此処での生活は普段の生活よりも良い物だった。
このまま此処に住んでいたいぐらいだ。
特に何もしなくても時間になれば御飯が出てくるのが良い。
しかし、それ以外の時間は暇だ。それが此処でのゆいつの不満だ。
魅魔に魔理沙は此処の大図書館の魔道書にくぎ付けで、図書館にこもりっきりだ。
私はそちらの方は門外漢なので暇つぶしに成れない。
図書館では魔法書以外も有りそうだが、私が読める字で書いてあるか怪しい所だ。
そんな中、気に成っていた少女を見かけてつけて来た。
その少女は片手には黄金の短槍とその身に余る真紅の長槍を持っていた。
つけて行くと庭に出た。
水を噴き出す不思議な物が庭にあった。
幻想郷には無い物だ。
あれは何と言う物なのだろうか?
ともあれ本命はこれじゃない。
庭に出た少女は長槍を振り回す行為をしだした。
しかし、やはりその身に余る長さな為、地面に当たって恰好がつかない。
暇つぶしにそれを見る事にする。
その後しばらくし突きをバカの一つ覚え見たいに繰り返していた。
不意にその行動をやめて声をかけて来た。
見て居て面白いかと。
何もしないよりもマシなのでその事を言ったら注意を受けた。
見てみると私に攻撃を仕掛けて来た悪魔が笑顔だが青筋を浮かべて居たので少女の言う通りにする事にした。
暫く見て居たら突きをするのをやめて目を瞑り始めた。
何やってんだ? そう思ったが次に目を開いた時に少女を包む雰囲気が変わった。
場の空気が冷え込んだ感覚に陥り、冷や汗をかく。
こんな事は生まれて初めてかもしれない。
能力がら、こう言った威圧感を受けないにも関わらずそう感じてしまった。
そこからはガラリと変わった。
今まで通りに突きを繰り出しているだけなのに受ける印象が全然違う。
まるで誰かと戦闘をしているような感じ。
私は武に対しては結界術と言う陰陽五行が絶対の理念としてある為、我流交じりの中国拳法のような真似ごとはするが、そこまで深くやった事は無い。
これが頂点の、或いは至るシナリオなのかもしれない。
兎に角、凄いと思ってしまったのだ。
私も修行をやってみようかしら?
私にしては初めて自分から修行何かをやろうかと本気で思った。
私は歴代最強と言われるだけの霊力を持ち、過酷な所業を積まなくてもそれらを行使できるだけの才能があった。それは自他共に認めて居た物だった。
だが、目の前の少女に出会い、その才能に甘えて居た事を思い知らされる。
目の前で真紅の槍を振るう少女は間違いなく、武の才能がある。
それこそ損所そこらの連中とは一線を置いた物だと私の勘が告げている。
あの二重結界が破られたとき、能力が無ければ負けて居た。
言いわけする気はさらさら無い。
それに相手は能力を使ってこなかった。これだけの兵なのだ。能力位持っているだろう。
幽香見たいな直接戦闘に向いていないのに半端なく強いと言う例外も存在するが。
少なくとも戦闘に関係ない能力を持っている人物とは思えなかった。
少なくとも複数の能力を持ち合わせている能力者だろう。
私も霊力を扱う程度の能力と主に空を飛ぶ程度の能力と言う2つの能力の持ち主だ。
魔法の国の神と言うからには魔法は勿論使うだろう。
今の所解っているのは命名するとするならば槍術を扱う程度の能力に、剣術を扱う程度の能力に魔法を扱う程度の能力と言った所だろう。
そう思っている間も目には見えない誰かと真剣に槍を交えている少女は動き続けている。
地を大きく蹴って空に向かって鋭い突きをかましている。
常人がみれば闇雲に槍を振り回しているようにしか見えないが全て理にかなった動きをしている。
何よりも少女の目が本気だった。
その宝石のような碧玉の大きな目に人形のような顔から良く出来た人形劇だと錯覚してしまう。
空中で大きく槍を振り回し、落ちたであろう架空の敵に上空からの一撃が炸裂する。
一体少女が敵対しているであろう人物は何者だろうか?
少なくとも損所そこらの雑魚では無く、英雄と呼ばれるような戦士と決闘でもしているのだろう。
弾かれたモーションまで再現して少女は踊る様に槍を振るう。
それを見て結審する。修行をしようと。
先ずは基礎中の基礎、霊力を感じ、運用する修行。
庭を後にして適当な部屋に入り、座禅を組んで瞑想する事にした。
木陰でレイに介護されて大分ましに成った。
失われた魔力も回復した。
そこでレイから訓練場に来ないかと誘われる。
何故かと聞いたら新兵がたるんでいるので、活を入れて欲しいとの事だ。
もしもの時に私達を守ってくれる筈の騎士団が役立たずでは話に成らないので訓練場に足を運ぶ事にした。アリア騎士団はそうでもないらしいんだが他がたるんでるらしい。
何で私の騎士団だけたるんでないんだ? と疑問をレイに問いかける。
「・・・・・・・もしかして本気でおっしゃっているのですか?」
「本気も何も無いだろう。聞いてるんだから」
そう言うと眉間を抑え始めた。
む、失礼だな。
そう言いつつ来る。そう言えばレイはアリア騎士団の団長であって他の隊とは関係ない筈なんだが?
多分夢子が総司令だと思うし。
あれかね? 見て居て余りにもだらしがないのでって奴かね。
まぁ、新兵に活を入れる位なら夢子やしっきーに話さなくても大丈夫だろう。
城を出て騎士たちが居る館へと向かう。
館について、訓練場に行く。
確かに新兵と思われる奴らの態度はお世辞にも良くない。
ちょっと強いからって調子に乗っている感じだ。
強いかは解らんが。
レイが号令をかける。
一応集まってくる新兵。
それに私は私に一撃を入れた者には賞金を出すと言うと「ちょろいぜ」とか言いながら新兵は笑いだす。
む、これは・・・・あれだな。何と言うか、典型的過ぎて話に成らない。
身に合わない槍を空中で構えて言う。
「始め!」
その言葉と共に新兵が魔法の砲撃を撃ってくる。それをあえてギリギリまで避けないで、当たる直前に魔力放出で一気に新兵達の横に立つ。
「悪いな、ついつい手加減出来なくってな」
そう言いなが私が居た場所に更に攻撃しながら高笑いを始める新兵達。
挙句の果てには「うはw、やっぱ俺ら強過ぎww」とか言う奴が出る始末。
「これは思っていた以上にひどいかな?」
それに驚く新兵ども。
「いっ、何時の間に!」何てお約束な言葉を残すが槍で新兵の一人を叩き落とす。
これ位の攻撃に満足に反応出来ないとは。
呆れて開いた口がふさがらないぜ。
後ろから迫ってくる攻撃にあえて何もしない。
魔力による爆発が起こる。
それを見て「所詮はこの程度か」と言いだす新兵。
その言葉、そのままそちらにおまけ付きで送り返そう。
「アリア様、何故避けないのですか!」
レイが背中でシールドを張っていた。
「背中は任せると言った筈だよ」
そう、それは私が槍や剣を扱い始めた時に言った言葉。
連帯の大事さを教えるためにもあえてレイに背中を任せた。
「ああ、もう!」
そう愚痴るレイには悪いが此処で一気に叩こうと思う。
後であれだけ耐えられたんだから俺達強いんじゃね? と言うのを避けるために思いっきり叩き潰した方が今後のこいつらの為に成る。
「中距離コンビネーションだ、合わせろよレインフォース!」
「! 了解!」
初めてだけど上手くいくかな?
それに私の得意魔法は遠距離砲撃だ。後シールドにバリア系。
痛い思いをするのは嫌だからね。
槍や剣を振っていたじゃないかって? ごめんあれは私の憧れとロマンでやってるだけなんだ。
チキンな私はまずは遠くから撃って敵を近づかせないのが私の憧れの戦闘スタイルなのだ。
シールドとバリアはもしもの為の物。某狩りのゲームでは遠距離装備は防御が低いが遠距離武器こそ防御力が高くあるべきだ。そう私は考えている。
なのでシールドやバリア系の魔法の固さはしっきーと母さんから折り紙つきの強度を誇っている。
現に一撃だけだがしっきーと母さん、レイの攻撃を防いだのだ。完全に防ぐ事は出来なかったが。
そう考えている内にも新兵が必死で攻撃魔法を放って居るが私達の位置まで届かない。
因みに足元には魔法陣が出ている。これは単なる足場として出しただけの物だったりする。
それに防御を付け加えた物。私の持つ防御魔法の中で一番脆い物だ。
それさえも貫通出来ない新兵達の士気は下がる。
「シュートイベイション、エクスキューションシフト!」
「ファイア!」
レイの中距離殲滅魔法と私の砲撃が発射される。
手加減はあえてしない。
全力でその出た鼻をへし折る。
その方が為に成る。
協働の基本だな。
これで改心してくれれば問題無い。後は夢子辺りに任せよう。
騎士団をやめるようならそれまでの人物と言う事だ。
何故かアリア騎士団がいつの間にか居て、皆が盛り上がって居るが何故だろうか?
ってか何時の間にここに来た、お前ら。
騎士団がたるんでいる事を話したらアリア様は一度活を入れますか。
と言って兵舎に向かった。
その途中でアリア騎士団とは関係ない物だと説明する。アリア様直々に叩くのもどうかと思い言う。
もともと私が言いだした事だ。私が活を入れれば良いだけの話。
そんな中、何故アリア騎士団はたるんでいないのかを聞いて来た。
本気で言っているのだろうか? そう問うと首をかしげたままそうだと答えた。
まぁ、それがアリア様らしいと言えばらしい。
アリア騎士団は元々問題児と言われていた者や貧しい者達に私と同じようにアリア様が救いの手を差し伸べてくれた者達が殆どだったりする。
本人は当り前の事をしただけと謙遜するが、私達は違う。それに当たり前の事を当たり前に出来る者はそうは居ないし、その器の大きな者はそうは居ない。まさに天性のカリスマの持ち主だった。
あの日あの時にアリア様に出会わなければきっと私達は腐っていたままだっただろう。
救われた者の殆どは涙を流しながら感激し、アリア様に忠義を誓った者達の集団だ。
たるむどころか先陣に立たれるアリア様をサポートできるように訓練している。
本来なら守りたい所だが、アリア様自身がお強いのだ。私達よりも。
だからせめて、足を引っ張らないようにアリア騎士団は日夜訓練に励んでいる。
新兵は力の差すら分からずに攻撃してもう勝った気でいる。
それをアリア様が手加減した槍で叩き落とした。
その間に新兵の一人がアリア様の後ろに回り込み、攻撃を行った。
アリア様はそれにあえて何もしなかった。
見ているこっちとしては気が気では無かった。
加速をかけ、アリア様の後ろに防御魔法を展開しながら入り込む。
攻撃魔法が防御魔法に当たって爆発を起こす。
文句を言う。
そうしたら返って来た答えに頭を抱えてしまう。
それはまだ昔、アリア様が剣や槍を扱うようになったばかりの頃の話。
何気ない会話の中で後ろは任せると言ってくれたのだ。
不意打ち過ぎる。
まさかそれほどまでに信頼されているとは思いもしなかった。
「さて、中距離コンビネーションだ、合わせろよ”レインフォース”」
普段は愛称で私を呼ぶのにあえて名前を呼ばれた。
胸の中に熱い物が込み上げてくる。
憧れてずーっと追い続けて居た背中が私に隣に立つ事を許したのだ。
主の危機を守る剣である誓いを思い出した。
何があってもアリア様の剣であると、例え世界の全てが敵に成っても、誰かがアリア様を裏切っても、私だけはアリア様の剣であり槍で有り、盾であり続けるとあの時から誓った。
アリア様が無条件で背中を任せてくれる位に信頼され、あまつさえ隣に立つ事を許してくれたのだ。
これ程嬉しい事は無い。
私の答えは一つしか無い。
「了解!」
全力でアリア様の期待に答えるのみだ。
アリア様は槍を魔法発動隊にしてスフィアを展開してゆく。
私も魔力で出来た剣を大量に作り出す。
不意にアリア様が槍を持っている方の左手を此方に差し出して来た。
これは私にタイミングを合わせると言う事を言っているのだ。右手をアリア様の差し出した手に添える。
そして告げる。
この戦いを終わらせる言葉を
「ファイア!」
言葉と同時に槍先から砲撃が撃たれ、展開されたスフィアが次々に新兵を飲み込んでゆく。
歓声の声が響く。
気が付けばどこから聞きつけたのかアリア騎士団のメンツがアリア様と私に拍手を送ってくる。
それにアリア様は終始顔を傾けていたが、私には騎士たちの心が解る。
皆、アリア様の隣に立つ事にあこがれているのだ。
アリア騎士団はその日からより訓練に励み、新兵は心を入れ替えて訓練に赴く者もいれば、騎士をやめる者もいた。
これについてアリア様は「離れる者は所詮その程度だ」とだけ告げた。しかしその顔はどこか寂しげであった。