「さて、どうして一体あんなことになったんだい?」
「あの人たちは、
「歓楽街?」
「えぇ、再開発エリアの一部に非合法のお店が集まっている場所があって、そこの通称なんです」
「へぇ~もしかして、そこで姉がやらかしたと?」
「えぇ、あ、あの、でも誤解しないでくださいね!お姉ちゃ――あ、姉は確かにちょっと乱暴で気が短いところもありますけど、本当はすごくすっごく優しい人なんです!」
プリシラは腕を振りながら熱弁する。
「そうなんだ、あぁ、今更だけど俺は棗斑鳩、よろしく」
「プリシラ・ウルサイスです」
差し出した手を握り握手する。すると
「おい、そこでなにしてやがる」
鋭い声と共に、背後から猛烈な殺気が斑鳩へと叩き付けられる。斑鳩は振り返ると、そこには鎌を構えたイレーネが虚空に浮かんで立っていた。
「お姉ちゃん!」
「……まさか、プリシラに手を出したんじゃねぇだろうな?」
「ち、違うよ!さっき言ったでしょ!棗さんは、私を助けてくれたんだってば!」
「黙ってなプリシラ、大体なんで「イレーネ、少し落ち着きなさい」なぅ!?」
聴く耳を持たないイレーネが一気に飛びのく。其処にいたのはまたもやオーフェリアだった。
「お、オーフェリア!?」
「久しぶりねイレーネ、とりあえず落ち着きなさい」
「は、はい」
冷や汗を浮かべながら両手を前へと突き出し、首を縦に振って武器を収める。
「ったく、なに面倒な事に首つっこんでんのよ?まぁ、プリシラちゃんを助けてくれたことには感謝するわ」
そんな中、イレーネはこちらを向き
「ただ――あんたには二つ程聞きたいことがある」
「……お姉ちゃん?」
「イレーネ?」
「ヒィゥ!?聞くだけだ、聞くだけだ!手は出さねぇよ!それならいいだろう?」
「よし」
「うーん…別にいいよ」
「一つ目、ここの下で転がっていた連中はあんたがやったのかい?」
「まぁ、そうだ」
「…そうか、それであんたはこの通りを偶然通りがかったらしいが、何の用があってさ?」
「それは――っとそうだったな」
通信端末を開くと、そこには紗夜と綾斗の顔が映し出される。
「綾斗見つかった?」
『まぁね、綺凛ちゃんも一緒だよ』
「そうか、んじゃあ、後で合流だな、追って場所は連絡するわ」
『ん』
連絡を終え二人に向き直る
「まぁ、ちょっと迷子になった友人を探していたのさ」
「――だってさ、お姉ちゃん」
得意げにいうプリシラに対して、大きく息を吐いて肩を落とすイレーネ。
「ちっ、わかったよ、借りができちまったな」
「別にいいさ」
そういうと、斑鳩はその場を立ち去った。
翌日の夕刻――
斑鳩は、プルシラよりどうしてもお礼がしたいということで、彼女が指定した場所に出向いていた。そして、目の前にはそこそこ高級のマンションがある。
「(招かれたというからどこかの店と思えば…まぁ、マンションか…いやいやいや)」
斑鳩は意外なものに対して豆腐メンタルを発揮していた。無理もない、斑鳩の人生で初"女の子の部屋に招待された"のだ。以前の世界ならこんなこと考えられない。故にガチガチに緊張している斑鳩。どうやら、完全に及ばれされたらしい。
それから指定された部屋に向かうと、あっさり扉が開き、エプロン姿のプリシラが満面の笑みで迎えてくれた。その行動に思わずドキりとする斑鳩。
「いらっしゃいませ!さぁ、遠慮せずにあがってください、すぐにお料理の用意をしますから」
部屋に入る斑鳩。綺麗に片づけられたリビングにテーブルセットがあり、椅子の一つに仏頂面のイレーネがいた。流石にジーンズにTシャツというラフな格好だ。
「……よぉ」
「お、おぅ」
ちなみにガチガチなのは斑鳩である。そんな中、こちらに気付いたイレーネが少しニヤリと笑い。
「お前、緊張しているのか…?」
「まぁな…だって初めてだし」
そういうと、イレーネはこちらを一瞥し笑う。
「ハハハッ、星導舘の一位様にこんな弱点があったとわな~にしても顔紅いぞ」
「わ、わーってる」
完全にからかわれている斑鳩。
「可愛いじゃねぇか…このギャップ癖になりそうだ」
辞めてくれと言わんばかりのものだ。
「お待たせしました!」
とそこへプリシラが料理を運んできた。