疫病神うずまきトグロ   作:GGアライグマ

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忍界転生 無職になっても本気出す

 無職になって約3年後のこと。仕事の手伝いを分身に任せ、遊び呆けていた俺は、この星の地下の至る所に張り巡らされている人工の穴に気付いた。自然物にしては距離が長すぎる。数が多すぎる。また、俺が土遁で地面を彫る時と似たような特徴が壁の表面に現れている。

 この地下道を使えば、いつでも軍隊を敵国のど真ん中に送り届けることができる。自分が使うならいいが、敵が使うなら厄介極まりない。地震や地盤沈下の心配もある。よって俺は、川の国の地下を徹底的に調べ、怪しい空洞を片っ端から潰していった。

 

 川の国の地下整備だけで1年かかった。その後、同盟国の木の葉や砂からも地下調査と整備の依頼がきた。チャクラ量的にも感知能力的にも、この任務に最も適するのは俺だった。時間に余裕があるので、任務を請け負った。ただし、チャクラ補給役としてクシナやカルラを借りたり、嫁に慰めに来てもらったが。暗い地下で働き続けると気が滅入るから許してもらいたい。

 しかし、ちょうどその頃雲隠れとの戦争が始まった。任務は一旦先延ばしとなった。

 

 戦争は楽に勝てたが、その後の統治でややてこずった。暗殺、自爆テロ、人質事件が度々起こった。さらに、雲隠れは兵器開発にも積極的で、チャクラを使ったビーム砲や戦闘機を作ろうとしていた。やつらは「人の夢の邪魔をするな!」「科学の進歩は人類の未来のために!」などと言っていたが、敵国が人殺しの道具を作るのをわざわざ待ってやる必要はない。大蛇丸等と協議し、科学者を脅し、木の葉に閉じ込めた。そこで、従うなら木の葉で兵器を開発させた。

 

 紛争がやや納まったところで、同盟国の地下の整備を再開した。

 しかし、1年ほどで、写輪眼を持つ幻術使いが風影を襲う事件が起こった。多くの砂の忍びが死に、カルラが我愛羅の中に封印されてしまった。

 

 俺は地下整備をまた延期し、写輪眼対策と幻術使いの組織の調査を急ぐことにした。感知が得意な小南と長門を連れて、世界中を歩き回った。怪しげな場所を片っ端から調べた。

 

 滝隠れと湯隠れの国境付近で、紫髪の少女が暴れているという情報が入った。早速そこへ行ってみると、アラレそっくりの4歳くらいの女児がいた。商人を脅し、金と食い物を奪っていた。

 俺が木遁で捕まえ、女児を尋問した。名はアバレ。歳は知らない。鳥島の研究所で戦闘訓練を受けていた。暴れまわって手がつけられないので放り出された。などなどと語ってもらった。その後、大蛇丸に頼んで木の葉の研究所で遺伝子検査をしてもらった。結果、彼女がアラレのクローンであることが分かった。ただし、脳に関わる遺伝子をちょっとだけいじっていたが。

 

「おそらく、アラレの間の抜けた性格が兵士には不向きだから、荒っぽい性格にしようとしたのね。鳥島はそういう男よ。その結果、荒っぽくなりすぎたっていうのも、いかにも彼って感じ」

 

 大蛇丸は言った。

 鳥島が生きていること。生きて非道な人体実験を続けていること。それが知れたのはよかった。

 大蛇丸の研究仲間だった鳥島は、クローン技術も各種移植技術も持っている。ひょっとしたら、写輪眼の量産にも成功しているかもしれない。そうなると、砂隠れを襲った幻術使いに鳥島が関わっている可能性すら出てくる。問題は、どこにいるかだ。

 なお、アバレはアラレの妹として桃隠れが育てることにした。

 

 その後も、幻術使いの調査を続けた。出端を挫くように、綱手がまた妊娠した。これを契機に川影を辞めると言い出した。

 

「いつまで働かせる気だあ。そろそろ隠居してもいいだろうがよお」

 

 本人が辞める気満々だったので、降りてもらって、川影選挙を行うことにした。

 

 有力候補は、五鬼と呼ばれる俺、長門、サソリ、クシナ、アラレだった。

 俺は、幻術使いや地下道の調査の任務があるので影になるのは難しい。クシナも、同盟軍の幹部として働き、雲隠れの統治で住民の不満を抑えるのにかなり役立っていたので今回はパス。サソリは未だ風影暗殺を気にしており、絶対に組織の顔にはならないという。長門は人気がないから選挙で選ばれないし、幻術使いとの戦闘で輪廻眼が有効なので、俺の傍にいて欲しい。アラレはほよよ過ぎる。

 その後、皆で意見を出し合って、小南を次の川影に選ぶことにした。彼女は感知が得意で、幻術使い探しに役立つが、能力は攻めよりも守りに向いている。十分な罠を用意した守りの戦いならば、五鬼に劣らない力を発揮できる。幻術使いが桃隠れに来る可能性があることを考えると、桃隠れの守りも万全にしなければならない。などなどが理由だ。

 内向けにも、彼女が川影になるのは悪くない。力よりも人望が大事であることや、今の時代は感知が重要であることを教えられる。問題は外交だ。彼女が川影では、ある程度舐められるだろう。しかし、今は同盟軍という大きな囲いがあるので、脅しはあまり必要ないと思われる。

 

 小南がいなくなって、男2人で歩き回るのは辛かった。癒し要員として、シズネに来てもらうことにした。

 単に癒しだけに期待したわけではない。彼女は医療に長ける。毒の治療ができるし、理系の知識で怪しげな実験の内容を調べることもできる。綱手の付き人だったので、メイドとしても有能。さらに、とても純情で、俺や長門が体に触れる度に「あひぃっ!」と叫ぶからおもしろい。これだけ揃ったすばらしい人材だったのだ。

 

 もちろん、綱手もシズネが有能であることは知っているので、当初は手放したがらなかった。粘り強い交渉が必要だった。結局「美少年を見つけたら私へ送ること」との条件で決着が着いた。

 

 その後、霧隠れの調査から始めた。早速、美男子を見つけた。名前は白。両親はなしで、年齢は9。雪一族の少年らしく、女顔で氷遁が使えた。綱手に送るべく、交渉を始めることにした。

 俺も長門も僧侶に変化した。

 

「うちには雪一族の仲間がいっぱいいるんだ! 家族になれるんだよ! 幸せいっぱい笑顔いっぱい! 来ちゃいなよ!」

「家族?」

「白、知らない男に付いて行ってはダメだと教えたはずだが?」

 

 交渉中に、目つきの悪い、口元を包帯で巻いて隠しているの青年が現れた。大きな刀を持っており、その刀が有名だったので正体も分かった。

 

「霧隠れの抜け忍、ザブザだな」

「そういうお前等は、タダの僧侶じゃねえな?」

「俺もこいつも孤児院経営者だ。こういう子どもの扱いには慣れている」

「ふん。臭えんだよ! そういう善人ぶったことを言うやつはな!」

 

 ザブザは俺に切りかかってきた。俺はいつも通り分身を出し、分身に戦わせているうちに地面に潜った。タイミングを見計らい、地中から木遁でザブザを捕まえた。

 

「ザブザさん!」

「チッ、木遁か。ツイテねえぜ。まさかこんなところで桃の鬼に会うとはな」

 

 俺はザブザと白を共に捕虜にした。木分身を出して2人とも桃隠れに送った。2人の扱いは綱手に任せる。

 

 霧隠れを調査していると、地中を移動している最中に敵の襲撃を受けた。初めてのことだった。

 俺と長門の相手にはならなかったが、やや不穏なものを感じた。

 その後も、敵の襲撃が何度かあり、こちらが見えているとしか思えない罠が仕掛けられていることもあった。

 これ以上近づくのは危険かもしれない。進むにしても戦力を整えてから。

 

 なんて思っていると、霧隠れが軍隊を用意して桃隠れに攻め込んできた。

 

「そちらの二代目川影と五鬼の長門が我等の土地を嗅ぎ回っている! 明確な敵意ありと判断する!」

 

 俺も長門も慌てて桃隠れに戻り、防衛戦に務めた。同盟軍の力があって楽に勝てたが、少なくない死者が出てしまった。

 和平交渉で「今後、桃隠れの人間の領内立ち入りを禁じる」「うずまきトグロと長門を3年間国内謹慎とする」という内容にサインして、戦争は終わった。条約の通り、霧隠れの調査は一時中断することにした。ここは今までで一番怪しいが、幻術使いや鳥島がいる証拠は何一つ掴めていない。本当は何も関係ないかもしれない。この状況で、また調査が霧隠れにバレて、戦争が起こって人が死ぬことはさすがに認められない。

 

 条約の通り、俺と長門は3年間桃隠れで過ごした。どうせだから教育と防衛強化に力を入れた。家族サービスも頑張ってみた。エッチなサービスも。

 若くして上忍の力を持つ新世代の子が次々と出てきた。ノノウの一番弟子カブト。綱手の長男縄也。綱手の弟子シズネ。俺と綱手の長女楓。俺とクラマの長男梅太郎。俺と初の長女新芽。などなど。本当に木の葉を追い抜いてしまうんじゃないかという勢いだ。

 俺の子どもは、ほとんどがいい子に育った。ただ、梅太郎はアバレと波長が合うようで、8歳頃に不良化してしまった。俺の自伝を聞かせても、「羨ましい! 大冒険! ハーレム!」、と俗っぽいことばかりに注目してしまった。

 

 3年が経ち、再び俺と長門と癒しの娘達で国外の調査を始めた。戦争にならないように、草隠れや滝隠れから始めることにした。特に草隠れは、怪しい実験場がいくつもあるので要注意だった。

 その年の終わりに、急にヒアシに呼び出された。日向本家に行ってみると、日向っぽいチャクラを持つ盲目の連中が大勢来ていた。

 

「まさか! 白眼を盗まれたのか!?」

「いえ、違うのです。私は大筒木サヌキと言うものでして」

 

 俺が叫ぶと、盲目軍団の代表らしき男が語り始めた。

 

 驚くべき内容だった。

 かつてこの星では、十尾という化け物が暴れまわっていた。六道仙人こと大筒木ハゴロモとその弟大筒木ハムラは、協力して十尾を月に封印した。その後、ハゴロモは地上へ戻り、人々へ忍宗を伝え、チャクラの平和利用と世界の安寧を目指した。ハムラとその子孫は月へ残り、十尾が復活しないように見張ることにした。また、ハムラはハゴロモと1つの約束をした。ハムラの子孫は月で1000年待つ。その後、地上でハゴロモの目指した世界平和が実現できているかどうか確かめるために、地上へ降りると。

 日向一族はハムラの直系の子孫であり、数百年前に先遣隊として地球に降りた。そのことは月で有名であり、地上では日向宗家にだけ代々伝えられてきた。ヒアシも知っていた。また、あと約10年で、約束の1000年になる。

 

 しかし、数年前のことである。

 ハムラの「1000年後、地上へ降りる」という言葉の意味について、解釈の違いが問題となった。議論がやがてケンカになり、ケンカも日増しに熱を帯びていった。ついには、ハムラの宗家と分家の一門で、殺し合いが始まってしまった。宗家側は、単に地上に降りて平和かどうかを確認するだけのつもりだった。もちろん、捨て置けぬほど酷い連中がいた場合は、懲らしめるつもりだったが。分家側は、地上が平和でなかった場合、世界を壊して人間を絶滅させ、ハムラの子孫だけで新しい国作りを始めるべきだと主張した。権力者が悪なら下の者も全員殺してしまえという無茶苦茶な発想である。現状、地上は戦争ばかりだったから、本当に滅ぼしてしまうつもりだったらしい。

 

 当然、分家に従う者は少なかった。武力衝突があっても、宗家側が圧倒的に有利だった。

 しかしある時、分家は宗家を罠に嵌め、秘宝転生眼を盗み出してしまった。この秘宝は、大筒木ハムラが開眼した転生眼を抜き取り、そこに子孫の白眼を付着させ、さらに力を高めたものである。十尾復活の阻止や、月の人工自然物の維持のために作られていた。月の大筒木一族が全員盲目なのは、生まれてすぐに目を抜き取り、秘宝転生眼に捧げているためだ。

 しかし分家は、その秘宝の力を革命に使った。大虐殺が起こった。宗家の人間は次から次へと殺されていった。追い詰められた宗家は、子どもを地上へ逃がそうとした。分家はその子どもでさえも、無慈悲に皆殺しにしようとした。このままでは宗家側の断絶も時間の問題だった。

 

 しかし数日前、月に謎の少女が現れた。ハムラの力とハゴロモの力を併せ持つ、悪魔のような存在だった。十尾の抜け殻である外道魔像を口寄せし、分家宗家関係なく虐殺していった。

 転生眼のあらゆる能力を活用し、分家と宗家が協力までして、少女に対抗した。それだけの相手だったが、なんとか追い詰めることができた。少女はついに倒れ伏した。分家が転生眼の力で止めを刺そうとした。

 しかしそこで、大筒木ハムラ本人、または生まれ変わりが現れ、その攻撃を阻止した。

 

「我々は固まってしまった。分家の者でさえ、あの方を前に粗相をすることはできなかった」

 

 サヌキが言った。畏敬の念がひしひしと感じられた。

 ハムラは黙って分家の人間に近づいていった。スッと秘宝転生眼に手を伸ばし、「返してもらうぞ」、と言って、秘宝の中心にある自身の転生眼だけを抜き取った。その後、少女と外道魔像を回収し、どこかへ飛んでいった。

 

「お、お待ちください!」

「ハムラ様なのですか!」

「ついてくるな。答えはお前達が出せ」

 

 ハムラはそう言って、宗家の者も分家の者も拒んだ。分家の者が飛んで追いかけようとしたが、結界に阻まれて近づけなかった。

 

 戦争を再開するか、和解するか。宗家と分家でにらみ合いが始まった。

 

「ハムラ様は転生眼を抜き取られた。やはり、世界を滅ぼすことなど望まれてはいなかった」

「あ、あんなの偽者だ! 本物だという証拠などない!」

「感じただろう!? あの力はハムラ様以外にありえない!」

「いや、むしろあの化け物娘の変化じゃないか!?」

「そ、その通りだ! なんということだ!? 外道魔像に続き転生眼まで奪われてしまった! もうおしまいだ!」

 

 結局、分家の一部の者はまた戦いを選んでしまった。しかし、分家でも半分近くは、先ほどの人間がハムラ本人だと信じ、宗家の味方についた。分家側に秘宝転生眼がなくなったことと合わせて、戦力差は完全に逆転した。

 さらにこの時、ハムラは月に奇跡を起こしていた。数時間以内に死んだ月の人間が、分家宗家問わず皆生き返っていたのだ。これにより、さらに多くの分家の者が、あの時現れたハムラが本物だと信じた。ハムラの願いが戦いではなく平和であることも知った。

 よって、さらに多くの分家の人間が宗家側についた。残った分家側革命因子は初めの1割以下だった。宗家側はあっという間に戦線を盛り返していき、分家側は完全に追い詰められた。

 

 ちょうど宗家がやったように、分家の人間も地上へ逃げようとし始めた。

 ここで、宗家側の意見が割れた。危険因子は根絶やしにしなければならないと考える者。子どもだけは逃がしてもいいと考える者。大人も子どもも逃げるなら追わなくていいと考える者。

 

「私は、子どもだけは生かしてやることにしました。しかし、大人の全てを殺すことは難しく、一部を地上へ逃がしてしまいました。そんな大人が子どもに危険思想を植え付け、第二の革命勢力を育むと思うと、心苦しく。こうして、我々も地上へやってきたのです」

 

 衝撃的過ぎて、しばらく固まってしまった。眼を捧げるとか、ハゴロモに弟がいたとか、尾獣っぽい名前の十尾とか。忍者関係ないファンタジー詰め込み過ぎでしょ! NARUTOの作者さん(ナルトが産まれてマンガのタイトルを思い出した)!

 

 もう1つ、サヌキは重要なことを言った。日向の血を濃く受け継ぐ白眼を、ハムラの血が濃い人間に移植すると、転生眼へと変化してしまうらしい。その力は輪廻眼に勝るとも劣らない。

 この眼が悪の手に渡ると、非常に危険なことになる。よって、日向ヒアシ、ヒザシ、ヒナタ、ネジ、ハナビの警備を厳重にすることとした。

 俺の日向の血はそれほど強くないらしい。だからたぶん、俺の白眼も娘の白眼も転生眼になる心配はない。白眼自体が貴重だから、奪われる可能性は依然残るが。

 

 俺は、この情報を共有するべく桃隠れに戻った。ちょうど向こうも俺を探していたらしく、急いで川影邸に来るように言われた。

 その場に、カブト、ナルト、ヒナタ、我愛羅、小南がいた。このメンバーの共通点が分からない。

 

「そっちの用は急ぎか? こっちは重大だが、後でもいい」

「こっちも後でいいわ。そちらからどうぞ」

「かまわないが、小南、カブト、ヒナタ以外は去ってくれ」

 

 我愛羅がささっと出て行く。ナルトは不満げだが出て行った。

 俺はヒアシの家で聞いた話を3人に伝えた。

 3人とも「厄介な」という反応だった。ヒナタは子どもなのでまだ月の話は聞かされていなかったようだ。

 

「一番怖いのは、転生眼誕生の条件が明確であることね」

 

 小南が言った。

 

「そうだな。分家の人間と鳥島が手を組むようなことがあったら……」

 

 俺の言葉に、ヒナタが不安そうな顔になる。俺も正直怖い。

 クローン技術で転生眼量産なんてこともありえる。輪廻眼と同等の力がそこら中に行き渡ったら、本当に世界は終わってしまうかもしれない。それだけは阻止しなければならない。

 いや、阻止できるのか? まだまだ鳥島が見つかる気配すらない。最悪の状況に備え、こちらも転生眼を用意しておいた方がいいのではないか? 誰が白眼をハムラの子孫に渡すかという問題が出てくるが。

 

 気分が暗くなったところで、次に小南側の話を聞くことにした。

 小南が紙飛行機でナルトを呼んだ。ナルトは一羽のピンクのウサギを手に持ってきた。

 しかしこのウサギ、何かが変化している。俺の白眼は細部の微妙な違い見抜けるからな。チャクラの流れも不自然だし。

 

「変化解いていいってばよ。イチゴ」

「うん」

 

 ウサギがしゃべり、ドロンと煙になった。煙が引くと、とてもかわいらしいピンク髪の少女が現れた。両目には白眼。

 身長30cm程度。しかし赤ちゃんというわけではなく、5頭身程度ある。明らかに不自然だ。これもまた、変化の姿なのか? しかし、チャクラの流れは正常だ。

 というか、こいつ角があるじゃねえか。ピンク髪、角、白眼って、完全に俺の子じゃねえか! 顔もどことなく月に似てるし! 月と俺の子のモモカにはもっと似てるし!

 

「俺の子か」

「やっぱりそう思う?」

 

 俺がつぶやくと、小南が同意した。が、少女本人とナルトは反発した。

 

「あれはナルトとヒナタの子なの!」

「そうだってばよ! この子はヒナタのすごい爺ちゃんに預けられたんだってばよ! お前は関係ない!」

「ヒナタの爺ちゃんって、生きてたか?」

 

 父方の祖父は俺が殺した。母方は生きているのか?

 俺はヒナタを見る。ヒナタは首を横に振った。

 

「私の遠い祖先の、ええっと、ナルトくんに聞かせちゃっていいのかなあ」

 

 ヒナタはとても苦しい顔になった。彼女がナルトを好きだとは聞いている。その彼をのけ者にするのは辛いのだろう。

 

「ヒナタ! 俺がいるうちに言ってくれってばよ!」

「そうだ! あれも知りたい!」

 

 というか『あれ』ってなんだってばよ。わたしがあたしになるように、われがあれになってんのか? ナルトの『ってばよ』も不自然だし。なんで遺伝してんだこんな口癖が。

 結局、ナルトだけ出てもらった。イチゴとやらをヒナタが抱えた。そこで、ヒナタが切り出した。

 

「私の遠い祖先の、たぶん先ほどの話に出たハムラ様だと思います。この子を私に託したのは」

「なに!? そんなのありえるのか!?」

 

 分家と宗家の戦争に突然割って入った爺さん。その爺さんが、子どもをヒナタに託す理由があるのか?

 子育てが面倒になった? そういう感じなのか?

 

「理由は教えてくれませんでした。ただ、争いのない場所で育ててくれと。それだけ言われました」

「理由くらい教えてくれたっていいのにな。争いがないってのは、確かにここは理想的かもしれないが。今のところは、だがな。火種がそこかしこに燻っているから」

「そうですね。今は月の戦闘が終わったようですから、月の方が安全な気さえします」

「月!? 月に行くのか!?」

 

 突然イチゴが乗ってきた。月という言葉が気になるらしい。

 

「そう言えば、この子自身から情報を集めればいいじゃないか。月に何か気になるものがあるのか?」

「よく分からないけど、月に行きたいって気持ちは強い! あそこにあれを待っている人がいる気がする!」

「男か?」

「いや、そんなあ」

 

 娘は両手で胸を隠してクネクネする。この反応、男だな。

 でもどういうことだ? 気がするっていうのは。

 

「この子、記憶喪失か?」

 

 俺が小南に尋ねる。小南は頷いた。

 

「イチゴはー、月に返らなければならないのー。ばいちゃばいちゃー」

 

 イチゴが演戯っぽく言った。さりげなくアラレの真似をして。声も似てるなあ。

 

「こいつ、アラレと仲がいいのか?」

「いえ、いつもはウサギの姿になってもらってるんです。あまり知られない方がいいから」

「ふーん」

 

 勝手に聞いて覚えたのかな? アラレの声はでかくよく通るから、聞き取りやすいだろうし。

 ウサギの姿になるのは、どうなんだろうな。別に隠す必要あるか? 確かに身長を小さくした術か何かは不思議だが、そこまで注意すべき術でもないと思う。転生眼や写輪眼に比べればな。出生については、ここは孤児が集まる場所だ。「両親はいない」「故郷は知らない」と言っても、あまり疑われない。というか、この見た目は俺の子だろう。

 

「何にせよ、まあもらっとくよ。俺の子として育てるんだろ?」

「え?」

「ん? 違うのか?」

「そ、その」

「もしかして、お前が親になる気か?」

「いえ、その……」

 

 ヒナタは言いかけてうつむいた。

 本当に親になる気だったようだ。しかし、ヒナタ自身がまだ9歳の子ども。しかも日向の跡取りで、修行に忙しく、命を狙われる危険もある。

 いくら、ハムラに託されたかもしれないと言ってもなあ。もうボケ老人かもしれないし。


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