疫病神うずまきトグロ   作:GGアライグマ

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川影の一日

 よく寝た。朝が気持ちいい。やはり戦闘で疲れた後はハーレムに限る。

 

「おはようございます。旦那様」

「ああ、おはよう」

 

 起きてすぐ横に美女がいるのもいいな。いきなり癒される。

 

「ぱぱ。ぱぱ」

「おお、新芽。よしよし」

「きゃっきゃっ」

 

 赤ちゃんもかわいいな。癒される。

 さて、歯あ磨いて食事にしますかね。

 

「おはようございます。旦那様。今日の朝食は、ご飯とサンマの塩焼きと豆スープです。漬物もありますよ」

「うむ。適当にいただこう。いただきます」

 

 おいしそうだな。どれ一口。

 おっ、おお? これは、うんうん。なかなかの塩加減。豆スープはどうかな? うーん、うんうん。山菜がいっぱい入っていて、体の芯から温まる感じがするな。うむ。

 とりあえず、朝飯うめええええ! 有能なメイド妻最高や!

 

「美味かった。はなまる」

「あ、ありがとうございます! もったいないお言葉です!」

「楽にすればいい。お前達は妻だ」

「はっ、はひいっ!」

 

 若いっていいな。1年以上たつが、未だ初々しい。今後10年は新婚気分でいられる気がする。

 

「ふうっ。今日も1つ頑張るかな」

「い、行ってらっしゃいませ!」

「行ってらっしゃいませ!」

「ふむ」

「行ってらっしゃいませ! 隊長も!」

「ええ」

 

 新鋭隊長の月を伴って玄関を出る。空気が美味い。朝日が気持ちいい。

 さて、今日の予定はなんだったか。

 とりあえず戦力の見直しをやって、風影との会談をやって、岩隠れと草隠れの動きを調べて、餌羽後に使いをやって、ダンゾウの動きもチェックして、学園の修行を見て、フジタカに自伝の内容を伝えて、長門達の状況を調べて、小南を雨隠れに連れて行って、半蔵と会談をやって、……。まあそんな感じか。今日もハードだな。分身が消えた後にドッと疲れそう。

 

 木分身の術。

 

「えーっと、君は木の葉方面ね。君は学園。君は岩隠れ。君は草隠れ。君は川影邸。餌羽後は、まあ後でいっか。さすがに今日は戦闘の疲れが残っていてしんどい。俺は風影と対談してくるよ」

「へへ。腕が鳴るぜい」

 

 ポキッと本当に鳴らす俺。

 

「俺にい、任せとけえ!」

 

 芸人の真似をする俺。

 

「ああ。行くのはいいが、別に嫁とエッチをしてしまってもかまわんのだろう?」

「空腹の娘を助けてしまってもかまわんのだろう?」

 

 懐かしいキャラの真似をする俺。

 

「うむ。というか我慢できないのは本体の俺だって知ってるから」

 

 しかし、俺の分身はおふざけが好きだな。俺が好きだから分身もやっているわけだが、なぜか自分1人でやるより分身にやらせる方がおもしろいんだよな。不思議だ。

 

「おもしろいです旦那様! さすがです!」

 

 月よ。『さすが』ってのは笑いに対する評価としてどうなんだ? 忠誠心は伝わってくるが。

 

 とりあえず、風影の下へ向かう。あいつは中流域に来ているはずだ。1時間も歩けばつくだろう。本気で走れば3分かからないが、それはする理由がない。

 家を出てすぐのところに、クシナの家がある。

 

「クシナあああああ! 起きろおおおおおお!」

「はっ、はひいいいっ!」

 

 寝坊した時は月が怒鳴って起こす。いつも寝坊するわけではない。夜中まで働いたり、気絶するほどチャクラを使ったりすると寝坊する。ミナトが夜に来ていたりしても、次の日に寝坊する。ヤることヤっているのだろう。

 また、俺がハーレムを楽しんだ次の日に、クシナが寝坊している確率が高い。覗きか盗み聞きかやって興奮しているのだろう。ちなみに、俺はクシナとやった時が3回ある。全て、地中深くで2人っきりで待ち伏せしている時だ。暇すぎてついやってしまう。やる時はミナトの姿に化けて、クシナがその気になるまで甘い言葉を投げかける。クシナはやった後に猛烈に反省する。殴られたこともある。

 中に出したことはない。赤ちゃんができたら九尾の封印が緩んだりして大変らしいからな。クシナが九尾を制御できるようになるまでお預けだ。

 

「よし! 行くってばね!」

「女は身だしなみに気を使うものよ」

 

 クシナはボサボサのポニーテールでやってきた。と言っても地毛がサラサラだから、時間と共に勝手に落ちていくが。

 

「トグロにいい姿を見せても仕方ないってばね!」

「ふん。バカね」

 

 月はバカと言いつつうれしそうだ。ライバルが減ったと思っているのだろうか。

 

 しばらく歩くと、視界の開けた場所につく。果樹園と農園が効率的に配置され、ダムの水が注がれる。色鮮やかな作物が育つ。芸術的だ。

 

「おはようございます! 川影様! 月様! クシナ様!」

「おはよう」

「おはようございます!」

「ご主人様! 今日も一段と凛々しくあらせられ!」

 

 人が増えてきた。犬の散歩をしていたり、洗濯をしていたり、水汲みをしていたり、修行をしていたり。

 と、そろそろだな。

 

「気をつけろよ。そろそろ危険地帯だ」

「はい」

「分かってるってばね」

「一応俺から離れておけ。やつの狙いは俺だけだ」

「そんなわけには行きません! 私が身を挺して庇います!」

「川影補佐の出番ってばね!」

「いいから離れとけ。風影はまだいいが、チヨにうんこまみれを見られたらマズい」

 

 その時、遠くから聞きなれた娘の声が聞こえてきた。

 

「きぃいいいいん」

 

 やはり出たか。この辺はアラレ注意地帯。

 まだ遠い。だが近づいてきている。覚悟していた方がいいな。

 

「んちゃ!」

「おはようアラレちゃん。今日も牛乳配りかい」

「うん! ほい!」

「ありがとう」

「きぃいいいいいん!」

 

 うわっ。いきなり真っ直ぐ来た。

 

「ほよ!」

 

 俺に気付いたアラレが急停止をかける。アラレは砂ぼこりを巻き上げながら、目の前で止まった。

 

「んちゃ!」

 

 満面の笑みで言ってきた。

 

「こんちゃ!」

「んちゃ!」

「おはちゃ!」

「ほよ」

 

 ワンパターンではつまらんだろう? アラレの真似をして変わった言い方をしてみたぞ。

 

「あんた頑張ってるみたいだからいいもんあげるね」

 

 来た。いきなり来た。

 アラレは後ろを向いて何かを口寄せする。

 うんこなら即逃げ。ヘビならキャッチ。アメならもらっておいてクシナにあげる。さあどれ!

 白眼でアラレの背に隠れたものを見る。

 やはりうんこか!

 

「ほい!」

 

 投げられる前に避ける!

 

「うんこ分身の術!」

「ダニィッ!」

「うわっ」

「なんですって!?」

 

 アラレが印を組むと、アラレが投げたうんこが数百もに増えた。そして襲いかかってくる。

 

「くうっ」

 

 両手から木の根を出し、自身と月とクシナの身体を包む。彼女たちもこれら全てのうんこは防げないだろう。

 最低限、肌や服につかないようにしなくてはな。

 

「うんうん! 似合ってる似合ってる! かっこよくなったよ! じゃあね! ばいちゃー!」

 

 アラレはそう言うと、牛乳箱を持って去っていく。まさに嵐のような娘だ。

 

「す、すみませんご主人様。力になれず……」

「あれは三代目火影様の手裏剣分身の術と似た術だってばね。あの子どんどんおかしい方向にすごくなってるってば」

 

 アラレが過ぎ去り、少しその場に待つ。うんこが泥に変わった。土遁の分身だったようだ。

 さて、進みましょうか。

 

 中流域は風の国出身が多い。徐々に遊牧民的なテントや馬、牛、羊が増えてくる。川の国側の領土では教育が行き届いており、俺に対する感情もいいが、忠誠心というよりは感謝や能力に対する尊敬という形になる。

 

「川影様ー!」

「今度こっちにも学校作ってくださーい! あそこは遠くって!」

「月様ー!」

「クシナさん結婚してくれー!」

 

 人が多くなってきた。適当に笑って返す。しかし歩きづらいな。

 村の中心に近づくほど人が集まってくる。図らずも大所帯で移動となる。が、風影の宿泊所に近づくと途端に静かになり、スッと人だかりが引いていく。まだ砂隠れはが恐いらしい。

 

「お待ちしておりました。空海様。どうぞ中へ」

 

 出迎えたのは夜叉丸だった。この姉弟は俺の部下だが、地元砂隠れが内戦で大変なときに元青年団仲間を助けたいだろうから、援軍として風影に預けていた。他にも風の国出身の戦闘員を20人程度送っている。今日は久しぶりの再会となる。

 

「どうせだから姉の方がでてきてくれたらよかったがな」

「すみません。姉さんは赤ちゃんの世話に忙しくって」

「誰の赤ちゃんだ?」

「姉さんです」

「はあ?」

「えっ」

 

 いや『えっ』はこっちの台詞だよ。

 

「いや、いやいやいやいや! おかしいでしょ! お前達俺の部下だよ! 地元が内戦で大変だろうから、泣く泣く貴重な戦力を送ったんだよ! それを、何男と遊び呆けてんの!? いや、遊んでもいいけど、妊娠出産したら戦えないだろう! 中に出させたらダメだろう!」

「す、すみません。てっきり知っているものだと……」

 

 俺もこんな時期まで隠されてビックリだよ。どういうことなんだ、これは。

 あの娘、それと中に出したおっさん、教育が必要だな。

 

「カルラのことは許してやってくれ。俺がヤってしまったんだ」

 

 風影が階段から降りながら言う。やはり父親はこいつだったか。

 

「恐れ入りました。まさか国と膣で内戦をやっていたとは」

「ふむ。何とでも言ってくれハーレム王。甘んじて受け入れよう」

 

 皮肉に皮肉で返すか。確かに桃隠れも、綱手とか初とか出産して隊から外れてたからな。許さんでもない。でもやっぱり俺の部下を勝手に孕ませるのはどうなの!? 俺の好意を無下にしてるんじゃないの!?

 今日は話す内容がいっぱいあるからこれ以上はツッコまないけどさ。

 

「石隠れの浦切政権が、国内の分裂を防ぐために外敵を作ろうとしている。反桃隠れ反砂隠れ政策を始めたらしい。俺達をテロリスト扱いして、実権を大名に戻せと言っている」

「聞いている。皮肉なことに『暴力では何も解決しない』が口癖だそうだ。政治的にも心情的にも草隠れのユラ嬢とくっつくだろうな」

 

 ユラ嬢か。確かに気が合いそうだな。矛盾とかを無視して、言葉だけ繕っているやつのことが好きそうだ。

 

「何か対策はあるか?」

 

 当然無策ではないぞ。いつもいろいろと考えているからな。主に俺と綱手とサソリと千石が。

 

「草隠れにノーマと呼ばれる部隊がある。孤児だったり親に借金があったりで売られて、奴隷のような扱いを受けている忍びだ」

「聞いたことはある」

「奴隷の扱いを受けていたのだから、当然現政権には不満を持っている。暁はそんなノーマの一部と接触し、待遇改善の計画を練っていた。暁は俺の仲間になったから、今は俺もその計画を受け継ぐことができる。安寿という女を革命勢力の柱として期待している」

「ほう。だが大丈夫か? 学のない連中は加減が利かないものだ。紅月一派の悪例もある」

「分かっている。だが、墺撫を打倒しない限りあの地域は安定しない。それに、俺達がやらずとも安寿は動くだろう。滝隠れもそのタイミングを見逃さず攻めるだろうから、ノーマ側が勝つと思う。ならば、現政権打倒後のノーマ政権が上手くいくように積極的に関わっていった方がいい」

「言っておくが、風の国は大国であり、教育が行き届いていたんだ。それでも悲惨な内戦が起こった。草隠れで独裁者が死ねば風の国どころではなく無秩序な状態になるぞ」

「こっちの領土に入れてしまうことも考えた方がいいな。問題は、草隠れと桃隠れの文化的摩擦か。それで昔はお前達に俺の意図を理解してもらえなかったしな」

「あれは昔の火影が卑劣過ぎたのも大きな原因だ。木の葉は信用できないというイメージが固まってしまっていた。文化的摩擦だけとは言えん」

「そうだな。それを考えると、石隠れのイメージ戦略は厄介だな」

「ああ。戦争の基だ」

「必ず潰さなければならない。浦切スザク。新しいリーダーも用意しないとな」

「だな。京都六家という勢力は知っているか?」

「ああ。石隠れを古くから支配していた六つの士族だ。浦切スザクの浦切家はその1つだろう?」

「ああ。だが最も位が高いのは皇神(すめらぎ)家だ。大名とも近い。その皇神の唯一の生き残りであるご息女が、スザクを好かんらしい」

「なるほど。ならば皇神を支援してみるか」

 

 戦略会議は続いていく。

 問題の大枠から始まって、徐々にそれをまとめていく。本当は戦略担当のブレーンとかがいればいいが、お互い人材不足なので二人で考える。後で綱手とか千石とかにも相談するがな。

 具体的な戦力配置も、ある程度決めておく。

 

「チヨさんがサソリに会いたいと言っていた。草隠れで一緒に任務させてやってくれ」

「仕方がないな」

「サソリについてだが、実は砂隠れを抜けておらず、桃隠れに潜入捜査していることになっている。それがチヨさんとの和解の取引だったんだ」

「まあ、形だけならそれでいい。とりあえず、チヨとサソリがいれば草隠れの戦力は十分だな。石隠れはどうする?」

「ここはあまり無茶をできない。干渉しようとすれば岩隠れが出てくるだろうからな。隠密に長けた忍びはいるか?」

「サヨコというくの一がいる。石隠れ出身で土地勘もあるし、ちょうどいい。後は俺だな。地中をスイスイ進める」

「ではお前に任せる。こちらからも隠密に長けた上忍を送る」

「あまり暇ではないが、まあいいだろう」

 

 皇神の姫にも興味あるしな。

 他、木の葉への援軍、ダンゾウ対策、合同訓練、中忍試験、子どもがかわいいかどうか、エッチは気持ちいいかどうか、と重要な話し合いが続く。話が終わった頃には夕方になっていた。

 

「では、達者でな」

「うむ。川影殿も」

 

 頭をいっぱい使って疲れた。美味いもん食って帰ろう。

 

「空海様ー!」

「月ちゃん! 奢るよ!」

「どうぞどうぞ! 食ってってよ!」

 

 勧誘が激しい。若い娘に呼ばれるとつい入りそうになるが、不味いのは食いたくないからな。押さえなければならない。

 うおおっ、びっくりした。突然木分身が消えて、記憶が入ってきた。

 木の葉方面の分身だ。大蛇丸に見つかったから、追いかけられる前に消えたようだ。あいつもダンゾウ並みに危険なんだよなあ。どうしようか。

 

 ご飯を食べて、一休み。集まってきた子どもに術を見せたり、自分の活躍を語ったりする。将来性の高そうな女の子には、メイドコースへの勧誘もしておく。

 帰りは訓練も兼ねて走った。

 

 帰ると、時折分身の情報が入ってくる。

 

「ぐううううっ。はあ、はあ、はあ」

 

 悲惨な光景、ムカつく悪人の話、種々の計算、戦闘の記憶、と情報は様々だ。これを一気に処理するのがとてもキツい。ハーレムで癒されないとやっていけないと思う。

 長門、弥彦は、予想通りある程度煙たがられているようだ。授業自体は問題なく、真面目に受けていた。実力は4つ年下の竹と同じくらいだがな。

 

 気になっていたのは歴史の授業だ。俺はフジタカに弥彦達を討論に参加させるよう命じていた。テーマは歴史上(現代含む)で平和を目指した人物とその人物が失敗した理由だ。細かい部分はフジタカに任せた。

 授業では、生徒に人物の名前を上げさせ、フジタカが1人1人の略歴を語ったようだ。その後、平和を実現するための手段ごとに人物をグループ別けして、最も共感するグループに生徒を移動させた。そして討論だ。

 人物名としては、空海、六道仙人、綱手、風影、柱間、半蔵、ヒルゼン、イズモの姫、クシナ、小南、扉間などが上がった。小南の名を出したのは桃隠れの少年だ。彼女は桃隠れでも人気があった。弥彦、長門、小南はじっと黙って聞いていたが、フジタカに『弥彦さんは誰か思い浮かびますか?』と尋ねられ、クシナと応えたのだった。

 

 空海、六道仙人、綱手、イズモの姫(名前を出したのはナデシコ)は、力による統一と、弱者救済と、教育に共通性があるとして同じグループ①。

 風影、柱間、半蔵は、尾獣による相互確定破壊の保障と、大国主導の連邦主義が共通しグループ②。

 ヒルゼン、クシナ、小南は、隣人愛的な生き方が共通するグループ③。

 扉間(名前を出したのはアラレ)はフジタカの頭脳では量れないとした。

 

 弥彦、長門は当然小南がいるグループで討論に参加した。小南も恥ずかしがりつつ二人に従った。

 桃隠れでは俺が一番人気で、次が綱手、次がクシナだ。①のグループに最も人が多く集まり、次に③となった。②は少なかったので、フジタカが適当に①から引き抜いて②に入れた。

 討論自体は、①のグループが優勢だった。桃隠れの方針としてそうでなくては困る。情報が曖昧な六道仙人を俺のグループに入れたのもそういう理由がある。

 長門達は反論もしたが、フジタカの分かりやすい説明もあって納得しながら聞いていたらしい。また、フジタカは①グループを贔屓しないよう注意し、俺の失敗や六道仙人の意志が様々に捻じ曲げられている現実についてもきちんと説明したようだ。


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