~μ’s Forever Lovers~ μ’sic Start!   作:絢未

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お久しぶりです。絢未です。

長い間休載してしまい申し訳ありませんでした。

Twitterで復活してほしいというありがたいお言葉をいただいたので、復活致しました。たまにちまちま更新するかもしれないので、改めてよろしくお願いします。


【絵里×にこ】すれ違った心

ある雨の日。

 

練習が雨のせいで出来なくなり、メンバーがバラバラに帰り始めた頃。私、絢瀬絵里はふと生徒会室へと足を向けていた。

 

いつも一緒に帰っている希はなにか用事があるようで、今日は一緒に帰れない。かといってほかの子に私から一緒に帰らない?なんて誘うのはなんだか気恥ずかしい。それに、周りのメンバーはみんな付き合ってるし。穂乃果、ことり、海未は幼馴染み。凛と花陽は付き合ってるらしいし、にこと真姫は……希もよくわかんないし。みんな青春してる。帰る気分にもならないので私は気分転換でも、と思っていた。

 

私は好きな人がいる。それも完全に一方通行、空回り、一方的に好きなだけだけど。その人には恋人もいるし。叶いっこない恋だけど、まだ好きな人が居るだけマシよね。

 

そんなことを考えながら。生徒会室に入り適当にコーヒーを淹れた。窓から見える雨と、相合い傘をしている生徒たちを見つめていると、ふとあることを思い出した。確かまだ終わっていない書類があったはず。それを終わらせたら帰ろうかな。

 

そう思い立ち、椅子に座って書類をまとめていると、生徒会室のドアが叩かれた。

 

「はい」

 

こんな時間に誰かしら?もう校内に残っている生徒は少ない。それなのに生徒会室に来る物好きなんていないはず。雨が弱い今、早く帰った方がいいと思うけど……。

 

コーヒーを持ったまま立ちたがり、先生かしらとドアを開けると、そこには予想外の人物がいた。

 

「……え」

 

驚きすぎて私は手に持っていたコーヒーを落としてしまう。それを見たその人はいつもみたいに呆れながら片付けを手伝ってくれた。でも、なんだか嬉しそうな顔をしている。……いつもより、笑顔が変な気もするけど。

 

「まったく、仕方ないわねぇー」

 

矢澤にこ。私の好きな人で、μ'sのメンバーである西木野真姫の恋人。

 

これほど雨を好きになった日は、きっと今から先の人生にもないだろう。そのぐらいの出来事が、今から起こる。

 

 

~♡~♡~

 

 

「ねぇ、別れよ」

 

ほんとに、雨なんて嫌い。

 

「にこちゃんが私のこと好きじゃないの、知ってるから」

 

雨が降ってなければこんなことにならなかったのに。

 

「にこちゃんが私のこと飽きちゃったんでしょ?だから、」

 

やめて。

 

「だから、」

 

やめて。

 

「もう、」

 

それ以上言わないで。

 

「別れよ」

 

私の大事なものを壊さないで。

 

「ごめんなさい」

 

雨なんて、嫌い。

 

 

結局恋なんて、恋人なんて脆いもの。

 

ただ、脆いわりには辛い。

 

心が痛い。涙が出てくる。

 

なんで、こんな思いしなきゃいけないの。

 

それだけ、それだけ私は、

 

真姫ちゃんが好きだったんだ。

 

 

みんなが帰った後、真姫ちゃんと二人で部室にいた。特に何かを話すわけでもなく、ただぼーっとして。雨が弱くなるのを待っていた。通り雨、だと思ってた。恋もそんなものだと思ってた。ただ気持ちを伝えて、キスして、抱き合って、一緒にいて。それだけで幸せだった。最初は。

 

普段は毎日一緒に登下校していた私たち。でもそれは最近までのこと。ここ一週間くらいは二回くらいしか一緒に登下校していない。それもそのはず。真姫ちゃんは最近、車で登下校するようになった。それはつまり、私の一緒に登下校する気がないということになる。

 

最初はそんなこと考えてなかった。でも、部活中に自然と真姫ちゃんの目を見ていたらわかった。もう自分のことは好きじゃないんだ、と。それがわかった瞬間、自分の中の何かが割れる音がした。大切なものが、大事なものが割れる音。それから、自分の気持ちが覚めたことを自覚した。

 

私が()()()真姫ちゃんを好きだったように、真姫ちゃんも私のことが好きだった。

 

ただそれは、通り雨のように一時的なもの。中身のない、からっぽな恋愛。恋なんて、しなければよかった。

 

 

私は真姫ちゃんに訊いた。

 

『もう、にこのこと好きじゃない?』

 

そしたら真姫ちゃんは特に表情(かお)を変えないまま、立ち上がって私の首にキスを落した。久しぶりの真姫ちゃんからのキス。普段なら2でで笑いあって、唇にでもキスするのに。今は嬉しくもなんともない、薄っぺらい偽善。

 

そして何の前触れもなく、別れ話を切り出された。

 

 

気を紛らわすため、と言い訳して私は生徒会室へと向かった。生徒会室にはきっと()()()がいるはず。そう願って生徒会室のドアを叩く。

気づけば自然と足が動いていた。目の前には()()()()の四文字。

声が聞こえた。やっぱりいる。()()()は。

 

ドアが開いて、彼女は私の顔を見て驚いてる。口も半開きだし、生徒会長がこんな姿晒しちゃだめでしょ、って思うけど。でもそれがなんか嬉しかった。自分の妄想に過ぎないけど、私に心を許してくれてるのかなって感じがした。ほんの少しだけ、こころに余裕ができた気がした。

 

まるでそれを否定するように――次の瞬間、彼女の持つカップが落ちた。

 

ガシャン、という音と共に床にコーヒーが広がっていく。しばらくそれをぼーっと眺め、ハッとしたように彼女は片付けを始めた。いつまでも暗い顔していられない。余計な心配かけたくない。そう思って作り笑いを浮かべた。仕方ないわね、と片付けを手伝って。笑顔を作るのは得意だけど、今日はニコっと笑う気にもなれなかった。ただ、誰かも一緒にいないと気がおかしくなりそうだったから。だから私は絵里のもとへ向かったんだと思う。

 

それを手伝って、運良く割れはしなかったカップなどをしまった後、一緒に帰ることになった。

 

まだ外は雨が降っている。鞄から折りたたみ傘を取り出して足を進めようとすると、腕を絵里が引っ張った。

 

「……?なに?」

 

絵里はもじもじとした態度で、傘がないの、とぼそっとつぶやいた。

 

背伸びをして相合い傘をさして帰る。

 

もうこのときの私は、絵里のことしか考えていなかった。

 

 

~♡~♡~

 

 

「……んぅ、んっ」

 

にこと帰る帰り道、雨の中を相合い傘でゆっくり歩いている。それまではいい。1度は好きな人と相合い傘をしてみたかったし。

 

でもこれじゃ、私が小さい子に傘をささせているみたいになっている。私にが傘を持っていなかったから仕方ないかもしれないけど、今の私たちはにこが傘を持って、私の体制がだいぶ辛い感じだ。

 

手を伸ばして、背伸びして持ってくれているのは嬉しいし、何より可愛い。もう少し眺めていたいという気持ちはあるけれど、流石にそろそろかわいそうだ。

 

「ねぇ、にこ。傘……持つわよ?」

 

おそるおそる尋ねると、にこはちょっと嫌そうな顔を浮かべた。小さいことをバカにされているようだったのかもしれないけれど、にこはスッと傘を渡してくれた。

 

傘を受け取って、今日はにことの距離を縮めるチャンスだと思い、にこの腰に手を寄せた。傘から出たら濡れちゃうからと嘘をついて。腰に手が触れるとにこは少しくすぐったそうな顔を浮かべた。でもいやそうな顔ではないし、意外にもうまく距離が縮まった。

 

そのまま住宅路を歩き、にこの家の近くにたどり着くと何も言わず家の中に案内された。にこは少し雨宿りしていきなさいよ、と言っているが私からすれば好きな人の家に好きな人と二人きり。たまったもんじゃない。

 

体についた水滴を落し家の中に入る。適当に椅子に腰を掛けるとにこがコーヒーを出してくれた。にこが作ってくれたという事実だけでもうおなかいっぱい。ゆっくりすすっていると、にこが向かいの椅子に座った。

 

しばらく沈黙が続いたが、先に静寂を破ったのはにこだった。

 

「にこね、真姫ちゃんと別れたの」

 

衝撃だった。

 

あんなに仲良さそうにして、磁石みたいに反発し合ったりくっついたりしていた2人が別れた?冗談でしょ。受け止めきれない。もう、にこは真姫のものではない。叶わないと思った、ずっと秘密にしてきたこの気持ちを、どうしていいのだろう。告白する?したところでどうなる?……自分の気持ちだけでにこの人生を左右するわけにいかないし。とにかく、頭の整理がつかない。

 

「どういうことよ」

 

にこに理由を聞くと、ためらいもなくすべて教えてくれた。真姫ちゃんのことは大好きだったけど、雨が降ったせいで練習がなくなり別れ話を切り出され、気づいたら何を言えなくなってただ泣いていただけだった。ということ。もう未練はないということも。

 

「にこは、いいの?それで、それで終わりなの?」

 

「終わりよ。……真姫ちゃんとは終わり。寂しい独り身に逆戻りよ」

 

嘘のない言葉だった。それほど綺麗に終わったんだ。にこの恋は。

 

「……にこ、話があるわ」

 

にこには悪いと思ってるけど、今しかないと思ってしまった自分がいた。こころが弱っているにこに、今告白すればOKを貰えるかもしれない。前の恋なんてどうでもいい。今すぐに抱きしめて、こころの傷を癒してあげたかった。

 

「なに?」

 

ごめんなさい、真姫、にこ。

 

「私ね、にこのこと……」

 

言ったらもう戻れない。

 

「好きなの」

 

それを聞いたにこの表情(かお)は変わらなかった。ただジッと私の顔を見つめていた。

 

そしてにこが私の手を引っ張り、自分のことを押し倒させた。突然ことに脳が追いつかない。今、私はにこのことを押し倒している?わからない。なんで――。

 

「ん……っ」

 

「……んぅっ」

 

その瞬間、唇に温かいものが触れた。初めての感触、これはそうだ、きっと――

 

 

キス。

 

私の身体をにこがグッと引き寄せた。顔と顔が近い、にこの顔が赤く染まっている。それが鏡のように私の顔のことも表していた。

 

「ねぇ、絵里。……にこのこと、好きにして」

 

耳元でそっと囁かれた。

 

「「めちゃくちゃにして」」

 

私のナカの理性のタガが外れた音がした。

 

 

〜♡~♡~

 

愛しの彼女()()()あの人に別れを告げて、1人で雨の中帰路についていた。

 

不本意だけど、にこちゃんが幸せになってくれるならそれでいい。にこちゃんはきっと絵里のことが好き。ただそれを本人が気づいていなかっただけ。

 

私は今でもにこちゃんのことが大好きだけど、絵里といることで1番幸せになってくれるなら私の幸せになる。

 

ただもうちょっとだけでも、一緒にいたかったな。なんて。

 

 

雨が酷くなる前に家に帰ろう。

 

大好きだったよ、にこちゃん。

 

 

 

雨と一緒に、私からしずくが1滴落ちた。

 

その瞬間、にこが絵里に()()()()()でもあった。

 

 







お疲れ様でした。

Twitter「@ayami1112_Rahme」
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