フェンリルがモンスターを一掃するのに時間はかからなかった。
ふわりとリリルカの近くによる。
「大丈夫か?」
「…んで…」
「ん?」
「なんで、リリなんかを助けたのですか?リリは…フェンリル様を…。」
「謀ったことか?」
「…。」
応えることが出来ないリリルカ。何と言えばいいか解らず、俯くリリルカに言葉をかける。
「お前はとても、悲しく、寂しい眼をしているな。」
真剣な声音で言う。リリルカは、思わず顔を上げると、真剣な顔をしたフェンリルと目が合う。
「昔の俺と同じだ。」
ニカッと笑う顔に、何故だか視界が歪む。
「だからほっとけなかった。今の俺は、ヘスティアのお陰で、前を向いて歩ける。俺もそうやって、誰かを救いたかった。同じ眼をしたリリルカを救ってやりたかった。これは俺の自分勝手だ。そんな理由じゃダメか?」
微笑みかけてくるフェンリルの言葉に、ついに歯止めが効かなくなって、ついに涙は溢れ、止まらなくなる。
「…っ!めんなさい…。ごめんなさい、ごめんっなさい!」
嗚咽混じりの謝罪に対して、微笑み、頭を撫でる。リリルカが泣き止むまで。
「本当にごめんなさい!」
泣き止んだリリルカは改めてフェンリルに謝罪をする。
「いいよ、気にんすんなって。」
笑って許すフェンリル。だがリリルカの表情は晴れない。
「しかし…」
「あ、そうそう、これ忘れ物。」
そういってどこからか取り出したのは、リリルカが奪われた荷物だった。
「っ!これは!」
「俺の刀持ってたし、もしかしたらと思ってね。」
「何から何までごめんなさい!」
「いいってことよ。それよりさ、」
リリルカの眼を見てフェンリルは問う。
「腕のいいサポーターを探してるんだけど、君が良ければ、俺のサポートをしてくれないか?」
そっと手を差し伸べる。
また泣きそうになるのを、ぐっと堪え、本当の、心からの笑顔で応える。
「はいっ!リリで良ければ喜んで!」
地上に上がり、事の顛末をヘスティアに話す。
「うん、フェンリルの言いたいことは解ったよ。だけどね、これだけは確認したい。君に嫌われてでも、確かめなくちゃいけない。」
いつもの子供らしさはどこへやら。真剣な顔で問いただす。
「君の、フェンリルに対する恩義とやら、それは本物なのか。」
「偽りはありません。フェンリル様の恩義に報いることが出来るのなら、この命、惜しくはありません。」
ヘスティアの眼を見て答える。
「うん、嘘じゃないね。安心したよ。」
そういって、ヘスティアがフェンリルを見ると、不機嫌そうな、というよりも、顔で「僕は不機嫌です。」といっている。
「どうしたんだい?ああ、この子を疑ったことなら謝るよ。でもね、僕の家族のサポーターなんだから、信頼出来る子の方が、僕も安心というか…。」
「そうじゃない。」
ムスッとしながら否定する。
「それならなら尚更どうしたんだい?何かしたなら謝るよ。」
「ヘスティアじゃない。」
「へ?リリですか?」
まさか自分とは思わず、すっとんきょうな声をあげる。
「リリ、なにかしました?」
「…。」
応えようとせずにそっぽを向いてしまう。
「ほ、ほら。怒った君も可愛いけど、この子も困っているじゃないか。答えてあげなよ。」
ヘスティアがそう言うと、ジトッとした目でリリルカを見ながら、漸く答える。
「命すら惜しくない、て事はいざとなったら自分の命を捨てるのか。」
「は、はい。フェンリル様のためなら…。」
「ふざけるな。」
続けようとしたら、遮られた。
「あのな、お前はもう家族なんだよ。命を捨てるだ?ふざけるな。お前が死んだら、俺は悲しいんだよ。だから、簡単にそういうこと、言うなよ。」
「で、でもリリはソーマファミリアで…。」
「ファミリアなんて関係ないね、俺には。」
「っ…。」
「別のファミリアだから仲良くなれないとか、家族になれないとか、そういうの俺には関係ない。ヘスティアも、リリルカも、俺の家族だ。」
この人はズルい。こんなことを言われて、泣くなと言う方が無理だ。
何度めかわからぬ涙。そんなリリルカをよそに、スッと手を伸ばし、キョトンとするリリルカに、デコピンをする。
「っ!っ!」
やはり結構痛かったらしく、おでこをおさえる。先程とは違う意味で涙目なリリルカに言う。
「これはお仕置きだ。これに懲りたら、二度と、命を軽く見たりするなよ。わかったか?」
やっぱりこの人はずるい。
「はい!」
今までで、一番いい笑顔で。
そんな二人を、微笑みながら見つめる女神。
新しい家族を迎え。少し賑やかになる。