~μ’s Forever Lovers~ μ’sic Start! 作:絢未
「はぁぁぁぁ……」
カタカタとキーボードをタイピングする手も進まず、仕事にも身が全く入らないここ最近。にこに別れをつげられてからというもの、私、絢瀬絵里はズタボロの生活を送っていました。
「だめだなぁ、こんなんじゃ」
夜はにこのことを思い出して、自慰にふけるばかり。持って帰った仕事なんて手を付けられない。こんな生活じゃダメだってことくらい分かってるつもりだけど、にこに触れたくて仕方ない欲求が自分に向かっている。にこがいないとこんなになっちゃうって知って、にこがいないとダメなんだなぁって自覚させられちゃう。
気分転換に会社のカフェテラスへと足を運ぶと、そこには予想外の人物がいた。
「やっほー、久しぶりやなぁ……えりち!」
紫色の髪、結ばないで下してある姿は久しぶりに見る。一年どこかに行ってしまっていて連絡も寄越さないから心配してたのに……。急に現れて、しかも会社に来ちゃうなんて!
普通の社員に混ざって普通にしてるから、最初わかんなかったわよ。馴染み過ぎよ、希。
「の、希!?何やってるのこんなところで!びっくりするでしょ、もうっ」
とりあえず希が座っている席に腰を掛けて、話を聞くと、あることを私に伝えにきたらしい。
「あ、あることって……なに?」
希の口から出た言葉は、衝撃の二文字だった。
「にこっち、結婚するらしいよ」
~♡~♡~
「ただいま……」
午前4時38分、家に帰宅したのはそんな時刻だった。急いで絵里の家を飛び出してきて帰ってきたけど、帰ってきたところで何かあるわけじゃ……ないんだよね。
「おかえりー、にこ」
笑顔で駆け寄ってきて、抱きしめてきたその男。
「……ん、俊哉」
私、矢澤にこの婚約者です。
妹たちのために学費を稼ごうと頑張っていたけれど、アイドルとタレント活動だけじゃ足りなくて。ママにはかっこ悪くてそんなこと言えないから、金持ちと結婚するしかないのよ。ここあ、こころ、虎太郎にいろいろなことをしてほしいから、少し無理してでもどうにかしなくちゃいけないの。
普段はこんな顔してるけど、本性はただの暴力男。私が帰るのが遅くなれば殴られ叩かれ……。挙げればキリがないくらい。そんなことをされても、私はやらなきゃいけない。それでも私は……。
悲しいことや苦しいことを考えると、頭に浮かんでくるのは絵里の顔。本当は私だって別れたくない。でも、俊哉に絵里のことがばれてしまった以上、付き合い続けるのは無理。今だって、ほら……。
「なんで遅くなったの?もしかして、また絢瀬さんのところに?」
隠したって私がほんとのことを言うまで、自由な時間はやってこない。そんなの嫌だし、第一そんなことしてる暇はない。明日の収録の打ち合わせをしなくちゃいけないんだから。
「……そうだけど……ぐあぁっ……!」
案の定、俊哉のこぶしが私の鳩尾にヒットする。めり込んでくるような強い力。貫通しちゃうんじゃないかな、って思ったこともあったけど、もう最近は思わなくなった。
「いい加減に俺の言うこと聞いてくれないとさ、困るよ。にこのこと、考えてんだよ?勝手なことされたくないから。……言ったよね?日付が帰ってくるまでに帰ってこなかったらダメだって」
「……っ、知らないわよ……はぁっ、私仕事あるから、離してよっ」
引き剥がそうとしても、腕をグイッと掴まれてしまって自室まで向かうことができない。
「いやだね。今日は一日俺の言いなりになってもらうよ。……ほら、ベット行くよ?」
それとコイツは性欲の塊でもある。毎日のように犯されまがいのことをされ、いい加減に限界がきている。誰かに助けてほしい。絵里に助けてほしいけれど、それはもうできないんだよね。だから今日も、耐えるしかない。
抱きかかえられ、私はベットへと連れていかれた。
~♡~♡~
「結婚って、ど、ど、どういうことよ!?」
突然押しかけられて、突然結婚だなんて言われても頭が追いつかない。にこが結婚する……。ダメよそんなこと!にこは私の恋人で……って、もう違うんだったわ。
「そのままの意味やん。お金持ちの御曹司さんと結婚するって聞いたんやけど、えりちがいるのににこっちが結婚なんて、考えられへんよ。ウチ、絶対なんかあると思うんよね。……ここは一度、にこっちに話を聞く必要がありそうやん」
妙にノリノリな希はよくわからないけれど、私の心には”結婚”という言葉が重くのしかかってきていた。
「……にこが、結婚。そんなぁ……」
にこと別れて仕事のやる気もなくしたというのに、こんなことが重なったら更にできないわよ。にこの”元”恋人がそんなこと許すはずないでしょ。
にこが結婚?認められないわぁ。
にこには会いたかったけれど、このことを訊きたくて更に会いたくなってしまった。でもさすがにそんなこと、できない……。仕事の休みはいらないと思ってすべて仕事を入れてしまったし。もうダメだわ。
「とにかく、ウチがにこっちのことよく調べておくから、えりちは精神の維持と仕事を頑張るんやで」
そう言うと希は席を立ち、私に手を振っととっとと去っていってしまった。
デスクに戻り、仕事をしていると気付けばもう午後七時を回っていた。私は仕事を片付けて帰路についた。
感想・評価・お気に入り登録よろしくお願いします(o^―^o)ニコ