上とした理由は、この次の中編とは名ばかりの挿入話があるんで。それ入れないと話おかしくなっちゃうので。
コーヒー飲む間に読めるレベルの短さだけど、ゆっくりしていってね!
「……ただいま~」
裏口から家に入る。正面は店の扉だからね。
……母さんとチノは買い物か……。
今日は木曜日。なんとなくだけど一番だるい曜日だと思う。一日が一番長い気がするし、疲れもだいぶ貯まっているし。金曜日なら明日は休みじゃぁってなるけど木曜日じゃそれもないし。
つまりなにが言いたいかというと、幼稚園が暇なんだ。家にいるときよりつまんないし、下手に本気とか出せないし。話あわせるのも大変だし。
……なんかここ数年暇だばっかり言ってるような………。
小さくため息をついて自室に入り、カバンから弁当箱と水筒を出す。
このあとはベッド下に隠してある数学の参考書(家の本棚からこっそり抜いた)でも解いていよう……。
なぜ勉強かというと前世の記憶がはっきり残っているから、前世で勉強したことも完璧に覚えていると思ったら、そう甘くはなかった。公式はともかく、問題の解き方のパターンや、応用部分が抜け落ちている。まあでも、問題を見るだけである程度は思い出せた。この世界でも高校、大学受験はするつもりだし、せっかくこんなアドバンテージがあるんだから活用しない手はない。だから勉強している。
勉強中に両親が入ってくる可能性も考えて、参考書の表紙は幼稚園の宿題の表紙と同じにしてある。
…さっさと弁当箱流しに下げてこよう……。
階段を下りたタイミングで、裏口の扉が開く音。聞き慣れた声がする。
弁当箱を流しに下げ、振り返った瞬間、俺は小さな生き物にきゅっと飛びつかれた。
「……おにーちゃんおはえり!」
……発音ミスってる。
「お、おう、ただいま、チノ」
とりあえず頭をなでてやる。チノはニコニコしてなでられている。
チノ!なでずにはいられない!
「買い物行ってきたの?」
「うん。おにーちゃんのおかし、わたしがえらんできたんだよ」
「おお、おにーちゃん感激!ありがと~」
今度は頭をぽんぽんしてやる。
「えへへ………」
心底うれしそうにぽんぽんされている。
……チノが嬉しそうで何よりだが、俺の内心はあまり穏やかではない。
……ちょっと待ってくれ。チノって人見知りで他人とのコミュニケーションがどうって原作で……
あれぇ………原作じゃおじいちゃんにすら敬語だったし……えっと……
……こんなの聞いてないぞ。
おかえりーって飛びついてくるって、お前はココアか。自称姉か。
兄弟のいるいないでこんな性格かわるもんなの?
まさかチノに原作の知識が通じないとは思わなかった。
……俺こんなこと毎日チノとやってるって知られたら前世のごちうさ難民に殺されるだろうなぁ……。
俺からチノにとびついちゃいないからな?チノがとびついてくるんだからな?
悪いのはこの水色のてんs……小悪魔なのだ。そもそもが俺を記憶も消さずこの世界に送り込んだ誰かさんのせいでこんなことになっとるのだ。
全くありがたい……困った神様だ。
「……おにーちゃん、もういいよ…」
あ。チノの頭ぽんぽんしっぱなしだった。
「あ、ごめん」
「いいよ…ねえおにーちゃん、ぱずるやろ?おかーさんにかってもらったの!」
「何の絵なの?何ピース?」
「うさぎしゃん!えっと…かず…?」
ああしくった。2歳児に数がわかるわけないか。
「おれが見るよ…えっと…4000ピース!?」
思わず大声を出してしまった。
「よんせん…ってどれくらいなの?」
チノがきいてくる。
「とても多いよ。作るの何日もかかりそう…」
「あら、多い方が弘紀も楽しめるでしょう?」
台所から母さんがそう言ってくる。
「そうだけど…4000って…多すぎない?」
「だって弘紀、暇そうなんだもーん」
ちょっとふくれた感じの声で返される。
……バレてたのか。隠してたつもりだったんだけどな……。さすがは親、と言ったところか。
ここは母さんの気持ちに甘える(?)としよう。
「まあ、せっかく買ってきてくれたんだし…作るか」
「つくろつくろ!はやくはやく!」
キラ目でチノがはしゃぐ。
「いやチノ、ここで広げるわけにはいかないよ。とりあえずおれかチノの部屋に行こう」
「じゃあおにーちゃんのへや。けってい!」
チノはとてとて小走りで部屋を出ていった。
へーい、と俺は答えて、4000ピースのパズルを母さんにもらい、自室に向かった。
脳みそ高校生で幼稚園にいること考えてみ。
退屈すぎて死にたくなるね。
後編は、原作リスペクトしてます。
と言ってもすることはだいぶ違いますが。
次はできるだけ早くあげたい。