ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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班目という存在

翌日――早朝

 

 

「おはようございます、棗先輩」

「おはよう、刀藤さん」

昨日の返ってからの連絡でどうやら早朝訓練にも付き合ってくれることになり、待ち合わせの時間を設定し、その時間の五分前に到着すると、もうすでの彼女の姿があった。

当然の如く、可愛らしいトレーニングウェアだ。

 

「さて、それじゃあまずはストレッチでもしましょうか」

「はい」

そういうと、普段できない二人一組のストレッチをし始める。とはいえ――

 

「(これで…13歳…だと)」

彼女が身体をゆするたびに、彼女の胸も合わせて弾む。その目のやり場に困る。そんな中だった。

 

「そういえば、先輩は朝、どんなコースを走っているのですか?」

「ん、まぁ、外に出て屋根走りかな?」

「ッ!?!?!?!?」

理解に苦慮している綺凛。無理もない。前代未聞なことだからだ。

 

「あの棗先輩、普通に走られたりしないんですか?」

「いや、ぶつかるからねー、それよりか屋根上は誰も人がいないから、一気に速度を上げられるんだよ」

「は、はぁ」

そう言いながらストレッチを進めていく。

「ちなみに、刀藤さんは?」

「私は、学園の外に出てアスタリスクの外周をぐるっと周回するようにしています」

「へぇ、じゃあ、今日はそれをやってみようか」

「わかりました、じゃあ、私が先行しますね」

「えぇ、お願いするよ」

そういうと、彼女が先導するように走り出した。

 

 

 

 

それから、とりあえず外周を走り終わり、沿岸の公園で一息ついていた。

 

「お疲れ様です、先輩」

「あぁ、お疲れ、刀藤さん」

お互い草原に腰を掛けている。すると、腰から未だにこの世界に来てから一度も使ったことのない黒いカードが落ちた。

 

「先輩、何か落ちましたよ」

「ん、あぁ、ありがとう」

そう言いながらカードを拾う斑鳩。

 

「先輩、それなんですか?」

「これ?このカードなんだけど、使い方が分からなくてね、使っていないんだよ」

「使い方がわからない?」

「うん、わからないんだよー」

「先輩、少し見せてもらっていいですか?」

「あぁ、いいよ」

そういうと、そのカードを彼女に渡すと彼女がガタガタと震えだす。

 

「と、刀藤さん、なんかあった?」

「せ、先輩、こ、これ、ブ、ブラックカードです」

恐る恐るカードを返してくる彼女。

 

「ま、マジか!?」

「お、おう、ちなみに使い方は?」

「多分、最寄りの金融機関に問い合わせればいいと思います、そうだ」

「ん?」

何かを思いつく彼女。

 

「折角ですし、一緒に行きましょうよ」

「お、おう」

そういうと、彼女は立ち上がり歩き出す。斑鳩も彼女に先導されるように歩き出す。

そして行政地区に向かっていった。

 

「先輩、手続き慣れていますか?」

「いや、慣れていないな(そもそも、やったことないな)」

「わかりました、お手伝いしますね」

「あ、あぁ」

それから、彼女は斑鳩を先導しつつ手際よく手続きを終え、1枚の紙を渡してくる。

 

「これは?」

「えぇ、カードに関する情報です、これでそのカードが使えますよ」

「ありがとう、刀藤さん」

「いえ、慣れっこですから」

「(訳は聞かないでおこう)」

と思いながらいながら、その紙を見るとその金額に思わず目を疑った。無理もない。記載されていたのは、某資本主義筆頭国家の予算3年分の金額なのだ。その証拠に零が14個ついている。とはいえ、身に覚えがないという金額というわけではない。これは前の世界でのゲーム内での自分の所持金額と一緒だ。

 

「(いや、これは不味いって・・・)」

そう言いながら、速攻で近くの金融機関でカードを分割して預けこむ。そこから1年間最低生活できるだけどお金を引き出し、あとは預ける。そんな中、あることに気付く。

 

「(そういや、あいつ――あんなことを言っていたな…)」

と友人の言葉を思い出す斑鳩。

 

「先輩?」

「あぁ、ちょっと待っていてくれ」

そういうと、リーゼルタニアの孤児院への寄付金として、0が12個つく金額を"班目鴉(マダラメカラス)"として寄付したのであった。

 


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