椚ヶ丘中学校。
そこは都内有数の進学校であり、敏腕運営者である浅野學峯によって創立僅か十年で全国指折りの優秀校へとしてみせた学校。
生徒は皆優秀であり、この学校を卒業した生徒達は皆良き社会人となる、という信じがたい噂まで立つほどだ。
――だが。
真実というものは、残酷で。椚ヶ丘中学校は、約五%弱き者を踏みつけ、残り約九十五%が上に立つという差別が常習している学校であった。
良く晴れた、澄んだ空気の日。簡単に言えば快晴の日、椚ヶ丘中学校における約五%がいるクラス、『エンドのE組』に一人の怪物が現れた。
「初めまして、私が月を
それは、一人の数えて良いのかは分からない生物で。だが、確実に言えるのは月を爆ったと気軽に言えるような超生物だということであろう。
なあなあと、特にこれといった変化もないままいつも通りの朝を迎えたE組は挨拶と共に先生となった超生物に向けて対先生特殊弾というものを発砲する。放った数千という弾は全て脅威のマッハ20を誇る超生物に掠りもせず、空しくも教室の床へと散らばる。
「はあ、また当たんねえのかよー」
そんな愚痴を零す生徒達に、ヌルフフフフという個性的な笑い声?を出す超生物。
「皆さん甘いですねぇ。目線や銃口の向き、指の動きなどもっと創意工夫を尽くさなければ先生は殺せませんよぉ?」
この超生物は殺せんせーと生徒達からは親しみを込めて呼ばれている。政府からの依頼により、殺せんせーを暗殺するという依頼を突然されたE組だが、賞金百億円という大金に釣られた。
だが、今のところその依頼を達成できそうな目処は立っておらず、ただ殺せんせーを暗殺して失敗という流れを繰り返す非日常を日常として過ごしていた。
「なあ、殺せんせー」
「何ですか? 天道君」
そんな中、E組に所属する俺は殺せんせーにとある疑問を投げかけた。
「殺せんせーは何で先生になったんだ? そんだけ力があれば何でも思い通りだろうに」
そんな俺の疑問に殺せんせーは僅かに遠い目でどこか昔の事を思い出しているような仕草をしながら答える。
「とある約束をしたから、ですよ」
俺は、その返答に「へぇ~」と気の抜けた返事をするだけだった。
「なあ、凜香」
「なに」
E組になってからも、同じクラスだったよしみからか友人としての縁が続いている。帰り道が一緒だというのも一緒というのもあるが。
「どうやれば殺せんせーを殺せるかな」
「それが分かれば苦労しないでしょ。赤羽もビッチ先生も自信があったみたいだけど失敗したし」
「だよな~。今は暗殺の基礎を烏間先生から教えて貰ってそれを覚えることからか」
他愛の無い会話をしながら、帰路の道を歩いている途中、凜香が唐突に聞いてきた
「E組に入って……どう思う?」
「どういうことだ?」
言葉が足らなかったようで、首を傾げる俺に彼女は慌てて言葉を付け加える。
「いや、E組に入って、それで今の環境や状況はどう思う?」
今の環境や状況。つまりは本校舎の奴らから馬鹿にされる環境。殺せんせーを暗殺する状況。その他諸々、E組に入ってどう思うということか。
「……これは言っていいのか分からない、が。俺はE組に来れて良かったと思う。あのまま本校舎に居ても腐ってくだけだったし、世界の歪んだところを見続けるばかりだった。でも、今はそれなりに充実してる。少なくとも本校舎に居た頃よりも断然良いな」
俺のコタえを聞いて、凜香は少しばかり俯き加減になる。俺の返答は彼女にとって良いものだったのだろうか。彼女の家は凜香がE組に入ってからというもの冷たくなったという。これは彼女からE組を通知された数日後に言われた言葉だ。そんな彼女にE組に入って良かったと言って良かったのだろうか?
俺がそんな風に考えていると、凜香は顏を上げる。
「そっか」
その言葉にどんな意味を含まれているのかは分からない、だが。確かに、僅かにだが笑っていたということだけは俺は何故かとても嬉しかった。
「じゃあね、私はこっちだから」
「おう、じゃあな」
手を振りながら俺達は決まっていつもの言葉を交わす。
「「また明日」」
次回から本番です。これまでプロローグ的な何かです。