東方アリア伝   作:仙儒

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7話

「鶴翼、欠落ヲ不ラズ、心技、泰山ニ至リ、心技、黄河ヲ渡ル、唯名、別天ニ納メ、両雄、共ニ命ヲ別ツ」

 

「アリア様、それは何ですか?」

 

? 聞かれて居たのか。

 

「古代の大陸に残された古歌だよ。内容は実に皮肉を混ぜたものだけどね」

 

「そうなのですか」

 

それにああと返す。

陰陽剣干将・莫耶と言う夫婦剣の話。

これはクライアントが楚の物だ。

この話は日本で言う草薙の剣と同じ位有名な剣であるため逸話が幾つか存在する。

クライアントが呉の場合は妻の莫耶を犠牲にして作られた剣。

その他にもう一つ、莫耶の髪の毛に爪を炉に入れ、童300人に笛を吹かせて完成させると言う呉だけで2つの逸話が存在する。

呉は剣の制作に関する事が話の中核に成っている。

楚の場合は剣を完成させるのに3年と言う月日が経ってしまった為に、王が大激怒。剣を納めに行った干将は二対の剣の内、一振りしか納めなかったために王は更に激怒。

問答無用で干将は殺された。

その前日に干将は妊娠中の莫耶に子供が生まれてそれが男の子であれば「出戶,望南山,松生石上,劍在其背(戸を出て、南に山を望み、松の生える石の上、その背に剣あり)」と伝えよ。」と伝えて居た。

そして莫耶は子供を産んだ。生まれた子供は男の子で赤と名付けられた。

赤はすくすくと成長し、とある時、父親の事が気に成り、母親に父の事を尋ねる。

莫耶は事のあらましを全て話した。

その話を聞いた赤は3年かかっただけで私の父親は殺されたのかと理不尽さを嘆き、復讐を誓う。

そこで莫耶が夫が残した遺言を伝える。

言われた通り戸を背にして山を目指したが山は存在しなかった。しかし、変わりに山のように大きな石を発見しその石には松が生えて居た。

赤は後ろに回り込み、松の根元を斧で壊して見た所、立派な黒い短剣が出て来た。黒い剣には亀裂模様(亀の甲羅模様。ようは六角形の形)が浮いていたと言う。

切れ味は宝石を真っ二つに出来る切れ味だったと言う。

この見事な剣を見てこれ程立派な剣を作ったにも関わらず父は殺されたのかと改めて復讐を決意した。

その思いは日に日に増していき、楚王はその事を夢で見た。

楚王は赤に懸賞金をかけ、赤を殺そうと何度か討伐軍を派遣したが赤はそれを何度も撃退した。

しかし、王への復讐を誓ったは良い者の、ただでさえ王に会える機会は無いのに警備が厳重に成り近づくに近づけない状況に成ってしまい、人眼のつかない山奥にこもり、大声を出して泣いていた。

すると旅人が何故泣いているのかを聞いて来た。

赤は事のあらましを全て言った。すると旅人が「それには干将と貴方の首が必要である。それがあれば私が仇を討つ」といった。赤は喜んで干将で自分の首を刎ねた。

そこからがこの話の狂気の部分だ。死体は首を失っても動き、自らの首を拾い、剣を旅人に渡す。

首と剣を受け取った旅人は「安心しろ、仇は必ず討つ」と誓った所、死体はようやく倒れたのだと言う。そこまで赤は復讐心が尋常では無い事が窺える。

旅人は楚王に赤の首を差し出す。楚王は大変喜んだ。旅人は「これは勇士の首であるから湯で煮溶かさねばならない」というと王はそれに従った。

これは死して尚、苦痛を与える事で転生して殺しに来る事を諦めさせると言う意味がある。

それで釜にて三日三晩煮るが顔は溶ける事は無く、煮えたぎる釜の中から睨み続けて居たのだと言う。

楚王は恐れ旅人にこの事を相談する。それに旅人は「王が覗けば必ずや溶けるだろう」と言い覗きこんだ所で後ろから干将で王の首を刎ね、旅人自身も首を刎ねた。

すると釜のに三人の顔が入り、溶けてどれが誰の頭か判断できずに成ってしまい、一緒に埋葬したのだと言う。ゆえにこの墓は三王墓という。そして今もそれは汝南の宜春県にあるらしい。

何処当たり何だ? 汝南って?

まぁ、他にも通りかかったのは旅人では無く父親の親友であったと言う話も残っている。

その話では釜の中の赤が睨みつけているのを恐れた王が恐る恐る覗きこむと赤の口が開き、干将を吹き出し王の首が落ちてその後は同じでに溶けて判別が出来なくなったと言う落ちに到達する。

転生と言う事が起きてそれを満喫している私に言わせてもらえば、これら全て起こった事だろうと思う。前の話に出て来た立体交差世界論と言うのを覚えているだろうか?

これは異なる時間線軸上で異なる事象がおこっているにも関わらず一つの結末に収束する地点が存在するという理論だ。

相変わらず生きていくのに必要無い事ばかり覚えてんな~私。

この場合剣の作りと楚王の死、そして干将・莫耶の紛失と言う点だ。

 

 

 

 

で、だ。

何故長々と干将・莫耶と言う剣の事を言うかと言うと、朝食が終わり、部屋に戻って武器置き場を見て思った訳さ。

短剣で黒に亀裂模様、白い剣に水波模様の片刃のカトラスに近い形状の剣。

間違いなく紛失された干将・莫耶その物だった。

おいおいマジかよ。ってか何で人間界の物が魔界ここにある。

剣の創造理念として陰陽を元に作られた剣。その一番の特徴は無くしても持主の元に戻ってくる。夫婦剣故にどちらか一つにどちらかが引かれ合うアビリティーが付いている。

試しに部屋の隅に剣を置いて、もう片方を持って反対側の部屋の隅に行くと早速引かれて剣が回転しながら飛んできた。

マジでビビった。

因みに陰陽は中国では陰陽の印は龍がとぐろを巻く様を表しているが、日本における陰陽の印は世界その物を表していた筈だ。

竜神信仰が強いアジア圏では世界そのものの為、人間以外理に沿わない物には絶対の破壊力を有する剣でもある。

因みに竜神信仰とはこの世界を作り出したのは龍と言う信仰の事だ。後は各自で調べてくれ。

部屋の隅から剣が私に向かって回転しながら飛んでくる剣の片割れを見てレイが私を守ろうと前へ出るが、正直邪魔だ。剣を弾く前にレイが真っ二つに成りかねない。

レイの腕を引き手に持った剣で飛んできた剣を叩き落とす。

 

キンッ!

 

金属と金属がぶつかり合う音がした後、片方の剣が床に叩きつけられる。

レイが私を睨みながら「もしもの事があったらどうするんですか!」と声を荒げて来たがこの剣の特徴を説明する。

そうしたら「もっと早くに言って下さい、寿命が縮みましたよ」と言われた。

どう言った経緯でこの剣を入手したのか気に成る。

何でここにあるのか夢子に聞く必要がありそうだ。

と言うか対人外用の剣とかそれを人外が使って良いのか?

理的に考えて。はぁ、頭が痛く成って来たよ。

まぁ、頑丈さはと切れ味は折り紙つきなので扱っては行こうと思う。

基本槍使いなので使うかは不明だが・・・・・・。

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