『《
試合開始が宣言される。しかし、目の前のアルディとリムシィは仁王立ちのままだ。
どうやら、傲慢不遜という言葉がこの擬形体にはお似合いらしい。
「――ッ!?」
開始と同時に、神速とも言わん速さでに斬りかかる斑鳩。相手は、リムシィだ。
「まさか、貴方が来るとは思いませんでした――棗斑鳩」
「曰く、『女は自然が最高の完成を保全するために工夫したものであり、男は自然の命令を一番経済的に果たすためのに女を工夫したものだ』――もし、俺が開発者なら、アンタに隣のアルディのリミッターをかけるからな」
「まさか、最初から私を狙って!?」
「如何にも――その一分間で蹴りをつけてやる!!」
出し惜しみは無しだ。斑鳩もここにきて、全力を出す覚悟をし、剣を振るう。
斑鳩は、ホリゾンタルから連鶴を用いて摩訶不思議とも言えるしかし、一通りつながった連鶴を叩き込んでいく。
『お、おおーっと、これはすごい!ついに、ついについに、この大会で初めてのリムシィ選手が攻撃を受けました!棗選手!まさかあの難攻不落の絶対防御を攻略したというのでしょうか!?」
「――なぜだ、どうして絶対防御が効かない?」
「(それは、単に経験がないからだよ――)」
斑鳩の予測だとこの二体は何かしら秘策がある。あのエルネスタがそれを隠していないわけはない。
そういうと、彼女が動き出す。
「解せません、そして不愉快です――ルインシャレル」
「そ、そしてそして!なんとリムシィ選手から攻撃を仕掛けたぁ!!時間は宣言から30秒!まだ一分は経過しておりません!」
リムシィの内臓兵器が唸りを上げて光の奔流が襲い掛かるが、斑鳩は負けじと絶対零度の冷気を極太のレーザーのように発射して攻撃をおこなう。そこに、今度はアルディが一分足らずで襲い掛かってくるが。
「四十一式煌型粒子双砲ヴァルデンホルト――《バースト》」
紗夜の甲高い言葉と共に突如、斑鳩とアルディを光線が二分した。
「――忘れては困る、本気で来い」
視線をそちらの方に向けると、そこには巨大なバックユニットを備えた大型の煌式武装を顕現させた紗夜がそこにいた。
「ナイスだ紗夜、さて畳みかけましょうかね」
「させるか!!」
アルディが前に出て、リムシィが後ろに下がる。斑鳩は、目の前のアルディにほぼ零距離に近い距離で無数の光の矢を飛ばして攻撃をする。
激しい爆発音と共にアルディの装甲を削る。其処にリムシィの砲撃が飛んでくる。しかし、それを紗夜が相殺する。
「なんのこれしき!!」
アルディが立ち上がりハンマーを振り上げ、襲い掛かる。リムシィの砲撃の射線も斑鳩を捉える。
「潰れるがいい!!」
一気にハンマーを振り下ろしてくるアルディ。そこにリムシィの攻撃が砲撃が飛んでくる。斑鳩は、手首から肩、腰を柔らかく動かすことによって 相手の攻撃を武器で受け流し、そこから、剣を左から右へ、右から左へ素早く水平に連続で振るう。機械特有の経験不足でボロが出たので、一気に立ち位置を入れ替える。すると、リムシィのルインシャレルがアルディに直撃する。
「ちっ」
舌打ちをするリムシィ。そこに間髪入れずに斑鳩と紗夜が襲い掛かるが、とっさに危機を感じたリムシィは距離を取る。
「――なるほど、カミラ様が気にかけているだけはありますね沙々宮紗夜、棗斑鳩」
髪をばさりと掻き上げるリムシィ。
「その極めて不安定な煌式武装を、あれだけの精度でコントロールする技術には感服いたします、しかも私の攻撃を完全に見切ったうえでの、これ以上ないタイミングでした、大したものです、それに棗斑鳩の機敏さ、称賛に値します」
「お前の攻撃は正確で完璧な予測に基づいている、でも、だからこそ対応しやすい」
「右に同じだな」
そういう斑鳩。
「……いいでしょう、この屈辱を味わうことができるのも、マスターが私達に人格と心を与えてくださったが故、その言葉、確かに刻みました」
そういうと、リムシィは煌式武装を投げ捨てる。そして、高温を響かせながら緑色の光を放つ。
「なればこそ、私も全力で応じましょう」
そういうと、再び銃型の煌式武装が現れ、その身体がふわりと浮き上がる。
『おおーっと、リムシィ選手が飛んだー!?飛びました!』
『あー、あの背中のは飛行ユニットだったんッスねー、飛行能力者はそれほど珍しいわけでもないっすけど、空中で自由に十全な戦闘を行えるだけの鍛錬を積んでいる選手となると話は別っすスネ』
リムシィの機動力はまさに圧倒的な物だった。鳥のようにというレベルではない。
しかし、相手にするのは彼女だけではない。目の前のアルディも対策しないといけない。斑鳩はそこを何もしていないわけではないし、手段もないわけではない。
斑鳩は、軽く手を空にかざし、その文言を唱えると
「――ッ!?」
リムシィが地面に真っ逆さまで地面に激突した。