場所をホームに移し、二人と二柱での話し合いが始まる。はずだったのだが…。
「どうして君がいるんだい?お呼びでないんだよ。」
「なんや?ドチビ、うちがフェンリルに頼られたんが羨ましいんか?」
二柱の言い争いが始まり二人の獣人はため息をつく。
「それくらいにしてくれないか?」
「そもそも!フェンリルはどうしてこの無乳神をよんだんだい!?」
「なんやとこら!」
「お前も落ち着け。」
言い争いは止まず、そろそろ我慢の限界がきたのでドローミとレージングで二柱を縛り上げる。
「ロキを呼んだのは、同郷の神で知ってるやつが、誠に遺憾ながらもこいつしかいないからだ。ヘスティアが同席しているのは、家族だから、俺の身に何が起きているか、知ってほしかったからだ。それでも納得出来ないならお開きだな。」
そこまで言ってようやく落ち着く二柱。獣人二人はやれやれと、これまたため息をつく。鎖から開放し、説明を始める。
「呼んだのは他でもない。俺の体の神聖文字についてだ。」
「神聖文字?そこのドチビの恩恵ちゃうん?」
もっともな意見を述べるロキ。ロキには見えないのか、見ようとしなければ見えないのかはわからないが、今は見えていないのだろう。羽織を脱ぎ、上着をはだけ、上半身を露にする。
「武器と服を買った店の店員が、魔力を観測する目をもっていてな。体の至るところに神聖文字があるらしい。しかもそれは俺の魔力で出来ているらしいから、同郷のロキなら文字の意味がわかると思ってな。」
「なるほどな。」
そう言いながらロキは糸の様な細目をうっすらと開ける。
「これは…。ルーンか。」
「ルーン?なんだい?」
「あんたんとこでいうフェキニア文字やな。」
なるほど、と納得するヘスティア。
「ルーンだと?ルーンはわかるが、俺は使えるほど精通していない。」
ロキは少し考え、口を開く。
「てことはフェンリル以外の誰かの仕業やな。」
「真面目に聞け、この文字は俺の魔力で出来ているんだ。」
「でもフェンリルはルーンを使えない。てことはルーンを使えるやつがやったしか考えられんやろ?」
「だからな…。」
「オーディン…。」
ヘスティアが呟きを被せる。
「ここに来る前、ラグナロクの戦いで、オーディンっていう神を飲み込んだんだろ?もしかしたら…。」
「なるほどな、それなら辻褄が合うな。」
「どういうことだ?」
「飲み込んだ。うちはあんたの過去はようわからんけど…。魂も一緒に連れてきた、あるいはあんたが取り込んだままって可能性は十分あり得るやろ?」
目眩がする。そして肝心なこと、フェンリルにとって、過酷なことを口にする。
「このルーンは拘束具や。そういった意味合いを持つルーンだけじゃなく、組み合わせたりして、何重もの拘束具と化している。力が押さえつけられてるってことやな。」
頭が痛くなってくる。つまり…。
「てことはフェンリルの中に、そのオーディンてのがいる、ってことになるのか?」
ベートが、なんとか話についてきながら疑問を浮かべる。
「あくまでも可能性やけど、十中八九そうやろうな…。」
「その場合、オーディンの魂は生きているのかい?」
「未だにルーンが健在なのが証拠やろ。ルーンに精通していないフェンリルが、これを維持出来るとは思えへんわ。」
アースガルズの神々は、どこまで俺を苦しめる。どこまで俺を恨んでいる。俺が何した。グルグルと、思考がループする。手が震える。すると、それに気付いたヘスティアはそっと手を握る。
「フェンリル…。」
「ヘス…ティア…。」
「どうにかしてケリつけるしかないんやろうけど…。すまんな、うちにはどうしようもできん。」
「いや、少しでも前に進めたなら儲けもんだ。助かった。」
「ま、まぁあれや。これからはいつでも頼ってくれてええで!」
「気が向いたらな。」
ガーン!と聞こえそうなくらいショックを受けるロキ。その姿をみて笑いながら
「精々2番目位に頼りにさせてもらうさ。」
いつの間にか蟠りは消え、良き友人とも言える間柄になった親子。この世界の親に、違う世界の子供。しかし二人は確かに親子なのだ。