きっと読んでくれる方の中にはこういうこと考えた方いるのではないでしょうか。
この世界に行けたらどんなに幸せだろうと。
………………
……授業の終わりを告げる鐘が鳴る。
…昼休み…今日弁当持ってないんだっけ…購買行かないと……。
「ぉーい、こないだ発売のごちうさ原作4巻買ったか?」
そこに俺の友人Aが話しかけてきた。
「買わないわけないだろ。発売日購入不可避ですわ」
俺は当然のような顔をしてそう答えた。
「やっぱ買うよな!付録のチノココのファイルめっちゃ欲しかったんだよ」
「俺は実家に帰省する話が読んでて良かった、てかココアのママン可愛すぎねー」
「ああわかるわかる!二次元特有のあの若々しさな。結婚したかったぜ」
…とまあ、いつものように他愛ない話が展開される。
21名しかいない俺のクラスにはAしかごちうさのわかる友人がいないから、自然とこいつと仲良くなる。
「……あ、やべ、俺今日弁当忘れたから購買行かねえと」
俺はやらねばならないことを思い出しごちうさトークを一旦切った。
「お、お前久しぶりの購買じゃないか?」
意外そうにAが言う。
「そうなんだよな。あそこほんとに戦場だから好きじゃないんだよ。なんであの生徒数に対しておばちゃん2人なんだ。無理だろ。」
「だがあの修羅場をくぐり抜けた先にある飯は最高だぞ!!早くしないとなくなるぞ!行くぞ我が友よ!」
Aが文字通り戦場に行くかのように銃を構えるポーズを取る。
「…はは、じゃあ戦場に向かいますか」
そう言って俺は購買に行くためにゆっくりと立ち上がった。
…その後のことは、覚えていない。
◇
……暗い。目が開かない。なんだ。なんなんだ。夢の中にでもいるのか?……にしては意識がはっきりしているし……声が聞こえる。「……んんぅぅぅぅっ!!」「もう少しですよ!頑張ってください!」
……何を頑張ってるんだよ。……今気づいたが、体がものすごいきつい。しかもほぼ全方向からすごい力で押される。相変わらず暗いし目も開かない。でも目の上の方がほんのり明るくなってきてるような………?
次の瞬間、身体にかかっていた圧力が消えた。
全く理解できない。俺は購買に行くはず…だったよな?そういえばそこからの記憶が全くない。
……あ。口があく。とりあえずこの状態がなんなのか聞いてみないと…
「お、おぎゃああああああああ!!」
…………!?!?
え!?ちょ今俺なんて?ちょっと待て今のはなんだ?俺が喋ったのか?いやおかしいだろ別の誰かだよしもう一回
「おぎゃ、おぎゃ、おぎゃああああああ」
………うん。叫ぶことしかできん。
「…おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」
誰かの声がする。元気な男の子ですよ?まるで赤ん坊でも産まれたかのような口調だなおい。
………?待てよ?もしかして俺?俺が赤ん坊となってるのか?いやいやちょっと待てよ俺は現役高校3年生、もう受験勉強も追い込みの時期のガリ勉人間のはずだぞ。
「………よくやってくれた、本当頑張ったな…!!」
……!この声は…!聞いたことがあるぞ!でも…
なぜここでダンディなマスター殿の声!?
目が急にあいた。ぼやけている。だんだんピントがあってくるにつれて周囲の状況が読めてきた。
ここは病院か。そして俺は誰かに抱かれている。まだほとんど動かないが首を巡らしてみた。……いた。漫画【ご注文はうさぎですか?】に登場するチノ父こと、タカヒロ殿だ。…うん。ダンディ。
俺を抱いているのは…、
その方を見て俺は言葉を失った。しゃべれないけど。
そこで俺の方を見て笑顔で話しかけてくるのは間違いなくあのチノの母親ではないか。あの超絶美貌のお母様ではないか。
ここまできて俺は起きていることの非現実性に気づいた。
……つまり、俺は香風家に生まれてしまったということか。しかし、なぜこんなに意識がはっきりしている?そもそも前の世界で死んでいない。たぶん。不思議なのが、前の世界の出来事もはっきりと覚えている。どこかの本では、生まれ変わる時に記憶諸々は全部消えるって読んだぞ……?
いろいろとおかしな状況だ。周囲を見てみるが、チノらしい影はない。ということは、俺はチノより前、兄として生まれたということか……?
しかし、ごちうさ原作にチノの兄はいない。
もし本当にチノの兄として生まれるとしたら、そしてこの世界が原作通りに進むとしたら、物語が変わってしまうのではなかろうか。いや、原作はチノが中2からだから、俺途中で死ぬ可能性も……?
……ルナティックすぎでしょ。この状況。
さっきから俺が連呼しているチノという女の子もタカヒロ殿や母上と同じ、ごちうさの登場人物、メインヒロインの1人だ。俺の推しキャラの1人でもある。
【ご注文はうさぎですか?】(以後、ごちうさ)という作品は、とある女の子たちの日常をかわいらしく描いたほのぼの系漫画である。アニメも二期までやっており、俺も二期を見ながらぴょんぴょんしていた。
しかし。俺がごちうさの世界にはいった……?
普通に考えてありえない状況だ。
ここは俺にとっての空想の世界。三次元と二次元という、絶対的な違いを持つ世界のはずだ。だと言うのに、目の前にいる人たちはアニメフォントのままで、しかし3Dになっている。
どうやらこれが現実のようだ。受け入れるしかない。
……そういえば、俺の名前はなんだろう…?
「……あなたの名前は、私が決めてあるわ。あなたの名前は弘紀、こうきよ」
ちょうどいいタイミングで、チノ母が俺にそう言った。
弘紀か。なるほど、普通の名前だ。俺はこれから香風弘紀として生きるということか。
「本当は俺が決めたかったのだが…、男の子はお前って決めたもんな。」
……そうなんだ。ってことはチノと名付けたのは父側ということか。
「……これからよろしくね、弘紀」
俺の耳に母の心地よい声が響く。
…俺は頷こうとしたが、それもそれで不自然だと思い、そっと瞼を閉じた。
うらやましいですね。
私も弘紀君になりたいものです。