東方アリア伝   作:仙儒

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13話

 揺さぶられた感覚に意識が浮上する。

 

「おい、アリア、起きろ。飯が出来たぞ」

 

 美味しそうな匂いがして来たのに目を開ける。

 いつの間にか寝てしまっていたらしい。

 何だか重要な事を忘れている気がする。

 思い出そうとするが、そうする度に頭に鈍い痛みが走った。

 まるで思い出す事を拒んでいるような感じだ。

 体を起こすと腹の部分の痛みが無くなっていた。

 どうなってんだ? 確かに回復魔法は使ったが、私は回復魔法があまり得意ではない為、どうしても完全に傷を治すには時間がかかってしまう。

 回復魔法は何時もレイか夢子か魔界の賢者と呼ばれるような大魔法使いが回復魔法をかけてくれていた為に回復魔法を自分で使う事が無かったのだ。

 故にどうしても応急処置程度のレベルに成ってしまう。

 幸いな事にこの体は人間よりは頑丈に出来ているらしいので何時もそれに甘えてしまう。

 とまぁ、回復魔法が苦手なのは十分に解って頂けただろう。

 意識が飛ぶ前にこの部屋に居たのは妹紅なのできっと彼女が何かしらをしてくれたのだろう。

 

「すまない、恩に着る」

 

 指しだされた土鍋を受け取る。因みに、土鍋はもちろんお盆に乗せられている。丁寧に銀のスプーンまで用意していただけるとは。

 しかし、アンバランスだな。土鍋に銀のスプーン何て。

 私はてっきり土鍋で来たので蓮華で食べるのかと思ったのだが、気を使わせてしまっただろうか?

 開いた鍋の中身は消化に良いお粥が入っていた。

 20年ぶりに食べる米に感動と懐かしさを覚える。

 私は実の所、洋食よりも和食の方がこのみだ。

 お米が大好きです。

 まぁ、洋食でもハンバーグとかは好きだったけどね。

 元日本人としてはやはりパンよりもお米だ。

 スプーンでお粥をすくい、ふーふーと息をかけて冷やしてから口に運ぶ。

 懐かしい食感だ。

 病人用に作られた為か味がやや薄いような気がするが此方を気遣っての事だろう。

 食べてて気がついたがこのお粥には微量ではあるがガーリックが使われているのか?

 ほのかにそんな香りがしたような気がする。

 やはりお粥は作る家庭によって味付けが違うのだろう。

 欲を言うのならば生前好きだったコンソメのお粥が良かったが贅沢は言えないので我慢する。

 これはこれで中々に美味しいし。

 ゆっくりと食べ進めていく。早食いは出来ないのだ。

 しかし、問題が起きた。半分を食べた辺りでお腹がいっぱいに成ってしまったのだ。

生前から小食と言う特徴を引き継いでしまっているため、魔界では母さんにしっきーに夢子が心配して少なくても栄養がしっかり取れるようにと工夫されて出されていた。

 甘いものに目が無いのに腹いっぱいだと幾ら大好きな物が出たとしても食べられない別腹を持たぬこの体。

 問題はここが他人の家と言う事だ。

 出された物は好き嫌いなく綺麗に食べるのが礼儀な為に残すと言う選択肢が無い。

 けどこれ以上食べれば吐いてしまうのは確実だ。

 さてどうした物か。そう考えて居たら

 

「ああ別に無理して食べなくても良いぞ」

 

 とありがたい言葉を貰った。

 意地を張ってもしょうがないので言葉に甘える事にする。

 

「すまない、ご馳走様だ。実に美味しかった」

 

 それに嫌味を感じさせない笑顔で気にするなと言って「はい、おそまつさま」と言って土鍋を持って部屋を出て行った。

 

「彼女には悪い事をしたな」

 

「そう深く考えなくて良い。それよりもほら、服だ」

 

 差し出された服を受け取る。

 そう言えば巻いて居た包帯が取られて居て上半身裸だったな。

 まぁ、男なので上半身裸でも気にしないが服を差し出してくれたので受け取って服を着る。

 怪我の部分が塞がっているのに気がつく。

 

「服も直してくれたのか、重ね重ね申し訳ないな」

 

 そう呟くと妹紅が「嫌」と首を振る。

 

「服は勝手に直ってた。術式見たいのが刻まれているからそれのおかげじゃないか?」

 

 何と。この服にはそんな魔法までかかっていたのか。

 まぁ、しっきーに母さんが用意した服なのでそれぐらいの機能が備わっていたとしても不思議では無い。と言うか、そう言う機能をつけるのなら防御魔法でも付けてくれよ。

 そうすれば痛い思いをせずにすんだのに・・・・・。

 よくよく考えてみれば魔界の創世神の城に住んでいて騎士団まであるのだから普通に考えればそんな防御魔法を服に付ける意味がないか。

 創世神相手に喧嘩を売るような馬鹿は居ないだろうし。

 

 

 ・・・・・・前言撤回、そんな馬鹿が居たおかげでこんな目にあったんだったな。

 ミス上白沢が言う話では幻想郷に入る事は幻想入りと言い、その人が完全に外の或いは別の世界から忘れ去られるのが絶対条件だと言う。

 母さんにしっきーに夢子にレイに幽香お姉ちゃんが私を忘れ去るとは考えにくい。

 それを考えると正規にミス上白沢が言っていた事から外れる例外と言う事に成る。

 それに”外”の世界と言うのが引っ掛かる。

 確か博霊大結界とか言うので切り取られたスペースと言うのが幻想郷でその外に人間の住まう世界があると考えて間違いないだろう。

 幻想郷の要である博霊の巫女がゲートを通って此方に来たのだ。

 ゲートはこの幻想郷の何処かに存在すると見て間違いないだろう。

 となると、だ。この幻想郷を運営する組織、或いは造り出した者が私を誘拐したと考えた方が良いだろう。目的がなんであるかは解らないが。

 そう言えば神隠しが云々と言っていたな。例外がその神隠しにあるとすれば、今まさに監視されている可能性がある。

 もし神隠しの主犯が此方に私を誘拐したなら、すぐには返してはくれないだろう。

 

「妹紅、神隠しについて詳しく教えてくれないか」

 

「どうしたんだ急に」

 

「ミス上白沢が言っていた幻想郷に入る絶対条件に私は当てはまらない。主犯は神隠しにあるとみて間違い無いだろう」

 

「そう言う事か、なら教えてやるよ」

 

 それから妹紅から聞き出した神隠しの犯人の名、八雲紫と言う妖怪の賢者と呼ばれる人物が気まぐれで時々外の世界から人を気まぐれで招く事があると言う。

 私をさらったのはその八雲紫と言う妖怪の賢者で間違いないだろう。

 幻想郷の秩序を守る幻想郷の創立者だと言う。

 秩序を守る者が秩序を乱してどうすんだよ。

 何か頭痛く成って来た。

 しかし、ならば尚更に気に成る。幻想郷の秩序を守るのならば間違っても魔界全てを敵に回すような行動をとるほど馬鹿では無い筈だ。

 何かしらのどうしようもない理由と言うのが存在するのかも知れない。

 それにしても”八雲”か。しかも”妖怪の賢者”。

 この二つのキーワードから考え付くのはラフカディオ・ハーン。後の小泉八雲。

 詳しくは知らないが、キリスト教だか何だかを広げに来たが日本と言う文化に惚れてしまいそのまま日本の事を研究するようになったと聞く。

 そんな小泉八雲は民話や神話をまとめた書物を作った人物だったと思う。

 その中でも妖怪の事をよく研究していたと聞く。

 生前、雪女の発祥の地が東京だと言う驚きの記事を新聞で読んだ覚えがある。

 それに八雲と言う名は日本神話を語るのに欠かせない地名でもある。

神が集う地の名前。

 それを考えるとその八雲紫と言う賢者がどんな能力を有しているのか解らない。

 とんでもなく強大な能力を有している事だけは想像に容易い。

 それを考えると自然と頭に過るのは創造と破壊をする力。

 最高神クラスのみに許される特権。

 だが恐らくそれ程の能力の持ち主では無いだろう。

 ミス上白沢が言っていた”外の世界”がその証拠。そして博霊大結界の存在。

 もし仮に、私の思った通りの創造と破壊の力を持つのならばしっきー見たいに一つの世界として零から造り出す筈だ。

 それなのに結界と言う物で外界の一部を切り取ると言う行為しかしていない事。結界は創造よりも簡単ではあるが長い目で見れば創造してしまった方がずーっと楽なのだ。

 結界も様々な種類があるが、どれにも共通して言える事は常にそれを維持するためにエネルギーを喰うのだ。

 そんな面倒な方をあえて選ぶとはとてもでは無いが賢者と呼ばれる者がする行為だとはとても思えない。

 結論として世界を造り出す力は有していないと言う事だ。

 それを考えるとしっきーって化け物だよな。魔界を零から創り上げたのだから。今度から様付けで呼んだ方が良いか?

 ・・・・・やめておこう。泣いて夢子に飛びつくのが目に見えている。

 しかし、だからと言って油断はできない。結界と言う切り取る形ではあるが、それを行って、更に運営し、維持し続けるだけの力の持ち主であるのは間違いないのだ。

 問題なのはそんな偉大な人物が私と言う者に興味を示した事だ。

 魔界を敵に回してまでも尚、あり余るメリットが存在すると言う事だ。

 そんな力が我が身にあるとは到底思えない。

 謎が謎を呼んでいる。それはまるで私をあざ笑うかのようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 急に神隠し話を詳しく聞きたいと言って来たので素直に教えてやった。

 そうしたら何か真剣な顔をして眉間に皺を寄せている。

 こうやって動かないと本当に人形みたいだな。

 本当に大陸の向こう側の人形みたいに顔が整っているのだ。

 陽光を浴びて金の糸のように光って見える髪の毛、長いまつ毛、白い肌、大きな宝石のような瞳。

 監視の為に此処にいるが、監視の必要はなさそうだ。

 頭は回るし、その知識は慧音の能力を何も教えて居ない状態で当ててしまう程だ。

 これ程の者がむやみやたらに人を傷つける悪魔だとは思えない。

 慧音は悪魔に効くと思われる物を試しに出して見たが警戒する事無く普通に食った。

 途中で残したので効果があったのかと思いもしたが今のこいつを見る限りその線は薄いだろう。

 純粋にお腹いっぱいだったんだと思う。

 それに不老不死と半獣だと解っても接する態度は変わらなかった。

 まぁ、相手が悪魔だからと言うのもあるのかも知れないが。

 私は里の自警団をやっているのでそれ程露骨に避けられる事は無いが、不老不死と言う事でやはり里の人々と一線を置いて接されているし、私自身そうしている。

 それは慧音にも言える事。ちょっと上から目線の物言いはあるが礼儀をわきまえている。

 こいつ本当に悪魔か? と疑ってしまうほど人間くさい。

 これなら会いたがっていた阿求に会わせても大丈夫かもしれない。

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