
勿論、その跡は昔から気になっていたが、最近になってから興味が増し始めた。
「おかしいな…… 誰が………」
誰がいたかな、と言う途中で、彼は唐突に、あることを思い出した。
「…確か、オレと同じぐらいの歳のヤツがいたっけな…… 誰だっけ?」
面影はかなりはっきりしてきたが、どうしても顔と名前は思い出せなかった。
…同じぐらいの歳で、オレと同じような見た目で……
…友達か? にしては、似すぎてるな……
…だとしたら……
彼が、その考えを結論に達させる前に、彼は動き出していた。
…いや、『何か』に動かされていた。
「なっ… な、何だ? オレは何をしようとしてるんだ?」
訳が分からないまま、動かされる彼は、確かに『何か』の声を聞いた。
『気づくのが遅いなぁ、オマエは…… 走るのだけは、速いんだけどな』
彼は、突然に、意識と身体が切り離されたように感じた。
身体に動きを命じても、身体が反応しない。
代わりに、別のものに応えていた。
「やめろ…… 何をさせるんだよ!?」
『分かんないのか。 …無理もないな。 何しろ、忘れさせられてたんだしな』
「は…?」
気がつけば、彼は仲間たちの近くまで来ていた。
すぐそこに、信頼できる仲間がいるというのに、彼には声をかける事もできなかった。
声をかける代わりに彼が『させられた』のは、他でもなく……
『もうすぐ、思い出すだろうな。 待ってくれてるヤツがいるんだぜ? そしたら、すぐに分かるさ』
…仲間を、傷つけることだった。
『今、オマエと関わってるコイツらには、存在する価値なんてないって事をな』
「何で……そんなことが………!」
『他には…そうだな、オマエには、やらないといけない、大事なことがあった、って事だな』
ようやく、彼に身体が戻ってきて、彼は仲間たちの無事を確かめに行った。
しかし、彼らからは、何も感じとることができなかった。
…息の音でさえも。
「そんな……そんな事が………」
『ショックか? だろうな。 …でもな、オマエは何もしなくていいみたいだぜ。 全部、アイツがやってくれるんだからな。 …感謝したほうがいいぜ?』
「オレに…… 何があったっていうんだ………?」
『教える訳にはいかねぇなぁ。 自分で確かめないとな… ほら、もう夜が明けるみたいだぜ』
「これは……夢か? 夢なんだよな?」
『そうだ。 でもな、違うぜ』
「もうすぐ、現実になるんだから。 だから、あとちょっとの辛抱だよ。 …僕の、一番大事な人」