東方アリア伝   作:仙儒

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11話

 夜。

 今日は鍛練で無茶をしたせいか部屋に戻ったら急に眠気が襲って来た。

 何時もよりもちょっと早いが今日はもう寝よう。

 そう思ってベッドに入り眠りにつく。

 限界だったのか入った瞬間に眠ってしまった。

 

 

 

 

 暫くして眠っている内に浮遊感に見舞われる。

 何だ? 重たい瞼を必死に開こうとする。

 

「あらあら、ゆっくりお眠りなさいな」

 

 優しく抱きしめられる感覚にうっすらと開いた瞼が再び閉じた。

 何だかとても温かい。優しい感じが伝わってくる。

 薄く閉じた瞳が何とか見たのは綺麗な金髪に優しい笑みを浮かべる知らない顔の女性。

 その後ろに見える大量の目。

 それだけだった。

 

 

 

 次に目が覚めた時、私は見知らぬ森の中に居た。

 此処は何処だ?

 眠るときは確かに自分の部屋のベッドだった筈だ。

 いつの間にか寝間着姿だった筈の姿も軽装だがしっきーに貰った鎧を装着して背中には大剣の鞘の感覚がある。

 腰には干将・莫耶が収まったホルスターが装備されている。それに少し前には黄金の短槍と真紅の長槍が地面に突き刺さっていた。

 見覚えの無い場所だ。

 一応槍を回収して探索を始める事にする。

 強化した身体で近くにあった木に立って辺りを見回す。

 空には幾千もの星々があり、大きな月が見下ろしていた。

 この月・・・・・魔界の物では無いな。

 転移魔法なんてものは私は習得していない。

 よって魔法で移動したとは考えにくい。

 空間攻撃ならば得意なんだけどね。

 一応転移府なら持っていたがそれは幽香お姉ちゃんの住む夢幻の館へと転移する物だ。

 此処が何処だかわからない以上、転移府を使って幽香お姉ちゃんの館に向かった方が良いのだけれども、確か机の上に束ねて置いといたはずだ。そんな都合よく持ってはいない。

 となると、考えにくいが誰かしらが何かしらをやらかした可能性が高い。

 考え付く限り、しっきーの根城に気がつかれずに忍びこみ、私だけを誘拐するような真似を出来る人物がいるだろうか? もし居るとしたら相当の相手と言う事に成る。

 それに一番解せんのは何故誘拐しといて、態々武器を私に持たせるかだ。

 少なくとも誘拐した私をそう簡単に殺す気は無いと言う事だけが解っている。

 しかし、誘拐されたのならば、何故こんな所に野放しにした?

 様々な疑問が次々と浮かんでくる。

 兎に角今は情報が欲しい。

 建て物らしい物が無いか目を凝らす。

 翼を展開して高速で移動する事にした。

 まさかこんな形で出てみたかった外の世界に出られるとは思わなかったよ。

 ただ、心残りなのは、私が誘拐されて、それが更に外の世界となると冗談抜きで全面戦争になる可能性が高い。

 それを防ぐための人質なのか?

 それならもう少しましな待遇を所望しても罰は当たらないんじゃない?

 そう冗談を入れつつ飛ぶ。

 トップスピードで。

 本当に何処だよ此処。

 森なのは解るがそれ以外解らない。

 

っ!、今のは人の悲鳴か?

 

 槍を構えて声のした方に加速する。

 間に合えよ。気が付いてしまったからには助けないと、目覚めが悪くなる。

 森を抜け、そのまま直進する。

 魔力のスフィアを幾つか展開する。

 妖怪の群れに囲まれている人間と思われる人物が居た。

 

「間に合えよコラ、シュート!」

 

 魔力弾をぶちかます。

 飛びかかっていた妖怪が魔力弾に貫かれる。

 長槍を足の甲で思いっきり蹴り、魔力放出の二次加速を得た真紅の弾丸が妖怪2体を貫き、それでも勢いが止まらず大きなクレーターを作る。

 人間の少女はお尻をついたまま動かない。

 翼に魔力を込めて爆発させ、高速移動魔法を同時行使する。

 そのまま残りの妖怪を短槍で斬り捨てる。

 

 とん、と真紅の槍の上に降りる。

 

「譲ちゃん立てるか?」

 

 槍の上から言葉をかける。

 

「え、ええ」

 

 そう言いながら立ち上がる少女。

 黄金の短槍を構えて残りの妖怪を始末する事にする。

 

「じゃあな譲ちゃん、ここから全力で走って逃げな」

 

 そう言いながら槍から降りて、飛びかかって来た妖怪を突き刺す。

 道に成っているらしく、踏み固められた舗装のされていない田舎道を見て魔法の糸を操り、真紅の長槍を引き抜き道に沿って邪魔な妖怪を串刺しにする。

 

「道は開いた、早く行きな」

 

「しかし、あなたが!」

 

 そう返してくる人間の少女。

 しかし、どう考えても戦力に成らない少女を守りながら戦うのは骨が折れる。

 

「いいからとっとと失せな、かばった程度で仲間意識持ちやがって、これだから育ちの良い小娘が気にくわねー!」

 

 そう言っている間に真紅の長槍を糸で手元に戻して黄金の短槍を地面に突き刺し構える。

 

「・・・・ご武運を」

 

 そう言うと少女は走って行った。

 背中の気配が遠のいて行くのが解る。

 どうでも良いがこれってもしかしなくても死亡フラグ立ったんじゃね?

 そう思いながら追いかけようとした妖怪を魔法の糸で引き裂く。

 うえぇ、幾ら異型とはいえ殺すのに抵抗が無いわけでは無い。

 これが人型だったら間違いなく戦えなかったであろう。

 そう思いつつ敵を確実に突き刺していく。

 こうしていると精神的に来る物があるよね。

 そんな事を考えながら戦っていたら挟み撃ちで攻撃してきた。

 地面に刺していた短槍も構え、そこに綺麗に敵が突撃してくる。

 体に何かがぶつかるような衝撃が走る。

 見てみると短槍の方の異型の爪が私の鎧の隙間を貫いて居た。

 胸から込み上げてくる物を吐く。真紅の血が大量に吐き出された。

 そしてこの身をまるで灼熱の劫火で焼かれているような感覚が襲う。

 次に痛みが走る。

 痛い痛い、イタイ!!!!!

 短槍の方の敵を蹴り飛ばす。

 先程まで貫いて居た爪が引っこ抜ける感覚に更に激痛が走る。

 周りを囲むように妖怪たちがこぞって近づいてくる。

 体をから鮮血が流れ落ちる。

 短槍を杖代わりにして何とか立ちあがる。

 テンションが上がっていたとは言え、死亡フラグ何か立てんじゃ無かったな。

 後悔は先には立たない。

 成程、的を得ているよ。全く。

 だがな! 憧れて居た青い兄貴はどうだった? 自害を命じられ、心臓が破壊されても尚、動き続けた兄貴は。

 伝承ではほぼ全ての呪いによる制約(ゲッシュの誓い)を破らされ、碌に体が動かない状態で、それでも体に丸太をしばりつけ、四肢の浅瀬で戦い抜いたあの兄貴は。

 

 

力がみなぎる。

 

 

 まだ私は終わってはいないのだ。出て来た腹わたを手で押し戻す。

 激痛が走る。

 これも真似ているだけだけど、憧れて居た兄貴には少しは近づけたかな?

 血が飛び出すのを無視して止めを刺そうと一斉に襲い掛かってくる敵に防御フィールドを使い全ての攻撃を弾く。

 兄貴は体が動かなかったけど私の体は動ける。

 ただ痛いだけの話だ。

 真紅の長槍を構えて大きく飛翔する。魔力スフィアで異型を次々に貫く。

 すると大きなゴブリン見たいのが現れた。

 お前が親玉ってわけか。

 面白い。冥土の土産にその首を頂いて行こう。

 

 

 そう意気込んで走り出す。

 

 大きく振られた岩で出来ているような剣のような何かを振るうゴブリン。

 それを少し大袈裟に避けたが、顔に少し切り傷が出来た。

 

 

 おいマジかよ。

 

 完全に交わしてこの威力か。物理的攻撃力だけで言うのならレイを上回るかもしれない。

 シールドを出し、攻撃を受け止める。

 シールド越しに凄まじい力を感じる。

 だが、耐えきってしまえば隙が大きい。短槍を突きたてるがビクともしなかった。

 おいおい、こいつ本当にただの妖怪か?

 しっきーが用意した槍だぞ。

 しかも特注品として。魔力で限界まで強化してあるのに突きが通らない何て。

 槍を捨てて背中に背負っていた大剣を両手で構えて魔力放出をして振るわれる岩でできた剣のような物を受け止める。

 この衝撃だけで軽く地面に亀裂が走った。

 魔力放出の連打に身体強化に回している分の魔力を考えると残り少ない。

 そう言えば腰にある短剣の夫婦剣は異型の者に最大の威力を発揮する剣だったな。

 何せ陰陽道を基礎に作られた剣だ。

 後はかけしか無い。

 片方の剣を思いっきり敵に投げ飛ばす。

 それを敵は手に持っている物ではじいた。

 本能的にこれは不味いと思ったのかも知れない。

 神の加護も受けた剣だからな。残ったもう一振りを投影する。

 それも弾こうとするが間に合わない。

 駄目押しにと空に飛翔し最後の魔力をありったけ込めた真紅の槍を糸で固定して足の甲で思いっきり蹴飛ばす。

 再び真紅の閃光となった槍が敵の獲物を捕えて砕いた。

 

 ざまあ見やがれ、でかぶつ。

 

 投影された剣がゴブリンを真っ二つに切り裂く。

 もう体には感覚が残って居ない。

 そのまま魔力切れで自然落下する。

 此処で終わりか、まぁ、悪くない人生だったな。

 心残りと言えば、二度も親不孝をした事だろうか? 生前の両親との仲は良かったし今生の母さんやしっきーとの関係も大変良好だ。

 せめて助けた少女は無事でいてくれよ。

 そんな事を考えて居たらポスッと地面に落ちるのとは違う音が聞こえた。

 私の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリアの部屋から一瞬だが膨大な妖力を感じた。

 アリアは神気に恵まれているため妖力の量は少ない。

 急いでアリアの部屋にかけて行く。

 途中でママに夢子にレイが駆けつけて来た。

 扉を蹴破ってアリアの安否を確認しようとするがアリアの姿が見当たらない。

 アリア、アリアは何処! 怒らないから出て来なさい、ねぇ聞こえて居るんでしょう?

 ちょっとした悪戯なのよね? だから出て来なさい。

 

「出て来なさい、アリア、かくれんぼは終わりよ? 大丈夫怒らないから、ただちょこっとびっくりしただけだからねぇ、ねぇ。アリア・・・・・」

 

「奥様・・・・」

 

「アリス様・・・・」

 

 その内膝をついて「アリアーーーーーーーーー!!!!!!」と泣き叫ぶ声が城中に木霊した。

 そんな私にレイに夢子が近づいてくる。

 ママは何時もののほほ~んとした態度では無く、最早感情を見せない顔をしていた。

だが体から発散される神気が空間を歪ませかな斬り音を立てている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリアちゃんの部屋から膨大な妖力を感知して急いでアリアちゃんの部屋に皆が集まった。

 しかし、そこにアリアちゃんの姿は無かった。

 考えられるのは一つ。アリアちゃんは何者かに誘拐されたのだ。

 次元の歪みが見えたのでそこに神気で攻撃する。

 アリアちゃんに当たると不味いから本気で打てないのが余計に怒りを加速させる。

 神気は空間を歪ませる程の力を内包している。

 二撃目、三撃目で完全に逃げられたが確かな手ごたえがあった。

 錯乱状態のアリスちゃんは夢子ちゃんとレイに任せて状況を確認する。

 私がプレゼントした武器に鎧が無くなっている。

 恐らくアリアちゃんを誘拐した時に一緒に盗んで行ったのだろう。

 解せないのは何故アリアちゃんだけを誘拐しなかったのか。

 あれはアリアちゃんにしか扱えないように細工をしてある。

 短剣には何の細工を出来なかったけど。

 妖力の波長は覚えた。それに大なり小なり確実に手負いの傷を負わせた。

 後はその人物にマーカーとして一発だけ私の神気を辿れるように細工をしといた。

 

「夢子、軍を整えなさい、出陣するわよ」

 

 何時ものようにちゃん付けで呼ばない。

 殺気交じりの冷たい言葉が発される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人里で血眼に成ってある人物を探していた。

 この幻想郷の歴史を記す大事な任を背負った少女。稗田阿求を。

 もしかしたら里から出ているのではないかと心配していたら阿求が走って来た。

 それを見た里人は取り敢えず阿求が無事だった事に胸をなでおろした。

 

「おい阿求! どれだけ心配した「た、大変です!!」と」

 

 私の声に被る様に大声を出した阿求。阿求は普段おとなしく内気な性格をしている。

 そんな人物が此処まで慌てて、あまつさえ声を張り上げるのは珍しい。

 走って来たと言う事は妖怪か何かに追われて居たのかも知れない。

 

 人里に門を閉じるように命じる。

 

「しょ、少女が一人で妖怪の軍団と戦っています」

 

「何!」

 

 今の所阿求意外に居なくなった子供が居るとは耳にしては居ない。

 この狭い人里ではそんな事があればすぐに広まる。

 必然的に私の耳に入る筈なんだが。

 入って居ないと言う事は外来人なのかも知れない。

 妖怪の賢者の気まぐれで人生を棒に振るわれる者がいるのを見捨てる訳にはいかない。

 阿求の話では相当な数の妖怪が襲って来たらしい。

 それと外来人と思われる人物が戦っている。

 阿求への説教は後だ。

 阿求を人里に入れて門番達も入れて私の能力で人里を隠す。

 急いで阿求がかけて来た道をたどる。

 血の匂いが鼻につくように成る。

 間違い無い、まだ戦いは続いている。

 間に合ってくれよ、そう思いを込めて行くと空から少女が降って来た。

 その少女を受け止める。

 少女を見てみると鎧と思われる物の間、腰近くに何かに貫かれたような傷があった。

 辺りを見渡してみると妖怪の亡骸がゴロゴロと転がっている。

 

 この数をたった一人で倒したと言うのか!

 

 外来人でも凄い人物が来た物だなと思う。

 それにこのゴブリン。前に里の陰陽師達が束に成っても倒せずに博霊の巫女に退治を依頼していた妖怪では無いか?

 それに少女の身に余る武器と思われる物を見る。

 どれもかなりの業物と言ってもいいものばかりだ。

 

「うっ」

 

 少女がうめき声を上げたので我に帰る。

 だが、少女の傷を見るに私ではもうどうにもできない。

 親友の妹紅の喧嘩相手である薬師ならどうにかできるかもしれないが生憎妹紅は今日は里に来ていないし、仮に居たとしても搬送中に息を引き取るだろう。

 何もできない自分に腹が立ち、唇を強く噛みしめる。

 せめて最後位は看取ってやろうと思い少女を再度見ると傷口が少し小さく成っている事に気がついた。

 こいつ、もしかして人間では無いのか?

 これならば何とか成るかもしれない。幸い阿求を助けた事を考えると悪い妖怪では無いのだろう。

 武器を全て拾い、監視やもしもの可能性を考えて私の家で治療する事にしよう。

 そう思い、急いで人里に飛んで行く。




ケルト伝統の足蹴り投影。この投影は世界広しと言えども一人しかいない。
狂う番犬。幼少名はセタンタ。

まぁ、ネタバレするとアリアの使っている武器はゲイ・ボーとゲイ・ジャルグです。
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