「それで、その試合の結果は?」
「――天霧遥の負けだ」
その瞬間、綾斗の身体がぐらつく。それをユリスが支える。
「ちょっと待ってくれ、今負けと言ったが、どっちで負けた」
「…テメェは本当に頭が回るようだな」
斑鳩を一瞥しながら言うディルク。
「死んでいなかったみたいだぜ、その後はどうなったか迄は知らねぇがな、オレが天霧遥を見たのはその一度きりだ」
「そう、ですか……」
綾斗はこの状況下ではそう答えるのが精いっぱいだ。一方斑鳩は、どうも腑に落ちないところがあると言った顔をする。
「そんじゃあ、次はオレから質問させてもらうぜ――てめぇ、マディアス・メサとはどういう関係だ?」
「……え?」
何を聞かれたのか分かっていない綾斗。
「マディアス・メサって、あの運営委員長の?」
「……ふん、どうやらしらばっくれてるわけじゃねぇようだな、ならいい」
そういうと指を鳴らし、車が止まりドアが開く。
「話は終わりだ、さっさと失せろ」
「えぇ」
そういうと、聞き分けの良い子犬のように今にもかみつきそうなユリスを連れて斑鳩は綾斗と共に降りる。
降りた場所は星導舘学園の近くの埠頭だった。
車に降りると、物凄い不機嫌そうなユリスが斑鳩の目の前に立ちふさがった。
「――斑鳩、次々と私を妨害するようだが、どういう意味だ?」
「簡潔に言うと、お前の質問はあしらわれるのが分かりきっていた、それだけだ」
「…では聞こう、私が最後に《
「"どうしてあの場所が分かった"、だろ?」
「ッ!?」
まさかという表情のユリス。斑鳩は言葉をつづける。
「お前の言いたい事はわかるが、あの《
「俄然説得力があって反論できないのが悔しいところだ」
理解したのか、ユリスは綾斗に向き直る。
「綾斗……お前、本当に大丈夫か?」
「……あぁ、大丈夫だよ」
心配そうなユリスの声。この時、斑鳩は、心のどこかで動こうという決心をつけた。
しかし、その前にやることがある、斑鳩はフェスタでの"相棒"に連絡と事情を暈してつける。帰ってきた返事はすぐに動くだった。
翌日――
「――少しはマシな顔つきになったみたいだな」
準々決勝。斑鳩は空間ウィンド越しにユリスと同じことを言っていた。
『まぁ、なんとかお陰様でね』
『腹をくくったということか?』
『うん、決めたよ、俺は姉さんを探し出す――そのためには統合企業財体の力を借りるのが一番早い』
『――そうか』
空間ウィンド越しにどこか嬉しそうに微笑むユリス。
「なら、まずは今日の試合を勝ち抜いて来いよ」
『うん』
そういうと、必要以上に相手のことを言わずにウィンドを閉じる斑鳩。今まで綾斗と斑鳩の通信の隣にいたのは沙々宮だった。
「まったく、斑鳩には勝てない」
無表情でそういうがどこか嬉しいという感じだ。
「そりゃどうも、それと昨日はありがとう」
「当然のこと、こちらこそありがとう」
斑鳩は彼女に軽く拳を突き出すが
「それは決勝に取っておこう」
「…そうだな」
斑鳩の脳裏に浮かぶのは明後日の綾斗とユリスの姿。
「さてと、綾斗の試合でも見に行きましょうか」
そういうと紗夜と共に、斑鳩は二人の試合を見に行くことにした。
『さぁさぁ皆さまお待ちかね!いよいよこのシリウスドームでも準々決勝の試合が始まろうとしています!まず東ゲートからその姿を現したのは、星導舘の天霧綾斗・ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトペア!そして、そしてその反対側!西ゲートからは界龍第七学院の黎沈雲・黎沈華ペアが入場です!』
『奇しくも五回戦と同じく星導舘と同じく界龍対決となったッスね!」
『そうなんですよ!なお、他のステージではすでに全ての試合が終了し、ベスト四のうち三枠までが決定しております!果たして果たして、その最後の一枠を埋めるのは、どちらのペアなのでしょうか!」
耳を劈く様な大歓声だ。それに引けをとらない実況と音声。そして
『《
試合開始が宣言された。