ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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プリシラ・ウルサイス

本戦抽選日――

 

斑鳩は特にやることもないので、綺凛と二人で商業エリアをふらついていた。といっても、《鳳凰星武祭(フェニックス)》で有名になったので一応変装して街に繰り出していた。といっても、余り無駄遣いしない人間なのでウィンドショッピングなのだが。

 

「にしても、ほんとに人が多いな~」

「まぁ、《鳳凰星武祭(フェニックス)》ですからね~」

と脳天気に歩いている斑鳩と綺凛。そんな中、斑鳩の携帯端末が鳴った。

 

「…おいおい、綾斗からだよ」

「天霧先輩からですか?」

「あぁ――もしもし……なに、沙々宮が迷子になった!?そんで…まぁ、そういうことね、ん、わかった、こっちで探すよ」

いくつか言葉を交わして電話を切る。

 

「…何か、あったんですか?」

「あぁ、どうやら沙々宮も商業エリアに来ていたらしいのだが、いつの間にかふらふらしていたら迷子になってしまい、綾斗に助けを求めてきたらしんだが、クローディアと一緒らしく本戦抽選会であまり身動きが取れないらしい。それで、商業エリアにいるであろう俺らにってところだ」

 

「あらら…んじゃあ、探しましょうか」

「だな」

綾斗から送られてきた通信端末とシグナルと共に、斑鳩と綺凛は商業エリアのはずれに向かった。

 

 

 

 

「さて、たぶんこの辺りだろうな」

斑鳩はそういって、街並みをぐるりと見まわす。二人はアスタリスクの西部に来ていた。

 

「ここからは足で探すか」

「そうですね……」

綾斗の指示で紗夜には、そこから動くなと厳命しているので捜索範囲が広くなることはないと思う。

 

「とりあえず手分けするか」

「はい、それじゃあ私は向こうを見てきますね」

「あぁ、頼んだよ、綺凛ちゃん」

「はい!」

そういうと、小走りで走っていく綺凛。それから、路地を一つずつしながら探していると

 

「――」

路地の先から人の声らしきものが聞こえてくる。耳を澄ますまでもなく斑鳩は気配を消して走り出す。

そして、様子を窺うと、そこには複数の男たちに取り囲まれている女の子がいた。

 

「(おいおい、あれは…)」

女の子は見覚えがある顔。というより、色々と世話になった顔だ。無理もない女の子はプリシラ・ウルサイスなのだ。

 

「おいおい、あんまりわめいてくれんなよ、面倒くせーのは嫌いなんだ」

「そうそう、まぁ恨むんならおまえのねーちゃんを恨むんだな」

「んー!んんー!!!」

「(ま、こういうのはほっとけないものでね…」

そういうと、派手に音を鳴らして姿を現す。

 

「な、なんだてめぇ!!」

「ただの通り過がりなんだけど――っと、おやプリシラさんじゃないか」

斑鳩は彼女に視線をやる。

 

「あぁんッ!?テメェ知り合いか?」

「まぁね、その子、放してもらえないかな?」

「突然割り込んできてふざけたことぬかしてくれるなぁ、兄ちゃん」

こっちを睨みつけているが次々と煌式武装を起動させる連中。

 

「さて、ならべく穏便に行きたいところだが、そちらが刃を向けた以上――報いは受けてもらうぞ」

そういうと、斑鳩はファイティングポーズを取る。すると、何人かの連中が飛び来んでくる。

 

「(さて、ここでお披露目になるとはな)」

斑鳩は、彼らの鼻元に手をかざすと飛び込んできた連中が一瞬で倒れ込む。そして、間髪入れずにプリシラを取り巻いている面々を気絶させる。

「さて、逃げましょうか」

「あ、あの…!?」

どうやらこちらの騒ぎに気付いたらしい。土地勘のない斑鳩にとってはここは非常に面倒なフィールドなので彼女の手を引いて走り出す。そして、少しだけ走り

「んじゃあ、跳ぶからしっかり掴まっていてね」

彼女を抱き寄せ、一気に建物の屋上まで飛び上った。

 

「さて、大丈夫かい?」

「い、いえ、とんでもないです!危ないところを助けていただき、本当にありがとうございました」

「いいさ、それより君のお姉さんと連絡取れるかい?」

「あぁ、もちろんです」

斑鳩は彼女が通信している間に、下に罠をまき散らす。

 

「あの、棗さん」

「ああ、ごめん、お姉さんと連絡はとれた?」

「はいっ、すぐに迎えに来てくれるそうです」

「そっか、まぁ、これで一安心だろうな」

耳を澄ますと、眼下の生徒たちはバタバタとまるで毒ガスでもまかれたかのように倒れていく。

 

 

「さて、どうして一体あんなことになったんだい?」

斑鳩は彼女に話を聞くことにした。

 


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