ど~も~。浪笠刻誠だぜ~。海鳴市ジャングル化事件から数日、なのはちゃんは決意を新たに立ち直り、自らの意思でジュエルシードを探す事に。
対して俺はまあ、何をするでもなくなのはちゃんを見守っているだけなんだが、今日は何もなく天気もいい、学校も無断欠席するには最適だ。そんな訳で今日はあっという間に元どうりになった海鳴市中を散歩ついでにジュエルシードが落ちていないか軽く見渡している。
あ、あそこの烏がこっち見てんな。さっきから付いて来てんな、あいつ。
なのはちゃんのレイジングハートに入っている術式もいくつか見せて貰った。俺の場合、魔法を発動させるには術式を正確に思い出せなければならないらしい。オートでも可能だが、それはどうやらレイジングハートの様なデバイスと呼ばれるものが必要になるとか。
俺が今記憶している、確かに使える魔法は『ラウンジシールド』『レストリクトロック』の二つ。
俺の総魔力量はなのはちゃんより少しばかり少ないくらいなんだと。基準がないから多いのか少ないのか分からなかったがユーノが言うには二人ともこれほどの魔力を持った人間は少ないらしい。
しかし、改めてみると本当に良い街だな、此処は。一度は住んでみたい街ベストファイブ(俺調べ)に登録したいぐらい。登録したから何がある訳でもないけれど。
久々だな。忙しくないのは。ユーノには悪いが今日はジュエルシード、見つかって欲しくないな。
お、烏がこっちに飛んできて俺に留まった?
「よお、俺に気付いてたなら声を掛けろよ。坊主。」
「今度は烏も喋った。ホントに退屈しないよな、この街は。もう驚かないぞ。それで?お前は何ものだよ。」
「俺かい?俺の名はまだない。好きなように呼べよ、坊主。」
「ふーむ、よく見たらお前足が三本だな、どうなってんだ?じゃあ・・・八咫烏から取って『ヤタ』な?俺は浪笠刻誠、よろしく。」
「ま、こいつも何かの縁って奴だよな。よろしくだな、刻誠。」
そんな訳で同居人が増えた一日。
♦♦♦♦
その翌日。今日は招待されて月村家にお邪魔することに。そう言えば初めてだななのはちゃん以外の家に行くのは。友達って奴がいない訳じゃない。むしろ居ない方が良いくらいまである。
「素直にいないって言えよ刻誠。」
「・・・うん。」
バス停でなのはちゃんと恭也さんに合流してバスに乗り込む。肩にヤタを乗っけたままなのでちょっとだけ視線が。
「なあ、刻誠。」
「なんすか?恭也さん?」
「その、肩に乗っている烏は何だ?」
「ああ、昨日拾った何の変哲もない烏ですよ?」但し知能あり、魔力ありのお喋り可能なマジカル烏だけど。
視線を受け続けて暫らく、月村家に着いたのだが・・・デカいな、家が。こんな金持ちだったのか?すずかちゃんは。
なのはちゃんと恭也さんは何度も来たことがあるらしく驚いてないな。なのはちゃんがインターホンを押すと直ぐに玄関が開かれ現れたメイドさん。
「!?」
「恭弥様、なのはお嬢様、刻誠様、いらっしゃいませ。」
「ああ、お招きに預かったよ。」
「こんにちは~。」
何か普通に対応してるな、お二人さん。刻誠様なんて呼ばれたのは初めてだぜ。何かむず痒いな。
「あ、済みません烏は入館可能ですか?」
「はい、大丈夫ですよ。」
『良かったな。ヤタ。』
『おう、外で留守番なんて惨めすぎるからな。』
おいおい、この世界で専属メイドなんて職業を聞くことになるとは・・・すごいな、月村家。
それと恭也さんはひょっとしなくても月村忍さんと恋仲だったり?おお、羨ましいね~。
それにしても、いい友達を持ったもんだよ、なのはちゃんは。
俺?俺はなのはちゃんのおまけだろ。
今気づいたが猫が多いな、この屋敷は。ユーノとヤタがめっちゃ狙われてるんだが。
『おいこら危ないだろ!バカ猫!痛え!くそっ!爪が掠った!』
そしてユーノ、ヤタ、猫に取り囲まれたメイドさんが目を回しちょっとしたハプニングがあり仕切りなおして外でお茶会をすることに。
ゾクッ!
すると何回か感じた事のある嫌な感覚が。
『なのは、刻誠!』
『うん、すぐ近くだ。』
『ジュエルシード、だな。』
ユーノがなのはちゃんの膝から飛び降りてジュエルシードが発動したらしい方向へ走っていく。
ユーノ、なのはちゃんと共に探しているとユーノが結界を張るらしい。それは何でも空間の時間をずらすとかどうたら。
魔法陣が描かれて発光したかと思えば陣を中心に景色が灰色になっていく。直後にに青い光が上がったらそこにはなんと巨大化した子猫が。
「あ、あれは?」
「多分、猫の、大きくなりたいって願いが正しく叶ったのかな?」
「まあ、確かに大きくはなったがジュエルシードが役に立つのか分からなくなってきたな。何でこんなのを造ったのやら。サッサと封印しようぜ。」
「うん、レイジングハート!」
なのはちゃんがレイジングハートを取り出して起動させようとしたがその前に猫に金色の一条の閃光が奔り直撃した!
何だぁ?
目を凝らしてみると電柱の上に金の髪のなのはちゃんと同い年位の女の子が。
「魔法の、光。」
なのはは魔法『フライヤーフィン』で飛び、更に飛んで来た魔力弾を防御するが一発が足下に飛んで来たが手が回らなかったようだ。
「ラウンジシールド!」
ふう、間に合った。
む?さっきの攻撃してきた少女か。
何かブツブツ言ってるが魔導士でジュエルシードの存在を知ってるのか。
手に持った斧だと思ったが刃部分が稼働して開き金色の魔力刃が形成される。鎌だったのね。
「申し訳ないけど、戴いていきます。」
木を蹴り中々の速度で迫ってくる。横から振られた鎌を取り出した獄誠で受け防ぎせめぎあう。冷たいが何処か寂しげな瞳をした少女を蹴り飛ばして一度距離を離し構えるが俺の事は眼中にないらしい。
後方へ飛び上がったなのはちゃんへ向けて鎌を振りその刃を飛ばした。
なのはちゃんはプロテクションを張り防いだが金色少女が直ぐに追いつき鎌を振り下ろした。辛うじてレイジングハートで受け止めたようだ。
「何で、急にこんな事を・・・」
「多分、答えても、意味はない。」
「おいおい、俺を無視してくれるなよ!」
地上からSIGをだして発砲。しかし金色少女は障壁を展開して防ぎなのはから離れる。二人とも地上へ降り、互いにデバイスを向けあい硬直。その時に猫が一声鳴き、猫へ目を向けるなのは。
金色少女はただ突っ立ている筈もなく斧状になったデバイスの先端に魔力弾を作る。
「戦い中によそ見をするな!なのは!」
「え!?」
「ごめんね」
放たれた魔力弾を切り裂いたが同時に爆発。俺は木に激突、もろに受けたなのはは簡単に吹き飛んで気を失ったのか頭から落ちていく。
「っくぅ!ユーノ!ヤタ!何とかしろ!」
「うん!」「ああ!」
その間に金色少女は封印を終わらせ、此方を暫らく見つめ去っていった。
「くそったれ身体が動かん、おい、ヤタ、ユーノ。誰か呼んで来い。」
「おう、まってろ。」「わ、分かった。」
走り出したユーノとヤタを見送り一息つく。
「はあ、俺だけならば彼女には勝てるんだが、なのはがなぁ。腕が鈍ったかな?士郎さんと恭也さんにまた相手をしてもらおうかな?」
まさに飛んで来たと言っていい程に早く連れてきたヤタとユーノに感謝して意識を落とした。
♦♦♦♦
俺たちが意識を戻したのは空が夕暮れに染まる頃。皆には木に登って降りられなくなったユーノを下ろそうとして怪我をしたと嘘を言って誤魔化した。
これからもジュエルシードを探していれば彼女とぶつかるだろう。俺は良いのだが、なのはちゃんは迷うだろう。俺が付いていくことは変わらないが、複雑な気分ではあるな。