ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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巨星堕つ

「では、書類を」

「はい、こちらになります」

「確認しよう」

封を破り中を確認する彼女。そして、彼女は一息つき

 

「お前さん、この後の予定はどうなっている?」

「一応学園に帰りますが」

「そうか、では私と手合わせしてもらわないか?」

まさかの言葉に驚く斑鳩。

 

「私が、ですか?」

「そうじゃ、あまり言いたくはないが、刺激が欲しいのじゃよ、刺激が」

あどけなく笑う彼女だが、どう考えても面倒だなと考える斑鳩であった。とはいえ、むげに断ることもできないので、斑鳩は中庭に向かっていった。

 

 

「――さてと、やるかの」

そう言いながら、彼女と向き合う。すると、彼女のその気迫が膨れ上がるが

「(…生憎、おいそれと負けるわけにはいかないのだよ)」

斑鳩の視線が彼女一点を捉え込む。

「カウントは5でいいか?」

「えぇ、問題ありません」

 

 

そして、カウントダウンが始まる。周囲の声はもはや何もきこえない。同時に斑鳩の血流が早まっていく。同時に、戦闘を求める衝動に掛けた手綱をいっぱいに引き絞る。相手はこの学園の一位ということで、僅かな躊躇を払い落し、二振りの剣を抜きはらう。最初から全力であたらねば失礼になる相手だ。

そして、二人とも中央のカウントには視線を向けなかった。しかし

 

「「――ッ!!」」

地面を蹴ったのは同時だった。沈み込んだ姿勢から一気に飛び出し、地面ぎりぎりを滑空するように突き進んだ。一気に直線で攻め込んで込む斑鳩。しかし、彼女はそれをあしらうかの如く回避するが――

 

ズギュンッ!!

 

コンマの差も無く、彼女に向けて元いた場所から絶対零度の冷気を極太のレーザーのようなものが放たれる。所謂偏光射撃だ。

その攻撃は、彼女の身体を擦るが、純粋な攻撃にはなっていない。

 

「ほぉ、いいだろう…面白いじゃないか」

獰猛な笑みを浮かべる彼女。そして、空中で棒のようなものを取り出してくる。斑鳩は、彼女に向けて、再びつっこんでいく。彼女もこちらの攻撃を読んでくるが、彼女の直前でくるりと身体を捻り、左手の剣を右斜め下から叩き付ける。だが、棒に迎撃され激しい火花が散る。

 

「面白い、面白いぞ!!棗斑鳩!!」

彼女もまた、こちらに向けて光弾を飛ばしてくる。それを連続した剣閃で全て打ち払い。そこから、彼女の懐に入り込むようにして彼女に向けて右の剣からコンマ1秒遅れで左の剣が襲いかからせる《ダブルサーキュラー》を繰り出す。だが、それを彼女は安々と防ぐ。

 

「(中々当たらないな…)」

彼女がその棒を剣のように扱いながらこちらに薙いでくる。彼女の小柄な体に棒が隠れて見えない。右へのダッシュの回避を試みるが、彼女はこちらに背中を向けそこから突きを繰り出してくる。

だが、瞬時に判断した斑鳩は、彼女の棒に向けてこちらは払いとのコンビネーションを繰り出す。ジェットエンジンのような轟音と紅い光が彼女の棒を払いのける。そこに全方向からのアブソリュート・ゼロを叩き込む。

 

「――ぬぅぅぅぅんッ!!」

彼女はその攻撃を避け、そのレーザー光線を受け止める。だが、片手であった。

「(抜けたか!?)」

だが、彼女もこれで終わるわけではない。今度は、先ほどの数百倍の光弾を打ち出してくるがその中にはダミーも含まれている。斑鳩は、直感的にそれら全て読み取り、こちらに脅威のあるものだけ叩き落とす。目の前の彼女に対して、片頬は真剣に、片頬は獰猛な笑みを浮かべて一気に斬りかかる。同時に激烈な加速感が斑鳩の全神経を逆撫でし、一気にトップスピードまで到達する。

 

「(俺には、綾斗みたいな力なんてない――だが)」

"あいつには負けない"。脳裏にはそのことしかない。同時に攻撃のギアを上げていく。もはやなんでもありだ。ズドドドドッ!!目の前の彼女に向けて巨大な闇のエネルギー球を飛ばし

 

「ヴォイド・ディストーション!!」

彼女の目の前で炸裂させる。そこに再び無数の風の刃を飛ばして彼女を攻撃する。

その瞬間、彼女の表情にちらりと"何か"が走った。

 

「(なんだッ!?)」

だが、考える余裕もなく。すべての防御を捨て去り、両手の剣で攻撃を開始する。

 

「――スターバースト・ストリーム!!」

両剣が星屑のように煌き、次々と剣戟を叩き込んでいく。飛び散る白光は、空間を灼くかの如き様だ。

 

「なんじゃと!?」

彼女が棒をつってガードする。斑鳩は、上下左右から攻撃を浴びせ続ける。

そして、最後の一撃の時だった。

 

「よかろう、久しく出していない本気、見せてやろう」

「――ッ!?」

彼女が獰猛な笑みを浮かべた瞬間、斑鳩の何かがブレた。技は完璧だった。しかし、何かが取られた、その感覚に陥る斑鳩。刹那

 

ドスッ!!

 

まるで一瞬にして、その事象を書き換えたのかと錯覚する斑鳩。斑鳩が認識した瞬間、彼の腹部に彼女の棒が触れていた。斑鳩の速度も十分あり得ないが、彼女も十分あり得ないといった速度をだしていた。

 

 

「――ふむ、こんなところかのぉ」

彼女がそういうと同時に、負けを悟った斑鳩は剣を収めた。

 


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