ドリアカに入って全力でスターライトを潰しに行く話   作:槻司

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プロローグ

なりたい想いがあれば誰だってアイドルになれる

 

最初にその存在を知ったのは週刊誌に組まれていた特集記事だった。

美しい臨海部をまるまる使って建てられた近代的な校舎をバックに、他のアイドル学校にはない何でもありの個性「ドリアカらしさ」を持ったアイドル達が映っている。

最新の設備によって効率的なトレーニングを行い、アイドルコースの他にデザイナーコースとプロデューサーコースも選択可能で近年主流のセルフプロデュースすらぶち破る型破りな新しいアイドルの形を提案するという。

ページ下に小さく学園長の顔写真と挨拶文も載せられていて、夢は叶うとか夢をかなえたいとか冗談みたいなことを馬鹿真面目に言っている。

 

学園長の名前は『夢咲ティアラ』、、、アホらしいと思った。

でかでかと「ドリームアカデミー入校受付中」と書かれた下に、小さな文字で明記されている入学金その他諸々の額は義姉さんが持ってきたパンフレットにあるスターライト学園の学費とそう変わらない。

しかし、アイドルを本気で目指すのであれば、やはりスターライト学園だ。

主力アイドルの放出によって最近は停滞気味とはいえ、現在でもアイカツランキングはほぼ総なめ状態。アイドルとして成功するための基盤が違うのだ。

そもそも私はアイドルになりたいわけでもない。ただ、最近スターライトを去ったアイカツランキング1位の神崎美月さんのステージを見せられて以来、その熱量にあてられてしまっているだけなのだ。

だから自分がなりたいなんて思っていないのに、もし入学できたとしてもきっと大成することはないはずだ。それなら今からもっといっぱい勉強してアイドルをやりながらでは絶対に目指せないような有名大学に入学し有名企業に入社した方がいいのではないだろうか。そちらの方が可能性は高そうだ。

でも、この何とも言い表せない感情はなんだろう。わたしは今までの人生でもいろいろ後悔してきた。12歳のガキが何をいうかと叱責されてしまいそうだが、私の性格が妥協や諦めをしやすいものなのだ。後悔したくないという感情は、同い年に比べたら多くもっていると自分の中ではそう思っている。

だが、今回のそれは何か違う。そう、何かが違うのだ。

、、、、、、、、、、、、、、

 

ただ、そう思うだけできっと私は何もしないのだろう。

何も起きないし何者にもなれないのだろう。

今日も今日とて一般市民である。

 

そう、何も起きなければ

 

 

 

ドリームアカデミー秋の編入試験―会場

 

「72番、小谷川 ななせ です。よろしくお願いします。」

 

初めてアイカツシステムを起動させた興奮の冷めやらぬままに、課題曲の「アイドル活動」が流れ出す。ドレスは直感で選んだからセクシータイプであることぐらいしかわからないけれど、多分似合っていると思う。ダンスは昨日見た映像のイメージを身体全体に染み渡らせていくように、ひとつひとつの動きが流れないよう意識を張り巡らせる。

(集中、さあ始めよう。)

汗キラリ 涙こぼれても 立ち止まるな!アイドル カツドウ

 

 

夢咲ティアラは確信していた。

「自分だけのアイドルの光」その原石としての大きさだけなら彼女はどのアイドルにも負けることはない。

神様が生まれてくる時に与えてくれる才能は平等ではない。

誰しもが自分自身のゼロ地点から出発して努力し自分の光を探していくが、残酷なことにそのスタートと成長速度そして限界はある程度設定されている。

しかし、その残酷なルールに則るのなら彼女は誰よりも有利に自分の光を探し手にすることができる。

そして、やがてはマスカレードをも超えるようなレジェンドアイドルになる。

ボイストレーニングを行わずに、中学1年生の時点でメジャーデビューできるレベルに迫る歌唱センスと生まれ持つ透き通るような声は専門家でなくともわかる恐ろしい伸びしろを感じる。

ダンスもドリアカアイドルコースの人気アイドルでも出来ないような正確すぎる動きで最新のアニメーションCGでも見ているような気分になるほどだ。

そして、なによりもビジュアル、少し色素の薄い黒色のサラサラな髪は肩にかかかるくらいで切りそろえられ、繊細なタッチで描かれたような小さな顔立ちに、誰からも愛される桜色の唇、優しさを演出するように流れる眉のラインと同性ですら庇護欲を掻き立てられる甘える瞳。

生まれたばかりのような柔肌は白地をほんのりと赤みがからせて、なんというか高揚感のようなものを湧き立たせる。

生まれながらのアイドルだ。

それこそ、スターライト学園の特徴である厳しい選考基準「選ばれし者のみが入れる狭き門」を大手を振って素通りできるような逸材だ。

ティアラは、スターライトの千人を超える受験者の中からほんの数名を選ぶような、先に現実をたたきつけて「夢」を失わせてしまう方法に疑問を持ち、「なりたい気持ちさえあれば大歓迎」と選考基準を大幅に下げてドリアカを創った。もちろん、スターライトよりも才能が大きくない者を人気アイドルに育てることを考慮してカリキュラムは効率的かつ厳しいものとなってる。アイカツ界の頂点に君臨し、誰よりもストイックにアイドルとしての自分を磨き続ける神崎美月をプロデューサーとして招き入れ、そのノウハウを取り入れたレッスンを最新の技術を用いて行っている。

だが、彼女を見ていればわかる。そんなものは彼女には必要ない。

なりたい想いがなくともアイドルとなる選ばれしものだ。

まさにスターライトが探し求めているアイドルだ。

もちろん、この時点で彼女は合格の基準を大きく超えている。他の選考役員は絶賛し、既に彼女に大きな期待を寄せている。彼女も編入試験を受けに来たということはアイドルになりたい想いをもっているのだろう。

だが、ほんの数分だがティアラは迷ってしまった。彼女はスターライトへ行くべきではないのかと。

そう感じながらも彼女に今日の最高得点を付け、最後の受験者であった彼女が退出するのを見て自分の椅子を引いた。

 

 

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