「正直、全身びっしり神聖文字で埋まってる人、貴方しか知らないわよ。」
「ちょ、ちょっとまて、どういうことだ?俺の体に神聖文字?ファミリアに所属しているから背中には有るが…。」
「あら、知らなかったの?てっきり自分でやっていると思ったわ。」
「待ってくれ、話についていけない。そもそも神聖文字とは神の文字だろ?」
「本当に知らないみたいね。んー、そうね…。私は魔力が見えるのよ。だから貴方が魔力で神聖文字を書いて何かしていると思ったの。」
「それだと辻褄が合わないだろ。」
「言ったでしょ?魔力が見えるのよ。だから貴方の魔力に神格があることも見えてしまうの。貴方の刀の名前、あれは東洋の日本という国の神様の名前よ。神格でもないと引き当てられないわ。」
「まてよ、てことは俺の魔力と神聖文字の魔力が一緒ってことになるのか?」
「そうね、同じよ。」
どういうことだ?自分でやったつもりはない。誰かに何かされたとしても自身の魔力が弄られれば流石に気付く。しかし、魔力値については辻褄が合う。
「自分でやってないならおかしいわね…。まあ、見える人にしか見えないから気にすることはないわ。神聖文字も種類があるようだし、神様でも解る方にしかわからないわ。」
「そうか…。色々ありがとう。また来るよ。」
「まいどあり、気長に待ってるわよ。」
解る神にしかわからない。つまり、俺と同郷の神ならわかる可能性があるということか…。あいつのもとへ行くか?それ以外知ってるやつもいないしな…。
考えが一旦まとまり、足を進める。気乗りしないが行くしかない。何かが起きてからでは遅いのだ、利用できるなら利用しなければ。と、自分に言い聞かせながら。
フェンリルは今、ロキファミリアの前にいた。しかし一向に動く気配がない。
なんて言って会えばいいんだ?チーッスとか?たのもー!か?それともお邪魔しますか?
と、割りとどうでもいいことで悩んでいた。すると中から「アイズたーん!」というなんとも不快な声が聞こえたので覚悟を決めて扉を開ける。
「すまんがロキはいるか?」
すると中にいた団員はフェンリルを見て固まってしまった。ロキファミリアの時が止まる。すると奥からベートが出てきたようだ。この機を逃すわけにはいかない。
「お、おう、ベート。」
「んあ?フェンリルじゃねえか。なにしてんだ?こんなところで?てかなんだ、その格好。」
「いや、ロキに話があってな。この格好変か?」
日常会話を挟みながら用件を伝える。
「いや、似合ってるぞ。ロキならそこに隠れてるだろ。」
ベートが指差す方には頭のてっぺんが隠れていないロキがいた。ベートに感謝しつつもそちらへ歩み寄る。
「酒場では失礼したな、ロキ。それで大事な話があるんだが、場所を移せるか?出来れば二人で話がしたい。」
「ちょっと待ってくれ。」
そういって間に入ってきたのは金髪の小人族だ。
「なんだ?」
「この間襲っているのを見て二人きりになんかさせられないよ。」
「聞かれたくない話をするから呼び出してんだ。それにもう恨みも何もねえよ。」
「信用すると思っているのかい?」
埒があかない。仕方ないか。
「それなら、話し合いの時ベートなら護衛につけてもいいぞ。あいつなら話を聞かれても問題ない。それでも駄目なら…。」
そういって右手だけ変化させる。鋭い爪に逞しい腕。その腕は獣の毛で覆われている。
「やりたくはないが力づくで奪うしかないな。」
すると誰かがヒッ、と悲鳴を漏らす。どうやら怪物祭のときに、原点回帰を目撃した者がいたようだ。
「別に話さえ聞かなきゃ離れたらところで見ていてもいいんだ。頼む、俺に暴力を振るわせないでくれ。」
小人はなおも食い下がろうとするが、主神が止める。
「しゃあないな、そこまで言われたら話すしかないか。それで?いつ話をするん?」
「できるだけ早急に。」
「そうか…。ベート、今あいとるか?」
「ああ、俺は構わねえよ。」
「それならあんたのとこのホームにいこか。」
いざとなったらヘスティアを人質にでもするつもりなのか。しかし本当に話をするだけなので承知する。
こうして初めてまともな親子の会話をすることになる。