捨てられた子   作:100円ライター

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本編
目覚め


 

目を開けば満点の星空。視界の端には木々が見える。

 

 

ぼんやりとした意識が少しずつ覚醒していく。自分が何者か、これまで何をして、何を失ったのか。そして、自分の最期を思い出す。

 

「ここは何処だ?俺はヴィーザルに殺されたはず。」

 

起き上がろうとして異変に気付く。これは自分の体ではない。いや、今までの自分の体ではない。何故体が人間になっている?

 

混乱しながら辺りを見渡す。ここは森のようだ。

 

深呼吸をする。頭が冴えてくる。磨耗した記憶も甦ってくる。

 

トリックスターと巨人の間に産まれた三兄妹の長子。地を揺らすもの、フェンリル。それが自分。

 

勝手に産み出され、なにもしていないのに拘束され、怒りに我を忘れオーディンを飲み込み、その息子のヴィーザルに殺された。それが自分。

 

ならばここは何処だ?死者の国ではない。何故人間の体なのだ?わからない。そんな自問自答を繰り返す。

 

「取りあえず手がかりでも探すか。」

 

誰も居ないが独り呟く。そうでもしないとおかしくなりそうだったから。幸い鼻は利く。なんとかなるだろうと自分に言い聞かせる。勘を頼りに歩き出し、今の状況を振り返りながら独り言を呟く。

 

「ここはアースガルズではないな。となるとミズガルズか?ヘルヘイムでは無さそうだが…。」

 

緑が生い茂り、梟の鳴き声がする。どうやら梟だけではなく虫も鳴いているようだ。

 

「それに、何故衣類を着用している?元は狼だぞ?服など持っていない、いやそれ以前の問題か…。」

 

思いの外深く考え事をしていたせいか気付くのが遅れたがどうやら街の入り口のような場所に付く。

 

「時には勘も馬鹿に出来んな。」

 

街に入り適当に歩き回る。どうやら夜とはいえまだ早い時間らしく人が多い。見渡せば多種多様の、人種とでも言うべきか。様々な人々がいた。

 

「ここは適当に誰か捕まえて聞くとするか。」

 

 

 

 

 

 

話を纏めれば、曰く冒険者の街である。神々に恩恵を貰い、ダンジョンに潜り魔物を狩り、魔石と呼ばれるものを集めることを生業とする。もちろんそれ以外もあるがメインはやはり冒険者らしい。

親切な人がくれたじゃが丸くんと呼ばれる芋を食べながら、ベンチに腰かける。

 

神々に恩恵をもらう。

 

まるでミズガルズに神が降りてきたみたいに言うのだな。と言ったところ本当に降りてきているらしい。これには流石に面食らい、取り乱した。

じゃが丸くんを完食し、情報を整理する。

 

(取りあえずここは俺の知っている世界では無いようだな。ともなれば生前出来なかったこと、普通に生きることをしてみてもいいのではないか?)

 

それにはやはり冒険者登録とやらが必要だ。どうすればいいか誰かに聞いてみるか。

 

「すまない、少し聞きたい事があるのだが。」

 

「ん?なんだい?」

 

「冒険者登録をしたいのだが如何せん右も左もわからない。どうすればいいか教えてくれると助かる。」

 

「ああ、それなら神様から恩恵をもらってギルドの窓口に行くといいよ、後は窓口の職員さんにききな。」

 

「すまない、助かる。それと神様から恩恵を貰う、というのがわからんのだが。」

 

「んー、それなら…。ファミリアを尋ねればいいよ。」

 

「ファミリア?」

 

「簡単に言えば神様とその眷属たちの組織さ。エンブレムがあるから一目見ればファミリアかどうかわかると思うよ。」

 

「親切にありがとう。本当に助かる。」

 

「いいよ、気にしないで。それでお兄さんはどこのファミリアに入るか決めたのかい?」

 

「いや、取りあえず地道に探そうかと思っている。」

 

「そうか、それなら…。」

 

 

 

 

ロキ・ファミリアなんてどうだい?

 

 

 

 

思わず目を見開く。

 

 

「ここいらで一二を争う大きなファミリアなんだけどね―――」

 

 

声が遠退いて聞こえる。

 

 

 

ロキがいる。

 

 

 

自分や兄妹たちを見捨てた、勝手に産み出し、自分を見捨てた。あいつがのうのうと生きている。そう思うだけで頭に血が登り目が血走る。

 

 

「大丈夫かい?」

 

「あ、ああ。大丈夫。気にしないでくれ。」

 

「そうかい?顔色が悪いようだけど。」

 

「初めて来た所だし不安もあるせいだろうな。親切にありがとう。君のアドバイス通りファミリアでも探しに行くよ。」

 

「そうか、じゃあ気を付けてね。」

 

「ああ、感謝する。」

 

 

親切な青年と別れ、フラフラと路地に倒れこむ。

 

 

ロキがいる。ファミリア、家族。

自分達を見捨てた親が新しい家族を作っている。

頭が真っ白になる。

 

 

 

すると背の低い、髪の毛を両サイドで縛った黒髪の少女に声をかけられる。

 

「君、どうしたんだい?」

 

突然のことに驚きつつも

 

「ファミリアを探していたのだが、この街に来てから休息をとっていなかったせいか目眩がしてな。大丈夫だ、気にしないでくれ。」

 

と、咄嗟に嘘を吐く。

 

すると少女は

 

「あのね、君。神様に嘘は通用しないんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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