疫病神うずまきトグロ   作:GGアライグマ

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自由の謳歌

 自由になった俺は、戦争とは無縁の島国、波の国にやってきた。変化で一般人に化け情報を集め、任務で貯まっていた金で土地を買った。山奥の安くて誰もいない場所を選んだ。木遁を使って家を建て、土遁で田畑を耕した。水道も造り、農業用の灌漑も行った。苗は手で植えていった。

 夢のスローライフが手に入った。木遁で花や薪を作ればすぐに金になった。木遁で果物の木を作る術も覚えたので、食糧に困ることもない。むしろ分け与えてやった。忍び崩れの野党を撃退することもあった。地元住民の信頼も得られ、食事や遊びに誘われることもあった。

 

 あとは、女である。一人の妻、というよりハーレムが望ましい。戦争は泥沼化しており、孤児は増えるばかり。飢えた少女をこの土地のメイドにしても誰も文句は言わないだろう。そう思った。

 木遁分身を3体戦場に向かわせた。一人は岩隠れ方面。九尾とクシナのその後が気になるから、ついでに探らせる。もう一人は雨隠れ方面。こっちも弥彦達のその後が気になるからついでに探らせる。最後は砂隠れ方面。俺は木遁で緑化ができるので、誰もいない無為で無料の砂漠をオアシスに変えることができる。俺の国を作れる。その調査のために良さそうな土地を探してもらう。

 

 一月が過ぎた頃、雨隠れ方面の分身が帰ってきた。かわいい孤児、また行き場をなくした家族を連れていた。分身曰く、弥彦達には会えなかったが、彼等が暁という組織を作り、山椒魚の半蔵と手を結んだという怪しげな噂は耳にしたらしい。今回の孤児は5人。全員雪一族だ。うち娘は3人。11歳と6歳と4歳で、肌が白くて黒髪が艶やか。かわいい。他、父のいる家庭が3つ。母子家庭が2つ。

 男はいらなかったが、まあ捨て置けなかったのだろう。雪一族の11歳の娘がとてもかわいいので些事は気にならない。

 

「お金は自分で稼げ。家と食糧は出す。警備も行うが、基本的に自分の身は自分で守るように。契約書にサインを」

 

 この契約は現金を出さない生活保護と言ったらいいだろうか。俺は彼等に土地と食事を提供する。病気になったら薬も出す。しかし金は払わない。自分で食糧なり薪なり売って自分で稼げという感じだ。

 

「よ、よろしいのですか? これではタダで土地をもらうようなもの」

 

 ハゲ散らかったおっさんがずいぶん低姿勢で尋ねてきた。今の俺は30歳くらいの屈強な木こりをイメージして化けている。

 

「いいんだ。俺は趣味で人助けをやっている。ただし、戦争が終われば帰ってもらうぞ。甘やかし過ぎてもお前達のためにならない」

「は、はい。しかし、帰れるのですか? 私達の土地は大国に取られてしまいましたが」

「大国に金を払って土地を買えばいい。他所に移住してもいいし、そこは自由だな。俺にはその面倒をみる義理はない。厳しい社会でも生きていけるように頑張るんだな」

「は、はい」

 

 おっさんには厳しい俺。近くで聞いていた雪一族の娘がとても不安そうにしている。しかし若い娘には甘いのだよ。

 

「聞いていると思うが、俺が目をつけた娘については別だ。メイドの契約をして、戦後も俺の元で働くことができる」

 

 俺はにやりと笑みを浮かべ、契約書を雪一族の娘に渡す。

 

「仕事も給与も実力に合わせてそれなりに対応させる。休みは週二回で大型連休もあるぞ。お勧めしておく」

「え、ええっと」

 

 明らかな贔屓なので、娘は周りの視線を気にして遠慮している感じだった。しかし俺はチャクラによる圧力を加えてしまう。

 

「うっ、苦しっ。……い、いえ! ありがたい話です! 何もかも失った私に、衣食住を提供していただけるだけでなく、仕事まで! 断る道理などありません!」

 

 ほう。意外だな。11歳と聞いていたが、ずいぶん大人びた物言いをする。かなり賢いのかな? 経費の計算とかもやらせちゃおっかな?

 なお、他に二人の女孤児がいたが、4歳と6歳では仕事は難しいので、メイド見習いとした。

 

 各家庭に土地と家を案内し、一日の食糧を渡していく。鍋が欲しいとほざくガキがいたが、戦中の鉄のように高価なものを、嫁候補でもない人間に与えるほどお人好しではない。全て土器だ。俺が土遁で作った味気ない土器だ。火も木遁で作った薪を焼いて作らせる。全てタダだ。

 

 孤児は全て俺の家に入れる。一階はリビング、キッチン、俺の部屋などがある。二階は物置にしていたが、今日からこの子達の部屋になる。

 

「初めの仕事は、模様替えだ。お前達も手伝え。特別に金を払ってやる」

 

 その後、5人の孤児と共にベッドを運んだり本を整理したりした。俺一人の方が速いが、まあ趣味だ。かわいい娘に命令するのは気分がいい。逆らってくることもあるが、まあ幼女なら許せる。男には厳しくいくがな。

 

 二階に子供部屋を男用女用で2つ作った。男より女の方が3倍程度広いのは、愛の違いだから仕方ない。仕事が終わったのでお金を渡し(金額にも愛の違いが出るのは仕方のないこと)景気よく皆で街に向かった。

 道中はかなり目立った。俺が子どもを5人も連れていることも、彼女らが俺に似つかない美少女だということも。

 理由を何度か尋ねられたが、ふつうに「戦争孤児を育てようと思いまして」と答えた。たいていは「すばらしい!」と返ってきたが、お金の心配をする声も少なくなかった。中には美少女に目を奪われる子どもや「偽善者が」と吐き捨てるモテなさそうな男もいた。

 

 そうして日々が過ぎていく。少女達を母子家庭に行かせ、料理や編み物を教えてもらうこともあった。料理スキルは徐々に上がっていく。男子は狩りや畑仕事を手伝わせた。

 

 さらに一ヶ月ほど待つと、岩隠れ方面の分身が帰ってきた。彼はクシナとクシナの父に変化したつもりの九尾を連れていた。もちろん孤児もいる。かぐや一族というのが2人で、9歳と5歳の美少女。他、木の葉のうちは一族の娘と岩隠れのボッチという娘が一人ずつ。互いに殺し合いの末、瀕死だったところを確保したらしい。両方12歳の下忍。今は木遁の縛りでグルグル巻きになっている。

 

「孤児を世話してるって聞いてすごいって思ったのに、なんかおかしくないかってばね!」

 

 クシナは孤児達を見て言った。今は新しい孤児の自己紹介が終わったところだ。メイド一号である初はお茶を入れにいった。服装は巫女服である。

 

「何かおかしいかな?」

「男女比がおかしいってばね! しかも妙に美形揃い! だいたい木の葉の忍びはともかく岩隠れの忍びを捕まえてどうするつもりってばね!」

「俺もこれは予想外だった。バカすぎる。俺の分身」

 

 煩悩に正直過ぎる、とも。

 

「あんたの分身はつまりあんたってことだってばね! 他人事じゃないってばね!」

「分かった分かった。でもいいじゃないか。命が救われたんだ」

「よくないってばね! 私の感動を返せってばね! だいたいどうして急に日向の当主様を殺したってばね! 呪いのことも私達に相談してくれれば!」

「お前は口が軽いじゃないか。今だってこいつらに聞かせていい内容じゃない」

「う、うっさいってばね! 自分でどうにかしろってばね!」

 

 その後、グダグダとクシナの愚痴を聞いた。30のゴツいおっさんを怒鳴り付ける美少女は、長い間俺の村の噂の種となった。

 

「ご、ご主人様。お茶の用意ができました」

 

 と、初が盆を持って帰ってきた。

 

「ご、ご主人、様……!?」

 

 クシナはまた衝撃を受けたようだった。隣の九尾も呆れている感じだ。

 

「趣味だ。非難される謂れはない」

「いやいやいや! 何歳だってばね! 歳上にしか見えないってばね!」

 

 その後、クシナが俺の年齢を暴露しそうだったので、殴って気絶させた。そのまま女部屋に運び、ベッドに寝かせた。

 クシナと九尾は2ヶ月ほど滞在した。もっといてもよかったが、木の葉の忍びが近くにいると聞いて、俺に迷惑をかけないために出ていった。

 

 さて、大変なのは捕まえたくの一の扱いである。今は木遁と封印術でチャクラを抑え、地下に閉じ込めている。三食を与え、たまに服を変えるのみという状態だ。かと言って、自由にすれば即刻殺し合いが始まってしまう気がする。この状況から脱する方法はあるのだろうか。

 

 さらに半年ほどで、砂隠れ方面の分身が帰ってきた。厳密にはチャクラが切れて消えたので、やつの記憶が入ってきた。

 どうやら、偏西風やら雨の時期やらの調査をし、ダムの位置を計算していたらしい。職人にも話しかけていた。孤児は、あんまりかわいくないな。それに、消える前に綱手に引き渡していたから、たぶん問題ない。

 

 それよりも、俺の興味は国作りだ。土地はどれくらいにするか。産業はどうするか。防衛はどうするか。何より、美少女がどれだけ集まるか。


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