東方アリア伝   作:仙儒

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18話

現在助けた譲ちゃんの家に来ている。

勿論慧音に妹紅がちゃんと見張りとして付いて来て居るが。

別に取って食うつもりはない、と言ったとしても信じてはくれないだろう。

まぁ、しょうがないか。そう思いながら客間で待つ。

体調が悪いらしいから別の日にしてくれても別に問題無いのに今日会うと相手が聞かなかったらしい。

訪ねて行くと言う事で何か手土産の一つや二つ用意したかったんだが、生憎金を持ち合わせて居なく、悩んでいたところ、妹紅に「どうしたんだ」と問われた。

素直に事のあらましを話した。

そうしたら妹紅が「本当にお前悪魔か?」と言われた。

正直な話そこら辺は良く分かって無い。

と言うか常識だろ。そう言うと「妖怪が人間の常識を語るとは思わなかったよ」と言いながらポケットから煙草を出して吸い始めた。

ひょっとして馬鹿にされてんのか? 後、煙草は生前嫌いであったので吸い始めた煙草の銜えてる部分以外を糸で切り落とす。急な事で妹紅は驚いていたが「私は煙草が嫌いだ、それに周りの事を考えて吸ってくれ」と言ったら何か言いたげな顔はしたが煙草はしまった。

 

「阿求なら気にしないだろうから大丈夫だ」

 

妹紅がそう言うがそうはいかない。錬金術で金でも作って売るか?

駄目だ。素材が無い。

金ピカの鎧を売れば金に成るだろうが、あれはしっきーを通して魔界の民が私の為に作って献上された物なので売る事は出来ない。それに服に術式刻む人たちだ。

鎧、もとい甲冑にも何かしらの仕掛けをしている可能性が大きい。

里の建物の事を観察しながら歩いていたらひときわでかい家にたどり着いた。

もしかして、ここ?

まぁ、確かに月明かりで良くは見えなかったが立派な着物を着て居たような気がする。

本当に良いとこの御嬢様だったんだな。

 

 

まぁ、そう言った経緯があり、今に至る。

客間に案内されお手伝いさんが出した茶を啜る。

体調が相当悪いのかな?

日を改めた方が良いのか?

回想終わっても来ないよ。

出されたお茶を飲み終わり、日を改めた方が良いだろうと思い立ちあがろうとした所、襖が開いて助けた譲ちゃんが入って来た。

 

「お待たせしてしまってすいません」

 

そう詫びの言葉を口にした。

顔色がやはり良くない。

 

「顔色が良くないな。あまり無理をするものじゃない。日を改めよう」

 

そう言って立ち上がり譲ちゃんに告げて立ち去ろうとしたら「お待ちください」と譲ちゃんに止められた。だが、本当に大丈夫なのか? そう問いかけると何時もの事だと返ってくる。

何時も体調が悪く良いとこの御嬢様とか小説の中の王道と言うかなんというか。

生前病弱だった経験がある私にはその気持ちが痛いほどわかる。

さて、どうした物か?

取り敢えず自己紹介でもしとくか?

 

「失礼だがミスは? 私の名はアリア・マーガトロイドと言う」

 

そうすると相手は姿勢を正し、

 

「私は9代目当主、稗田阿求と言います」

 

そこで私の眉が少し動く。稗田と言えば日本最古の神話をまとめた偉人で現人神だった筈だ。

それに里の事を見ていると稗田家が9代と言うのは辻褄が合わない。

少なくとも里の状況を考えると少なく見積もってもどの位生きているかは解らないが40代目位で無いと可笑しい。もし私が考える通りの人物であるとするならば、が前提だが。

 

「稗田と言ったな、失礼だが現人神の稗田阿礼の関係者とお見受けいたすが、そうすると辻褄が合わない」

 

そう告げると語り出す。

 

「私は一度見た物を忘れない程度の能力ですから、百数十年に一度転生する事で当主を務めますので9代目なのですよ、それに私は現人神などと言う立派な存在ではありませんよ」

 

見ず知らずの人においそれと言って良い事なのか?

しかし、数百年に一度転生すると言う事で9代目と言う事は少なくとも数千年の計算に成る。

その当主が幾つまで生きるのか知らないが。

それよりも、譲ちゃんの言葉は続く。

 

「助けていただきありがとうございます」

 

そう言って深く頭を下げて来る。

それに居た堪れなく成る。

 

「勘違いしてるようだが、助けたのは善意で助けた訳では無い。助けたのは此方に来たばかりで情報が欲しかったから助けたんだ。そうじゃ無ければ見捨てて居た」

 

嘘だ。どちらにしろ見捨てると言う選択肢は私には無かった。

元人間の価値観と言う物が強く残っている。

 

「それでも助けられたのは事実ですから、ありがとうございます」

 

純粋で表裏無い言葉に照れくさく成り照れ隠しで頭をかく。

 

「私は幻想郷縁起と言う物を書いています。よろしければあなたの事を教えてくれませんか?」

 

幻想郷縁起? 興味深いな。

そうすると幻想郷縁起の事を教えてくれた。昔は妖怪の対処方として書かれていたみたいだが現在では妖怪図鑑となっているらしい。

丁度良い。妖怪の賢者の情報が解るかもしれない。

その事を尋ねると何時も胡散臭い笑みを浮かべて居て何を考えているのか解らない妖怪で、対処方は存在しないのだと言う。結局有益な情報が得られなかったな。

そう言えば私の事を聞かれていたのだったな。

 

「話がそれてしまってすまない。私は悪魔だ」

 

そう告げると今度はミス稗田が眉間にしわを寄せた。

そのまま何かを巻物に書き始める。

何を書いているのか大体指先の動きで解ってしまうのだが、これは指で糸を使う癖で身についてしまった物だ。とはいえ、字体は恐らく漢文交じりなので全てを理解する事は出来ないが。

そこでふと思う。

それを口にして見る。

 

「ミス稗田。悪魔についてどのようなイメージを持っている?」

 

その問いかけにミス稗田は目を泳がせて言い渋っている。

 

「何を言われても怒ったり、暴れたりしない事を誓おう。君達が持つ悪魔のイメージを教えて欲しい」

 

これは知っておきたいこと。

ずっと気に成っている事だ。

すると何かを決心したのか恐る恐るだがはっきりと告げる。

 

「悪逆非道の限りを尽くす西洋の妖怪だと聞き及んでいます」

 

まぁ、予想通りの答えだな。

しかし、これは中世ヨーロッパで敵国の者が悪逆非道の悪魔だと言う洗脳から生まれたものだ。

 

「では天使については知っているか」

 

そう問いかける。

困惑の顔をしながらも「ええ、一応は」と返ってくる。

まぁ無理もない。天使と悪魔は対極に位置する存在と人間の間では認識されている物だからな。

で、あれば。知って欲しい。悪魔は確かに対価を要求するが約束をたがえる事は無いと。

その昔、愛する二人の男女が追い詰められた際、男は悪魔に命を対価に愛した女性を守って欲しいと願った。悪魔は約束を守り、女性を守り続けた。

悪魔は女性の子孫の血が絶えるまで全ての女性の子供達の命を陰から守り続けた誇りを。

 

「昔話をしよう」

 

急な私の言葉に皆が驚いた顔をした。

 

「そうだな、天使はお前達でいう巫女や神主に当たる者だ、ある天使の話」

 

物語を語り始める。

多神論の日本には無い、ゆいつ神の話。西洋の事。

天使は位が高い誇りだかき天使であった。その天使は優秀で神の手とまで呼ばれた大天使だった。

部下にも信頼されていた。

しかし、天使はある時人間に恋をしてしまった。

人間もその天使に恋をした。所謂禁断の愛と言う奴だ。

それは神の耳にも届き、大天使の羽を剣で貼り付けにして、目の前で大天使の愛した女を殺そうとした。そうしたら大天使は権力の象徴である羽をもいで、愛した女性を守った。

それからだった。神を裏切った大天使は神と天使を敵に回したのだ。

大天使の力は強大で幾度も相手を退けて来た。

だが、ある時、その天使の力に恐れを抱いた人間が大天使の愛した女性を殺してしまう。

絶望の淵に立たされた大天使は呪いと執念を持ったまま敵味方構わずに倒した。

気が付けばかいり血でどす染まった黒い羽が生えて居たのだと言う。

それが悪魔の始まりである。

これは生前の私が知っている話の一つ。

 

「何時の時代でも、裏切るのは必ず人間の方なんだからな。人間でなければ全て悪なのだろう?」

 

まぁ、しっきーがこれに当てはまる事は無いだろう。

女性だし。

確かに羽は黒いが関係ないだろう。

だが、ふだんのしっきーは天使と言うのが当てはまる位穏やかなお方だ。

話終わった時点で気がついた事だが静まり返っている。

慧音に至っては涙をこらえている程だ。

妹紅も何か思う処があるのかしかめっ面している。

 

「すまない、湿っぽくなってしまったな。忘れてくれ、その悪魔であるが私自身では無いし、君達も息苦しいだろう」

 

「貴女は! 貴女は人間を憎んでいないんですか」

 

急に大声を出したミス稗田。その目には今にもこぼれそうな涙が浮かんでいる。

 

「恨んでいない」

 

実際に私自身に何かされた訳では無いからな。恨みは無い。これから襲ってくるならまた、話は別だが。

そう続ける。

 

「ただ、・・・・・・」

 

「ただ?」

 

「私が死ぬ時は正しき憎しみのもと、正しき悪として倒されるのだと信じている」

 

急に赤い外套の騎士の言葉が出て来た。

みれば周りはその言葉に唾を飲んでいる音が聞こえた。

ああ、何と言うか居づらいな。

中二発言をしたのも相まって余計に居づらい。

 

「今日はこれにて失礼しよう。譲ちゃんも体調がすぐれないのに長話とは体に触るだろう」

 

そう言って家を一人後にした。

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