7月も下旬、夏休みの高揚が高ぶってもおかしくない時期だが、それを許さない学生ならではのイベントがある。
その名は……
「期末テストの季節ですね、そーですね」
「一人で何やってんの?柊季」
期末テストまであと一週間に迫る中、3年E組は気分転換ということで裏山で勉強していた。
「ヌルフフフ、皆さんこの一学期で基礎ががっちりできてきましたねこの分なら期末の成績はジャンプアップが期待できます」
「殺せんせーまた期末も全員50番以内を目指すの?」
渚の質問に前回同様各教科の鉢巻きをまいた殺せんせーは触手を横に振る。
「いいえ、先生はあの時総合点ばかり気にかけてました。生徒それぞれに見合う目的を立てるべきかと思いまして…」
「ふーん」
「そこで今回せんせーはこの暗殺教室にぴったりの目標を設定しました」
先生は「LUCKY CHANCE」と書かれた単語カードを見せる。
「で?その目標とは?」
柊季の質問に殺せんせーが答える。
「前にシロさんが言ったとおり、先生は触手を失うと動きが落ちます」
そう言うとせんせーは自らの触手を一本撃ち抜く。
「御覧なさい、すべての分身が維持できずに子供の分身が混ざってしまっている」
「分身ってそういう減り方するの?」
せんせーは渚の疑問に構わずさらに一本撃つ。
「今度は何と、子供の分身がさらに増えて、親分身が家計のやりくりに四苦八苦しています」
「家庭事情を挟むな!」
「なんだか切ない話だよ!!」
柊季と渚のツッコミに構わず、せんせーはまた一本撃った。
「さらに一本殺ってみると、父親分身が蒸発して、母親分身が女手一つで子供たちを養っていかなければなりません」
「「「「「重いわ」」」」」
「まあ、色々試してみましたが先生が触手一本につき先生が失う運動量は約20%、そこで本題に入ります。前回同様に総合点ももちろん評価しますが、今回はさらに、各教科一位のものにはせんせーの触手を一本破壊する権利を与えましょう」
「なるほどね…」
一瞬だがみんなの殺気が高ぶった。
「そうです皆さん、せんせーを殺せるかどうか、賞金100億円を獲得できるかどうかは、皆さんの努力次第ですよ」
こんなチャンスを見逃すほど、3年E組の生徒は甘くない。殺せんせーにやる気を引き出されながら、みんな真剣にテスト勉強に取り組むのだった。
「各教科一位か」
「ええ、みんなで頑張りましょう」
茅野の言葉に奥田は珍しくやる気のようだった。
「珍しくやる気だね、奥田さん」
「はい、理科なら私も大の得意ですから」
「うちにも上位ランカー結構いるよね」
茅野の言葉にそうなのか?と柊季が質問する。
「うん。国語なら神崎さん、数学ならカルマ君、英語なら中村さん、理科なら、奥田さん、社会なら磯貝君、片岡さんと竹林君はまんべんなくいけるよ」
「渚も英語得意だよな」
「いや、そんなことないよ」
「いやいや、俺は英語苦手だからできるやつはマジで尊敬するわ~」
うんうんと頷く柊季にあなたもやるの!と椿季がツッコむ。
「それに今回は前回みたいな不正がないように烏間先生とビッチ先生が釘差しといてくれたらしいよ」
「へー」
そんな話をしているとき不意に杉野の携帯が鳴る。
「ん?進藤か、もしもしどうした?」
「おう、この間は世話になった。その借りは高校でなんて言ったが、お前の進学が心配になってな」
「はは、相変わらずの上から目線だな」
「というのも、今回五英傑を中心にA組がどうやら動いてるらしくてな」
「五英傑?」
椿季がそうつぶやくと進藤が説明を始める。
「中間テスト総合二位!!他を圧倒する高い知識!!放送部部長!荒木鉄平!」
「総合三位!!人文系コンクール総なめぇ!鋭利な詩人!生徒会書記!榊原蓮!」
「総合五位! 赤羽への雪辱に燃える暗記の鬼! 生物部部長!小山夏彦!」
「総合六位! 口の悪さとLA仕込みの語学力は追随者なし!生徒会議長!瀬尾智也!」
「ちょっと待て、お前、あの進藤か?」
あまりの変わりように驚く柊季。
「ああ、すまん一度やって見たかったんだ」
「あ、なんかこちらこそごめん、続けて」
進藤は咳払いして、続ける。
「中間テスト総合一位!!!全国模試一位!!!全教科パーフェクト!!支配者の遺伝子を持つ男!生徒会長!!浅野学秀!!!」
「おい、浅野ってまさか」
「うん、理事長の一人息子」
「なるほど、それは手ごわそうだな」
「そうだね」
3年E組に立ちはだかる壁はなかなかに大きいものだと柊季は初めて理解したのだった。
その日の放課後、柊季と椿季と倉橋は図書室に来ていた。
「柊季さがしていた本あった?」
「俺は全部そろったぞ、そっちは?」
「うん、私も」
「あとは椿季だけど、あいつどこ行ったんだ?」
柊季は倉橋と椿季探していると椿季は何かをじっと見ていた。
「何見てんだ?」
「ああ、柊季、あれあれ」
椿季が指し示す方を見ると何やら勉強をしに来たと思われる渚が瀬尾達に絡まれていた。
俺らはどうしたのかと近づいてみることにした。
「どうしたんだ?お前ら」
「ああ、柊季君」
「おや、そちらの二人はお初にお目にかかるね」
「どうも、で何してんの?」
「いやね、E組だからって席譲れって」
「ああ、いつものやつか」
俺はため息をついてやれやれと首を振る。
柊季のその態度に苛立ったのか、荒木が嫌味ったらしくいった。
「ああ、君達か、噂になった転校生か中間テストで学年7位だった、E組にしてはそこそこできるっていう生徒っていうのは」
「そんな言い方!!」
「いいんだよ、陽菜ちゃん事実だから」
反論しようとした倉橋を椿季は静止する。
「それでお話を続けてください」
椿季は満面の笑みで話を促す。
「君たち各教科トップ狙ってるんだっけ?じゃあ、こうしよう俺達A組と君たちE組より多くの一位を取った方が何でも命令できるってのはどうかな」
「……」
突然の要求に黙る渚たちを瀬尾が煽る。
「どうした、臆したか?やっぱり雑魚は口だけか?俺達は命かけてもいいんだぜ」
すると、五英傑のそれぞれに渚、中村、神崎、磯貝が文房具を突きつけていた。
「命は簡単に書けない方がいいと思うよ」
(へー、みんな今回はやっぱり殺る気が違うね)
文房具を突きつけられた五英傑は捨ぜりふを言いながら、逃げるように去っていった。
(それに今のはかなり面白いことになったかもな)
こうして、A組対E組の期末テストが幕を上げるのだった。