ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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ユリスの思い出

「んー、どんなと言われましても、特に今と変わりませんよ?」

少し考えた後話し始める彼女。

 

「フローラ達と一緒に居るときはやさしくて、暖かくて、お城に居るときは凛々しくてかっこよくて――だから、今とおんなじです」

「へぇ~」

「へえ~」

綾斗と斑鳩の声が重なる。

 

「あ、そうだ!なんでしたら写真を観ますか?」

「写真?」

「あい!フローラのケータイには孤児院で撮った写真がいっぱい入っていますから」

そういうと、彼女は携帯端末を取り出す。

 

「いや、もうそのくらいでいいだろうに」

「…ほほう、それは興味深い」

「実に興味深い」

「わ、私もちょっと気になります」

上から沙夜、斑鳩、綺凛である。それから、次々と空間ウィンドウを展開していく。

 

「――っと」

写真の中の一枚、かなり際どいのあったので、慌てて視線を逸らす。

直後、声にならない悲鳴を上げたユリスがフローラから携帯端末を奪い取り、一瞬にしてすべてのウィンドウを閉める。

 

「(うん、今のはヤバかったな)」

流石にバスタオル一枚はということだ。

 

「…それにしても、こんなに小さい子を一人で寄越すのは少々問題」

と話題を変える沙夜。確かにもっともなところである。

 

「兄上は私同様、自由にできる資金はあまり持ち合わせていないのだ」

「統合企業財体でってところか?」

「あぁ、そういうことだ、従順な分、それなりに融通が利く、《星武祭》のチケットまでならその伝手でどうにかできよう、が、移動費用や滞在費まではおそらく無理だ、シスター達が捻出したのだろうな」

 

「…あい、こつこつ貯めていた蓄えから出してくれたみたいです、ただ、やっぱり一人分が精いっぱいで…それで誰か一人を選ぶなら一番フローラが適任だろうって」

しょんぼりと落ち込んだに見えたが

 

「だけどフローラは一人でも大丈夫です!これでも姫様と同じ《星脈世代》ですし、いずれフローラも学生としてこのアスタリスクに来るつもりですから!そして姫様みたいに孤児院のみんなを助けるんです!」

 

「へぇ、すごいな」

感心する斑鳩。見れば綾斗もみたいだ。

 

「なら、折角だ、フローラちゃんの移動費と滞在費くらいはこっちで持つよ」

「「なっ!?」」

「ま、まて斑鳩」

斑鳩の申し出にユリスとフローラの驚く。そして、リースフェルトが止めに来る。というか、周囲にいた面々の顔が一色になる。

 

「未来の後輩に投資ってやつさ」

「いいのか?」

「いいんだよ、トップになってからの特別報奨金が多少余っているのでな、それに俺とリースフェルトの仲だ、こんぐらいはな」

「…かたじけない」

申し訳なさそうに見てくるリースフェルトを宥めるように言い、

 

「いいさ」

と軽く決定し、カードを切る斑鳩。

 

「にしても、まだそんなことを言っているのか…お前がそんなことをする必要はないと言っているだろう?」

 

「でもでも、フローラだって、みんなのお役に立ちたいです!」

「まぁ、その心意気はいいだろう、最後に会った時も言った筈だぞ、私は必ずおまえたちを助け、あの国を変えてみせる、そのために全ての《星武祭》を制してくるとな…それとも、私はそんなに信用ならないか?」

「そ、そんなことないです!」

「うむ、ならばよし」

満足そうに頷くリースフェルト。

 

「流石はリースフェルト、目標も高く大きい」

「だが、そうは問屋が卸さないよ――少なくとも俺らが勝たせてもらうよ」

とまるで息を合わせた様に言う沙夜と斑鳩。

 

「おおー、斑鳩様と沙々宮さまは、姫様達のライバルなのですねっ」

「ま、そういうところだ、どうせぶつかるとしたら決勝だ、まずはお互いそこまで勝ち進まなければならないがな」

組み合わせ上、綾斗ペアと闘うことはできないというか別ブロックだ。

 

「ほほう、それは頼もしいな、ということはアルルカントの人形どもを攻略する術も準備万端というわけか?」

 

「それは本番でのお楽しみ――それよりそっちは?」

沙夜が斑鳩を一瞥したあと綾斗に視線をやる。

 

「こっちはこっちでどうにかするさ、明後日には綾斗も全力を出せるようになるし」

「綾斗の本気か…期待しているぞ」

そういうと、お互い今後のことを軽く打ち合わせをし、その場で解散となった。

それから、斑鳩は誰もいない部屋に帰るのも癪なので、少しふらついてから帰ることにした。

斑鳩は足を、歓楽街の方に向けた。

 

 


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