鎮守府に神父が着任しました   作:フリッカリッカ

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鎮守府に神父が着任しました

 鎮守府に神父が着任しました 1

 

 

 ――真の『幸福』を私は知っている。

 

 全人類が未来を『覚悟』することこそが真の『幸福』である。

 

 たとえ、それが不幸な未来であったとしても――――明日『死ぬ』と分かっていたとしても、『覚悟』があるから『幸福』なのである。

 

 私は神からその境地に人類が到達するための力を授かったのだ。これによって人類は新たな段階へと押し上げられる。

 

 

 だが、その前に全ての因縁は断ち切っておかなくてはならない。あの小僧……エンポリオ・アルニーニョだけは一巡する直前で始末しておかなくてはならない。

 

 私の親友、DIOとジョースターの血統の最後の因縁。

 

「それを今断ち切るッ!! 『メイド・イン・ヘブン』!! 宇宙は『一巡』するッ!!」

 

 私がそう宣言した直後に、宇宙は特異点に到達した。

 

 

 ――――その時、私の体は二つに分裂した。

 

 いや、その表現はおかしい。完全なる力を手に入れた『エンリコ・プッチ』から『私』が弾き出されたのだ。

 

 弾き出されたことによって私は私を完全に認知する。あり得ないことに、私は一つの個として独立したのだ。

 

 そもそも、私はまだ『エンリコ・プッチ』の中に存在していたことに驚きだった。私は既に『メイド・イン・ヘブン』として生まれ変わったものだと思っていたが、どうやらそうでは無かったらしい。

 

 そして、『エンリコ・プッチ』と『私』は離れ離れになる。彼は特異点から一巡後の宇宙へと旅立った。私はどこに行くのだろうか。このまま彼の後を付いていこうとしたが彼の『メイド・イン・ヘブン』のスピードは凄まじく、私は置き去りにされた。

 

 かといって、宇宙の再誕が私を待ってくれるはずもない。遠く遠くまぶしい光の中に飛び込んでいく彼の背中を見ながら、私は反対の方向へと引っ張られていく。

 

 振り向くと、そこにも同じようにまぶしい光があった。抗いがたい力で私を引き込んでいる。私は『エンリコ・プッチ』の中にいたから分かった。頭では無く、感覚で理解できた。

 

 

 私――『ホワイトスネイク』は『平行世界』へと連れ去られた。

 

 

*   *   *

 

 気が付くと『彼』はそこそこの広さのある簡素な一室にいた。部屋は簡素ながらも暖かい雰囲気があり、広めのテーブルと椅子、いくつもの写真が並んだ棚、お洒落な刺繍の入ったカーテンとカーペット。そのイスの上で『彼』は腕を枕にして眠っていたようだった。

 

「……」

 

 自身は『スタンド』なのに眠っていた、という状態に違和感を持ったが、テーブルの横の壁にかかっている鏡に映る自分の姿を見て『ホワイトスネイク』は驚くと共に納得した。

 

「……なるほど」

 

 彼の目に飛び込んだのは彼自身の本体である『エンリコ・プッチ』そっくりの人間だった。むろん、それは自分の擬態能力を使って変身しているに過ぎない上辺だけの見た目だ。何故自分が神父の恰好をしているか全くわからないが、スタンドとしての能力は残っていることに安堵する。

 

(何はともあれ、ここは一体どこなのだろうか。私は元々『メイド・イン・ヘブン』の一部だったから、ここが本体の向かった先の世界とは別の世界だということは理解できる)

 

 ただ、『ホワイトスネイク』が疑問に思っていることは「平行世界で多少差異は発生するとしても、ここがG.D.st刑務所であることは変わり無いはず。しかし、刑務所にはこのような施設は無かった」ということである。

 

 と、そこまで考えて『ホワイトスネイク』は棚に置いてある写真と大量の書類に注目した。

 

(……調査報告書と活動記録書……そして日記も付けているな。こっちの写真は私と他に人間の少女が数名……だが、この見慣れない服装は一体……?)

 

 写真に写っているのは神父の姿をした自分であろう人物と、数名の少女だった。だが、彼女たちの恰好は普通の少女とは違い、水兵の服に大量の兵器を積み上げたかのような何とも言い難い珍妙な格好である。

 

 写真だけでは何も分からないと思い、『ホワイトスネイク』はまず活動記録書を取り出し机に広げた。

 

 

 

 彼が資料を読み漁り、日記にもあらかた目を通したところで扉のノック音が部屋に響く。

 

「神父さま……いや、今は提督なのでした。入ってもよろしいでしょうか?」

 

 『ホワイトスネイク』は適当に書類を纏めて逡巡する。日記に書かれていることを信用するならば、この声の主は書記艦の電(いなづま)のはずだ。一体彼女が何の用だかは知らないが、書面では随分と彼のことを慕い、彼もまた彼女のことを目にかけていたようだった。

 

 いまいち自分の置かれている状況が分からない『ホワイトスネイク』は取り敢えず当たり障りのない返事をする。

 

「いいぞ、電」

 

 果たして自分の解答が正しいかどうか不安だったが、扉の向こうから「はいなのです」という可愛らしい声が聞こえ、ほっと胸をなで下ろす。

 

「お疲れ様なのです、提督! 二刻前に出撃した第一艦隊が帰還しましたのです!」

 

 ぴしっと礼をして、彼女は堂々とした声で報告をした。彼女の報告を合図に、扉の後ろで控えていた少女たちがぞろぞろと部屋に入って来る。

 

 多くの少女たちが負傷していた。

 

「報告します。沖ノ島決戦あ号艦隊作戦、大破3中破1により中途撤退。敵主力艦隊未だに補足できず。……申し訳ございません、私というものがいながら……」

 

 報告をした少女は悔しそうに顔を歪ませていた。その声には沈鬱な表情が見て取れ、かなりの責任を感じているように見える。他の疲弊した少女たちも同じように俯いて、誰も口を開こうとしない。

 

(……書類通りだな。沖ノ島攻略についての資料ばかりで他の資料が一切無いのはこのためか……)

 

 『ホワイトスネイク』は何も言わず、そう心の内で結論付ける。

 

「あ、ほ……報告は以上です」

 

 何も言わない『ホワイトスネイク』に対して何か不安を感じているのだろうか、報告をしていた少女はばつの悪そうに言うのだった。

 

 正直な話、『ホワイトスネイク』は何を言うべきか全く分からなかった。そもそも、この少女たちが一体どうしてこんな戦争に駆り出されているのかも知らないのだ。一巡前と一巡後でこんなにも違うとは全く考えていなかった。当然と言えば当然のことである。

 

 だから彼は『理解』出来ていることだけから判断し、傷だらけの彼女たちに一言だけ言葉をかけた。

 

「……まずは負傷を治せ。あとしばらくは沖ノ島攻略は見送る」

 

 その言葉に彼女たちは電も含めて目をぱちぱちさせて驚いた。あれだけ沖ノ島攻略にこだわっていた提督が見送ると言ったからだ。そして何より、作戦についてより自分たちへの配慮が先であることに。

 

「は、はい! 了解しました!」

 

 一瞬返答が遅れたが、彼女たちは再び敬礼をしてその場を後にした。残ったのは彼と電だけである。

 

「て、提督……いいのですか? あともう少しで攻略できるって……」

 

 電の反応を見る限り、どうやら沖ノ島攻略に関する詳細は彼女たちに伝えていなかったらしい。どう考えても今の段階で攻略は不可能だろう。資料を見て『ホワイトスネイク』は思ったが、実際の彼女たちの負傷を見て確信に変わった。

 

「いいんだ。現状では不可能だと、分かったからな」

 

「……そうなのですか」

 

 電も驚いた表情で記録を綴った。それを見た彼は「あぁ、あと一つ」と電に追記すべきことを告げる。

 

「彼女たちの修復が終わったら全ての艦をここに集めてくれ。確認したいことがある」

 

 『ホワイトスネイク』は艦名簿を見た。総勢21名。誰が誰だかは書類と日記による情報でしか知らないのだ。

 

(……前の世界とは全然違うが、本体無き今、私は私自身で好きにやらせて貰おう。ここでの生活はどのようなものか、気にもなるしな)

 

 これまで主人の命令に忠実に動くだけの彼は初めての自由というものにも、初めての主人という立場にも聊かの期待を持っていた。こっちに来た直後はすることが無いと思っていたが、やるべきこともあるではないか。

 

「……な、なんだか提督、人が違うみたいなのです。こう、失礼ですが……以前とは違った凛々しさというか、優しさというか……」

 

 電は何か恥ずかしそうに視線を逸らしながら彼に告げた。だが、彼はその言葉に特に何の憤りもなく、逆に少し清々しいくらいの気分でこう答える。

 

「正しい表現だ。私はグリーン・ドルフィン・ストリート鎮守府従軍神父兼艦隊総司令官、エンリコ・プッチなのだから」

 

 名前を借りるが、これも好きにやらせて貰う、元主人よ。

 

*   *   *

 

 あとがき

 

 新年明けましておめでとうございます。

 

 皆さん、初めましての方もそうでない方も、こんばんは。フリッカリッカです。

 

 今回はジョジョの奇妙な冒険Part6からプッチ神父から宇宙一巡の時に分離した『ホワイトスネイク』が鎮守府に着任するという設定のクロスオーバーとなります。プッチ神父では無いです。ここ重要。現在執筆中の「ボスとジョルノの幻想訪問記」と平行……という形になりますが、投稿ペースが遅れないように頑張らせていただきます。

 

 えー、正直言って『ホワイトスネイク』がどんな人格であるか原作では全く分からないので(そもそも自我があるかどうかも謎)、「こんなんホワイトスネイクじゃないよぉ」という方がいらっしゃったら申し訳ありません。でも基本はプッチとして扱うつもりです。次の話から彼のことはもうプッチと呼びます(『ホワイトスネイク』ってタイピングするの面倒ですし)。

 

 って、これもはやプッチ神父鎮守府入りでいいんじゃあないかなぁ、と思いますが彼を主人公に据えると「お前ら艦娘はここで死ぬんだ! それを覚悟し、鎮守府全体の利となることを幸福に思いながら散ってくれぇええ!!」とかなりそうで怖いです。

 

 あと、提督が変幻自在ってのもよくないですか? いろんなキャラに変身してあんなことやあーん♡なことを……え? 望んでないって? いやそんなばかな

 

 総勢21名の艦娘、まだ一人しか明らかになってませんがもう一人くらいは分かるんじゃあないでしょうか? 報告してた娘とか……いや、ほぼノーヒントですねこれ。

 

 なにはともあれ、艦これの二次創作は初めてなのでこれから先至らぬ点はあると思いますが、のんびりとお楽しみください。自分はこの作品日常系多めで行きたいと思っているので。

 

 それでは、第二話でお会いしましょう。

 

 感想評価意見批評などお待ちしております。

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