ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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アスタリスクと最弱の称号

「………い…、………い…」

遠くで誰かが呼ぶ声がする。

 

「…おい……おい!!」

誰かに呼ばれて意識が目覚めた。身体は相変らず馴染んでいないかのように動きが鈍いため、動きにくいがゆっくりと視界を空けると、そこには好青年の姿があった。深く、黒い、夜空のような瞳が印象的だ。

 

「おい?、大丈夫か」

身体を起き上がらせると、風を身体が撫でる心地よいこの肌の感覚は、どう考えても現実(リアル)の感覚だ。とはいえ面倒な事に巻き込まれると面倒な事になるので

 

「あぁ、大丈夫だ…すまん、ここはどこだ?」

「ここは?って、星導舘学園さ」

起きて周囲を見渡すと近代的で開放的な高層建築が視線の先に見える。

 

「(星導舘学園だと?)」

起こしてくれた彼の胸元には、校章は不撓の象徴たる赤い蓮の花である赤蓮がある。

見れば自分の胸元にも同じような校章がある。その青年はなぜか焦っている。

 

「あんた、大丈夫なのか?」

「大丈夫か、って?どういうことだ?俺はこの通りぴんぴんしているが?」

「本当か?あんた、空から降ってきたんだぞ?」

「空から?」

その青年は空を指す。

 

「…マジかよ、なんかの勘違いじゃないのか?」

「勘違いって言われてもな…」

頭をポリポリと掻く青年。

とりあえず立ち上がってみるが、特にこれといった痛みなどはない。少年はとりあえずこのままだと誤解を生みかねないと思い、自己紹介をする。

 

「俺の名前は棗 斑鳩、あんたは?」

「俺は天霧 綾斗、斑鳩でいいか?」

「あぁ問題ない、綾斗でいいか?」

「あぁ、問題ない」

お互い握手を交わし立ち上がる。そんな中、この学園のと思わしき手帳が落ちた。

「手帳か…」

拾ってみると自分の名前と二つ名の所に、こう書かれていた"ザ・ワースト・ワン"と

 

「(学園最弱(ザ・ワースト・ワン)か…)」

手帳ををポケットにしまい歩き出す。綾斗と肩を並べて歩き出す。

 

それから数分後、空中をふわりと何かが舞ってきた。

「…風にでも飛ばされたのかね?」

「そうじゃないのか?」

隣にいた綾斗は舞い降りてきたそれを反射的につかんでいた。

 

「ま、唯のハンカチか」

可愛らしくも不器用な花柄の刺繍から見るに、どうやらハンドメイドのようだ。しかもほつれ具合や繕い直したような跡からみてどうやらとても大切にされているようなものみたいだ。

 

「どう考えても捨てられたものじゃなさそうだな」

周囲を見渡す綾斗と斑鳩。綾斗は、それを丁寧に折りたたみポケットにしまい込み歩き出そうとしたが

 

「――えぇい、よりにもよって、どうしてこんな時に…!」

耳を澄ませると鈴のように透き通る声。声の場所を見ると、遊歩道のようなところから一歩奥まった場所に立つ、清楚でクラシックな造りの建物が見えた。どうやらその建物の一室からのようだ。

 

「とにかく、遠くまで飛ばされないうちに追いかけねば……!」

どうやら、"ビンゴ"みたいだ。

 

「綾斗、あそこみたいだぞ」

「四階か、まぁ、足場もあるし問題ないかな?」

「行くのか?」

「あぁ、少し届けてくるよ」

「わかった、待ってるぜ」

そういうと二メートルの鉄柵があったが、それを助走もなしに軽々と飛び乗り、そこから手近な木の枝へと手を掛け、ひょいひょいと登っていき、その部屋の窓際に飛びうつり、猫のように身を丸め、ほとんど音を立てずに着地する。

 

「ふーん、あんなことが出来るのか?」

そう思いながらいると

 

「ご、ごめん!いや、あの、俺は別にそんなつもりじゃ全然なくて!」

「(あっ、地雷踏んだか?)」

そう思いながらいると

 

「いいから、さっさと後ろを向け!!」

有無を言わさせないその口調。

 

「(まぁ、これはありがちな展開か)」

状況が手に取るように予想できる斑鳩。そんな中、微かな熱風が斑鳩の肌を撫でる。

 

「(――一応、用意しておくか…)」

何のためらいもなく指を鳴らすと、その場に黒い剣が現れる。

 

「…おう、マジか」

出てきたのはエリュシデータ。その直後、

 

「――咲き誇れ、六弁の爆焔花(アマリリス)!!」

直後轟音が鳴り響いた。


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