東方アリア伝   作:仙儒

13 / 19
12話

「これで大丈夫、ごめんなさいね」

 

女性は一人謝る。

それが誰に語りかけているのか解らないが。

 

「それにしてもだいぶ痛かったわね、流石は魔界の神と言った所かしら」

 

独りごとが続く。

良く見てみれば服の一部が破れ、血が紫色の服を侵食していた。

 

「この程度の力だとは思えないのが誤算だわね」

 

傷はみるみる塞がって行く。

 

「あの子には強く成って貰わないと、幻想郷の為に、そして私の為に」

 

ねぇ、愛しいアリア。

最初は本当に興味本位だった。

魔界の創世神と言うだけあって隙を窺うのは容易では無かったが、何とか見る事が出来た。

しかし、見た瞬間に電気が体を駆け巡った。

何か攻撃を受けたのかと思った。

それからちょくちょく覗くようになった。

彼の魂は脆くて儚い印象を受けたが、他の魂に無い特別に輝く物があった。

私はその魂に魅入られてしまった。

だから私は彼の虜に成ってしまったのだ。

外見も人形のような綺麗な顔で肌も白く、宝石のような大きな瞳。

その全てを何よりも、美しいと思ってしまったから・・・・・

 

 

 

 

 

 

――――囚われたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何が神の左手だ!

それはアリア様が口ずさんだ私を、私だけを歌った唄だ。

騎士として鍛錬している時には私は大剣を右手に持ち、左にはちょっと特殊な形をした長槍が鎖で巻きつけて使う。

何が勇猛果敢な神のアリア様盾だ!

私は結局アリア様を守れていないじゃないか!

行き場のない怒りを壁に叩きつける。

音を立ててその部分が壊れ、回りには亀裂が走る。

左肩に手を乗せられる感覚に我に帰る。

見てみると夢子様が宥めるような目で此方を見て居た。

 

「っ、すいません、今すぐに直します」

 

そう言って補強魔法を使おうとしたら止められた。

 

「・・・・・少し外で頭を冷やして来なさい」

 

冷たい言葉が告げる。

そうだ。怒っているのは私だけでは無いのだ。

夢子様とてアリア様の事でお怒りに成っている筈なのだ。

私は素直に頷いてその場を後にする。

伝令を受けた騎士団達がピリピリした空気を作り出していた。

皆がアリア様を誘拐した犯人に殺意を覚えている。

アリア様は魔界の全てに愛されていたからな。

その証が騎士団の態度で窺える。

民衆もアリア様誘拐事件の事を知って次々に騎士団に志願している。

その名簿を確認しつつ来るべき戦いに備える。

後は神崎様の命令を待つのみだ。

さぁ、出て来い主犯よ、生まれた事を後悔しながら死んで貰うぞ。

 

地獄を造るぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チュンチュン

 

 朝の鳥が囀る声に目を覚ます。

 

「知らない天井だ」

 

木でできた天井何て生前でも珍しかったからな。

木の香りが鼻につく。

懐かしい気持ちに成る。

 

「ああ、起きたか」

 

声のした方を向いて見るとワイシャツにもんぺと言う奇抜なファッションの銀髪の女性が居た。

一瞬レイを思い出したが、こんな所に居る訳が無いと思いなおして体を起こそうとすると激痛が走り脇腹を押える。

 

「ああ、無理しないで良いから、おい慧音、こいつ目を覚ましたぞ!」

 

誰かを呼びながら私を寝かせる。

 

「すまない」

 

「それはこれから来た人物に言え」

 

 そうするとこれまた銀髪の女性が障子を開けて入ってくる。

 また銀髪か。

 そう思いながらそちらに顔だけを向ける。

言葉を聞く限り入って来た人物が私を助けてくれたのだろう。

 

「死に損なったか」

 

「こら、命を粗末にするもんじゃないぞ」

 

ちょっとしたジョークを心の中で呟いた積りだったんだが、口にしていたらしい。

しかし、死んだと思ったのは事実だ。

だが助けてくれた人物に今の言葉は失礼だろう。

 

「すまない、助けてくれたのはそなたか?」

 

「ああ、一応な」

 

起きてちゃんと礼を言った方が良いとは思ったが如何せん体を動かせない。

 

「この状態での無礼を許して欲しい。本来であれば褒美を遣わす所だが見ての通り今は無一文でね。礼と言う物が用意できないんだ、すまない」

 

「嫌、その怪我であれば仕方がないし礼が欲しくて助けた訳では無いから気にするな。それよりも聞きたい事があるのだが良いか?」

 

「構わない、私もちょうど情報が欲しかった所だ」

 

「レディーファーストだ、そなたからどうぞ」

 

「それでは遠慮なく聞かせてもらう。率直に聞こう、お前は何者だ」

 

まぁ、それが一番だろうな。

 

「悪魔だ」

 

嘘をついても仕方がないので本当の事を告げる。

悪魔と聞いて一瞬だが眉間に皺が寄った。

 そこで気不味い雰囲気が流れる。

 うーむ、こう言った場合、どうすればいいのか私にはわからない。

 ユーモアのセンスは零だからな。

 

「とどめを刺すのなら今だぞ人間」

 

取り敢えず言って見る。

人間から見れば悪魔と言うのは余り良い印象を抱かないだろう。

 

「嫌、あきゅ、人里の者を助けてくれたのだ。そんな事は出来ない」

 

「私が言うのも何だが良いのか? 悪魔を助けるような真似をして。この後何をしでかすか解らんぞ」

 

自分で自分の首を絞めるようなことを言う。

悪魔と名乗っては居るが正確には私の属する名称は解っていないのだ。

 

「それをさせない為に私が居る。それに人間を助ける奴がそんな事をするとは思えないしな」

 

随分あまちゃんだな。

まぁ、私も十分にあまちゃんだが。

目の前に居る人物二人はかなりの強いと言うのは武器を扱う武人としての私が告げて居るが倒せない相手では無い。

まぁ、この怪我では無理だが。

 

「ずいぶんとあまちゃんだな、後でどうなっても知らんぞ?」

 

「そうはならないだろう。こう見えても人を見る目だけは自信があるんだ」

 

根拠のない物に胸を張って答えた。

服の上からでも解る立派なメロンに目が行ってしまうのも男の性と言う奴だろう。

注視するのは失礼なので一度目に焼き付ける。

揉んだらきっと柔らかいのだろうな。

生前も今生もそう言うのとは無縁だった。

灰色の青春のトップをアクセルべた踏みで突き進んでいたからな。

言ってて悲しく成って来た。

 

「今度は此方の質問だ。ここは何処だ?」

 

魔界では無い事は明白だった。

空が明るいし。

魔界だと明るいものと言えば照明器具しかないからな。

これだけ明るいとなると照明器具では無理だ。

必然的に考えられるのは太陽の光だ。

薄暗い魔界生活が長かった為にこの量の光だと眩しくてたまったものじゃない。

 

「ここは幻想郷の人里だ」

 

「ん? 幻想郷?」

 

聞き覚えが無い名前に眉間に皺をよせる。

 

「やはり聞き覚えが無いか」

 

そう言って幻想郷の事を説明してくれる。

外の世界で忘れ去られた者が、或いは物が行きつく場所であると言う事。

妖怪、人、神が住まう土地だと言う。

ほほう、興味深い。

生前にはそう言ったオカルト系に所属していたからな。

途中興味がわいた事があれば「詳しく」と言って追及したりした。

話がいつの間にか歴史の話に成り、モンペの女性に止められた。

私が知っている知識と微妙に違っていておもしろかったんだがな。

「すまない、話がそれた」と言い直し、再び幻想郷の話に成った。

その中に博霊と言う聞きなれた単語を耳にする。

この幻想郷のバランスキーパーを務める要らしい。

 

「博霊の巫女と言うのはもしかして霊夢と言うんじゃないか?」

 

 その問いに相手は眉間に皺をよせ「なぜそれを知っている」と言って来た。

確かに幻想郷を知らない者がその幻想郷の要である巫女の名を知っているのはおかしな話だ。

怪しまれてもおかしくない。

 

「ああ、魔界に攻めて来た巫女の名前が一致しただけだ」

 

「攻めた」と言う単語に更に皺をよせる。

 

「ゲート、と言う物が此方に繋がって此方の世界の住人が此方で博霊神社を壊したらしい。今は私の居た館にて家が元通りに成るまで居候する事に成ったんだよ」

 

 そう説明すると納得したのか眉を戻した。

 そう言えば私は彼女達の名前を知らないな。

本来なら最初に言うべきだったか。

 

「私の名前はアリア・マーガトロイド失礼ですがミスは?」

 

その言葉にああ、と成って

 

「すまない、私の名前は上白沢慧音と言う、でこっちのモンペをはいているのが「ああ慧音、自己紹介ぐらい自分で出来る」そうだったな」

 

「藤原妹紅だよろしく」

 

 ほう、”上白沢”に”藤原”、ね。

珍しい姓を名乗っているな。

 

「そうだ、腹は減って居ないか? 丁度良い何か口にした方が良いだろう。しょうかに良い者を用意しよう」

 

 その申し出はありがたいがそこまでして貰う仲では無い。

 

「嫌、傷の手当をして貰っただけで十分だ。そこまでしてもらう仲でも無い」

 

「なーに、困った時はお互い様だ」

 

 そう言って二人揃って出て行ってしまった。

 うーむ、傷に回復魔法をかけながら思う。

 こう言う時に一人で残されるとなんか気まずいよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋から出て妹紅と話し合う。

 

「どう思う?」

 

「怪我してるガキとは言え隙が少なかった、多分だけど私達よりも強いよ」

 

 それを聞いて頭を抱える。

里を守護する者として少女が暴れ出す危険性は残る。

 それに言っていた事を鵜呑みにする事は出来ない。

 このような真似はしたくないが暫く監視しておく必要がありそうだ。

何せ相手は堂々と自らを悪魔と名乗ったのだ。

悪魔と言えば余りよろしいイメージでは無い。

 しかし、私の白沢としての自分はあの者なら信用できると告げて来ている。

強い徳を感じさせる少女であった。

 それを察したのかどうかはわからないが妹紅が部屋へと戻って行った。

 こう言った所、彼女との付き合いの長さが窺える。

 さて、一応食事は本当に用意するつもりだ。

 ただ、悪魔に効くと言われるにんにくや銀で出来た食器を使うつもりだが。

 それで様子を窺う事にする。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。