捨てられた子   作:100円ライター

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心的外傷は少しずつ癒される

 

 

勝負は一瞬で終わった。只食らい付き、引きちぎる。それだけで全てが終わる。モンスターの傷口から溶解性のある体液が漏れるが、フェンリルには影響がないようだ。ペッ!と口内の異物を吐き出し、周りを見る。ロキファミリアの面々は呆気にとられている者も居れば、こちらを警戒する者、怯える者もいる。それらをなるべく見ないようにして、ヘスティアの近くへ行く。

 

『ヘスティア…。』

 

「フェンリル。」

 

『俺が…怖いか?』

 

恐る恐るたずねる。1階建て家屋ほどの高さもある狼は、まるで何かに怯えているように見えた。

 

「怖くないよ。怖いわけないじゃないか。だってフェンリルはボクたちを守ってくれたし、それに家族を恐れる理由なんてないからね。」

 

ヘスティアは真っ直ぐ目をみて伝える。

 

「それにしても格好いいじゃないか。その背中に乗って街を駆け回ってみたいな。」

 

笑顔ではしゃぐ少女。その言葉はフェンリルにとって救いだった。また家族に捨てられるかもしれない。また独りになるかもしれない。知らぬ間に感じていた恐怖も、少女の笑顔で安らぎと入れ替わる。

 

「おい、のんびり話してる場合じゃねえ。まだ逃げ出したモンスターがいるかもしれねえぞ。」

 

いつものように話しかけるベート。そこに恐れはなく、さも当然のように。

 

『あ、ああ。そうだな。』

 

声をかけられたこちらが戸惑ってしまうほど、自然体なベート。

 

『お、お前は俺が…。』

 

「怖いかって?怖かねえよ。キレたら怖いけどな。」

 

ああ、かなわないな、このふたりには。

 

『残りのモンスターを片付ける!ヘスティア、しっかり捕まっててくれ。』

 

尻尾で優しく掬い上げ、そっと首もとに乗せる。伝わる温もりに、心安らぐ。

 

魂に誓おう。ヘスティアは俺が守る。何と引き換えることになっても守り抜こう。

 

漆黒の狼は街を駆ける。その背に女神を乗せて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪物祭の騒動を終え、フェンリルはダンジョンに潜っていた。矢を射りながら考え事をする。

 

(原点回帰。真の姿に戻る。だがどう考えてもあれは小さすぎる。)

 

原点回帰を使った際に気づいた異変。真の姿とは程遠い力に思考を巡らせる。

 

(原点回帰を使っても大した魔力は消費しない。それでも魔力値は上がる一方だ。)

 

まるで常に魔力で何かを無理矢理押さえつけているようだ。と、そこまで考えたところで引き絞っていた弓が壊れる。遂に限界がきたか、とため息をつく。取りあえず地上に戻るとしよう。新しい武器にしてもいいかもしれない。

 

出会いの予感がする。何となく、皆が使っているヘファイストスでも、ゴブニュでもなく、ただ何となく裏路地を進む。すると一つ目のマークの建物へ、導かれるようにたどり着く。周りの建物とは違う作りをしている。噂に聞く東洋の建築物だろうか?考えていても仕方がない、とりあえずはいってみよう。ガラガラと心地のいい音をたてながら引き戸を開ける。

 

 

 

 

 

「あら、人が来るなんて珍しい。ようこそ、天目一箇神のファミリアへ。」

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