ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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決意、そして分かれ道

綺凛との一戦があってから数日後――

斑鳩は、綺凛を連れて沙々宮とユリス、そして綾斗と一緒に鳳凰星武祭に向けて練習をしていた。

 

「斑鳩、案内ありがとう」

「いいさ、にしても、綾斗と一緒じゃなくていいのか」

そんな中、休憩もかねて斑鳩は沙々宮とドリンクを買いに校舎内を歩いていた。

 

「リースフェルトに負けるのはなんともいえないけど、これもジャンケン、しょうがない」

「まぁ、俺もジャンケンで負けたしな…」

二人で廊下を歩いていく。

 

「あの服装は…」

やって来たのは、アルルカントのカミラだった。

 

「どうも、カミラさん」

「あぁ、久しぶりだな《絶天》」

上から目線の物言いの彼女。そんな中、カミラは沙々宮の持つ煌式武装へ留まった。

 

「ふむ、これは面白いね、ずいぶんと個性的な煌式武装だ、コアにマナダイトを二つ……いや、三つかな?強引に連結させて出力を上げているようだが――なんとも懐かしい設計思想だ」

「……正解、なぜわかった?」

沙々宮が珍しく驚いた表情をする。

 

「わかるとも、私の専門分野だからね、しかし、言わせてもらえれば、あまり実用的な武装とはいいがたいな」

「複数のコアを――」

とつらつらとカミラが述べ始める。もはやこの領域になるとオタクの域だ。沙々宮は話しについていけてるが斑鳩は文字通りさっぱりの状態で。

 

「(…ロボス遷移方式とか…何言っているかわからない)」

そんな中だった。

 

「……それは事実」

悔しそうに唇をかみながらも、まっすぐにカミラをにらみ返す。

 

「――だが、それでもお父さんの銃を侮辱することを私はゆるさない、撤回を要求する」

「お父さん…?ああ――もしやキミは沙々宮教授のご息女なのか?」

彼女から聞こえたのは懐かしむ響とあざけるような響きだ。

 

「だとしたら?」

「ますます撤回するわけにはいかなくなった」

そういうと、肩を竦めるカミラ。

 

「沙々宮教授はその異端さ故にアルルカントを、そして我らが<獅子派>を放逐された方だ、武器武装は力であり、力は個人ではなく大衆にこそ与えられなければならない、それこそが<獅子派>の基本思想であり、私はその代表として彼の歪さを認めるわけにはいかない」

「……」

一歩も引く気はないという顔でにらみ合う二人。そんな中

 

「ごほん」

わざとらしく咳ばらいをする斑鳩。

 

「……悪かった」

そういうカミラ。そういうと、彼女はその場を去って行く。

 

「……」

カミラの猿姿を険しい顔つきで見る沙々宮。そんな中、彼女はこちらを見据え

 

「斑鳩、お願いがある」

「なんだ?」

「私とタッグを組んで、鳳凰星武祭(フェニックス)に出てほしい」

特に驚きというわけではないが、彼女の言いたいこともわかる。それに今のカミラの態度は個人的にも腹がたったので。

 

「あぁいいぜ、よろしく頼むぞ」

「うん」

そういうと拳を軽く付き合わせた。

 

 

 

 

 

数日後――

 

「あ、あの《絶天》の棗斑鳩先輩ですよね?」

昼休み、北斗食堂のテーブルで斑鳩は綾斗と英士郎の中の良い面子と昼飯を取っていた。そんな中、栗色の紙をした活発そうな女性とが満面の笑みで話しかけてきた。

 

「まぁ、そうだけど?」

「あの、サインをもらってもいいですか?」

そういうと色紙と色ペンを渡してくる。

 

「…俺のサイン?大してかっこよくないよ?それでもいい?」

「えぇ」

勢いを思いっきり殺したが、とりあえず渡された色紙に名前を書いて渡す。

 

「ありがとーございまーす!《鳳凰星武祭》がんばってくださいね!応援してますから!」

サインを受け取った女子は大きく手を振って去って行く。

 

「はははっ、人気だね斑鳩も」

「んー何が好きでサインなんかもらっていくんだが…俺にはわからないよ」

うどんをすすりながら言う斑鳩。そんな中だった。

 

「相変らず人気そうだな、斑鳩」

「ちょっと愛想がよすぎるぞ、斑鳩」

お盆を持ってやって来たのはユリスと沙々宮だった。

 

「おぅ、悪い、あつものだったから先に食べ始めていたぞ」

「いいさ」

そういうと、二人も向かいの席に座り飯を食べ始めた。

 


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