ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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魔女《ストレガ》

「にしても、まぁ、オークションに俺のサインも結構高値で出ていたな」

「あー、学生のポピュラーな小遣い稼ぎの一つだな、よくあるよくある」

英士郎が斑鳩の肩を軽くたたいてくる。

 

「まぁ、気にしないほうがいいだろうね、ちゃんと応援している斑鳩のファンだっているだろうし」

「そうだな」

とカレーを食べている斑鳩。

 

「ああ、そういえば二人も参加確定したんだっけ?」

綾斗も沙々宮と斑鳩が組んだということには驚いていた。先日、出場枠に欠場が出たので無事参加が決まった。

 

「無論、その時は全力で迎え撃つ所存」

「やるからには別だ――誰であろうと立ちはだかるならなぎ倒す」

鋭いまなざしを綾斗に向ける。

 

「ふふっ、まあ、そうでなくてはな」

「できれば決勝以外で当たらないことを祈るよ」

「あぁ、そうだな」

そういうと、斑鳩は立ち上がる。

 

「斑鳩、どうしたの?」

「ん、午後の昼寝ってところさ、んじゃあ、後でな」

「うん、待ってる」

沙々宮の肩に軽く手を置き、その場を離れる。それから、人目を避けて通信端末を開く。

そこには、物騒なメッセージが一通あった。

 

「(この手のことは一括してあっちに任せたんだがな…)」

斑鳩が鮮やかに綺凛に勝利しこの学園の一位になってから早一週間、こうしたことは珍しくもなくなっていた。幸い学園にはそういった部分をフォローしてくれる部署があるらしいが

 

「(通したってことは、クローディアの差し金ってところか…)」

彼女にもいろいろとあるのだろうと思いながら、斑鳩は学園の外に出てメッセージの指定された場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

指示された通りやって来たのは、再開発地区の所謂廃棄物処理場跡地だった。

 

「(…なんだ、ここ?)」

周囲の様子がおかしかった。無理もない。このあたりの木々が残らず枯れているのだ。あるのは、産業廃棄物だけ。そのごみの山の中央に人影が一つぽつんと佇んでいる。

 

「――誰?」

レヴォルフの制服を着ているが、それ以外は肘まで覆う長い手袋と白タイツだけ。そして、その静かな声は凍てついているかのように冷たく、地の底からでも響いてくるかのような暗くうつろだ。

なにより印象的なのは、まるで雪のように真っ白い髪と紅玉の双眸だ。まさに紅い月だった。

 

「…誰って、棗 斑鳩ですけど」

「そう…」

同時に、巨大な星辰力が膨れ上がる。その量たるや尋常ではない。まさに無限としか言いようがない。

 

「――ッ!?」

空気が震え、全てをねじ伏せ、押しつぶすかのような凶悪な威圧感が放たれる。確実に戦闘になると察した斑鳩は、すぐさま身構える。

 

「(なんだよ…ありゃ)」

彼女の足下から煙のように昇り立つ無数の腕が亡者のそれの如く蠢いている。

 

「(あの腕にクロスレンジで挑むのは、危ないだろうな…)」

そういうと、ライトニング・アローを彼女のその腕にめがけて放つ。

だが、毒々しい黒褐色のその腕によって止められる。斑鳩は、間髪入れずにウインド・カッターで風の刃を作り出し攻撃していく。物理的効果はない物の瘴気を少なからず飛ばす。

 

「(風系の《魔女》ってわけか…)」

とはいえ、止まるわけにはいかないので斑鳩は、懸命に攻撃を加えていく。

 

「なぁ…お姉さん、引いてくれないか?」

「今の私とあなたの運命は、ここにある、もしあなたがどうしても私を従わせたいというのなら――」

「実力行使でやってみろってか、極めてわかりやすいことだな」

「そう貴方には何も罪はないけど、ここで堕ちなさい」

「なら、やってみろ!!」

ほんの一瞬、彼女の顔が興奮に変わるが、すぐさま表情が戻る。

とはいえ、先ほどからあの触手もどきのようなものに攻撃が阻まれる。

「(うにょうにょしやがって…)」

心の中で舌打ちする。彼女の毒を察知し、一応風の魔法で防いでいるが、今後どうなるか分からない。

 

「(無味無臭の神経毒といったところか…)」

状況を冷静に考察するが、彼女は依然佇んだままだ。それが妙に腹が立つ。そんな中

 

「――あなたの運命はか弱い…だから」

彼女が物憂げに眉を寄せ、その右手を握り締める。そして、彼女の周囲から瘴気が沸き上がる、

 

塵と化せ(クル・ヌ・ギア)

彼女がつぶやくとその黒褐色の腕は地を這うように素早くこちらに飛んでくる

 

「――ッ!!」

デッドリー・シンズの7連撃攻撃でその腕を八つ裂きにする。

 

「防がれた…」

表情は変わらないもののほんの少し声音には驚きが混じっている。同時に嬉しさも

 

「(迷っていられそうにないな…)」

スカーレットファーブニルを取り出し構える。すると、彼女の毒を取り込んで一気に燃え上がる。

 

 

 

「――《魔女裁判》の時間だ!」

斑鳩は凄みをつけて言った。

 


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