うさぎイチゴを名乗る娘は、月から降ってきたらしい。もとは身長3寸くらいだったが、3日で30センチまで伸びたそうな。3に縁のある娘だ。
本人はナルトとヒナタの子になりたがっていて、ナルトとヒナタもその気だった。が、さすがに親になるには未熟過ぎる。子どもの意向は無視することにした。遺伝子検査をして、俺に近かったら俺の子になってもらい、日向に近かったら日向に預ける。もっとも、見た目と雰囲気から、俺と月の子にしか思えないが。
おそらくこの子も、アバレのように非道な科学者の研究所で生まれたのだろう。そんな子が何故月に行って、ハムラによって小さくされ、ヒナタに預けられたかは分からない。後で月に行って調べようと思う。
年始に、毎年恒例の同盟国会議がある。そこに大蛇丸が来るので、その時にイチゴの髪のサンプルを渡し、遺伝子検査を頼むことにした。
今年の開催地は木の葉の火影邸だった。
久しぶりに木の葉へ来た。街を散歩してみると、住人はいつも通り冷たかった。
「抜け忍が偉くなったもんだな」
「ハーレムは楽しいか? 小児愛者」
相変わらず、嫉妬と憎しみを晒け出したいようだ。大蛇丸の改革はすばらしいが、人間はなかなか変わらない。
今年の会議はいつになく豪華な顔ぶれとなった。重要な議題があるからだ。
同盟軍の盟主、火の国木の葉隠れからは、火影の大蛇丸。上役の自来也、並びうちはフガク。大蛇丸の弟子うちはオビト。日向家当主の日向ヒアシ。
川の国桃隠れからは、川影の小南。孤児院経営者である俺。遊撃隊隊長サソリ。川の国大名の長女にして遊撃隊2番隊隊長の天宮マリ。天才科学者則巻ター坊。
風の国砂隠れからは、風影。風影の次男にして体内にカルラを宿す我愛羅。
石隠れから、里長の伊予(いよ)カン。誓いの国の大名である皇(すめらぎ)カグヤ。
雨隠れからは、里長にして同盟軍総指揮である山椒魚の半蔵。半蔵の長男正就(まさつぐ)。
草隠れからは、福の国の大名にして東草隠れの里長である、草薙(くさなぎ)オリヒメ。
滝隠れからは、去年里長に就任した紫苑(しおん)ギレン。餌羽後の戦闘隊長、桑土呂志夜(くわとろしや)こと、富の国の大名、大君(おおきみ)キシハル。
また、雲隠れよりクシナの親友二位ユギト。岩隠れより俺の愛人募ツチ。霧隠れより鬼人ザブザ。
特別招待客は、月の統治者にしてハムラの直系の子孫大筒木サヌキ。
最初にして最大の議題が、大筒木サヌキの口から語られる。
手短に月で何があったかを説明し、分家の生き残りが地上へ逃げたことを言う。
「彼等の狙いは、地上人の滅亡です。詳しくは言えませんが、転生眼を量産できてしまえば、最終戦争は絵空事でなくなってしまいます」
サヌキの話に、初めて聞いた者は衝撃を受けたようだった。
大蛇丸が代わって続ける。
「この話が真実であることは、あたしが保障するわ。あたしは実際に月に行って調べてきた」
大蛇丸、綱手、サソリ等は、事実を確かめるために月に行った。山中一族の心転身や、自身の幻術まで使って本当かどうか調べたので、大蛇丸もサヌキの言葉を信じられたようだ。
「そして現在、写輪眼の量産に成功している組織がある。そこなら転生眼の量産も可能かもしれない。悠長に待っている暇はないのよ。私は、同盟軍による大規模な諜報機関の設立を提案する」
大蛇丸がドンと机に拳を打った。
砂隠れ、桃隠れ、雨隠れ、石隠れ、東草隠れは拍手で賛成を示す。事前に決めていた流れだった。
「問題がある」
志夜ことキシハルが手を上げた。
「どうぞ。富の国の大名様」
「ここには岩隠れや霧隠れを代表できる人間が来ていない。それに、海の向こうには大小様々な島があり、海賊もいれば、雪の国のような大国もある。大筒木ハムラの分家が本当に地球人の滅亡を狙っていて、幻術使いの組織と手を組んだとしても、やつらが我々以外の国にいた場合は手が出せない」
当然の疑問だった。
「そうだとしても、放っておくわけにはいかないわ。世界をしらみつぶしに調べ上げる必要がある。できる限り戦争は避けるけど、ある程度はやむをえないとも考えておくべきでしょうね」
これも、木の葉、桃、砂、雨、石、草、は事前に同意を得ている。問題は滝隠れと募ツチとユギトとザブザか。
「それは同意しかねる。連中が本当に世界を破壊できるかどうか分からない。そんな連中に振り回されて自国の民を犠牲にすることはできん」
まず、滝隠れのギレンが否定した。
「うちは、戦争で負けて既に調べつくされているからねえ」
ユギトはどちらでもいいらしい。彼女が言うように、雲は既に同盟軍によって重要な研究所を潰されていて、諜報が来てもさして困らないからだろう。
「俺のところは政権を潰さねえと始まらねえ。が、俺が政権を取りゃあ怪しいやつは見逃さねえぜ」
ザブザは革命する気満々の男だ。霧隠れは現状最も怪しいので、それくらい荒治療してもいいかもしれない。できるだけ人死にを少なくするには、トップだけ挿げ替えられれば一番いいが。
「爺ぃはどうだろうなあ。むしろイカれた連中を利用してやるって言い出しそうだ。うんそうだろうな」
募ツチも否定的だ。彼女に岩隠れを動かす力はないので、この場では土影の動きを予想してもらう。また、土影に多少顔が利くので、後で交渉役になってもらう。
「だが、オオノキは物の道理が分からぬ男ではない。あいつは損得で動く。同盟軍が力で脅し、金か技術かの蜜を用意すれば、乗ってくるだろう」
半蔵が募ツチに言った。
「ああ、そうかもしんねえな。うんそうだろうな」
募ツチも頷いた。
となれば、問題が残るのは滝隠れのみ。
皆の視線がギレンに向かう。
「残念だが、やはり賛同することはできないな。せめて証拠を提示してもらいたい。本当に世界が消滅の危機だと分かったならば、もちろん同盟軍への協力もやぶさかではない」
ギレンは再び否定した。
「大名様は、何か意見はあるかしら?」
大蛇丸がキシハルに問う。
「うむ。こちらとしては、あからさまに足並みを乱す真似はしたくない。有志を募るのはどうだろうか? 餌羽後と同じような形で」
キシハルがギレンに尋ねた。
しかしこの2人、本当は滅茶苦茶仲が悪いんだが、この場ではおくびにも出さないのはさすがだな。公私をわきまえているというか。
「大名様が独立軍をお作りになるのなら、我々から邪魔立てする道理はありません。ただし、協力は約束できません」
「報酬ははずむつもりだ」
「任務という形でしたら引き受けましょう。それに見合う報酬があるのなら」
滝隠れも一応は決着が着いただろうか。
思ったよりとんとん拍子で決まったな。まあ、同盟軍で力のある木の葉、桃、砂、が事前に同意を得ていたからなんだろうけど。
その後、諜報機関の編成の話が長々と続いた。人員は主に同盟軍から引き抜く。感知や情報操作が得意な忍びを選び、新たな部隊を作っていく。木の葉からは、日向、油女、犬塚、うちは等の名前がよく挙がった。桃からは、俺と長門とサソリを軸に、遊撃隊のメンバーから多く選出した。砂隠れは桃と被るがサソリとその部下達が適任だ。石隠れは、サヨコとその部下がハニートラップを仕掛けるらしい。味わってみたいものだ。草隠れは主に科学者を派遣する。技術的なアプローチで捜査に協力するようだ。滝隠れは元餌羽後メンバーから、感知にも使える”新型”の忍びを多く選出した。
雲隠れのユギトは、今まで通り治安維持に努めてもらったらいい。岩隠れの募ツチは交渉だけ頑張ってくれたらいい。2人に多くは望まない。
月の大筒木一族には大いに協力してもらう。彼等は目が見えないのをチャクラ感知で補っている。よって全員が高い感知能力を持っている。一般に、自分に似た存在ほど感じ取りやすいので、血の近い分家を感知するのは他の者より容易だろう。戦闘能力も申し分ない。聞くところによると、宗家も分家も全員がハムラの子孫であり、地上と交わることがほぼなく(完全になかったわけではない)、近親婚万歳だったようだ。よって彼等には、平均すると50%弱ハムラの血が流れている。強さもそれ相応だろう。
捜査には大名や商人にも協力を求める。人体実験にはお金が必要だ。実験装置にも、人材にも。お金の流れを追うことで、組織を探し当てることができるかもしれない。資材の流れ自体を追うのも効果的だ。また、優秀な人間は高級酒や美女を好むので、そちら方面でもアプローチできるかもしれない。以上から、情報提供者は大勢いた方がいい。
次に、霧隠れのクーデターの話になる。これは、戦力に余裕のある木の葉と桃とザブザによる話し合いとなる。主な議題は、どうすれば人死にが少なくて済むか。木の葉と桃はどの程度戦力を送ればいいか。
ザブザが霧隠れを抜けたのは、水影が急に人が変わったように残忍になったためである。そのザブザが言うには、彼が霧隠れを抜ける時に、彼以外にも水影の変貌に疑問を抱く者が多くいたようだ。その疑問を抱いた連中を、味方につけられるかどうか。それが、クーデターとその後の統治の成功を左右する。
ザブザ側の戦力は、ザブザと鬼兄弟(桃隠れには関係ない)と白と水月とその他子ども達のみ。ザブザは上忍の下位程度の実力で、白と水月は中忍程度。他は下忍かそれ未満だ。とてもではないが水影には勝てない。水影は三尾の人柱力だ。間違いなく上忍上位の実力者だろう。
天敵である俺ならば、おそらく楽に勝てる。周りの護衛も、長門と協力すれば勝てるだろう。そもそも同盟軍を導入すれば占領も難しくない。しかし、正面切っての戦いは死人が出すぎるから、ザブザに扇動を頑張ってもらいたいのだ。
お金で動く忍びはお金で雇い、女で動く忍びはエロ女を紹介すればいい。しかし、最も重要なのはザブザの男気に違いない。
話し合いの結果、ザブザはまず、資金集めとして大企業を乗っ取ることになった。やり玉に上がったのがガトーコーポレーション。黒い噂が絶えない会社なので、卑劣な手で陥れても批判が出にくいだろうという目論見だ。
この3日後、諜報機関NINJAが設立された。
NINJAは早速各国で諜報活動を始める。自分で調べるだけでなく、野次馬根性のある一般人に情報提供を求めたり、商人に資産の流れを調べさせたりもする。ここでは大名の名で従わせることもあった。
初日からNINJAに死人が出た。同盟国内外から、平和を乱す行為だと非難された。予想できたことだ。しかし、耐えなければならない。世界を終わらせることが目的であり、その力を持つかもしれない連中を、野放しにすることはできない。
さらに3日後、俺はアバレ、アラレ、長門、ヒザシ、サヌキを率いて岩隠れに交渉に行った。彼等を連れたのは「こんな化け物連中を量産しようとしている組織を放っておいていいのか」という論調で脅しをかけるためである。
募ツチの人形で土影邸へひとっ飛び。多数の護衛に囲まれながら面談へ。
サヌキを中心に、簡単にハムラの分家の危険性を説明し、捕獲の協力を要請した。
「世界を終わらせるなんてイカれた連中に味方するはずがないじゃぜ。ただ、そんな訳のわからん連中にかこつけて、敵国のスパイを受け入れろなんてのは道理が通らんぜ」
「火影、川影、風影、3人の長男を岩隠れに留学させよう。我々はそれだけの覚悟がある」
「なんじゃと!?」
要するに人質をあげようと言うのである。敵国の将来の指導者を洗脳したり、身体情報を得るチャンスでもある。
正直こちらも苦しい。が、子どもが殺される可能性は限りなく低いと思う。殺してしまえば戦争になることは必至。損得で動くオオノキならそんなことはしないはずだ。
「こちらの人間も月に行かせろ。まず事実関係を調べさせろ。話はそれからじゃぜ」
しかし、どうしても交渉は纏まらなかった。相手の言うことも一理あるから仕方ない。
さらに数週間後、うさぎイチゴの遺伝子解析の結果が出た。やはり俺と月の子だった。ただ、妙な反応をする細胞があるらしく、おそらく人為的な手が加わっている。大蛇丸曰く、アバレのように鳥島の実験体である可能性が高い。
ゴキブリは1匹見たら30匹はいるように思えという。赤ちゃんをゴキブリ扱いしたくはないが、俺が確保した実験体だけで2人もいるのだから、鳥島の元には数十か数百かいると考えた方がいいかもしれない。さすがに数百もいたら、金の流れですぐに分かるかもしれないが。
NINJA発足から1ヵ月後、ようやくハムラ分家の足取りをつかめた。見つけたのは木の葉の油女一族。場所は滝隠れと湯隠れの間。ここ数日、付近で殺人事件や作物の収奪事件が相次いでおり、虫を使って張っていた。当たりだった。
滝隠れが属する国の名は、ガンダムの産みの親である御大でいくべきだろうと考えました。
草隠れは電童で有名な方の作品群ですね。出雲と草薙の関係はどこかで触れられたらいいなと思います。
石隠れはギアス系の名前です。里長の伊予カンは全力の男です。