魔物は忌むべき存在である
それがこの世界の常識だ。
人間はとても弱く、魔物の爪や牙でたやすく絶命してしまう。
そんな人類は集まることを覚えた。
『一人では危険だと言うのなら皆でいれば良い』そんな考えの結果村や町、集落や国が生まれた。
けどその常識は通用しない場合がある。
それは『人間ではなく魔物の集落だったり』『人と魔物が共存する場所だったり』『人が人を殺すような場所だったり』
僕はそんな場所の中でも最低な場所で生まれた。
そう、僕は山賊に襲われた村の中で生き残った人間だ。
当時僕は、まだ言葉も話せないような子供だった。
山賊たちは金目の物を奪っていくとすぐに去っていったらしいので、僕は命を奪われずに済んだらしい。
と言うのもこの話は全て僕の育ての親から聞いた話だからだ。
ヘルバトラー
それが僕の育ての親の名前だ。
彼は僕に生きていく為の全てのことを教えてくれた。
言葉や文字、計算などの知識はもちろん基礎的な体の仕組みや動かし方、人やモンスターを相手とした簡単な護身術までありとあらゆることを教えてくれた。
それだけではない。彼は僕に様々なことを教えてくれた、まるで親のように。
だがそんな彼は僕もういない。
彼は言った
魔物として生きるなら俺の心を持っていけ
彼は言った
人間として生きるなら俺の命を奪っていけ
僕は人間として生きていくことに決めた。
多分、彼は最初から分かっていたのだ、僕がこの道を選ぶのを。
だから人間の言葉を教え、人と魔物の両方との闘い方を教えたのだ。
そして僕は人間の村へと赴いた。
だが人間は僕を怖がった。
僕の体は『魔人』と呼ばれる魔物のそれと近かった。
魔力の高い人間は体が魔物にならない為に自分の体に無意識のうちに結界を張るらしい。それが出来るものは『賢者』と呼ばれ、それが出来ないものは『魔物落ち』と呼ばれるとか。
今はもうその症状は治った。
だがもうすでに僕は人では無いし魔物でも無い。
僕はその両方を殺して生きている。
そして僕は『さまよう骸』と呼ばれた。
とある村
村人A「村長!いつになったら勇者様は来るだか⁉︎オラんちはもう畑を全部やられちまっただ!」
村人B「んだんだ!それに骸の奴!同じ魔物も殺してるっていうでねえか!んな危険な奴がこの村の近くにいるだなんて……おっかぁは不安で夜も眠れねぇだど!」
村長「う、うぅむ………手紙は送ったのだが、どうやらオラクルベリーにて当分滞在するつもりらしいのだ」
村人B「オラたちが死ぬかもしれねぇってのにだか⁉︎」
村娘「おっとぉ………オラ、前に一度会った事あるでよ………大丈夫だか?」
父親「安心するだよ。骸は悪さしなければなーんもしねーだ」
村人A「おいお前!なーにを呑気なこと言ってるだか!骸はこの前、盗賊一味の首を全部へし折って殺した危険な奴なんだど!」
村人C「そ、そうだ!あんな奴殺しちまえば良いだ!」
父親「おい!それ以上骸のことを悪くいうでねぇ!オラがオメェを殺すど!」
村娘「おっとぉ!あ、ちょっと待つだよ!………ほんだらオラたちこれで………」
村長「…………とにかくだ、骸のについては勇者様が来るまでなーんもできねぇ………南の祠には近づくんでねぇど」