ステイタス更新でまたまた一悶着あったが、気にせずいつも通りダンジョンに潜るフェンリル。万屋で新たに購入した上着や羽織はどれも、白をベースに桜をあしらっている。袴は濃いめのピンクで、これが中々目立つのだが似合っているのでなんとも言えない。それにこの日本刀というものは中々どうして難しい。力任せに振るえば、裂くことはできる。だか、切り裂くことはできない。切り口が美しくないと、一人ぼやく獣人はある意味で伸び悩んでいた。
そんなこんなで地上に上がり、寄り道をしながらホームへ向かう途中で、ふたつの大きな足音が聞こえる。荒々しい音から、どうやら片方が追いかけ、片方が逃げているように聞こえる。興味本意で覗いてみれば小さな体とぶつかる。
「あう!」
と可愛いらしい声を出し転ぶ少女は子供のようだ。
「すまないな、こちらの不注意だ。」
立てるか?と手を差し伸べようとすると
「追い付いたぞ!このクソパルゥムが!」
と、怒号に遮られる。子供相手になんてやつだ、と憤る。少女を庇うように、男と少女の間に立つ。
「なんだ?てめぇは。邪魔だからどけ。」
「お前、この子に何をするつもりだ?」
「うるせぇ!いいからどきやがれ!」
「そういうわけにはいかないんだよ。」
「なっ!てめぇ、そのチビの仲間か!?」
「初対面だ。」
「じゃあ何でそいつを庇ってるんだよ!」
「子供は守ってやるものだろ?」
「なんなんだ、てめぇは!もういい、てめぇからぶっ殺してやる!」
男は装備していた剣を抜き、横一線に振る。それを、鞘から少し覗かせた刀身で、難なく防ぐ。
「お前から剣を抜いたんだ。覚悟出来てるってことだよな?」
睨みを効かせて、脅しかける。すると男は怯えて逃げ出してしまった。ふぅ、と一息吐き出して
「大丈夫かい?お嬢さん。」
と振り向くが誰もいない。なんとも虚しい気持ちになったが仕方がない。大人しく帰ることにする。
翌日、いつものようにダンジョンに潜る、前に
「お兄さん、お兄さん。珍しい格好した黒髪のお兄さん。」
ふむ、そんな奇抜な格好をしたやつがいるのかと、周囲を見渡せばそんなやつどこにもいないので、なんとなく自分の事だと察する。しかし声の主が見当たらないのでキョロキョロと、今度はじっくり見渡すが、それでも声の主は見当たらない。するとしたの方から
「こっちですよ、こっち。」
と声がするので、下を見ると昨日会った少女がいる。
「突然ですが、お兄さん。サポーターなんか探したりしていませんか?」
と言うのだが、如何せんサポーターとはなんなのか。なんとなく言葉の意味で考えればわかるのだが、どこまでサポートしてくれるのか、どういう生業の人をサポーターと呼ぶのかがわからない。
「すまないがサポーターとはなんなんだ?」
「おや?お兄さん、サポーターをご存知ないのですか?文字通り冒険をサポートするものですよ!」
「どこまでがサポーターの仕事なんだ?」
「荷物持ちから雑用まで、なんでもしますよ!」
「ふむ、そうか。それはありがたい話だな。」
「どうかリリを連れていってください!」
「連れていくのはいいが、まずは自己紹介が必要だな。俺はフェンリル。ファミリーネームはない。ヘスティアファミリアに所属している。」
「こ、これは失礼しました!リリはなんたる失敗を!リリの名前はリリルカ・アーデです!」
そう言った少女の顔は怪しく笑っていた。
リリルカは困惑していた。昨日路地裏で会った青年。この青年が持つ武器は少ししか見れなかったが中々に上出来な武器だ。この青年は油断できない相手であったがダンジョンに潜ってしまえばこっちのものだ。いくら強くてもダンジョン内部で、リリのことを注意するなど不可能だ。と思っていたが、敵が出るや否や、いつの間にかカチリと納刀する音が聞こえ、敵が真っ二つになっているのだ。唖然としていると、青年は自分で魔石を回収しようとするので慌てて回収する。
「手伝ってもらってすまないな、リリルカ。」
「何を仰いますか、そもそもこれは、サポーターの仕事です!」
とフェンリルに言いながらも、リリは悩む。
とにかく、この状況をどうにかしなければ
そう思い、今日は切り上げるべきではないかと進言する。フェンリルも、とくに気にせずにそれを承諾する。
地上に上がり換金を済ませる。
「そうだ、リリルカよ。報酬なんだけど…」
「いいえ!今日の報酬はすべてフェンリル様のものでいいですよ!」
「なに?それではタダ働きではないか。」
「いいんですよ、これでフェンリル様の信用を買えるなら安いものです!」
と元気よく言うリリ。これで上手くいく、と思った。
「なるほどな。それで
目当てはこの刀か?」