鎮守府に神父が着任しました   作:フリッカリッカ

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赤城さんの場合

 鎮守府に神父が着任しました 2

 

 赤城さんの場合

 

 

 先ほどの沖ノ島攻略で旗艦を任されていたのは航空母艦の赤城であった。彼女は出撃直前にあの理不尽な提督から多大なるプレッシャーを受けていた。

 

 ――――この任務が最後のチャンスだ。お前が帰ってくるときは成功の報告をこの私にするときだけだ。出撃しろ――――

 

 赤城はその時、無表情で返事をした。いや、彼女自身返事をしたかどうかさえも覚えていなかった。失敗した時の言い訳を考えていた。どう考えても今の自分たちの装備では、自分たちの艦隊では要塞のような沖ノ島を攻略することは不可能なのだから。

 

 案の定、敵主力艦隊に行き着く前に戦艦1隻と軽空母1隻が大破。撤退の為に囮となった駆逐艦たちは運よく大破と中破だけで済んだが、普通に考えれば彼女たちは轟沈してもおかしくは無かった。どれもこれもあの提督のせいである。

 

 だが、そんな不満はあれど、彼女自身はただの一兵器だ。総司令官である提督の命令に背き、意見をするなど言外である。いくら航空母艦といえど、規律違反はただでは済まされないだろう。

 

(だけど、さっきの提督の態度は……?)

 

 赤城には人が違ったように見えた。彼女は自室で正座し、精神統一をしていたが先ほどの意外過ぎる提督の発言に気が散って全く身に付かない。

 

 もぞもぞ。

 

 彼女はむず痒い感覚に襲われ、遂には正座を崩した。

 

 と、その時コンコンと彼女の部屋をノックする音が。今はまだルームメイトの片割れは入渠中だから、この時間に来る人と言えば……。

 

「電さんかしら? どうぞ」

 

「はい、ありがとうなのです!」

 

 秘書艦の電である。よくもまぁ、あんな提督の秘書をしていてそんな元気を保てるものだと感心したくなるほどの声だった。

 

「え、えっと……これより3刻後の二三○○時に全艦娘は執務室に集合、とのことなのです」

 

「全艦娘? どういうことかしら……?」

 

 電の唐突な伝達に耳を疑った赤城は思わず聞き返す。

 

「ええっと……詳しいことは私も聞かされていないのです。あ、ああ! でも、きっと今回の作戦失敗とは関係無い……と思うのです。多分」

 

 多分って……。たまに頼りない時があるのよね、この娘。

 

「にしたって、二三○○から作戦会議かしら……? でも時間が時間だし、何より作戦会議なら私たち第一艦隊だけでいいはず……」

 

 思い当たる節が全くない赤城は不安に駆られる。電は今回の任務とは無関係だと言っているがその保証は全くない。もしかすると解体命令とか下されるかもしれない……。

 

 それは無いとしても、資源の節約命令などは十分にあり得る。それはそれで彼女にとっては死活問題なのだが。

 

「……もし資源節約命令だったら本気でストライキしようかしら。ボーキサイトが無い生活なんて死んだも同然ですし……ぶつぶつ」

 

「な、何だか一気に赤城さんが暗くなったのです……」

 

 死んだ魚の目をした赤城に若干引きつつ、電は扉を閉めた。

 

*   *   *

 

 3刻後。赤城はもう自室に戻っていた。

 

「……さっきのは何だったのかしら。名前だけ呼ばれて装備を確認して……え? 他に何もなかったわよね? 私が余りにも疲れてて会議中に寝てたとかそーゆーのじゃあなかったわよね?」

 

 先ほどの会議はほんの一瞬で終わった。その事実が未だに信じられず、彼女はルームメイトの艦娘に思わず尋ねてしまう。

 

「それウチが聞きたいわぁ……。お風呂あがって何言われるんやろと思ったけど、拍子抜けっちゅーか、何というか……。まぁ、特に何も言われなかったし、いいんじゃあない?」

 

 眠そうな目をこすりながら特徴的なシルエットをしたルームメイトは歯ブラシを取り出す。

 

「いやいや、不気味過ぎるわ。装備確認なんて秘書艦の仕事なのに、わざわざ提督が行うかしら?」

 

「んなこと言ったって現実にそうやったんやから、ええやん。寝よ寝よ。明日は礼拝日やで」

 

 納得のいかない赤城を他所にルームメイトは一分も経たないうちに歯を磨き終え、あくびを噛み殺しながらベッドに入った。

 

「……そうね、気にしても仕方ないわね。……ところで、あなた礼拝なんて滅多に行かないじゃあないの」

 

「ぎくり」

 

 もはや口で言ってる当たり、隠す気など更々無いのだろう。まぁ、あの神父兼提督はどちらかと言えば提督業にお熱で神父業の方はてんで雑だったから、何も心配は……。

 

*   *   *

 

 あった。何故かは知らないが、扉をノックする音が朝からしている。

 

「起きなさい二人とも。朝の礼拝の時間だ」

 

 この声は神父提督の声である。私は礼拝をサボったり遅刻をしたりしたことは(余り)無いが、それは礼拝の時間が規則よりも40分近く毎回遅れていたからだ。今日の様に、予定通り午前8時に始まることの方が珍しいのに。

 

「まだ寝ているのか?」

 

 コンコン、と扉を叩く音は止まらない。近所迷惑だ。

 

 当然ルームメイトは寝ている。このまま礼拝をぶっちするつもりだろうが、そうは行かない。遅刻者の道連れだ、容赦はしない。

 

「はい、準備は出来てます。ほら、早く起きましょう」

 

 わざと扉の向こうにいる提督に聞こえる声でルームメイトを叩き起こす。

 

「……うぅん、ウチがおるから……ここが第一艦隊やで……」

 

 寝言にしてはやけにはっきりとした寝言だ。というか、多分起きないであろう。

 

「すみません神父様。きっと彼女は起きないようです」

 

 赤城は扉を開けて神父提督に報告する。すると彼は意外な言葉を返した。

 

「分かった、では君は先に礼拝堂へ行きなさい」

 

 まさか、無理やり起こして参加させる気では無かろうか。そこまで礼拝に重点を置く神父では無かったのに。

 

 だが、特に反論も無いので赤城は言われた通り、先に礼拝堂へと向かった。そこには既に15人以上の艦娘が集っており、みんな眠い目を擦っている。

 

「おいーっす、おはよー赤城さん」

 

 入るなり、挨拶が飛び交った。これも珍しいことだ。

 

「おはようございます」「おっはよー!」「お早くない! おっそーい!」

 

「おはようございます、皆さん。……珍しいですね、こんなに揃ってるなんて」

 

 赤城はこの光景には流石に驚いた。まさか、彼はそれぞれの艦娘のところにああやって一々出向いているのだろうか?

 

 そして挨拶がしっかり出来ている。一応、赤城は努めて挨拶はするようにしているが、他の艦娘からこんな風に先に言われることは滅多になかった。

 

 後で聞いた話によると、神父提督が指示したのだという。私にその指示がなかったのはどうしてかは分からないが、明らかに神父提督に変化が起きている証左だ。

 

「皆さんも神父様に呼ばれて?」

 

 話すことも余りないので赤城は近くにいた軽巡の娘に尋ねる。

 

「うーん? 赤城さんもそうなの? 面倒だったよ、部屋の前に15分以上居座られちゃってさぁ」

 

「15ッ!?」

 

 そんなに朝の礼拝で全員揃う事が大切なのだろうか? 彼女には聊か疑問である。彼女の部屋の前で15分ということは、他の艦娘たちの事も考慮すると神父提督は一刻以上、呼びかけに回っていることになる。この礼拝は形式的な物であるはずなのに、どうしてそこまで……。

 

「……やっぱり赤城さんもそう思う?」

 

 赤城の表情を読み取った彼女も同じことを思っていたようだ。やはり、声には出さないが、誰もが彼の変化に戸惑っている。

 

「まるで別人が提督に成りすましているようだわ……」

 

 ぼそり、と赤城が漏らした言葉は隣の軽巡の艦娘に聞こえなかった。

 

 それから更に15分後に赤城のルームメイトがやって来た。彼女で最後だったらしく、罰の悪そうな彼女が所定の位置に着くと朝の礼拝が始まった。

 

*   *   *

 

あとがき

 

 こんばんは、フリッカリッカです。

 

 こんな感じでストーリーは淡々と進んでいきます。ほんとに日常的な話なのでつまらないかもしれません。

 

 取りあえずはこの短い文量で1人ずつを目安にG.D.st鎮守府の艦娘達を紹介していこうかなと。まぁ、何人か台詞で判明したんじゃあないでしょうか。

 

 さて、察しの良い赤城さんは早速神父提督の変化にかなりの違和感があるようです。まあ、いつかはそんな感覚、うすれてしまうでしょうがね。

 

 ちなみに、何故G.D.st鎮守府なのに沖ノ島攻略してんだ? って思われるかもしれませんが、舞台は日本です。日本にあるグリーン・ドルフィン・ストリート鎮守府です。名前が変なので周辺の鎮守府からは変な名前鎮守府って呼ばれてます(大嘘)

 

 というところで、また次の話でお会いしましょう。それでは。

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