ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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決着――鳳凰星武祭 準決勝第一試合

斑鳩はゆっくりと瞳をつぶり、全神経を集中させる。

 

「(――完全武装支配術!!)」

心の中で技を発動させる。思い起こすのは"あの世界"の武器だ。そして、最も使いやすい形、大きさの武器が現れる。

 

「(こい!!)」

すると、スカーレット・ファーブニルに黒い紋様が浮かび上がり、刀身に紅い文字が浮かび上がる。

そして、その刀身に絡み吐く様な焔がともる。

 

「斑鳩、これを使って」

紗夜が斑鳩に触れてくる。同時に、ヴァルデンホルトからエネルギーが斑鳩に譲渡される。その膨大なエネルギーが斑鳩を伝わり、エリュシデータに流れていく。そして、スカーレット・ファーブニルのコアの紅玉とエリュシデータに後付け内蔵されたマナダイトが輝きを増し、唸りを上げていく。同時に、エリュシデータの黒い紋様がより一層かがやき始める。

 

「これが…紗夜の力――」

「この試合、私に出来るのはここまで――あとは頼んだ、斑鳩」

「…了解、紗夜」

そういうと、斑鳩はアルディに向き直る。

 

「待たせたな、アルディ」

「いいや、我輩のほうも少々不調があったのでな、応急処置を施したところである」

斑鳩は、土塊とステージの破片の中を進んでいく。そして、反対側からはアルディが同じように悠然と進み、お互いが間合いに踏み込む。そして、一気に間合いを詰め、中央でぶつかる。

 

 

 

 

 

「はあああああああ!!!」

斑鳩が裂ぱくの気合と共に、剣を薙ぐ。斑鳩は、それをハンマーで受け止めたが、その瞬間防御障壁で構築された部分が吹き飛ぶ。

 

「なにッ!?」

周囲の声はもはや何もきこえない。同時に斑鳩の血流が早まっていく。同時に、戦闘を求める衝動に掛けた手綱をいっぱいに引き絞った手綱を斑鳩はそれを放った。

空中で高速で起動し、斑鳩を捉えてくる。まさに風さえも押しつぶすような勢いで襲い来るハンマーをはじき返す。同時に、斑鳩の感覚が全方位全周位に向けられる。正に感覚が鋭敏化される。

同時にアルディの飛行ユニットがロケットのような勢いでその身体を旋回させるアルディ。

そして、その隙を斑鳩は決して見逃さない。その一瞬に全ての意識をささげる斑鳩。

 

死角もなければ、最善の角は存在しない。ただその一撃に掛ける。心は水滴を垂らしたように極限まで研ぎ澄まされ、視覚も味覚も嗅覚も触覚も聴覚も今はその攻撃に全て傾注される。

此の刹那、斑鳩はまさにすべてを放棄して余った力を結集させる。内という内、髄という髄、血という血、そして、細胞までもがそのすべてを振り絞っていく。まさに一瞬を駆けていき

 

「(極限の一撃を――ッ!!!)」

 

 

 

 

天壌焼き焦がす星龍皇の焔(スターバースト・サラマンドラ・ストライク)!!」

 

 

両方の剣から摂氏3000度の熱を発する剣閃の二刀流による剣撃を敵の体に次々と叩き込む。 星屑のように煌き飛び散る白光と紅蓮の龍の剣閃は、まさに空間を灼くかの如き様。

衝突する音と剣戟の破壊音。轟音と閃光を生み、全ての音を奪い去った後

 

 

 

何かがはじける音と共に、斑鳩は極限状態から意識を取り戻す。

その視界に入ったのは、ライトの光。そして、

 

 

 

「エルネスタ・キューネ、校章破損(バッジ・ブロークン)

 

「試合終了!勝者、棗斑鳩、沙々宮紗夜!」

続いて入ってきたのは――

 

 

 

「ふははははははっはははは!――我輩の完敗である!」

人間らしい機械の笑い声と歓声と拍手、喝采に口笛、実況と解説の声――様々な音。

 

そして、その声に安堵して斑鳩はその場でしりもちをついた。

 

 

 


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