アリアが倒れた。
それも私達の手によって。
アリアの自業自得と言えばそこまでだが、最後まで話し合いで解決しようとした。
アリアは小さい時からそうだった。
私よりも民を思い、世の中に不条理があればそれを嘆き悲しむ心優しい子だった。
そんな子の心の中の叫びを初めて私達にぶつけて来た。
槍を扱い、剣を振るい、力の差を解っていた筈なのに真正面から私達の障害と成った。
敵である筈の少女を助けて。
だからだろう、本来は殺して居た所だが、話をしようと思ったのは。
「いつの間にか立派になっちゃったね、アリアちゃん」
ママの一言に頷く。
大人しく内気な子だった。
そして私には無い輝きを持っていた。
それは親としては誇らしかったが、アリス・マーガトロイドとしては妬んだ。
私に無い物を我が子は持っている。
私が完全自律型の人形を作ろうとして居たのは、ママに認めてもらいたかったからだ。
ママ譲りの魔力と神気を使わないで、一人でこの人形を完成させる事で胸を張って一 人前に成ったと言われたかった。言いたかった。そんな愛情の裏返し。
絶対に外には出さない本当の私。
それがアリアにとっては槍であり剣であっただけの話だ。
あの子も魔法の勉強や研究こそするが、魔法をを好んで使おうとはしない。
私譲りの糸を使った攻撃も得意なのに使おうとはしなかった。
最後まで槍と剣のみで戦い抜いた。
あれがきっとアリアが出した答え。
似なくて良い所ばかり似てしまったのね。そう思い苦笑いが漏れる。
だが、母親としては剣や槍を使ってほしくない。
アリアに万が一の事があったら死ぬ自身が有る。
だが、アリス・マーガトロイドとしての私にはどうしても羨ましく、同時に眩しく見えた。そう思ってしまった。
何もかも中途半端で本気を出した所なんて一度たりとも見せる素振りすら見せなかったのに土壇場に成って発揮したアリアの
私も、そしてたぶんママも認めた瞬間であった。
それと同時に、その時、負けたと思った。
私がたどり着けなかった場所に女の子にしか見えない小さな小さな息子は至った。
それはとても嬉しい事であり、誇りである・・・・筈なんだ。
そんな中、背中から優しく抱きしめられる感覚がした。
「? ママ?」
「私は知っているよ、アリスちゃんが完全自律型の人形を作ろうとしている本当の訳を」
いきなり確信をついた一言に動揺してしまう。
それをにおわすような素振りをした覚えは無いし、曝け出した覚えもない。
酒が入ってどんなに酔っぱらっても口にした事が無い筈の物。
「アリスちゃんはもう立派な魔法使いだよ。自分では気がついて無いだけ」
酷く優しい言葉に涙が頬を伝う。
「どうしてそれを?」
アリスの純粋な疑問だった。
「ママを舐めないで欲しいな、何年アリスちゃんのママをやって来たと思っているの?」
その答えに思わず笑ってしまう。
そんな理由で全てを見抜いていたのか。
「確かにアリスちゃんが持っていない物をアリアちゃんは持っている」
でもね。言葉が続く。
「それでもアリアちゃんは貴方を目標に生きているんだよ?」
見て居て気がつかなかった? そう言ってくるママ。
それは紛れもない事実。
きっとアリア成りに頑張っているのだろう。それが何なのかは解らないが。
「そうだね、今はきっとアリスちゃんは頑張り過ぎて疲れちゃってるんだよ。だからアリアちゃんが輝いて見えるだけの事」
「アリスちゃんがいればアリアちゃんはもっと輝くよ。ママの目に狂いは無いのです」
人差し指を立てながらドや顔で言う。
正直に言うと似合わない。
そう口に出してしまうと、ママは「ガーン」とわざとらしく口で言って抱きしめるのをやめて落ち込み始めた。
笑い声が出た。止まらなかった。きっと最低の気分の筈なのに笑いが止まらない。
これはアリアを息子では無く、一妖怪と、誇り高き悪魔として再度認めた瞬間でもあった。
落ち込んでいた筈のママがすくっと立ち上がり、
「ようやく笑ってくれたね。こんなアリスちゃんを見るのは初めてかな?」
そう口にする。
その顔は魔界の創世神の面影は全くなく、一人の母親としての顔だった。
魔界全てを等しく愛する女神は、この時だけは愛娘にだけその愛が注がれていた。
そうか、いつの間にか自分もその位置にたどり着けて居たんだな。
そして気づいてしまった。いつの間にか私の役目は終わってしまっていたんだと。
やり終えて居たのだと。
とは言え生まれてまだ20年。人間の年齢で言えば大人だが、妖怪と言うカテゴリーから見れば生まれてようやくよちよち歩きができるように成ったばかり。
アリアはああ見えて結構抜けている所がある。
そこを私がフォローしてあげなければならない。
魔界の女神の娘としてではなく、一人の親として。
けど・・・・・
「アリアに武器を持たせるのには承諾し兼ねるわ」
「アリスちゃんは石頭だね。そんな事したらきっと無手のまま敵に突っ込んじゃうよ?」
その言葉に「うっ」と詰まってしまう。
そうするアリアの姿が脳裏によぎってしまったから。
まさかアリアに限ってそんな事はと言い返せなかった。
事実、レインフォースから無手の場合を想定した戦いと言うのをレインフォースに教えてもらおうとしていたからだ。
無手よりは剣や槍を持たせていた方が少しではあるが安全ではある。
ちょっとしか見れなかったが武だけでも魔界の古兵と同等位の力を見せた。
と言うか戦いに出すこと自体に反対なんだが。
母親の苦悩は続く。