「やあ、青年。そんなところに立っていないで中に入りなよ。」
「ああ、そうさせてもらう。」
木の匂いが心地いい。店内は植物が多く、池のような物もある。
「すまないが、ここはどういった所なのだ?」
「なに?知らないで入ってきたの?」
「うむ、なんというか、建物に魅力を感じたというか。」
「なにそれ。」
クスクスと笑う女性。
「ここは東洋の武器や防具、服や小物なんでもござれなお店よ。」
「なるほど、丁度武器が欲しかったところだ。」
「お望みの物があればいいわね。」
「ところで、何も置いていないように見えるのは気のせいか?」
「ああ、そういえば初見さんだったわね。ごめんなさい、うっかりしていたわ。」
少し慌てたようにカウンターから出てくる。
「こっちよ、いらっしゃい。」
手招きする女性に誘われ、池の前に来る。
「この池に手を突っ込んで。」
「こ、こうか?」
手を入れると何かに触れる。
「何かあった?」
「ああ、棒状の物だ。」
「ふふ、面白い人ね。そのまま泉から出して。」
泉だったのか、そもそも池と泉の違いとは?などと場違いなことを考えながら取り出す。剣の類いだろうが見たことのない形状だ。柄頭の部分、頭金に60㎝程の鉄鎖が付いている。
「この泉は、その人に相応しい武器を選んでくれるのよ。」
「それはなんとも、面白いな。それでこの武器は?みたところ剣の類いなのは間違い無さそうだが。」
「これはね、刀と呼ばれる剣の中でも日本刀と呼ばれる、東洋の剣よ。」
鞘から抜くと、血のように紅い本体に黒い波紋の刀身が顔を出す。
「波の模様みたいだな。なんというか、綺麗だ。」
「なかなかいい感性を持っているのね。」
ちょっと貸して、といい刀を催促するので素直に手渡す。すると紙を取りだし、刀に巻き付け泉に浸す。
「この刀の名前を紙に写すの。因みにわかるかな?」
「おおぐちのまがみ?」
何となく、本当になんとなく浮かんだ名前。しかし、これだという確信も何処かにある。
「んー…。正解!よくわかったね!」
そういって見せる紙には『大口真神』と書いてある。
「これは?」
「東洋の文字よ。読み方は貴方の言った通よ。」
そういって刀を手渡す。
「ところで君の着ている服は?」
「これ?これは和服というものよ。興味ある?」
「ああ、無いと言えば嘘になる。」
クスクスと笑いながら
「正直なのね。良かったら見てみる?」
「ああ、そうだな。」
こっちこっち、と手招く店員。奥へ進むと様々な服があり、目を奪われる。
「着付けの仕方は…、知らないわよね。いいわ、後で教えてあげる。とりあえず今は気に入ったものを選んでみて。」
そう言われ眺めると、色々あって困ってしまう。
「ふむ、悩むな。」
「それなら私が選んであげるわ。慣れたり、気に入れば自分の好みがわかると思うわ。」
「そうしてくれるとありがたい。」
「そうねぇ、小袖は白で…。袴は馬乗袴で、赤にしましょう。羽織は…。陣羽織で白の長いものにして…。」
正直何を言っているかわからないが任せるとしよう。言われた通りに着てみるとこれが中々落ち着く。似合うと言われれば気分も良くなると言うものだ。合わせてそれなりに高い買い物だったが、いい買い物をしたと思う。着物に身を包み、うきうきして帰ろうとすると
「そうそうお兄さん、一ついいかしら?」
「ん?なんだ?」
「貴方、どうして身体中に神聖文字があるの?」