東方アリア伝   作:仙儒

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プロローグ

それはいきなりだった。

避け様の無い死。

結末を前にした時に本質は現れる。

体感時間がスローに成る。

世界の全てが止まってしまったかのように。

けど、決して時は刻みをやめた訳では無い。

スローでも動き続ける世界。

どうしてこうも世界と言うのは残酷なのだろうか?

目の前には大きなトレーラーが映る。その運転席を見ると運転者は眠って居た。

居眠り運転かよ。

思わず心の中で愚痴る。信号は歩行者用の方は青信号だ。

自らの事を振り返る。平凡な人生だったな。これが走馬灯と言う奴か。私は思考回路はそんなに良い方では無いのだがな。こんな時に超高速で思考が出来るとは・・・・。人生何があるか解ったもんじゃないな。

 

グシャ!!

 

肉が潰れる音がする。

それが最後だった。

思い出せるのはそれだけ。

 

何処を見渡しても暗闇。

これが死後の世界と言うのだろうか?

暗闇の中、目はその意味をなさずに居る。

夢を見ているような感覚だ。

それは悪夢だった。

殺戮、裏切り、はかりごと。人間の本質。この世の全ての悪を見ている気分。

だが同時に、温かさも感じる。

ここは何処だろうか?

水の音がする。まるで水の中に居るような感覚。

だが苦しくは無い。

触れられたのが解った。

何も無い暗闇の中で、確かに触られて、優しく撫でられるような感じがしたんだ。

それだけで悪夢から解放されたような気がした。

一瞬頭に一つの単語が走った。

 

「胎児の夢」

 

とあるオカルト雑誌で目にした事がある。

確か、胎児は世界の始まりから終わりまでを夢に見ると言う狂気の論文。

それ以上は詳しくは知らないが大方それであっている筈だ。

しかし、全く持っておかしな感覚だ。

意識が遠のく。

おかしな話だ。意識も何も無い。

私はあそこで終わりを迎えた。

あのトレーラーのスピード、大きさから助かったとは思えない。

だと言うのに何故意識があるのか?

呪縛霊にでもなったか?

呪縛霊だけは勘弁して欲しいのだけれども・・・・・。

それにここが不思議と死後の世界では無いような気がする。

そんな事を考えながら今度こそ意識が途絶えた。

 

 

 

 

 

 

激痛が走る。

痛い痛い、イタイ!!!!

全身を襲う激痛に思わず声を出して泣いてしまう。

 

「おぎゃぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」

 

こんな声を上げて泣いたのは何時以来だろうか?

少なくとも15年位は出した事のない大声で泣く。

 

「おめでとうございますアリス様、元気な男の子ですよ!」

 

女性の声がする。

目がよく見えない。

不安が私を支配する。ここはどこ?

と言うか死んだ筈だよね。私。

泣きながらそう思っていると優しく抱きしめられる感覚に不安が一気に吹き飛ぶ。

 

「うふふ、小さくて可愛い子」

 

誰かに抱きかかえられている。人肌と思われる所に抱き寄せられる。

温かな液体がその人肌から流れて伝って私に当たっている感覚がある。

 

「生まれて来てくれてありがとう」

 

酷く優しい声に安心感を覚える。

いつの間にか泣きやんでいた。

それにしても”生まれて来てくれてありがとう”だと?

理解が追い付かない。

私はついさっき死んだのでは無かったのか?

そう思い体を動かそうと努力するが体はまるで私の体では無いように動いてはくれない。

手に太くて長い何かが挟まれる。

私は反射的にその太くて長いものを握った。

 

「見て見てアリスちゃん、私の指を握ってるよ!!」

 

興奮気味の声が聞こえる。

さっきの女性とはまた違った女の声だ。

話から推測するに握っている物はその女の指と言う事が解った。

そう考えて居たらお腹がすいているのに気がついた。

それに対して声を上げて泣く事しかできなかった。

その声を聞いて今度は抱き寄せられながら膨らみの前まで顔を移動させられた。

本能が勝手にそれをしゃぶる。

そこから出て来る液体をごくごくと飲みこむ。

上手く吸い込めずに空気もがばがば飲みこんでしまう。

まぁ、どうでも良いや。

腹が満たされるとしゃぶるのをやめる。

その後に優しく背中を撫でられる感覚。

心地よい感覚だ。

 

「ゲプッ」

 

思わずげっぷがでてしまう。

失礼だと思ったけど出てしまった物はしょうがない。

そう思っていたらまた眠気が襲ってくる。

抗おうとするがそれすら許さない如く、意識は途切れた。

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