ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

21 / 102
レスター&沙々宮

「おめでとうレスター、退院したんだね」

「あぁ、おめでとう」

斑鳩は綾斗と一緒に祝辞を述べる。

 

「……まあな、あれくらいの傷どうってことねぇよ」

「で、今日はどうしたのさ?沙々宮と一緒だなんて」

「あぁ、このちんちくりんは途中で拾っただけだ、なんか知らねぇが道に迷ってたみたいだし、どうせ行く場所が同じだったからな、まぁ、ついでだ」

「誰がちんちくりんか、でも連れてきてもらって助かった、ありがとう」

「(おう、これは地獄耳ってやつだな」

沙々宮が不意にこちらへ顔を向け、そう言ったら再びユリスと不毛な口論を再開し始める。

 

「そういや、行く場所が同じだったって、レスタ―も俺たちに何か用が?」

「ん、そうだな、それは気になるな」

するとレスターは眉間のしわを深めて、少し視線を反らす。

 

「あー……なんだ、その、サイラスの件なんだが…一応、アレだ、まぁ、結果的にとはいえ――助けてもらったことには違いねぇようだから、な、その、礼っつーか、ケジメっつーか、まぁ、それをだな」

そして彼はそこまで言うと小さく頭を下げ

 

「と、とにかく世話になった!それだけだ!邪魔したな!」

「わっ!ちょ、ちょっと待ってよレスター!」

言うだけ言うレスターを引き留める綾斗。

 

「そうだ!ちょうど、タッグ戦の訓練相手を探していたところだったんだ、レスタ―、良かったら手伝ってくれないか?紗夜も一緒に?」

「訓練相手だと?」

「う?」

レスターと紗夜とユリスが揃って綾斗に視線を向ける。

 

「こ、これ綾斗!何を勝手に…!」

「いんや、いいんじゃないのか?今まで三人でやっていたが、本当の実力を二人は知らないからな――」

「本当の実力?」

「そういうことだ、今まで俺が負けたことなかっただろ、技術とコンビネーションは上達しているが、とはいえ、俺に二本目の剣を抜かせていないからな、正確な実力を知らないと策を講じれないだろう」

「…確かに、そうだな」

ユリスを言いくるめ、再度二人を見ると沙々宮はあっさりとうなずく

 

「私は別に構わない」

「…しかたねぇな」

そういう頬をかきながら言うレスターであった。

 

 

 

「ほぉ、これはまた新鮮なものだな」

フィールドの端っこでレスター&沙々宮とユリス&綾斗の戦いを見ている斑鳩。

「どうしたどうした!その程度かよ!!」

果敢に綾斗を攻め立てるレスター。しかし、レスターとの間に複数の火球が割って入った。

 

「ちっ、いいところで」

「ふぅ…助かったよユリス」

「くそっ!相変らずちょこまかと…おい、ちんちくりん!てめぇもちゃんと仕事をしやが――」

そういうとレスターが背後の紗夜へと視線をやってそのまま固まった。いや、ユリスも綾斗もだ。

 

「…仕事なら今からやる」

見れば構えていたのは銃というより砲だ。しかものその砲身は優に二メートルを超えている。

 

「三十九式煌型光線砲(レーザーカノン)ウォルフドーラ――掃射」

緊張感のない声で紗夜っがそうつぶやいた途端、低い唸りを上げて光の奔流が迸った。

 

「ちょっ、待て!」

うろたえるようなレスターの声を聞きつつ、綾斗は身を伏せる。

 

「(――ッ!?)」

その光の柱は、一気に壁に向かっていくが、このままでは壁が一気に吹き飛ばされかねないので

 

「ったく、手間をかけさせやがって!!」

そういうと、沙々宮の砲身の直線状に立ち、壁と光線の間に瞬間的に身を入れ、右手をひるかえし、

 

「プロテクション!!ホーリー・ランス!!」

斑鳩は光線の柱から壁を守ように障壁を展開させ、相殺できるレベルの光線をぶつけ合う。

 

「――っと、間一髪かな」

掃射が止み、振り返ってみるが、何とか無傷と言ったところだった。

 

「沙々宮、やりすぎだ」

「…まさか、防ぐなんて」

その場にいた綾斗とエリスとレスターは二つの意味で驚いていた。一つは、まぎれもなく沙々宮のその攻撃。そして、もう一つはそれから完璧に守った斑鳩の実力だ。

 

「――間一髪、ってところですね」

聞き覚えのあるゆったりとした声が響いた。聞き覚えがあると思ったらこの学園の生徒会長であるクローディアであった。

 

「このトレーニングルームはあなた方《冒頭の十二人》に貸し出しているだけで、学園の設備であることはお忘れなく」

「……わかっている、次からは気を付ける」

「なら、結構」

そういうと面白い人物がやって来た。

 

「いやー、でもびっくりしたよねえ、カミラ、まさかいきなり壁が吹っ飛ぶなんてさー変わっているって意味じゃうちも相当なもんだと思ってたけど、やっぱり他所は他所で面白いわねー」

「あぁ、もう、あまりはしゃぐんじゃないエルネスタ、頼むからこれ以上面倒をかけないでくれないか」

現れたのは、アルルカント・アカデミーの生徒だった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。