捨てられた子   作:100円ライター

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家族

 

 

 

恩恵をもらい、ステイタスをヘスティアに見られた際一悶着あったが取りあえず冒険者登録を済ませる。初心者用として用意された武器を眺め、折角の人間の体なのだから生身で戦うのは味気ないし勿体ない。と思い真剣に武器を吟味する。冒険者登録の時よりも真剣過ぎて周りが引くぐらい武器を吟味していた。

 

 

「フェンリルさん、まだ悩んでいるんですか?」

 

声をかけてきたのはギルドの担当職員のエイナである。

 

「ああ、武器なんぞ一度も使ったことがないからな。正直種類が豊富過ぎて困っている。」

 

その顔は真剣そのもの。そう、冒険者に付きまとう危険についての説明の時よりも…。

 

「説明会もそれくらい真剣に聞いてくださいよ。」

 

もう、と呆れたようにエイナは言う。だが当の本人はどこ吹く風で

 

「真剣だったさ。もしかしたら今までで一番真剣だったかもしれない。」

 

などと言うが、その視線は武器に注がれているのだから信用出来ない。

 

はあ、と思わずため息をつくと

 

「戦いそのものは経験がある、故に危険性などは十分わかっているつもりだ。」

 

「とかいって慢心しないで下さいね。」

 

「ああ、わかってる。」

 

仕事が残っているので、と去っていくエイナを横目に悩み続けるフェンリル。弓が目に入り、なんだこれは?と首を傾げる。そこら辺の冒険者を捕まえ聞いてみると懇切丁寧に教えてくれた。その間のフェンリルは表情には出さなかったが目だけはとても輝いていた。

 

 

 

 

武器も決まり無事に冒険者デビューを果たしたフェンリルは、ダンジョンに潜っていた。今いるのは5層。本来昨日今日冒険者になったばかりの者が潜るところではないのだが、本人も気付かぬうちに5層まで来ていたのだから質が悪い。

 

(弓矢とはなかなか難しいが慣れると楽しいものだな)

 

などと楽しそうに矢を放っていると背後から巨大なものが近づいてくる。

 

「でかいな。」

 

他人事の様に呟くがそいつはフェンリルをロックオンしている。そいつの名前はミノタウロス。しかしフェンリルはダンジョンのモンスターとしか認識していない故、気にすることなく矢を放つ。

 

「ブモォー!」

 

矢が左肩に刺さり、叫ぶミノタウロス。目は血走りどうやら怒っている様だが

 

「しまったな、矢があと1本しかない。」

 

などと呑気なことを言っている。ミノタウロスは突進してくるが転がるようにして難なく回避する。

 

「はっ!」

 

矢を放つが慣れてきたとはいえ、外してしまった。もう矢はない。只の冒険者であればここで万事休す。だがフェンリルは只の冒険者ではない。神と巨人のハーフなのだ。

 

「仕方ない、地上に戻るか。」

 

無視して戻ろうとするフェンリルにミノタウロスは再度突進する。だが

 

「邪魔するのか?ならば死ね。」

 

左手で頭を押さえられ前に進めないミノタウロス。振りかぶった右足の蹴りが頭を砕く。呆気なくやられたミノタウロスの魔石を回収する際、金髪の少女と目が合うが気にせず地上に向かう。弓矢を気に入り出来れば早く使いたいのだ。しかし地上に出ればまた戻るのは少し億劫だな、と思い休息を取ることにした。

 

「そういえばヘスティアは今バイト中か?」

 

魔石を換金したら顔でも出してやるか、などと考え換金所に向かう。思いの外稼ぐことができたのでじゃが丸くんの露店へ。

 

「いらっしゃい!ってフェンリル!どうしたんだい?」

 

「俺は客だぞ、って冗談だ。そんな顔をするな。」

 

冗談を言うのは向かないかもしれないな、などと考えながらヘスティアへのフォローをする。

 

「今日は思いの外稼げたからな、早めに切り上げこうしてヘスティアの顔を見に来たんだ。」

 

「そ、そうかい…。あ、ありがとう。」

 

顔を赤くしてもじもじするヘスティア。

 

「取りあえずじゃが丸くん1つ貰おうか。」

 

「毎度ありー!」

 

じゃが丸くんを食べながら少し談笑した後に矢を補充しに行く。その際バベルから視線を感じるが無視する。

 

無事に矢の補充を終えて、まだ早いがホームに戻る。掃除でもするかと思い立ちホームの掃除を始めるとこれが中々面白い。フェンリルにとっては初めてのことなので、なんでも面白い。

 

「思いの外気合いが入ってしまったか。」

 

とても綺麗になった教会内部。今度は外も綺麗にするか、と考えていると主神が帰ってくる。

 

「ただいまー!うおっ!部屋が綺麗になっている!?」

 

「おかえり。暇だったから始めてみたら、これが中々面白くてな。」

 

そうかそうかと相槌をうつヘスティア。露店の売上に貢献したとのことで本日はじゃが丸くんパーティーだとか。先ほど買ったのだが、などと不粋なことは言わず嬉しそうなヘスティアを眺める。最近穏やかな気持ちでいられるのはきっと、この少女のおかげなのだろう。

 

「ちょっと、聞いているのかい?」

 

「聞いてるよ。それより早く食べよう。俺も腹がへったよ。」

 

この穏やかな気持ちのまま過ごしたい。けれどフェンリルは忘れていた。怒りの根源、自分の親の事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日のこと。ダンジョンで稼いだフェンリルはヘスティアを食事に誘う。

 

「いいのかい?折角稼いだお金なんだから武器とか欲しいものに使ってもいいんだよ?」

 

「気にしないでくれ。それにたまにはこういうのがあってもいいだろう?それとも迷惑か?」

 

「迷惑だなんてそんな!嬉しいに決まっているじゃないか!」

 

ニヤニヤしながら答える少女はやはりと言うか神様には見えない。まるで歳の離れた妹か娘を見るような目でヘスティアを眺める。それに気づかずどこに行こうかなどと嬉しそうに話すヘスティア。

 

しばらく歩き『豊穣の女主人』という酒場につく。

空腹を誘う匂いが鼻孔をつつく。

 

 

「ここにするか。」

 

「君が選ぶならきっといいところなんだろうね。」

 

などと話ながら店に入る。スパゲッティを注文し、食べる。

 

「中々にうまいな。」

 

「おいしいね!」

 

二人で食事をしていると辺りが騒がしくなる。気になり店員に訪ねる。すると

 

 

予約していたロキ・ファミリアが来た

 

ロキ・ファミリア

 

 

 

 

 

 

「大丈夫かい?」

 

気付いたらヘスティアに手を握られていた。どうやら自分は震えていたようだ。

 

「あ、ああ…。大丈夫

 

「よーし!今日は飲むでー!」

 

 

ロキ。きっと自分の知っているロキではない。けれどこの胸の奥から止めどなく溢れる不快感、怒り、殺意。全ては本物だ。気がつくとロキに飛びかかっていた。

 

 

「なっ!何するんや!」

 

「会いたかったぞ!ロキィ!」

 

鎖でロキを捕縛しようとするがファミリアの団員に弾かれる。団員たちに囲まれ、武器を突きつけられる。しかしフェンリルは気にした様子はない。

 

「なんや、自分?あんたに恨まれるようなことしたか?いら、そもそもうちとあんた面識あったか?」

 

首を傾げるロキ。

 

「そうだよなぁ…。そうだよなぁ!勝手に産み出し!放置だ!俺を育てたのはテュール!けれど気づけば危険視され縛られた!最後にはヴィーザルに…。あんたは俺を!俺ら兄妹を勝手に産み出しみすてた!俺らのことなんて見ていなかった!実の子供だろうが覚えてねえよなあ!」

 

目や鼻、口の端から炎が漏れ出す。

 

「あんた…。もしかしてフェンリルか!?」

 

「そうだ!あんたに産み出され!あんたに見捨てられたフェンリルだ!いったい俺がなにした!ヨルムンガンドが!ヘルが!何したんだ!そしてあんたは!何してたんだよ!俺らが捕まり!捨てられたとき!あんたはなにしてたんだ!」

 

 

フェンリルの慟哭が辺りに静寂をもたらす。そんな中、口を開いたのはロキだった。

 

「それはすまんかったな。なんやったら

 

「すまんかった…だと?貴様は!」

 

後に続く言葉を聞かずにフェンリルは叫ぶ。涙を流しながら。

 

「俺は!俺達は待っていたんだ!きっと迎えに来てくれると!この地獄から助け出してくれると!だけど…。だけど誰も来ない!何故俺らが殺されなきゃいけなかったんだ!?俺達が…いったい何をしたんだ…。」

 

慟哭は気づけば呟きになる。

 

「俺はこの世界を恨んでいる。俺達兄妹を苦しめたこの世界を。」

 

その言葉を聞き、ロキは声をかける。

 

「良かったら、うちのファミリアに入らへん?」

 

「なっ!」

 

ヘスティアは驚く。

 

「そんな!」

 

「あんたはだまっとり。これは家族の問題や。」

 

そういうロキにヘスティアはくってかかる。

 

「ふざけるな!」

 

ヘスティアが怒るとは予想外だったのか、ロキは面食らった。

 

「家族の問題だって!それでこの子が苦しんでいるんだ!君のもとにやる訳にはいかない!」

 

「だから、あんたには関係ないやろ!」

 

「関係ないだって!?関係あるさ!この子はボクのかぞくだから!ボクの子供だ!」

 

今度はフェンリルが驚く番だ。ヘスティアはゆっくりとフェンリルに歩みより、そっと抱き締めながらロキに言う。

 

「この子はボクの子供だ。大切な、何者にも変えられない…、たった一人の家族なんだ。この子が望むのなら君のもとへ返そう。でもそうじゃないなら、何者からもボクが守る。ボクがこの子を支え続ける。」

 

「ヘスティア…。」

 

 

ヘスティアの言葉に心が震える。自分は何も見えていなかった。こんなにそばに、自分を大切にしてくれる神(ひと)がいる。そうか、もう自分は大切な、かけがえのない家族を手に入れたじゃないか。

 

 

「なんや、あんたみたいな貧乏神(びんぼうにん)にこの子を幸せにできるんかいな?それに本当の家族といた方がこの子の幸せに繋がると思わへん?」

 

「うるせぇよ。」

 

「フェンリル?」

 

ヘスティアは心配そうに訪ねる。

 

「てめぇが勝手に俺の幸せを決めんな。」

 

そう言った後にヘスティアを見て微笑み、告げる。

 

「俺はもう大丈夫だよ、ヘスティア」

 

ロキを睨み告げる。

 

「これは決別だ。もうあんたとは他人で、関わらないという決別だ。もうあんたの影を追いかけることもない。騒ぎを起こしてすまなかったな、"ロキ神"よ。」

 

「なっ、何を言うとるんや!あんたは誰よりもこの世界を恨んどるはずや!それを止められるのはうちだけ…!」

 

「確かに俺はこの世界を恨んでる。けれど、それ以上に…。」

 

ヘスティアをそっと抱き寄せる。

 

「この女を愛してしまった。」

 

ボンッ!と音をたてヘスティアの顔が真っ赤に染まる。

 

もうこの心に憂いはない。俺には家族がいる。俺のことを見て、俺のことを愛してくれる、かけがえのない家族。

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰ろう、ヘスティア。俺達の家へ。」

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